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追放された真の聖女〜偽物と分かった出て行けと追放されたが実は私だけが世界の生命力を維持していましたので追放先の魔族の国で愛され生活を始めたら枯れ果てた王国が今さら国が崩壊すると泣きついてきた〜

作者: リーシャ

 王都は乾いていた。真の聖女アラリウカが追放されてからまだ半年しか経っていないというのに、だ。国の象徴である聖樹は葉を全て落とし、地面はヒビ割れ地下水脈すら干上がり始めていた。


「なぜだ!聖女!お前の祈りは一体何をしている!」


 国王は怒り狂って玉座から立ち上がった。隣にいる、派手な装飾を施した新しい聖女は怯えながら泣き叫ぶ。


「わ、私だって祈っています!でも、どんどん魔力が……この国、何かおかしいんです!」


「おかしいのはお前だ!」


 大司教は青ざめた顔で目の前の現実を直視せざるを得なかった。追放したアラリウカの祈りは、目に見える派手な力ではない。

 力は大地の根源に静かに魔力を送り込み、全てに生命を与える根源の祝福だったのだ。


 アラリウカが去ったことで、国の生命力は止めどなく流出している。王都は飢餓と渇きに見舞われ、国民の離脱が始まっていた。


「くそっ……アラリウカさえ戻れば……!」


 国王は絶望的な状況を前に、プライドを捨てて使者を送ることを決意した。


 アラリウカが暮らす、国境を越えた魔族の王都。ここはアラリウカの祝福によって色とりどりの花が咲き乱れ、天空の湖には豊かな水が満ちている地上の楽園だった。


 魔族の王。優しく彼女を愛するようになったレイヴン王子の隣で、笑いながらベリータルトを食べていた。

 歓談の場に痩せ細り、みすぼらしい格好をした王国の使者が連れてこられる。


 使者は昔アラリウカを軽蔑していた大司教の補佐官。アラリウカの輝くような幸福な姿と周囲に満ちる豊かな魔力に圧倒され、震えながら跪く。


「アラリウカ様……どうか、どうかお戻りください!国王陛下はあの時の非礼を深くお詫びし、真の聖女として貴女を迎え入れたいと願っておられます!」


 頭を地面に擦りつけて懇願する。アラリウカはレイヴン王子にそっと頭を撫でられながら、静かに答えた。


「国王陛下と大司教様は私を偽物だと断定し、追放しましたよね?」


「そ、それは……誤解で……あり」


「いいえ。私はあの国にとって……偽物で結構です」


 アラリウカは慈愛に満ちた、明確な拒絶の視線を使者に向けた。


「あの国は私を必要としなかった。結果。今、国が枯渇している。それはあなた方の選択の結果です」


 立ち上がり、背後の窓から生命力に満ち溢れた美しい魔族の楽園を見つめた。


「今の私は心から必要とされ、愛されています。ここが真の居場所です。祖国に居場所なんて、初めからなかったのでしょうね」


「謝ります!何度だって!お、お願いです!このままでは国が滅びます!」


 使者の懇願にアラリウカは初めて、哀れむような表情を見せた。


「滅びるべきものが滅びる。ただ、それだけのことにどうして私が心を痛める必要があるのでしょう」


 言葉が王国の終焉を決定づけた。使者は真の聖女からの祝福の完全な拒絶、幸福の対比という二重を受けて、絶望とともに荒れ果てた故郷へ帰るしかなかった。



 国境沿い、魔族の楽園を守るようにそびえ立つアラリウカの魔法による巨大な生命の結界。

 結界の内側は春爛漫の花畑だが外側は風が吹き荒れる茶色の荒野だ。結界の前に二人の哀れな男が倒れ込んでいた。


「くそっ……!あと少し……あと少しで、あの豊かな土地が……」


 王国の絶対的な支配者だった元国王は、今は泥まみれで手には結界を叩きつける力すら残っていなかった。

 隣では大司教がガリガリに痩せ細り、虚ろな目で地面を這っている。飢えと渇き、アラリウカを追放した自責の念が彼らを蝕む。


「あ、アラリウカ様……私は、我々は、真の聖女様の、御慈悲を……」


 大司教が掠れた声で呟いた時だ。結界の向こう、魔族の領地側から一団の騎馬隊が近づいてきた。先頭に立つのは見紛うことなきアラリウカ。

 隣に魔族の王レイヴンを伴い、最高級の祝福を受けた魔族の衣服を纏っていた。

 姿は以前の献身的な聖女ではない。自信と慈愛に満ち溢れ、存在自体が祝福の光を放っている。


「あ……アラリウカ、様」


 元国王は最後の力を振り絞り、頭を地面に擦りつけた。


「どうか……たった一度、結界を解いて我々に憐れみの水を!お願いします、全ては我々の愚かさゆえ……!」


 アラリウカは馬の上から支配者を見下ろした。瞳には怒りではなく冷たい事実だけが映っている。


「憐れみですか。私の魔族の国の民には惜しみなく祝福を与えています」


 自らの手で手に持った清浄な水を結界の内側の地面に注いだ。水は瞬時に吸い込まれ、その部分の花々がさらに生命力を増して輝く。


「あなた方には一切の慈悲を与えません」


 元国王の顔が絶望に歪む。


「なぜ……!なぜだ!少しの水で、貴女は何一つ困らないだろう!」


「ええ。困りません」


 アラリウカは頷いた。


「ですが、あなた方は私を偽物として追放し、心は傷つき二度と癒えることはありませんでした」


 元国王が倒れている荒野を冷徹な視線で見渡した。


「この地はあなた方が私を追放した結果です。あなた方は結果を最後まで受け入れ、苦しみ続ける義務がある」


 レイヴン王が元国王の喉元に、魔力を込めた槍を突きつける。


「これ以上、我々の女王の幸福な視界を汚すな。二度とこの結界に近づくな」


 元国王と大司教は自らの命を奪い去る魔力ではなく、手の届く場所にある女王の圧倒的な幸福に打ちのめされながら、荒野へと這い戻るしかなかった。


 命を奪わないが永遠に救いを与えないという、精神的な地獄こそが真の罰。


 元国王と大司教が去ってから、数日が経過した。荒野の片隅、小さな廃墟となった教会の柱の影で一人の女が息を潜めていた。

 王都の光と称された偽聖女マリリー。今や飢えと喉の渇きで、立っているのがやっとの状態。纏っていた豪華な聖女服はボロ布と化し、顔はやつれ果てている。


「なぜ……!私の方がアラリウカよりも派手に光る魔法を使えたのにっ!なぜこの国は……!」


 枯れた大地を叩きながら叫んだ。力は大地の根源を支える祝福ではなく、魔力を派手に消費するだけの虚飾の魔法だったのだろう。アラリウカの祝福が失われた今、ただの虚しい光にすぎない。


 その時、遠くから穏やかな馬の蹄の音が聞こえてきた。マリリーは必死に身を隠したが騎馬隊は正確に彼女の居場所へと向かってくる。

 先頭に立っていたのはアラリウカと、彼女の民を率いる騎士団。周辺の荒野にまだ生き残りがいないか、食料を分け与えるために巡回に来たのだ。


 アラリウカは馬を止め、柱の影に座り込んでいるマリリーを見下ろした。


「生きていたのですね」


 声は優しく、マリリーには最も残酷な宣告として響いた。アラリウカの輝くような健康的な美しさと背後に控える騎士団の忠誠心を目の当たりにし、自分がどれほど空っぽで哀れな存在になったかを理解する。


「あ、アラリウカ……様……」


 マリリーは追い落とした相手に、初めて畏怖の念を込めて名を呼んだ。


「貴女を追放した時、貴女の力を信じていました。この国の真の聖女だと信じていました!」


「知っていますよ」


 アラリウカは言った。


「貴女の魔法は確かに見栄えがしましたから。でも、見栄えだけでは国を支えることはできません」


 アラリウカは隊員の一人に指示を出し、一つの小さな水筒と干し肉をマリリーの前に置かせた。


「これは魔族の国から持ってきた、僅かな恵みです。餓死しない程度にどうぞ」


 マリリーは僅かな食料に縋り付こうとしたが、アラリウカの言葉に動きを止めた。


「しかし、貴女のプライドを傷つけ、虚栄心を満たした全てのものは、既に失われています。貴女を称賛した国民も王座も、貴女が信じた力も全て」


 アラリウカは哀れむような目で見つめる。


「真の力とは何か、虚飾の代償がこれほどまでに重いものだと知る必要がある。私たちは貴女を助けますが、貴女の罪を許すわけではありません」


 アラリウカは馬を動かし、去ろうとする。マリリーは恐怖と絶望に駆られ、最後の力を振り絞って叫んだ。


「待って!私も、貴女の国で何か役に立つことができます!私の魔法はまだ……!」


 アラリウカは振り返らなかった。その代わりに騎士団長が、冷たい事実を告げる。


「我らが女王の生命の祝福の副産物でさえ、お前が使える派手なだけの魔法を遥かに凌駕する。お前はこの国では何の価値もない」


 騎士団の言葉は、マリリーの存在意義を完全に否定した。手に持つ僅かな食料、自分を完全に否定する言葉だけを抱えて瓦礫の国に取り残された。

 欲し、手に入れた虚飾の全てが崩れ去り、真の絶望だけが残された報いである。

最後まで読んでくださり感謝です⭐︎の評価をしていただければ幸いです。

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