第6話:亡霊の歌声、鉄の静止
旧講堂の地下に、オメガの最新鋭追撃ユニット『エグゼクター』が次々と転送されてくる。その数、十二体。漆黒の装甲に身を包んだ殺人兵器たちが、無機質な赤色灯を点滅させながら、うずくまる零号機へと照準を合わせた。
「零式、展開! 彼女を……あの子を絶対に死なせないで!」
私の叫びに呼応し、白い閃光が弾けた。
零式が超振動ブレードを抜き放ち、エグゼクターの群れへと突っ込む。火花が散り、金属のぶつかり合う轟音が地下空間に反響する。
だが、多勢に無勢だ。エグゼクターの連携攻撃が零式の装甲を削り、私の脳に鋭いノイズが走る。
「……っ、あぐ……っ!」
その時だった。
背後で震えていた零号機が、ゆっくりと顔を上げた。
剥き出しのコードが束ねられた彼女の指先が、空中に見えない旋律を描く。
「……みんな、おやすみなさい……。パパの、お片付け……」
零号機の能力:【ゼロ・ガーデン(絶対零領域)】
彼女の口から漏れたのは、歌とも呪文ともつかない超高周波のノイズ。
次の瞬間、半径五十メートル以内のすべての電子機器が、物理的に「凍結」した。
「なっ……動きが止まった!?」
襲いかかっていたエグゼクターたちが、彫像のようにその場で硬直する。
それはハッキングではない。零号機が放つ特殊な電磁場が、原子レベルで電子の動きを「停止」させているのだ。
『お嬢様、信じられないニャ! こいつ、周囲の熱量を奪って……完全な静止状態を作り出してるニャ! これが……未完成ゆえの、暴走するエントロピー操作……!』
零式だけは、私の脳波との直結リンクによって、かろうじてその静止空間を動くことができた。
零式は静止したエグゼクターの群れを、一刀の下に次々と切り伏せていく。




