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小噺15『後払い』

作者: usomuki
掲載日:2026/06/22

○『後払い』あらすじ

先祖は元刀鍛冶で、町鍛冶をしている父を持つ男。ある晩、同い年たちとの団欒で、初めて吉原へ行った顔が青白い友人が、


「入廓料だの花魁道中見物料だの通行料だのと、色々な金を取られた」


と言う。


また、鼻の真ん中にほくろがある友人は、


「他の人が払ってなかったことを指摘したら、アイツは後払いって言われて、勘定を後回しにしてたら、帰る折に若い衆に囲まれて、仕方なく金を払った」


と言う。


ところが詳しい者に聞くと、そんな料金は存在せず、吉原慣れした若い衆に騙されただけだという。また、顔が青白い友人は迫られる度に金を払ってしまった為、肝心の女と遊ぶ金が無くなってしまったという。


それを聞いた男は、


「なるほど、そんなことをしてやがるのか」


と笑い、何やら思いつく。


翌日、男は生まれて初めて吉原へ向かう。


大門で若い衆に呼び止められて、


「吉原は初めてか」


「へぇ」


「入廓料が必要だ」


と案の定言われる。


だが男は、ちょうど前の客が何も払わず入っていくのを見て、


「あの人は」


と尋ねる。


若い衆は、


「あれは後払いだ」


と答える。


男は、


「それなら私も後払いで」


と言って中へ入る。


やがて花魁道中に出くわすと、


「花魁道中見物料だ」


と請求される。


しかしまた別の見物人が何も払わず去っていく。


男が、


「あの人は」


と聞けば、


「後払いだ」


と返される。


男も、


「それなら私も後払いで」


と言って見物を続ける。


その後も、


「通行料」

「提灯見物料」


などと次々に請求されるが、そのたびに、


「あの人は」


「後払いだ」


「それなら私も」


を繰り返し、勘定を全て後回しにしていく。


男は遊女の誘いにも生返事で、吉原中を歩き回る。


日が暮れ、帰ろうとしたところで若い衆たちが勢揃いし、


「入廓料」

「花魁道中見物料」

「通行料」

「提灯見物料」

「出廓料」


をまとめて払えと迫る。


すると男は急に、


「私は生まれてから父母に大切に育てられて、銭は諸悪の根源だからと昨日まで見たことも、触ったこともありませんでした。しかし、今日、吉原へ行って社会勉強を思い立ち、きっとこの中に銭があるはずと思って、父母が買い物に行く際に持って行く包みを持って来たのですが、それを合切袋の中でこぼしてしもうて、銭というもんがどんな形をしているのか分かれば払えるのですが」


と言う。


「銭の形も知らんのになぜ勘定を後回しした?」


「おまんまや女遊びで銭を払わなかったのか」


などと若い衆の言葉にも、


「銭探しに時間をかけてしまってはご迷惑かと思い、後払いでよろしいと聞いたモノでそう致しました」


「おまんまは野草、女遊びは町並み見物で一杯で出来ませんでした」


と言い返す。


若い衆たちは呆れながらも、


「丸くて真ん中に穴が開いていて、銅で出来ている、それが銭だ」


と説明する。


すると男は、


「あぁ、見つけました」


と言って合切袋から品物を取り出す。


それは男の先祖が刀匠鍔として造った丸形の鍔だった。


若い衆が、


「これは丸形鍔じゃねぇか!」


と怒鳴ると、


男は平然と、


「そう申されましても、皆さんが仰った通りの品でございます」


と言うのであった。


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