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2 転生RTA無双への道

 俺がリオン・アルクセルとして覚醒してから、一年が経過した。

 この一年間、俺は鍛錬や情報収集など『破滅フラグ回避』の準備に打ち込んだ。

 数年分に匹敵する濃密な時間を、俺は超効率的に駆け抜けた。


「まずは知識だ。この世界の常識、歴史、魔法理論、貴族社会の仕組み……全て頭に叩き込む!」

 転生してすぐに、俺はそう決意してアルクセル家の書庫に籠った。

 膨大な蔵書を片っ端から手に取り、頭に入れていく。

 並行して家庭教師からの授業も受けたが、ここでも効率を最優先した。


「リオン様、この魔法の歴史的背景はですね……古代魔導王朝の崩壊に端を発しておりまして……」

「歴史とか雑学部分はいい。結論から述べてくれ。その魔法が実用レベルに至ったのはいつで、誰が改良し、現在の主流詠唱に至るまでの変遷と、その理由は? 簡潔に頼む」

「ひっ……!?」

 俺の問いに、初老の家庭教師は小さな悲鳴を上げた。

 無理もないだろう。

 つい先日まで、『オリジナル』のリオンは授業をさぼって遊び回っていたらしいからな。


 けど、俺は違う。

 遊んでいる時間なんてないんだ。

 俺自身の能力と知識を最大限まで上昇させ、一年後の生活に挑むために――。


「リオン様、本当に変わられて……以前のわがまま放題が嘘のようです……」

 家庭教師は感動したように俺を見つめた。




 次に着手したのは、肉体の強化だ。

「原作リオンは貧弱だった。将来、万が一の戦闘イベントに巻き込まれた場合、生存率を高めるには最低限のフィジカルが必要だ」

 ゲームでは、リオンはヒロインへの嫌がらせに失敗して、攻略対象に返り討ちにされる場面が何度かあった。

 もちろん、そんな状況に陥らないように立ち回るのが大前提だ。

 ただし、不測の事態というものは常に起こり得る。

 あらゆるリスクは事前に潰しておくべきだろう。

 というわけで、俺は鍛錬教官と相談し、トレーニングメニューの抜本的な見直しを提言した。


「この反復横跳び、意味があるのか? もっと実戦的な回避行動に繋がる動きを取り入れてほしい。例えば、対複数人を想定した位置取りの訓練などだ。あと、この剣の素振りメニューだが回数が多すぎる。一振りごとの質を高め、筋肉への負荷と回復のサイクルを最適化するべきじゃないか?」

「おお、サボり魔だったリオン様がこんな積極的に――分かりました! あらためて訓練メニューを練り直します!」

 教官もまた家庭教師と同様に感動したらしい。




 知識や肉体を鍛えることも大事だが、俺がもっとも重要視したのは情報収集だった。

「貴族社会は一つの対人トラブルが命取りになるケースもあり得る。各家のパワーバランス、重要人物のゴシップ、学園の内部情報……全てがフラグ回避の鍵になる――」


 ゲームの知識だけでは、メインキャラクターはともかく、NPCの細かい人間関係までは把握しきれない。

 まず重要な情報源となったのは、父の書斎だ。

 書斎の鍵の隠し場所や金庫の開け方なんて、原作リオンの記憶をたどれば簡単に見つけられるからな。

 父の不在時に書斎に忍び込んでは、他家との手紙や機密書類をこっそり盗み見ることを繰り返した。


 さらにメイドたちへの聞き込みも欠かさなかった。

 なにげない会話を装い、貴族たちの噂話を聞きこみする。

 メイドたちは独自の噂話ネットワークを持っているらしく、彼女たちと仲良くしながら、俺はどんどん情報を増やしていった。



 そうして俺が己のパラメータ上げに没頭し足り、情報収集に励んでいるうちに、周囲の評価も劇的に変化した。


「息子が急に変わった……まるで別人のように努力するし、性格も以前のような性悪ではなく、優しく穏やかになったようだ……」

 父であるアルクセル伯爵は執事に戸惑いの気持ちを何度ももらしたそうだ。

 使用人たちの間でも俺の評判はうなぎのぼりらしく、

「リオン様、まるで別人のよう……」

「健気に努力を重ねて……」

「天才なのでは?」


 そんな評判を尻目に、俺はただひたすらに己を鍛え、情報を集め、破滅フラグ回避RTAの準備を整えていった。




 そして――一年後。


「いよいよ、だな」

 俺は自室の大きな姿見の前に立っていた。

 鏡に映っているのは、十五歳になった俺の姿。

 ゲームの悪役貴族リオン・アルクセルそのものだ。

 艶のある黒髪と綺麗な真紅の瞳――原作通りの惚れ惚れするような美少年だった。


「『緑の魔法学園(グリーンアカデミー)』入学式当日――これが最初の関門だ」

 原作の『エターナルグリーンアカデミー』において、リオン・アルクセルが最初に踏む破滅フラグ。

 それは入学式で発生する。

 メインヒロインであるオリヴィア・フォルテッシモ公爵令嬢に、リオンがくだらない因縁をつけるのだ。

 それはリオンが初日から他の生徒より目立ち、なおかつ自分の権力を誇示しておきたい――という気持ちから発したもの。


 そして、その場に居合わせた攻略対象の一人、第一王子エディル・スタッカートに咎められ、厳しく断罪される。

 これが最初の破滅フラグ――『悪目立ちによるヒロインからのヘイト獲得』イベントだった。


「回避策は、主要キャラとの干渉を徹底的に遮断すること――俺は今日ステルスムーブに徹するんだ」


 鏡の中の自分にそう強く言い聞かせる。

 絶対に目立ってはいけない。

 ヒロインや攻略対象とは一切関わらない。

 それが最初の破滅フラグを回避する唯一の方法だと、俺は考えていた。


「リオン様、ご準備はよろしいでしょうか。馬車の用意ができております」

 部屋の扉がノックされ、執事のルシアが声をかけてきた。

「ああ、今行く」

 扉を開けると、そこには俺とはタイプが違う線の細い美少年の姿があった。

 俺付きの執事であるルシアだ。

 俺より二つ年上の17歳だが、その立ち居振る舞いはまるで何十年も執事をやっているような落ち着きと風格があった。


 彼はとある事情で幼い頃からアルクセル家に仕えており、その有能さから父の信頼も厚い。

 俺も彼には全幅の信頼を置いている。

 とにかく仕事のできる少年だった。


「本日はご入学おめでとうございます」

「ありがとう、お前が一緒に来てくれるから心強いよ」

 俺はにっこりと笑う。

「恐れ入ります」

 ルシアはクールに一礼した。


 原作ゲームでは、ルシアには特に目立ったイベントはなかった。

 つまり、破滅フラグには関わらないモブキャラだ。

 今日の入学式に同行させても問題はないだろう。

 目指すは、魔法学園。

 破滅フラグ回避RTA、最初のステージの始まりだ――。

※新作第2話です! 20分後に第3話を投稿します!


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『お前の支援スキルは地味すぎる』と追放された俺。実は味方の全能力を100倍に【底上げ】するチートスキル持ちでした。今さら戻ってこい? もう隣国の姫に溺愛されて、王国最強の英雄になってるので……


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