第43話 レミーの意思
ロサイルとショウザンは変わらず激しい戦いを繰り広げていた。
だが、まだフォース技が敗れないロサイルの方が、若干不利だった。
ショウザンは、炎のチャージのスピードにもちゃんと付いていっている。
「ロサイル……君も分かってるだろう?君のスピードじゃ、僕には勝てない」
「そんなこと知るか!」
ロサイルは、左手にグッと力を入れた。炎の球をショウザンに向けて投げる。
「こんな遅い球、通用しない」
あっさりとかわしてしまったが、かわした先には、炎のチャージ状態のロサイルがいた。
「しまっ……」
「チャージングキック!」
炎が飛び散るキックは、ショウザンにクリーンヒットした。
ショウザンは、その場で膝を付き、蹴られた腹部を押さえた。
「くそ……君は不意打ちが上手だね……」
「お前は学習能力がないんじゃないの?」
「……ははは。それはこっちの台詞さ」
そう言うと、ショウザンは光に包まれて消えてしまった。フォース技だ。ロサイルも少し戸惑ったが、ニッと笑みを浮かべた。
「いつものパターンでいくと……」
まず、今の俺の方向の後ろに出てくる。その後、振り向いたときの後ろをいつも突かれる。……ということは……
「今向いてる方向に斬ればいいんだ!」
ロサイルは思いっきり剣を振った。……だが……
「残念。今度は早すぎたね」
後ろからズバッとショウザンに斬られた。
かなり深く斬られたようで、立つことが困難になった。
「ははは……またこんな展開か……」
ロサイルがそう言った。そして、剣を両手で握った。
「お前も来いよ……あの時の戦いみたいにさ……」
そういわれたショウザンは、笑みを浮かべて、両手で剣を握った。
「いいだろう。これで終わりにしてやる」
2人は一気にパワーを注入させた。そして、それを解き放つ。
「炎のビーム!」
「光のビーム!」
2つの光線が、一直線に飛び出した……
*
バレンアとエリスは、急いでリカトル村へと走っていた。大きな爆発があったのは、何かの危険信号のようだった。
そして、頑張って走った結果、早くにリカトル村につくことが出来た。しかし……
「凄いことになってるな……これ」
バレンアたちが見た光景は、灰になったリカトル村だった。
「とりあえず、ここでリラさんの応急処置をしましょう。こんな状態だったら、誰も近寄らないでしょう」
エリスは、リラが持っている救急箱を取り出して、応急処置を始めた。バレンアは、異端審問官に警戒しながらリラを見守っていた。
リラの応急処置が一段落ついた時に、村に誰かが入ってきた。
「誰だ!?」
バレンアは入ってきた人に問いかける。
「おや?その姿は……陰陽の隠れ里の少女と、死に掛けのリラ皇女、そしてマジシャンのバレンア君か?」
正体は、異端審問官のレミーだった。凄く満足そうな表情で、こっちを見ている。
「何しに来たんだ?ここにはもう用はないはずだ」
バレンアが険しい表情で問いかける。
「おっと、そんな怖い顔をしないでくれよ。私はショウザンを迎えに来ただけなんだけど……結構手こずっているようだね……」
「……」
「君達に伝言を頼むよ。レミーは先にデューナに行ったって伝えておいてくれ」
そう言って、レミーは村を出ようとした。
「ちょっと待てよ!」
「どうしたんだい、バレンア君」
バレンアが大きな声でレミーを呼び止めた。
「何で、こんなにも村を破壊していくんだよ……」
「教皇様の命令でね……こういったちっぽけな村を、素晴らしく発展した町に変えるためだよ」
「そんなことのために……温かい村を壊してるって言うのかよ!?」
「そういうことさ」
「テメーは間違ってると思わないのか!?」
「思わないな。むしろ正しいさ」
バレンアは我慢の限界のようだ。一気にレミーに突っ込もうとした。だが、それをエリスが止めた。
レミーはクスッと笑いながら村を出て行った。
「何で止めたんですか!?」
「いま突っ込んでたら、確実に死んでたよ」
その返事が返ってきて、バレンアは歯を食いしばるしかなかった。
「それより……ロサイル君は大丈夫かな……?」
「大丈夫です。あいつは勝ちます」
そして、3人はロサイルの帰りを待った……
次話、ロサイルVSショウザン決着です。