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Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter4〜Official match〜
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My mind keeps wandering side GALAMIYU

俺は運がいい。それは怖いくらい。だから怖い

手札が配られた。死ぬか、解放という名の新たな服従という最高の2手が俺を待っている。そんなこれからよりも今をと思い、1つ息を吐いて、配られた2枚を見る。

カードの手札はスペードの3とスペードのA。フラッシュは狙えそうな手札だが、これに賭ける程の価値があるだろうか。いやない。5枚中3枚がスペードで出てくれればいいけど、まだコミュニティカードは出ていない。そしてこういった手札で調子に乗れば大抵は破産する。


「ガラミユ、宣言は?」

「……コール」


相手の顔色を窺いながら宣言を告げ、チップを置く。この勝負で先手というのは戦いにくい。ただでさえ主人の前に居座る気分は最悪だ。それは後攻でもきっと変わらなかった。何故なら、ペットに似合うのは、前でも後ろでもなく、リードでも付けてワンと四つん這いにえんえんと鳴く地べただろう。


「ほぉ?ガラミユ、分かってるのか?コールということはずばり、主人であるこのあたしに勝負を挑むということだぞ?」

「……そう、だったんですね。俺は、バカなので……」


主人であるナーチェは俺を睨みつけ、黙ったままだ。怖い。間違った選択をしてしまっただろうか。やっぱり、降りるのが正しかったのだろうか。分からない目をきゅっと瞑ってしまうくらいには震えてしまっている。


「……くく、そうかそうか。いやそうだったな。コールだなんて、ただ適当に言っただけだもんなぁ?」

「そ、そうです!ご主人様程賢くないものですから」


冷や汗垂れる薄ら笑いを浮かべて適当にそう流しておく。覚悟だなんて決めたところで、そんな見えない掴めない概念は土壇場でひゅるりと巻いて消えていくのだ。


「ナーチェ、宣言は?」

「レイズだ。ひとまず2000くらいで頼もうか」

「……なるほど。両方の宣言が出揃った。プリフロップエンド。ということで、掛け金は中央に集めて、コミュニティカード3枚ね」


ヒガンが山札の中から、3枚場に置いていく。出てきたのは、ダイヤのK、ダイヤの3、ハートの3。そして俺の手札には3がある。よってスリーカードが完成した。強いわけではないが、戦えない手札というわけでもない。それに、ここからフルハウスを狙えるかもしれない。十分勝ち目はある。だから、何も問題は無いし、降りる理由なんて何も無いんだ。そう、むしろレイズしまくって脅すくらいが丁度いいんだ。


「フロップ。ガラミユ、宣言は?」

「え、あ、えと……」


どうすればいい。このまま勝負に出たら、俺は勝ってしまう。そんなの、ダメだ。俺が勝ってしまったら、ご主人様がレイズした分全部俺の取り分になってしまう。公式戦でそんな恥はかかせられない。


「……フォールド」

「……分かった。勝者ナーチェ!」


ヒガンの声に会場からぱちぱちと数えられる程度のやる気の無い拍手が聞こえてくる。見応えも何も無いのだから、仕方がない。


「んじゃ次ボタンはナーチェで、SBナーチェ、BBガラミユ。参加費払って」


ディーラーであるヒガンの言葉に従い、先程より少し大きい数字のチップを支払う。


「はい。んじゃプリフロップ。カード配るからちょっと待って」


再びシャッフルをして、カードを2枚づつ配ってくれる。嫌々確認すれば、クローバーの3とクローバーの5。良かった。これなら易々と勝負を降りられる。


「フォール」

「コールしろ、ガラミユ」

「……え?」


フォールドと言いかけた時、ご主人様に言葉を遮られた。ご主人様の顔を見れば、自信満々にテーブルに肘をついていた。きっと、勝てる最上の一手を授かったのだろう。カードは見なくとも、顔が眩しいくらいに自慢してくる。


「コール」

「ふふ、レイズ」


ポットは合計3000。俺が勝ったら、このポットを全部取れるが、今回は難しいだろう。ヒガンが場に3枚コミュニティカードを置いていく。置かれたのは、クローバーの2、クローバーの4、スペードのQ。


「宣言は?」


ご主人様の顔色を窺う。きっとご主人様は気持ちよく勝ちたいんだ。リバーまで持っていってレイズしまくって全部持っていきたいんだ。だから、俺の宣言は───


「ベット」

「レイズ」


にぃと余裕綽々の気持ち悪い笑みで俺をケタケタと嘲笑っている。こんな早々にリレイズだなんて、どれ程手札に自信があるんだ。お陰でご主人様はもう2000しか残っていない。


「それじゃチップ真ん中に集めてターン。コミュニティカード1枚」


ヒガンが山札から取り出したカードは、ダイヤの4。場でワンペアが揃った。


「ガラミユ、宣言は?」


俺はまだ役が揃っていないハイカードだ。このままいけば、負けてご主人様の大勝ちになるだろう。ここでフォールドすれば、また怒られてしまう。だから、ご主人様を立てて勝利をプレゼントしなければならない。


「ベット」

「コール」


2人とも大きくチップの変動は無かったが、俺とご主人様の差は一目瞭然だ。このまま順当にいけば、俺の勝利を確実に見えるだろう。だけど、それじゃ、駄目なんだ。ご主人様を目の前にすると、怖くて震えて仕方ない。


「んじゃリバー。ラストのコミュニティカードね」


そのカードが、俺の今までの行動が間違っていることを唱えてくる。カードはクローバーの6。これで俺の手はストレートフラッシュ、ポーカーで上から2番目に強い役になってしまった。よって、ご主人様が俺に勝つ、または引き分けとして同じ配分を得るには、同じストレートフラッシュを出すか、それより上のロイヤルフラッシュを出すしかない。果たしてそれだけの手を持っているのだろうか。いや、無い。コミュニティカードを見れば誰だってそんなこと分かってしまう。


「宣言は?」

「あ、えと……」


どうするのが正しいのだろうか。いや、そんなの決まってる。降りることだ。このままいけば、恐らく俺は勝つ。そしてこの莫大なポットを手に入れられて、ご主人様は窮地に立たせられる。最高のシナリオじゃないか。あわよくば勝ちを狙える。そうだ、俺はここに勝ちにきたんだ。


「……ベット」

「コール。ガラミユ、随分悩んでいたようだが、何かあったのか?」

「い、いえ!なんでも……。なんでも、ありません」

「そうか。本当、お前はよく出来たペットだったな。処分するのが惜しくなってくるなぁ」


随分とご機嫌だが、それも仕方ないだろう。俺とご主人様のチップに空いている差を勝ち金で覆せたのなら、会場は盛り上がるかもしれないし、ご主人様の評価は改められるだろう。少なくとも、この2週間のようにはならないはずだ。


「リバーエンド。さて、それじゃ準備はいい?」


ヒガンの声に頷く。ご主人様も笑顔で頷く。それを見たヒガンが、続けて声を張り上げる。


「ショーダウン!」


手札を互いに公開する。俺はクローバーの3と5でストレートフラッシュ。ご主人様はダイヤのAとハートのAでツーペア。俺の勝ちだ。


……俺の勝ち?


何で、降りなかったんだろう。選択を、間違えてしまった。覚悟なんて所詮見かけを化粧してくれるただの飾りなんだ。最初からそんな大それたもの、俺は持っていなかったし、持てていなかったんだ。それじゃ、なんで、降りなかったんだ。勝つのは分かっていたじゃないか。


そんなの、決まっている。覚悟とか勇気なんてヒーローに相応しい言葉はおれには似合わない。


それでは何故か。


俺がペットとしての心じゃなく、人間としての心で、勝ちたいと、強く願ってしまっているからだ。

あぁ、最悪だ。あの時出会ってなければ、そのままでいれたのに

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