Second admission
騙すなら最後まで騙しきれ、決して化けの皮を剥がしてはならない
惑わすならば惑わされるな、丸め込まれる馬鹿になってはいけない
自分の心すら殺せ、そんなもの俺の人生に邪魔だ。同情の模造品であり続けろ
「なぁ、君はボクのことをどれくらい知っているんだい?」
ヴィアの家に向かう道中、そんなことを聞かれた。そういえばと思い、ヴィアとのこれまでを振り返るが、思った以上に過去話しかしてない気がする。あとよくよく考えたら、ヴィアってもしかしたら俺のことが好きだったのでは無いかという勘違い。
「うーん、そうですね。情報を共有する為に、ヴィアの目的は教えて頂きましたよ。他にも、富裕層やFemalePalaceについて教えて頂いたりして、まるで頼もしいガイドのようでした」
「そうかい。ところで、何で急に声変わったんだい?まだFemalePalaceには入っていないし、そんな警戒しなくても良いと思うのだけれど」
「ヴィアは富裕層というものを甘く見すぎですわ。ここにはどこにどんな目や耳があるのか分かったものではありません」
「まぁ、ビリビリとはしてるけれど、流石にそこまでのことではないぞ……」
呆れられながらも、うだうだと世間話をしながら歩を進めることが出来た。お陰で壁がある程度薄くなってくれた気がする。
「えーっと、あぁこれだ」
しばしの間放置されまくっていた投函物の中から招待状を見つけ出し、残りの封筒やらなんやら類を再びポストに戻す。
「え、なんで戻すんですか。ぱぱっと運んできていいんですよ?」
「めんどくさいに決まってるからだろう。帰ったらまた整理するさ。さて、そんなことよりさっさと行こうか。ガラミユとも話したいことだしね」
「そうですね」
足を再び人の多い方向へと向け、ストーンエブリシェへと向かっていく。距離感が縮まってくれたお陰で、話を振るのもある程度抵抗が消えてきた。この分なら、そうびくびくと怯える必要も無いだろう。
「コードネーム真理。城への入門許可を頂戴する」
ストーンエブリシェの受付嬢に、招待状を見せながらそう告げる。受付嬢は封筒の中身を確認し、問題無いと頷いた後、地下への入口を開けた。ヴィアがこちらを振り返ったのを見て、俺も同じ言葉を彼女に告げる。
「コードネーム欺瞞。城への入門許可を頂戴する」
「……良いでしょう。どうぞお通り下さい」
ヴィアの時と同じように招待状を確認した受付嬢は、地下への入口を指した。彼女に感謝の言葉を告げ、ヴィアと一緒に階段を降りていく。
「そういえば、記憶を消去される理由って、情報漏洩を防ぐとかでしたわねよね?私と一緒に居て問題ないのでしょうか?」
「それならば問題は無い。意外と招待後も一緒に行動している貴族というのは多数居るからね」
「へぇ。それでは、記憶消す意味なんてあるのでしょうか」
「……さぁ。トレディ様がそうと決めたならば、そうなんだろう」
「……えぇ、そうですね」
トレディ様、ね。以前の彼女ならば、トレディのことは呼び捨てで呼んでいたはずだ。やっぱり弄られているじゃないか。
そう思いながら1歩足を踏み入れた城は、前回来た時より少しくすんで見えた。いや、前回がおかしかっただけで、十分絢爛さは健在ではあるのだが、人の少なさだろうか、あまり盛り上がっているようには見えない。
「なんだか地味ですね……」
「ほう、これを地味と言えるとは、君も大分貴族として染まってきたらしい」
「前回に比べたら、という意味です。今回は、大分人が少ないですね」
「そうだね。まぁでも、仕方が無いといえば仕方がない。公式戦に関しては強制参加では無いから、出場者や開く人によって参加するかどうかを決める者が多い。そして、今回はペットの奴隷脱却に、主催者はNo.4のヒガン様と聞いている。奴隷脱却に関しては、主人の勝利が確定しているから、見に来ようとする人も少ないんだ」
「え、どうしてですか?勝負は勝負。どちらかの勝利が事前に決まっているわけ無いじゃないですか。奴隷脱却だなんてロマン、見に来ない方が勿体ないです」
俺の言葉に、ヴィアは呆れたといったように眉を八の字に寄せた。そんなにおかしなことを言っただろうか。
「あのねぇ、ここには女しか居ないんだぞ。ペットが主人に勝ったら、主人だけじゃなくてあらゆる方面から支離滅裂な罵倒だの暴力だのが飛んでくるんだよ?勝ったら脱却とはいえ恨まれないわけでも、危害を加えられないわけでも無いんだからさ」
「へぇ、なるほど。奴隷脱却というのも大変ですね。では、それならガラミユの勝率は無いのでは?」
「そうだね。普通ならそうだ。だけど、ボクは彼が勝つと思うよ」
「へぇ。それは何故ですか?ガラミユはそのことを知らないほど、馬鹿では無いかと思えますが」
「あぁ。だが、勝つことを恐れるほど意気地無しでもないだろう」
「まぁ、それはそうでしょうけど」
だけど、度胸だの勇気だの主人公補正が付いているとも思えない。勝てる一手を手に入れたところで、それをドブに捨てかねない。あぁ、奴隷脱却が出来ないというのはそういうことか。
「はぁ。ペットというのも大変なのですね」
「そうだね。さて、開戦前でブルブル緊張しているであろうガラミユに会いにいくとしようか」
「ふふ、そうですね。でもどこに居るかはご存知なんですか?」
「あぁ、控え室にでも居るだろう。行くぞ」
さっさと歩いていってしまうヴィアのあとを追い、1階の控え室とやらに向かっていく。そういえば、ヒガンの方も大丈夫だろうか。
前回書き忘れたのですが、フタバ先生はライくんが暇を持て余していた期間、ずっとヴィアとお話してました。ヴィアの信用度が上がったと同時に、ベルからの嫉妬メーターもぐんぐん上がってました。押して引いても何も意味無かったベルちゃん。でも休暇みたいな期間を過ごしたお陰で、ヴィアの余裕は回復しました




