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1 乙女ゲー世界の悪役貴族に転生

 俺……神谷翔太は薄暗い部屋でPCに向かっていた。


 画面に映っているのは、乙女ゲーム『エターナルグリーンアカデミー』――通称『エタグリ』のRTA動画だ。

 今まさに、悪役貴族リオン・アルクセルがヒロインに陰湿な嫌がらせをして、攻略対象である王子様に断罪されているシーンだった。


「ここでヒロインに直接手を出すとか悪手もいいところだよな……破滅フラグ回避RTAだったら、もっとこう――間接的にヒロインを破滅させるべきなんだよ」


 なんか物騒なこと言ってるな、俺……と思わず苦笑してしまった。

 ゲームとなると、つい効率について考えを馳せてしまう。

 今のは、この悪役が主人公だったらどうやって最速で破滅フラグ回避を終わらせるか――という仮定での考えだ。


 こういうことを考えるのが、俺は好きだった。

 いわゆる『効率厨』に属するんだろう、きっと。


「よし、RTA動画もチェックしたし、そろそろ新作ソシャゲのイベント最適ルートでも考えるか……。あ、その前に夜食の買い出しに行こう」


 明日は大学の講義が昼からなので、夜更かししても大丈夫なのだ。

 俺は外に出て、近くのコンビニに向かった。

 ――と、そのときだった。


 ぱーん、ぱーん!


 強烈なクラクションの音。

「えっ……?」

 大型トラックが猛スピードでこっちに向かってくる。

 な、なんで!? 今、向こうの車線は赤信号――。




 すさまじい衝撃を感じ、俺の意識は霧散した。




「う……」


 目が覚めると、見知らぬ天井だった。

 うん、お約束。

 ――なんてのんきに考えている場合じゃない。


「ここは……明らかに俺の部屋じゃないよな? っていうか、俺どうなったんだ? トラックに轢かれたような――」

 ゆっくりと上体を起こす。

 ベッドから降りてみた。


「あ、あれ……体が、変だぞ……?」

 小さくなっている気がする。

 まるで十代前半に戻ったかのように――。

 そこで壁にかかった姿見が目に入った。


「――って、なんだこれ――!?」

 そこに映っているのは、俺じゃなかった。

 黒髪に赤い目をした美形の少年。

 年齢は……たぶん十三、四歳くらいじゃないだろうか。

 しかも見覚えのある容姿だ。


「これ――リオンじゃないか!?」

 俺がさっきまでRTA動画で見ていた乙女ゲーム『エタグリ』の悪役、リオン・アルクセルの姿そのものだった。

「本当にリオンなのか……? 俺、リオンになってる……?」

 驚きの連続が頭がついていかない。


 リオン・アルクセル。

 いわゆる悪役貴族。

 主人公がどのルートを選んでも破滅してしまう、破滅確定の悪役キャラクターだ。


 もしかして俺はゲームの世界に転生した、ってことか?


 そう気づいたとたん、この世界の知識やリオンのこれまでの人生の記憶が頭の中に流れ込んで来た。

 すさまじい奔流のように。

「うっ、ぐぐぐぐぐ……」

 あまりの情報量に激しい頭痛が走った。


「いてててて……こ、これって……やっぱり、俺はリオンで……ここは『エタグリ』の世界……スタッカート王国の南に存在する広大なアルクセル伯爵領……うぐぐぐ……」

 記憶のフィードバックはその後、五分くらい続いた。

「はあ、はあ、はあ……」

 すべての記憶を頭の中にインストールしたような状態になり、俺は荒い息をついた。

 激しい頭痛はようやく収まってくれたけど、全身汗びっしょりだ。


 俺は今、十四歳になったばかりのリオン・アルクセル伯爵令息。

 この世界がゲーム通りの展開になるのであれば、これから無数の破滅フラグが次々に訪れるはずだ。

 と、


「リオン様、お目覚めですか。先ほどお庭で頭を打たれたそうですが、お加減はいかがでしょうか?」

 ドア越しにノックされ、女の声が聞こえた。

 ゲームでは音声がついてなかったモブキャラだけど、おそらくアルクセル家のメイドAだろう。


 庭で頭を打った――確かにリオンの直前の記憶でもそうなっていたな。

 そこから先は『オリジナル』のリオンではなく、俺の記憶になっている。

 つまり、そこが『入れ替わり』のポイントか。

 あるいは俺と『オリジナル』は入れ替わったわけじゃなく、単に前世の記憶が目覚めたってだけなのか?

 どちらにせよ、俺がリオンとして覚醒したのは今だ。


 とりあえず、俺はリオンとして生きていくしかない。

 この考察は終わりにして、現状に対応することとしよう――。

「ああ、問題ない。ただ、もう少し休みたいから下がっていてくれ」

「かしこまりました。御用がありましたら、いつでもお呼びくださいませ」

 言って、メイドAの気配はドアの向こうから遠ざかっていった。




「――よし、頭の中の整理だ」

 俺はベッドの端に腰かけると、考え始めた。

 今後のことを。

 まず、この世界がゲームのシナリオ通りに推移すると仮定しよう。

 その場合、このままいくと俺の人生は破滅エンドを迎える。


「俺が原作通りの行動を取れば、の話だけどな」

 ニヤリと口の端を吊り上げ、悪役っぽい笑みを浮かべる俺。

 そう、俺には原作知識がある。

 破滅フラグがどんなシチュエーション、どんなイベントなのかも全て知っている。

 ならば、そのすべてを回避していけばいい。


「最初の大きな破滅フラグは――一年後の魔法学園入学時だったな。それまでにフラグを回避するために必要な能力をすべて備えておこう。俺はこの世界ですべての破滅フラグを回避し、平穏な余生を最速で獲得する――転生RTAの始まりだ」

 よし、新たな人生での目標がはっきり決まったぞ。

 悪役貴族に転生したからって、俺は破滅なんてしない。


 絶対に破滅してたまるか。

 必ず幸せな人生を送ってみせるんだ――!

※新作です! 20分後に第2話を投稿します!


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ゲーム世界の凡人魔術師に転生した俺、50年の努力が報われ、二度目の転生で魔力9999になる。スローライフ志望だけど、気が付けば学園ハーレム無双展開をしています。


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