Everyday life is a little bit
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
「てか冷静に考えて、あの女誰?」
「え?なんすか急に」
久々の再開を祝おうと、なんかあった冷凍ピザでお昼の腹を満たそうというところに、そんなことを言われた。思わず1回冷凍庫にピザをしまってしまう。
「ピザはさっさとオーブンでチンして。ってそうじゃない。あのミナヒとかいう女」
「あぁ、ミナヒっすか。そういやアイツ女だったっすね〜。かっこよすぎて忘れてやした」
ピザをオーブンに入れ、適当に7分くらいのところに回して温める。冷凍だし、余熱もしなくていいだろう。よく分かんないし。
「こういうセリフ言っても信用出来ねぇと思いやすが、ミナヒとは本当に何も無ぇっすよ。寧ろ、子供の頃からずっと一緒に居すぎて、今更恋愛的に見んのはキチィっす。俺にとってミナヒは、頼りになる姉みてぇな存在っすよ」
「ふーん。そうなんだ」
納得いったのかいってないのかよく分からない声色で、ホットココアを飲んでいる。
「……なら、今はそういうことにしとく」
「あ、ミナヒには言わねぇでくだせぇよ。めんどくさいんで」
「分かった」
「そりゃどーも。あ、他になんか食べやすか?ポテトとか唐揚げとかありやすけど」
「ファストフードじゃん。そんな食べれない。ポテト大盛りでお願い」
「食べるんすか」
「いっぱい食べる女の子は可愛いって聞いたことある」
「はいはい、そうっすね〜。可愛い可愛い」
「雑。褒めるならもっとちゃんと褒めて」
めんどくさい、なんて言ったら四肢まるごと切断されそう。それに、恋人はこのくらいめんどくさい方がかわ、いくない。第一恋人じゃない。俺の脳みそはバクってるのだろうか。
「ヒガン、ヒガンって俺の事好きっすかー?」
何も考えずに適当に口を開けば、そんなことが出てくる。思わず口を手で塞いでしまうが、既に手遅れだ。
「え!?え、あ、えぇ……。す、好きだよ」
頬を真っ赤にしながらも、そう言ってくれる。嬉しくもあり複雑でもある。嫌われたいのに好きと言われたら舞い上がる。いい加減勘弁して欲しい。
「……まだ俺のこと好きなんすね」
「ライが好きでいさせるって言ったんじゃん」
「でも、好きだって言ってるのはヒガンじゃねぇっすか」
「違う。ライがそうさせるんだよ」
「はいはいそうっすね。俺がかっこよすぎるからつい考えちゃうんすよね〜?」
「……そうだよ。分かってるなら言わないで」
「はぁ。そういう正直なの、辞めた方がいいっすよ」
「ライにしかやらない」
余計にダメだ。他でもダメだし、俺でもダメだ。多少は隠してほしい。
ピー、ピー
頭を抱えていれば、オーブンの中でこんがりと焼けたピザが沈黙を破ってくれた。
「あ、出来たみたいっすね。飯にしやしょうか」
「うん」
「てかポテトは食べるんすか?」
「食べる」
「はいはい」
大盛りと言われたため、袋に入っていた分いっぱいを皿に乗せ、レンジに突っ込み、適当にダイヤルを6分くらいに回す。
「とりあえず、ピザはここ置いとくっすよ」
ピザを運びながらキッチンを出て、テーブルの上にピザを置く。
「……なんか、あんまり大きくない」
「冷凍っすから仕方ねぇっすよ。文句言うなら食べなくていいっすよ〜」
「た、食べる!でも今はポテト待ち」
「そうっすか」
俺の仕事も一段落したため、ヒガンの向かいの椅子に座る。
「そういやヒガン、公式戦の準備はもう大丈夫なんすか?」
「え?うん。自分の仕事はもう終わり。あとは黒服達が招待状を配り終えたら、事前準備は終了。でも、審判もやるって言っちゃったから、当日になったらまた忙しくなるけど」
「大変っすねぇ。受けたの後悔してやすか?」
「うーん。大変だけど、後悔とかはあんま無いかも。……あの時、自分はただムカついただけだと思ってたけど、でも、それだけなのかなって、ずっともやもやしてた。だから、この準備期間、ずっと考えてた」
「答えは出たんすか?」
「一応。多分、ライが庇ったガラミユを、自分も助けたいと思った、んだと思う」
「曖昧っすねぇ」
「うん。あと、変わりたいと思ってるように見えたから、かな」
「変わりたい?」
意外な言葉が飛び出してきたことに少し驚く。ヒガンにはガラミユがそんな風に見えていたのだろうか。
「うん。自分はあの子のこと何も知らないけど、なんとなく、そう思った。でも、この準備期間、ガラミユとも話したんだけど、それは正しかった」
正しかった、ガラミユが変わりたいと願うことが。あの日、ただ俯いてばかりの彼がそう思える程の進化を遂げるとは、大したものだ。
「ガラミユ、ライとヴィアに感謝してるって言ってた。2人が居なかったら、きっとこうは思えなかったって、言ってた」
「……多分それ、話したってバレたら怒られるやつっすよ。ミユちゃん、恥ずかしがり屋っすから」
「そうだったんだ。んじゃバレないように気をつけて」
「こっちが気をつける側なんすね。まぁいいっすけど」
にしても、ヒガンとガラミユが話すことがあったこと事態がなんだか面白い話だ。
「ふふ」
「え、なに、なんで笑ったの?」
「なんか面白いなーって思っただけっすよ」
チーン
電子レンジの時間が0になった音だ。どうやらもう6分経っていたらしい。
「あ、出来やしたね。ちょっと待っててくだせぇ。すぐ持ってくるんで」
席を立ち、キッチンへと駆け込んでいく。熱くなったほかほかのポテトをテーブルに運ぶ。
「はい、どーぞ。それじゃ、お腹も空いたところで、食べやしょうか」
「うん。いただきます」
「……いただきます」
いつぶりに食事の手を合わせただろうか。そういえば、ずっとずっと前は、そうやって食卓を囲むのが当たり前だった。
「んー、冷食って感じの味」
「文句言うなら食べなくていいっすよー」
「もう食べてるから食べるー。ライこそ、早く食べないと無くなるよ」
「食べてるっすよ。ヒガンこそ、これ全部食べる腹があるんすか?」
「ちょっと、女の子に対して失礼だと思わない?」
「いっぱい食べる女の子は可愛いって言ったのはそっちっすよ」
ピザを一切れ頬張れば、美味しいと過剰評価も出来ず、不味いというわけでもないマルゲリータって感じの味がした。
「なんか普通っすね」
「あ、ライも文句言ってる」
「文句じゃねぇっすよ、感想っすよ」
「んじゃさっき自分が言ったのも感想じゃん」
「はいはいそうっすね〜」
「雑」
と言いながらもピザとポテトをもぐもぐと頬張っていき、たわいもない会話を交わしながら完食していった。
「ご馳走様。偶にはいいね、こういう油っぽいの。ここ最近ずっと高級なのばっか食べてたから新鮮に感じちゃった」
「へぇ。流石FemalePalaceっすねぇ」
「そうだね。あ、それよりさ、ライ」
「なんすか?片付けなら俺がやるからいいっすよ」
「違う。そんなことじゃない」
頬を膨らませ何故か拗ねている。なんだ、何が言いたいんだ。
「今、2人っきりなんだよ?」
「え?あぁ、そうっすね。俺の家で2人っきりっすね」
「そう。だから、その。何かしないの?」
「は?」
何か、何か?俺がヒガンに?事案だろ。皿をかたづけようと立ち上がった足が思わず固まってしまう。
「男の人って、自分の家に女の子呼んだら、そういう雰囲気に持ち出したがるでしょ?」
「それは、女なら誰でもいい節操の無いイキリ勘違い野郎がやることっすよ」
「ライは違うの?」
「違ぇっすよ!そんな奴らと一緒にしないでくれやせんか?……てか、それ以前に、ヒガンは大切にしたいんすよ」
「へ?」
「だから、あんまり自分の体を危険に晒すようなことは言わねぇでくだせぇよ」
「ライにしか言わない」
「だーめ。俺も男なんすから」
「知ってる。だから、言ってるんだよ」
年頃の女みたいなことを言われても、俺はヒガンを抱けない。それで終わって、ぷつりと切れてしまうんじゃないかと、不安になる。
「……だからダメなんすよ」
「ライは、自分に興味が無い?」
「そういう話じゃねぇっすよ。皿片付けるんで、少し待っててくだせぇ」
食べ物が空になった皿をまとめてシンクの方に運び、全て洗う。その間、ヒガンは大人しく紅茶を啜りながら座っていた。
「終わったっすよー。んじゃ行きやしょうか」
「どこに?」
「貧民街の散歩っすよ。家に居ても暇なだけだし、気晴らしに歩きやせんか?」
「行く」
ヒガンの即答を聞いて、2人一緒に家を出た。なんか、こんなゆっくりと散歩出来るの、久々だな。
序盤の方に言っていましたが、この世界、元の世界とあまり食生活は変わりません。理由は明確には分かっていませんが、でも味はちょっとだけ濃いです。




