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Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter4〜Official match〜
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Manipulative human Magic side GALAMIYU

何事も、きっかけという魔法をかけられば、人間を操り人形に出来てしまう

「オールイン」


手持ちのチップを全て前に差し出し、そう宣言する。しかし、チップを差し出す手が震える。なんて愚かなことをしていると思われるだろう。俺だって馬鹿な行動だと思う。だが、ギャラリーと俺では結論は同じでも、その考えに至る過程は違うだろう。ギャラリーは、俺が自暴自棄になったやけくそ故の行動だとでも思っているのだろう。けれど、俺が俺を馬鹿だと思った理由は違う。それは、どうせ俺が勝つからだ。俺が勝ってしまえば、ご主人様にぐちゃぐちゃに踏み潰されるのだろう。だから手が震えているんだ。俺が勝っているなんて絶対の確証も無いのだから、震える必要だって無いのかもしれない。だけど、今までのご主人様と比較すれば、ご主人様が現在弱い手札であることは確かだろう。不正なんてしていない。俺にモニターが見えているわけがない。むしろ画面がずっと暗いままなせいで、壊れているのではないかと疑う程だ。俺の頭が飛び抜けて良いわけでも無い。ご主人様が分かりやすすぎるだけだ。


「……なるほど。では、ショーダウン!」


ヒガンの言葉でそれぞれ手にある2枚を場に公開する。まずコミュニティカードがスペードのK、クローバーの6、ダイヤのA、ダイヤの4、ハートの9。そして、ご主人様の手札はダイヤの6とスペードの7で6のワンペア。俺の手札はクローバーのKとハートのKでKのスリーオブアカインド。


つまり、俺の勝ちだ。ご主人様の賭けた分のチップ8000を自分の物にする。


「勝った……!!」


嬉しい、今すぐにでも飛び跳ねたい。笑みを抑えきれていない顔でそう思う。ついさっきまで何も見えなかったのに、新しく差し込んできたこの光は、淡白で冷たい世界をこの一瞬で色付けてくれた。

上を見て振り返れば、色をくれた彼女と視界がぶつかった。柄にもなく思い切り笑ってみれば、向こうも祝福の笑顔をくれた。

不思議だ。たった1回勝っただけで、まだ終わったわけではないのに、もう全てを勝ち取った気分になってしまう。だけど、その気分に浸るにはまだまだ早い。


「……ナーチェ・カナグラフ」


今にも殴り飛んできそうな彼女の名前を呼ぶ。いつも呼んでいたその人でも、呼び方が変われば別人を呼びつけているみたいだ。だが、それも間違いでは無いのかもしれない。同一人物でも、呼称が複数ある人は珍しく無いのだからそれは過言だろうか。いや、少なくとも俺にとっては事実だ。それは何故か。俺が変わるからだ。いつも綺麗な大理石を見てばかりだった頭を上げて、彼女の瞳を真っ直ぐに見据える。そんな俺を、ご主人様は怒りを最週章まで孕んだ顔で見ていた。もはや貴族がしていい顔では無い。それほど品位だの優雅だのといったものの欠片も感じられない。だけど、それに臆することだって、もうしない。


「俺は、あんたに勝つよ。絶対に」

「……ふざけるなよただのペット風情が!!!お前なんかなぁ、勝っても負けても行き着く先は結局死なんだよ!!いや、それ以上の地獄なんだよ!!お前がその気なら、あたしが直々に地獄に突き飛ばしてやる!!」

「ナーチェ、賭けの内容の途中変更は受け付けていないんだけど」

「黙れ!これはなぁ、賭けなんて関係ないんだよ。ただのペットへの処罰宣言なんだよ!!」


ヒガンのルール違反への忠告に対しても、台を殴り怒鳴りたてる。とてもポーカーなんて心理戦が出来る状態には見えない。


「……そう、分かった。なら続き始めるよ。結果はまだ決まってないんだから」


ヒガンの言葉に正気かと疑う。休戦した方がいいのではないだろうかとも思うが、既にやってしまっている。これからこうなる度に休戦となっては、試合がいつになっても終わらないだろう。


「あ、念の為もう1回言っておくんだけど、相手への暴力は禁止だからね」


それだけ言ってから、高くなった参加費を受け取って、ヒガンはカードをシャッフルして配り始めた。


配られた手札を確認すれば、スペードのAとスペードの4。上手くいけばフラッシュが狙えるかもしれない。


「プリフロップ。ガラミユ、宣言は?」

「…………」


今の俺のチップは先程獲得したばかりの8000に参加費を払ったため7000。そしてナーチェは11000。チップで圧をかける為に大きな数字でベットしてもいいんだろうが、この勝負においてそれは悪手だろう。何故なら、どうせ降りないからだ。そういうものをするメリットは、強い手札を持っているとブラフをかませることだ。しかし、この人は降りるくらいなら刺し違えても殺すと実行してくるから無意味という話になる。なにより俺の方がチップが少ない。


「コール」

「……チッ。コール」

「フロップ。コミュニティカード3枚ね」


そう言って出されたカードはダイヤのJ、スペードの2、ダイヤのQ。あと2枚スペードが出てくれれば勝てる。だけど仮にここを落としたとしても気にすることなんて無い。それで終わるわけじゃないんだから。


「ガラミユ、宣言は?」

「……レイズ」


チップを前に出し宣言する。ナーチェはまだ役が揃っていないんだろう。焦りが分かりやすく顔に描かれている。今までとは違ってひどく長考している。


「……フォールド」


屈辱を噛み締めた酷い形相で、確かにそう言った。


「勝者、ガラミユ!」


ヒガンが今日1番の声を張り上げそう宣言する。俺の勘違いかもしれないが、そういったものは思った者勝ちだ。だって、俺の勝ちなんだから。


「よし.....!!」


聞こえないように気をつけながら、机の下で小さく決意を今一度握りしめた。


大丈夫、いける、俺は勝てる。

これは少し後の未来で躓く為の伏線なんかじゃない。油断なんてしない、隙なんて見せない。未来なんて名前の扉は今は密閉してしまえ。俺が行くべき扉は、この瞬間、今この時なんだ。その後に、全部の扉の答え合わせをすればいい。でも、それも今ここで足を碎いては進めない。確かめることも出来ない。


だから──


「コール」

「オールイン」


絶対に勝ってやる!

何かを得たいのなら、その足は他でもない自分が動かさなければいけない

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