プロローグ
「ンアアアアアアアアアアアーッ! イッグウウウウゥゥウウウ!」
「らめえっ! らめらめらめらめらめええええええッ!」
二匹の魔物――雄のゴブリンが昇天し、その場で倒れる。
体はビクンビクンと痙攣し、白目をむきながら口元からはだらしなく涎を垂らしている。
周囲には二匹の下半身から漏れ出した体液が散らばり、晴れやかな空を映し出していた。
ヴィイイイイイイイイン!
馴染みある機械音を轟かせながら、ゴブリン達の体液で汚れた俺の体を持ち主が腕を振って拭き払う。
「ヤりました! ヤれましたよ、私達! やったあ! ふふふ」
「ほ、本当にヤれたんだな……。話だけじゃにわかに信じがたかったけど……」
のびてる二匹をよそに、金髪セミロングの美少女は喜びを体現するかのようにその場でぴょんぴょんと飛び跳ねている。
…………電マを持ちながら。
「伝説は本当でした! あなたと会えて私、凄く幸せです! もう絶対に手放してあげませんから! さあ、一緒にイキましょう!」
なぜこの美少女が手に持った電マに話しかけているのか、それは時を遡って説明せねばなるまい。
♢ ♢ ♢
「ンアアアアアアアアアアアーッ! イッグウウウウゥゥウウウ! らめらめらめええええええッ! ぬほおおおぉぉおおお! アヒィイイイイイイイン!」
俺、電正志は電マを股間にあてがって喘いでいた。
みんな、安心してほしい。
もしも電マの刺激で自分の体から謎の液体が飛び出てもいいように、場所は浴室。さらに全裸で実行中である。
こうすることで家族団欒の場のリビングや着衣がカピカピ汚れで困ることなく、イカ臭くもならずにすむ算段だ。いろいろ出しちゃっても、すぐに洗い落とせるしね!
え?
普通のマスターベーションをした方が良くないかって?
……足りねえよ、刺激が。言わすなバカヤロウ!
俺が絶賛使用中のこの電マ、『笑顔の満潮シリーズ最新作! 絶対絶イキ絶頂! 旦那いらずの超最短オルガスムスEX(私はこれで性行為をやめました)』を手に入れられたのは思いがけない僥倖だった。
俺の母親はアダルトグッズ製造メーカーのお偉いさんで、開発されたグッズはお客に提供する前にまず自分で使って試すタイプの人だ。
自ら試運転したレビューを購入サイトに掲載することで絶大な信頼と支持を得ており、会社の業績も好調なのだとか。
まあ、息子としては母親の性的趣向が文字として残っている現実に直視できずにいるわけだが……。
前に怖いもの見たさで商品紹介レビューを覗いてみたら、『遠洋漁業の主人がなかなか帰ってきてくれなくて、その寂しさと火照りを紛らわすために自社の商品である電動マッサージを使用したところ、初めて主人が私のに触れてくれた時みたいに、時にやさしく、時に激しく程よい強弱をつけて私を遠洋オルガに連れてイかせてくれました。5点マン点中、卵子4.5です』というのを見つけた時には3日は食事が喉を通らなかった。
しかし、血は争えないのも事実。
かくいう俺も性の刺激に飢えており、母親が商品を家に持ち運んでくる日をいつも待ちかねていた。
普段は家に持ち帰って後日、どこかのホテルを取って楽しんでくることが常例なのだが、この日は違った。
なんと社員であるデベロッパーがテクノブレイクで病院に運ばれたとの連絡を受け、母親は急いでタクシーに飛び乗ってイキ死にの瀬戸際にある社員の元に向かったのだった。
そんなこんなで玄関先に残されたのは未開封の段ボール箱。
チャンスは突然やってきた。
勘のいい俺はすぐさま開封し、中身を確認する。
「おお、こいつは……! フフフ……。中々、楽しませてくれそうだぜ」
箱の中身はもちろん電マ。商品名が記された紙と共に梱包材に囲まれながら中央に鎮座していた。しかし、俺の知る従来のそれとはまったく違うと言っていいだろう。
まず長さだ。持ち手の所だけで50センチはある。可愛らしいピンクを基調としたカラーリングだが、振動ヘッドを含めたその威圧的な長さからは対象を絶対にイカせるといった意志を感じる。特に目を引くのは持ち手の中央部に貼られているエクスクラメーションマーク型の電源ボタンだ。試作品だからか、こうゆう仕様なのかは定かではないが、電マに似つかわしくない。しかし、それを見た瞬間、俺自身の中で恐怖と同時に期待と性欲が膨らんでいくのが分かった。
コイツはどう俺を追い込んでくるのか、どんな声で鳴かせてくるか。
興味が尽きず、思わず顔がニヤけてしまう。
「……とりあえずスイッチを入れてみるか」
エクスクラメーションマーク型の電源ボタンを押す。
「…………ん?」
何の反応もない。バッテリー切れか新しい電池が必要なのか? そもそも端から壊れていた?
いろいろ考慮しながらおもむろに振動ヘッドに手で触れようとした瞬間、
バチィッ!
「――痛ッ!」
すごい勢いで右手が弾かれてしまった。
「こ、これは……⁉ 動いてないんじゃない! あまりにも速い動きで止まって見えるんだ!」
いまだかつてない強力な電マとの出会いに、俺は武者震いが止まらなかった。
「……おもしれぇ。ヤる前から俺をここまで震えさせた電マはお前が初めてだぜ」
ヴィイイイイイイイイン!
余裕の表れか。電マは何も語らず、ただ空気を振動させていた。ある意味、それが挑発しているとも捉えることが出来る。
「場所を変えるぜ。付いてきな」
俺は左手に電マを握ったまま、浴室へと足を運ぶ。
これから始まる性戦のために。
浴室全裸で電マと一緒。ナニも起こらないハズがなく。
「ここでは俺たちを邪魔する者はいねえ。……さあ。俺とお前、どちらが上か……。雌雄を決しようぜ!」
ヴィイイイイイイイイン!
振動ヘッドを自分に向け、両手でしっかり持ち手を握る。
「イクぜ!」
こうして俺と電マの激しい戦いの膜――いやさ、幕が上がったのだった。
2秒後。
「アッヒイイイイイイイイイイイイイイイイン! メ、メシュになりゅうううううううぅぅうう!」
股間にあてがうと同時に体液放出。
即落ち2秒で雌となり、俺の完全敗北でケリがついた。
今まで味わったことのない振動。それが快楽となり、クラッカーボールが如く陰嚢が右往左往にダンスする。電マから手を離そうにも全身の力は抜けているのに、何故か股間に押し当てている手だけは力を緩めることができない。
快感に身を包まれ、視点も定まらず、口元もガクガク。地に足が付いているかも分からない。
「も、もうダメエエエエエェェエエ! イクイクイクイクイクッ!」
脳汁が出ることにより浮遊感に襲われ、世界が反転する。
「イッッッッックゥゥウウゥゥウッー!」
ドピュッ! ゴンッ!
俺はイった。
あまりにも過剰な快楽により腰砕けとなり、足を滑らせ浴槽の縁に頭を強打した。
俺はイって、逝ったのだ。
17年というあまりにも短小な人生だった。
「――ん、ここは……?」
目覚めるとそこには白一色の空間が広がっていた。
「病院とも違うよな? だって俺は――」
「死にましたよ。変死というか、性死というか……」
「――⁉」
声のする方へ振り向くと、上空から一人の女性がゆっくりと降りてきていた。
「私、今まで数えきれない程の人間を異世界転生させてきましたけど、あんな無様で情けない死因者を取り扱うのは初めてですね。ハァー……。他の女神たちの笑い話の種になってしまう」
心底嫌そうにそう告げるのは、宝石を思わせるような美しい銀髪をなびかせている少女だった。
この白い空間よりも、一際目立つ清潔感のある肌。ルビーのような紅い瞳は蠱惑的でこちらの視線を釘付けして離さない。
特に目を引くのはその服装だ。豊満なバストを惜しみなく主張している胸開きタートルネック。ショートパンツの上からでもわかる大き過ぎず、小さすぎない張りのあるヒップ。
この人こそまさに――
「エロ系インフルエンサー!」
「女神です! 助兵衛もいい加減にしなさい!」
怒られちゃった。
「すんません。女神様がめちゃくちゃ股間にクる格好をしていたので……。ちょっとティッシュあります?」
「間髪いれずスッキリしようとしないでください。死んだ直後なのに何故ソッチ方向は元気なの?」
「女神の祝福っすかね? 『性腺刺激女神ホルモン』で『股間刺激ホルモン』発動、みたいな?」
「そんな祝福、あってたまるか! まったくもう! 私に劣情を催している暇があるなら、あなたが今置かれている状況をちゃんと考えないとですよ」
「置かれている状況って……。ん? そういやさっき異世界転生って言った?」
「ええ。生物学的にも、社会的にもお亡くなりになられたので」
「マジかよ⁉ 強くてニューゲームができるってことじゃん! じゃあ早速、感度はいいけどすぐには達しない絶妙な粘り強さを持つ股間に、ありとあらゆるアダルトグッズを創造できるスキルをオナシャス! あっ! 使い終わったグッズは自動で洗浄できるユニークスキルもお願いね! これ大事!」
「転生する意味あるのそれ⁉ 現世の時にネットとかで調べて鍛えればよかったじゃないですか! そして若いうちからグッズに頼るな! それで満足しちゃいますよ! あと自分で放出した体液は自分で後始末なさい! スキルはあなたのお母さんではありませんよ!」
「説教はいいから早く! 第二の人性を送らせてくださいよ! 俺を死に追いやったあの電マを創造し、次こそは勝つ!」
リベンジに燃え、転生に対し前向きに意気込む。
両親との急な別れは申し訳ないが、あの勝負に対して俺の後悔は無い。
母さん、父さん……。新しい世界で、俺は楽しく元気にヤるよ。
そんな期待感に胸を膨らませている俺をよそに、女神様は目頭を押さえてため息を吐く。
「はぁ~……。あのですね、あなたの世界の異世界転生の概念と、こちら側から提供する異世界転生とではかなりの齟齬があるようなので説明しますね」
「?」
女神様がこほん、と咳ばらいをする。
「第一に――異世界転生するにあたってその者の生前の行いや気質、転生先の状況などを踏まえて何かに選ばれます。だからあなたが言っていたような我儘や願望など、こちらで受け付けることなどできないのです。私達、女神に課せられている職務は転生前の者が混乱しないよう、説明や助言役として現れる。……分かりましたか?」
「え~。……じゃあ、神や女神がチートスキルを付与みたいなのはマジでないの?」
「ん~。まぁ、上位種の存在が何かの手違いで相手方に命を落とさせてしまったとかなら、贖罪としてワンチャンあるかもですけど……。そんなゴッドエラーなんて、数千年に一度あるか無いかの確率ですね。それにあなたの場合だと『身勝手なテクノブレイク』という判断によりこれに該当しません」
「なんか技名みたいでカッコイイっすね」
「死んでください。あ、もう死んでたか」
チートとかで自分の都合よく転生できないのは大いに不満ではあるが、女神様の話しを解釈すると、自分に適した世界に転生できるということだ。
それだけでも不安が減るというもの。
剣と魔法と自慰の世界に転生して勇射となり、淫魔王を倒して連れ去られたお姫様と結婚。そして二人で幸せな自家発電生活を送るってのが俺の見通しだ。
「よっしゃ! そんじゃまぁサクッと転生、頼んます! 淫魔王しばいて姫様といろんなトコを触り合いしなきゃなんで!」
「何が『よっしゃ!』なんですか⁉ 勝手に魔王とかいる世界を想定してるし! その者のスペックと多様な異世界とのマッチングだと、努めて理解しやすいように説明したつもりですが……」
女神様はやれやれと、困った様に首を振る。
「それに触るって…………。その有様で、何を触るって言うんですか?」
「…………は?」
目の前にいる女神の言葉が理解できず、体と思考がフリーズする。
いや、触るって……決まってんじゃん。生前、縁の無かった女の子の柔肌をこの手で……この手……あれ?
「な、何だ⁉ 手が動かない⁉ ってか、体の自由が利かない⁉」
視界はある程度動かせるし見えるのだが、手足の感覚がまるで無い。運動能力で言ったら、その場でちょっとジャンプができるくらいだ。
「そんなに慌てずとも、姿を確認させてあげますよ」
女神が右手を上げ、人差し指で空をなぞる。
目の前に光の粉が降り注いだと思ったら、それがみるみるうちに形を成して楕円形の全身鏡が現れた。
そこに写っていたモノは――
「ナ、ナンジャコリャーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
――電マだ! まごうことなき電マだ! しかも、
「俺が死ぬ直前まで使ってたあの電マじゃん! ナニコレ⁉ どゆこと⁉」
振動ヘッドを上に、持ち手を下にして直立している己の姿に、ただただ困惑する事しかできない。
「生前、熱心にされていた自家発電が功を奏し、次の異世界にふさわしい肉体を手に入れたようですね」
「なに冷静におかしなこと言ってんの⁉ セクハラすんぞ!」
「文字通り手も足もでない状態でどうセクハラするんです?」
キレ散らかしている俺に対して女神の野郎は鼻で笑っている。
怒りの表現がその場で跳ねることしかできないのがもどかしい。
「こんな状態でどう異世界で暮らすんだよ! 飯は⁉ トイレは⁉」
「安心なさい。あなたがこれから転生する世界はその姿を真に欲している世界。女神の加護で食事や排泄などの必要はないので思う存分、異世界人達の力になることができますよ?」
「スキルとかは⁉ さすがにこのままってことはないでしょ⁉ 電マだよ?」
「いえ、あなたには想像しえないポテンシャルが秘められているのでこのままで!」
どうしよう、不安だらけだ。
「さて、お喋りはもういいでしょう……。今からあなたが降り立つ世界は終わりのない悪意により性が蝕まれた台地。私――女神アロンティヌが汝の新たな電マ生を祝福するとともに、救性主としての活躍を心より願っています」
地面に光のサークルが現れる。恐らく異世界に繋がっているのだろう。
ウジウジと考えていても仕方がないのでこっちも腹をくくる。
「ここまできたらもうヤるしかねぇ! そんなに求められてるってんなら、異世界の全ての下の世話を俺がみてやんよ!」
「その意気です! そして異世界を救い、天寿を全うした暁にはあなたの望む容姿やスキルを授け、新たに生を与えましょう。もちろん、そちらの都合のいい異世界も用意してね」
「マジっ⁉ 次は叶えてくれるの⁉」
「世界を救ったのなら当然の権利と恩賞です。どうですか? 今の電マの姿を悲観せずとも、己の裁量次第で未来は思うがままですよ?」
目の前に美味しい人参もぶら下げられ、余計に異世界生活への気合いが入る。
「そうと分かればちゃっちゃと異世界を救って、本当のモテモテ異世界ライフで性を謳歌してやる!」
「まあ、転生前に現世の方でモテるために頑張っとけよって話しなんですけどね。ハハッ」
「あんたは今、世界中にいる非モテ男子たちを敵に回したぜ! 昇天誅!」
ヴィイイイイイイイイン!
「きゃああああああああ! 振動しながらこっちに来ないでください! 股間に押し付けるな! は、早く異世界に行きなさ、い、い、イックゥウウウゥゥウウウー!」
ブッシャアアアアアアアアアアア
女神から出た聖水の勢いに押され、異世界に繋がるサークルに落ちていく。
痙攣して倒れているアロンティヌに見送られながら、俺の異世界電マ冒険譚が始まるのだった。
「――ぅぅううわああああああああああああああああああああ!」
俺は今、遥か上空より回転しながら重力に従って急降下している。
サークル抜けた先がこんなにも高低差があるとは誰も思わないだろう。
異世界に来て早々、落下死してまた転生するのだろうか?
だとしたら次は落下に強そうなシリコン製がいい。
などと考えていると、もう地面が目と振動ヘッドの先に迫っていた。
「死ぬぅぅううう! 壊れるぅぅううう!」
ドォオオオオオオオオオオオオオオン!
豪快な落下音と共に緑の大地に大きなクレーターを作る。
「イテテテ……。あれ? 生きてる! 体にヒビも入ってない! スゲー!」
振動ヘッド(どうやらここに目の器官があるようだ)から持ち手の部分を確認すると傷一つ付いておらず、空から落下したとは思えないくらいの些細なダメージ量で済んだ。
「ひとまず良かった。さて……。ここからどうしよう?」
今の俺は電マ。喋れはするし、多少飛び跳ねて移動もできるが、この姿をここの住人は受け入れてくれるだろうか?
それにアロンティヌは性が蝕まれている世界って言ってたけど、具体的に何をすればいいか分からん。
欲求不満な人妻たちを俺(電マ)で慰めてほしいとかなら大歓迎なんだけど……。
早く第一村人に会って色々と情報収集がしたい。
「おい。さっきの落下物、ここらへんだよな?」
「へい兄貴。間違いありませんぜ。きっとここに――あっ! あそこ! 地面が抉れてますよ!」
「――っ!」
これからの事を長考していると、近くで野太い男の声が二つ聞こえた。
俺が派手に落ちてきたもんだから、その様子を誰かが見に来てもおかしくない。
「しめた! これで情報が手に入るかもしれん! こっこでーす! ここ、ここ!」
「ん⁉ 声がしたぞ! 落ちたものって生き物か?」
二人分の足音がこちらに来るのが分かる。
これが俺の記念すべき異世界ファーストコンタクトだ。
「「「ええっ⁉」」」
その場に居合わせた三者が同時に驚愕した。
「ゴ、ゴブリン⁉ マジかよ⁉ 異世界過ぎんだろ⁉」
「ヤ、ヤス⁉ こいつは……まさか、伝説の……」
「き、きっとそうですよ! 兄貴、ヤりましたね!」
緑色の肌に鋭い牙。腰布つけて棍棒を持っている。
ファンタジーゲームに出てくるゴブリンそのものだ。
少し特徴的なのは下腹部から顔にかけて紫色に輝くタトゥーを入れているくらいか……。
「――うわっ⁉」
兄貴と呼ばれていたデカいゴブリンに地面からすくいあげられる。
元の人間の姿ならまだしも、電マの姿だとゴブリンも大きく見えて威圧感がある。
「へ、へへへへ……。コイツを持ってさえいれば、全ての生き物が俺様に跪くだろうぜ」
「キヒヒヒヒ。あっし達の天下ってことですね!」
兄貴ゴブリンの言葉に、ヤスと呼ばれる小さいゴブリンが嬉々といて飛び跳ねている。
「あ、あの~……」
とりあえず、勇気をもって話しかけてみる。
「近くに人間の住む村とかあったら、そこまで送ってもらえませんかね? できれば女性の割合が多いとこを……」
「ほう、流石は伝説の魔剣。会話もできるのか……。しかし、その要望は聞き入れられんな~。なあ? ヤス」
「ヘイ! お前は兄貴が世界の頂点に立つために必要な超重要アイテム。お前を持っているか否かで、世界情勢が変わるといっても過言ではないのだ! ゴブリン界の発展のために、その力を兄貴の元で存分に発揮してもらうぞ!」
「と、言うわけだ。まあ、仲良くヤろうぜ。伝説の魔剣さんよぉ」
「そ、そんな~……」
初めての異世界の冒険がゴブリンとだなんて……。
せめて可愛い雌ゴブリンがよかった。
「しかし……」
兄貴ゴブリンが俺の顔(振動ヘッド)をじっくりと見つめる。
「見れば見るほど…………なんて煽情的なフォルムなんだ! この俺を、その気にさせやがって!」
「…………はい?」
「あ、兄貴! 実はあっしも、その魔剣を一目見た時から、アソコがうずいて仕方ないっす!」
「…………え? え?」
「よし! ヤるか!」
「ええっ⁉」
そう言うや否や、兄貴ゴブリンは腰布を脱ぎだし、その毒々しい下半身を顕わにした。
真紫に光るイチモツと傷だらけの尻。
兄貴ゴブリンから手渡された俺を、ヤスが手に持ち、臨戦態勢に入る。
目の前には兄貴ゴブリンの菊の門があった。
「ヤス! かまわねぇ。ヤってくれ!」
「へい!」
「いや、かまうわ!」
何恐ろしいこと実行しようとしてんだ!
「伝説の魔剣、尻並み拝見といこうか」
「兄貴、その次はあっしにお願いしますよ!」
「誰かー! 助けてー! 汚されるー!」
ヴィイイイイイイイイン!
俺の負の感情に呼応するように、振動が始まる。
「へへへ。口では拒否しても、体は正直じゃねえか」
「キヒヒ。そう焦らずとも、兄貴の尻はどこにも逃げないぜえ」
「イヤーッ!」
「そこまでです!」
「「「ッ⁉」」」
挿入れられる直前、突然の『待った』の声にゴブリン達の動きが止まり救われた。
「お、俺とヤスの愛撫の時間を邪魔するとは……⁉ どこのどいつだ!」
全員で声をした方を見る。
そこには――
「その魔剣を勝手に性の捌け口に使用することは許しません! それは我がプロステイト家の者が扱って初めて真価を発揮するもの……。ただちにこちらに譲り渡してください!」
馬に跨った美少女が佇んでいた。
金髪のセミロングで人形のように整った顔立ち。フリルの付いた白いブラウスの左胸には白銀の胸当てを装備しており、容姿からは想像できないが戦士を思わせる。
黒いレザーパンツを着こなし、スラリとした長い足をより一層魅力的に映えさせている。
「あなた達と争いたくありません。無駄な抵抗はぜず、こちらの要求に従ってください」
ゴブリン達に物怖じせず、毅然とした態度で話す美少女。
風が吹き、なびく髪を抑える所作や洗練された圧倒的存在感に、俺は一瞬で心を奪われた。
「従わなかったら、どうなるってんだ?」
「…………実力行使に出るほかないでしょう」
「ハッ。おもしれぇ。やってみろやぁ!」
「ッ! ――危ない!」
兄貴ゴブリンが馬と美少女に向かって、棍棒を振り上げながら走り出す。
「ふんッ!」
美少女はすぐさま馬上に立ち、騎座を蹴って飛び上がり、さらに兄貴ゴブリンの頭を足蹴にして一回転し、俺とヤスの目の前に降り立った。
「す、凄っ!」
「う、うわぁっ! あ、兄貴ー!」
「この野郎! よくも俺様の頭を……!」
「セイッ!」
「――ふぎゃあ!」
美少女がかがみながらヤスを足払いで転倒させる。俺は勢いのまま上空に投げ出されたが、美少女に優しくキャッチしてもらえた。
「お怪我はありませんか?」
「う、うん。……大丈夫」
「ふふっ。よかった」
花のような笑顔を向けられ、顔(振動ヘッド)が赤くなるのが分かる。
「あの、ありがとう……。えっと……」
「プレジヤです。プレジヤ・プロステイトと申します」
「プレジヤ……。あ、俺は――」
「ええ、知っています。あなたの事を、ずっと、待ってましたから」
「えっ⁉ マジっ⁉」
「こんにゃろ!」
「――⁉」
いつのまにか起き上がったヤスが棍棒を手に取り、プレジヤに襲い掛かった。
それをバックステップで見事にかわし、俺を両手に持ち、プレジヤは戦闘の構えに入る。
「た、戦うのか⁉ イけるの? 俺たちで?」
「私とあなたが力を合わせれば、絶対にイけます! だってあなたは、伝説の……。さあ、振動をお願いします!」
「なんか、色々と分かんねえけど……とりあえず信じるわ!」
「はい!」
俺の言葉が嬉しかったのか、俺を握るプレジヤの力が強くなる。
「イくぜ!」
ヴィイイイイイイイイォオオオオオオオオオオオオオオン!
今までとは比べものにならないほどの振動を引き出す。
握ってもらっているプレジヤの手から勇気が伝わり、ビンビンと力が沸き勃つ。
「凄いです! この振動なら、確実に……!」
「さっきから二人で何をくっちゃべってんだ! 大人しくあっしと兄貴の愛撫の糧になれ!」
「プロステイト家に代々受け継がれる剣技を今、お見せします! 性技、四十八手が一つ!」
「――網代本手!」
「グフッ⁉」
地面を力強く踏み込み、ヤスの懐へ一気に近づき、股間に俺(電マ)を押し当てる。
その衝撃で後方に吹っ飛び、地面に倒れるヤス。
そして――
「ンアアアアアアアアアアアーッ! イッグウウウウゥゥウウウ!」
ビュシャアアアアアアアアアアッ!
体を仰け反らせ、体液をまき散らし、そのまま昇天した。
「ええっ⁉ なにこの力⁉ こんなことになるの⁉」
「やっぱり凄い! あなたとだったら私、どこまでもイける!」
状況に呆気に取られている俺と、高揚感からか頬を赤く染めているプレジヤ。
はたからみると電マを抱きしめながら興奮しているヤバめの女の子に映って見えるだろう。
「よくも俺の前でヤスを寝取ってくれたな! 許さねえ! 代わりにテメェらの手で俺を慰めやがれ!」
真紫のイチモツをぶんぶん揺らし、怒り心頭の兄貴ゴブリンがこちらに突進してくる。
「ケッ! 俺を汚ねえ穴に挿入れようとしやがって! ヤっちまおうぜ、プレジヤ!」
「はい! 性利は私たちにありです!」
女神アロンティヌが言っていた俺のポテンシャルがやっと理解できた。
そうと分かればプレジヤと協力して目の前の火の粉を振り払うだけだ。
「ヤスの仇ィイイイイッ!」
「イきます!」
「応ッ!」
ヴィイイイイイイイイォオオオオオオオオオオオオオオン!
「性技、四十八手! 恥義、――」
ズプンッ
「――菊一文字ッ!」
「んっほぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」
「いや、結局尻穴に挿入れられるんかい!」
プレジヤの技は向かってくる相手の後ろに回り込み、鋭い突きを肛門に繰り出す技だった。
つまり、今の俺は兄貴ゴブリンの尻の中で振動し続けている。
「らめえっ! らめらめらめらめらめええええええッ!」
ドビュルルルルルルルゥ!
「 性 敗 !」
プレジヤの決めゼリフ(?)と共に、兄貴ゴブリンも盛大に体液を散らしながら昇天して倒れる。
二人で共闘(?)することで、危機を乗り越えることが出来た。
「ヤりましたね、私たち!」
「うぅ~、お風呂入りたい」
兄貴ゴブリンの尻から抜いてもらい、テンション爆下げの俺に反し、プレジヤは嬉しそうにこちらを見つめている。
「やはり伝説は本当でした。この大陸に災難が降りかかる時、伝説の魔剣が降臨し、性義の振動で闇を払い、皆を明るい絶頂へと導くだろうと……。その名も『ディベロップメントマジックソード』! 縮めて――」
プレジヤが俺を天に掲げる。
「――デンマ!」
どっちにしろその呼び名かよ!
以上、俺と美少女――プレジヤとの出会いでした。
これからこんな戦いばかりだと思うと、先が思いやられるなぁ……。




