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Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter 3〜Take a leisurely break〜
35/58

Replenishment of sweets.side MINAHI

ライとよく分からん女を追い出し、ソファに座り、足を組む。向かい側に座るジレミを見れば、顔を伏せ、申し訳なさそうにしている。


「はぁ、それで。何をどう爆発させて女を殴ったんだ?」

「いや、爆発……はしたか。いやでも殴っ……たか」

「なんだそのあがりさがりするテンションは。めんどくさいな」

「いや、だって、ミナヒさん、怒ってるでしょ?」

「別に。あんな富裕層の女がどうなろうと知ったこっちゃねぇ。てか問題はそこじゃないだろ。何で女を殴るまでに至ったんだ?」


あたしの言葉に、ジレミは言葉を探すように目線を泳がせている。


「……俺が行った頃には、既に死体と彼女しか居なかったんです。だから、何個か質問をしたんだけど、答える前にあの子が逃げちゃったから、捕まえる為に戦ってたって感じ」

「へぇ。お前が手こずるなんて珍しいな」

「だって平気でぴょんぴょん跳ねるし姿も消すし、もう場所当てゲームみたいな感じですよ。めちゃくちゃ逃げ回るから大変でしたよ」


その逃げ回るのを追いかけることが問題な気がするが、本人にとってはレンジャーの務めなのかもしれないが、追いかけられる側は、とんでもなく怖いんだろう。まぁ、あの無頓着女に恐怖なんてものがあれば、の話だが。


「追いかけ回す変態みたいなお前が悪いんじゃないか?」

「変態?俺が?」

「女好きな時点で大分手遅れな変態だぞ」

「酷い!辛辣!でも、この世界の男が女の子に興味ないのがおかいしんだって!」

「女なら誰でもいいなんて、命知らずの思うことだぞ」


こいつは突然訳分からないことを言う。何でそう思うのか以前聞いたら、雑にはぐらかされた。


「はぁ。富裕層とか貧民街とか、無くしちゃえばいいのに」

「トレディがいる限り無理だろうな。てか、なんであたしらこんな話してんだ」

「知らなーい。ミナヒさんが始めたんじゃないんですか?」

「お前だろ。てか、完全に脱線しちゃったな……」


なんか事件が起こったみたいな雰囲気が出てたから何事かと思えば別になんでもないらしい。ここから話を元に戻すのもめんどくさいし、ライがあの女から色々聞き出せていることだろう。


「よし、んじゃ話終わり。やっぱあたしにはこういうの向いてないわ」


パン、と1つ手を叩きソファから立ち上がり、入口の方に移動する。


「え、どっか行くんですか?」

「適当にぶらつくだけ。ついてくるか?」

「え〜、従業員が職場空けていいんですか〜?」

「ボスも居るからいいんだよ。行くんなら着いてこい」

「はーい!」


犬みたいに返事をして、大人しく着いてくる。



目的地に向かって適当に貧民街をぶらつく。以前は道を歩いていただけで、誰かに絡まれていたが、今ではそういったのもめっきり無くなった。女を怖がるとは馬鹿らしい愚かな男共だ。路地裏からこっそりこちらを窺うことしか出来ない。


「物騒だな。ああいうのを全員ばっ!とやれたら楽なんですけどね〜」

「黙れよ自称セコム。あそこ行くぞ」

「それをミナヒさんが言っちゃ公認じゃないですか!?え?俺お姉様の専属ボディーガード!?」

「うるっせぇな。あたしはあんたの姉じゃねーっつってんだろ」


チョップをかましながらも、ジレミの相変わらずよく分からない話を無視する。こいつは出会った時の頃、あたしを何故かお姉様と呼びたがる。寒気が走るから意地で訂正させた。それでも偶にお姉様と呼んできやがる。


目的地へと着き、足を止める。


「着いたな」

「ミナヒさん、意外とお菓子好きですよね」


着いたのは駄菓子屋だ。


「安くて手軽で食べやすい。コスパが良いってだけだ」


本当はフタバのところからとってこれれば良かったのだが、あそこにはでかいスナック菓子しかないから、こういった小ぶりなものは自分で買い足さなくちゃいけない。


「ジレミもなんか買うのか?」

「え?奢ってくれるんですか?」

「一言もいってないけど」

「いやぁ、流石お姉様。でもここは俺に任せてください!お姉様の分も全部俺が奢りますから」

「あっそ。それじゃ……」


あれとこれ、それとあれも。それからあっちのものも。そうやってジレミの手いっぱいにお菓子を持たせれば、溢れそう、というか既にぽろぽろと落ち始めているお菓子達もいる。


「あの、ミナヒさん?買いすぎじゃないです?」

「あ?こういうのは買い貯めておくもんなんだよ。一々買いに来るのめんどいだろ。ここちょっと遠いし」


落ちてきていたお菓子を拾い、それをレジに持っていく。


「ほら、あんたが持ってんのもさっさと乗せろ。まとめて買う」

「え!?いやいやいや!俺が奢りますって!」

「ガキに払ってもらうほど懐は寒くないんだよ。いいから、お前も欲しいのさっさと取ってこい。……おっちゃん、ひとまずこれだけ会計させてくれ。途中から増えるだろうけど、それも一緒に会計で大丈夫だから」

「はいはい。2人はいつも仲が良いね。噂はよく聞いてるよ。確か、ミナヒが稽古を付けてるんだっけ?」

「あん?どこでんな噂流れてんだ。ジレミは、あたしが稽古するまでもなく、十分強いんだよ」


そう、ジレミはあたしやライ以上に強い。貴族達のトレビアや能力とはまた違う別の力を使う。本人は神様から授かっちゃった、みたいなことを言っていたが、事実は分からない。何が目的なのかも、いまいちよく分からない。

純粋にお菓子を選ぶジレミにすら、警戒心を向けてしまう。


「へえ〜。ミナヒがそこまで褒めるの珍しいねぇ。ライのことは普段悪いようにしか言わないのに」

「あれはあいつが弱すぎるだけだ。けど、今はやっとマシになったくらいだな」

「お、ようやく褒めたね」

「褒めてない。褒めるラインにすらいってない。ギリギリ妥協して囮には出来るくらいだ」

「囮なんて物騒だな〜。もっと平和的にいこうよ」

「はっ、こんなとこに平和なんてもんないだろ」


貧民街はずっと物騒だ。いつも誰かが殴りあっては誰かが傷ついている。その中には決意を見せた者ばかりでは無い。何も関係ない被害者だっている。あたしだって、かつてはそうだった。いや、あたしは少し例外だろうか。


「そんな事ない。少なくとも、今は俺の知ってる中では1番の平和だ。君達が守ってくれているお陰でね。老人の暮らしやすい社会になったよ」


開くことのなく眠っているように瞑っている目からは何も感じられない。ただ、男にしてはまつ毛が長いなぁ、くらい。そもそも、老人というには外見が若すぎる。今更だが。


「遅くなってすみません!お菓子取ってきましたよ。でもやっぱ、自分の分は自分で……って、なんすか、この空気。なんかあったんですか?」

「ジレミは頼りになるね、って話してたんだ。ねぇ、ミナヒ」

「……別に。お前はむかつくくらい強いなって話だ」

「え、えぇ?褒めすぎだってぇ……。えへ、えへへ」


気持ち悪いくらいに口角があがりにやついているジレミの手からお菓子を強奪し、まとめて会計する。


「はい、これ一緒に会計して」

「はいはい。……えーっと、それじゃミナヒの分も合わせて、120メニラね」

「平和守護者に対して割引とか無いのか?」

「ミナヒさん、多分それ、してもらう側が言うことじゃないです」

「別に120メニラくらい、いいじゃないか。金持ってるんでしょ?」

「チッ、クソが。……はい、これでいいだろ?」


財布から120メニラきっちりと出し、会計を済ませる。おっちゃんはしっかりと120メニラ揃っていることを確認し、その金をしまった。


「はい。しっかり120メニラ受け取ったよ。それじゃ、今袋に入れてあげるから、少し待っててね」


おっちゃんが袋に入れてくれてる間、ジレミに肩をとんとん、と叩かれた。


「ん?なんだよ」

「あの、事務所で話してた件、冷静になって考えたら、攻撃した俺が悪かったです。てか、女の子相手に暴力とか、普通に最低でした……」

「あんたさ、よく男だから、女だからって言ってるけど、それってそんなに大事か?」

「え?」

「女を殴ったら最低なら、男を殴ったら?それも最低になんのか?」

「それは……」

「例えだけどさ、どんなに悪いことをした女を殴っても、お前はそんな風に謝るのか?」

「……分かりません。その人が、どんだけ綺麗か分からないから」


回答にため息しか出てこない。そういうことを聞きたいんじゃない。何で綺麗かそうじゃないかで図ろうとしてるんだ。それ自体がおかしな話だ。


「あたしが聞きたいのはそうじゃなくて……」

「はい、詰め終わったよ」


言葉を開きかけたところで、おっちゃんが袋に詰めてくれたお菓子を差し出してきた。仕方なくそれを受け取り、さっさと店を出ていく。ジレミもバタバタとあとを着いてきたのを見て、言葉の続きを外に吐き出す。


「お前さ、顔がめちゃくちゃ綺麗な殺人犯捕まえたら逃がすのか?」

「え!?えぇ?その前に口説いて、お持ち帰り出来るならぁ……。へへ、へへ」


涎を垂らし、気持ち悪い笑みでを浮かべられる。何を考えてるのか想像なんてしたくない。


「……お前、そういう基準で物事を見てるんなら、いつか痛い目見るぞ」

「大丈夫ですよ!俺は最強なので。ミナヒさんも言ってたじゃないですか、俺は強いって」


確かに言った。コイツは不気味なくらいに強い。こいつの住んでいるところも、昔は霊がわんさか居たのに、今じゃすっかり落ち着いている。といっても、悪さをしていないだけで、まだかなりの奴が残っているけど。でも、隙を見て殺そうなんてしたら、返り討ちに遭うだろう。


「……そういうのがよくないんだよ。おら、荷物持ち。さっさと帰るぞ」


お菓子をジレミに押し付け、さっさと前を歩いていく。こんな危なかっしい奴を歩かせることが間違っているのかもしれない。だけど、楽しい時期を大人が割って邪魔するべきじゃない。それに、本当に手遅れなことになったのなら、そんな時くらいは、本気を出しても良いのかもしれない。

ジレミがミナヒお姉様って呼ぶせいで、私もミナヒのことをお姉様って呼びそうです。いっそ皆で呼んで1回殴られようか……

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