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Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter 3〜Take a leisurely break〜
34/58

Reopening is tumultuous

嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す

これまでもこれからも、俺の人生は変わらない


目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる


俺だって普通に生きられると、証明してやる

あれから2週間程経過したくらいだろうか。FemalePalaceから何か言われることもなく、誰かから呼び出しをくらうでもなく、何事も起こることなく時間が流れていった。そろそろ何か起こってもおかしくないと思うのだが、公式戦の準備というのはそんなに大変なものなのだろうか。


「はぁ……。暇っすねぇ……」

「なら依頼の1つでもこなしたらどうだ?」

「最近全然来ねぇじゃねぇっすか。脅してもぎ取ってこいとでも言うんすか?」

「そんなこと誰も言ってないぞ」


ミナヒと応接室で客を待っても、待ち人はいつまで経っても誰も表れない。


「まぁ、そんなに暇なら、ジレミの手伝いにでも行ってみたらどうだ?」

「ジレミィ?何で俺があの女たらしの手伝いなんてしなくちゃいけねぇんすか」

「いいだろ。同じ女たらし同士、お前ら結構仲良いんだろ?」

「良くねぇっすよ!大体、俺は戦闘は専門外っす!それに、ジレミとはあんま話した事ないんすよ」

「話したこと無いから何だ?お前の専門は口だろ?話した事ないから気まずくてやだ、なんて言うんなら、今日はもう帰っていいぞ」


言い方に棘があって腹立つ。別に、この女に言われたからじゃない。ただ、仕事が無いから向かうだけだ。


「行くんだな」

「ミナヒが行けって言ったんじゃないっすか」

「あたしはただ、どうだ?って提案しただけだ」

「はいはいそうっすね〜」


適当に返事をして、そのまま事務所を後にする。


向かうのはレンジャー局だ。といっても、あまり大きいものでは無いし、場所もジレミの住んでいる家だ。土地を買う金が無いだの言いながら、ここ数年ずっと自分の家が仕事場だ。しかもこの貧民街に一軒屋なんて豪華なものは建っていないため、アパートの一室で経営している。まぁ、他に誰も住んでいないいわくつきの物件だから、あんまり問題は無い。あるとすれば、住んでる本人が霊の存在を認識しているのかいないのかよく分からないところだ。まぁ、殴れてはいるらしいから大丈夫なんだろう。



「ジレミー、居るっすかー?」


3階1番手前、301号室の扉をノックして、そう声をかける。しかし、暫く待っても中からは何の反応も無い。もしかしたらと思い、ドアノブを回してみるが、ちゃんと鍵が掛かっていた。どうやら外出しているらしい。このままこんなところで待ちぼうけしていても仕方がない。他にやることも無いし、ジレミを探しに行こう。



とはいっても、どうしたものか。俺は別にジレミと仲良しというわけでも無いし、何処にいるのか見当もつかない。まぁ、定期的にパトロールに行っているみたいだし、歩いていたら偶然ばったり会えるだろう。


呑気にふわぁ、と欠伸をかまし、適当に歩く。だが、その足はどこかから響いた騒音と土煙、吹っ飛んできた人によって止まった。


「は、ちょ、な、何の騒ぎっすか?」


音の発生源へと向かおうとするが、それは顔すれすれに投げられた小刀によって阻止された。投げた奴の顔を見てやろうと思えば、煙の中からうっすらと人影が現れてくる。それは輪郭を付け、徐々に色を付ける。それは、俺の知っている、というか探していた人物だった。


「じ、ジレミ?」

「いったいんだけど……?」


後ろから瓦礫が崩れる音と、聞き覚えのある声が聞こえてくる。そんなはずないと思いながらも、ゆっくりと振り返る。


そこには、先程吹っ飛ばされたヒガンの姿があった。位置的に、恐らく犯人はジレミだろう。


「ライじゃん。ねぇ、白髪の女の子知らな……って

いたー!大人しく勘弁しろ!!」

「誰がするか。しつこいストーカー野郎にする勘弁なんかない」


何があったのかは分からないが、2人とも殴り合っていたのだろう。互いにボロボロになっている。


「ちょちょ、何があったのかは知りやせんけど、一旦待ってくだせぇよ。この女の子、俺の知り合いなんすよ」


庇うようにヒガンの前に立つ。それでジレミは多少態度を改めてくれたらしく、手を下ろしてくれる。それでも渋々という態度は目に見えて分かる。


「……分かった。それじゃ、少し話し合おう。ライの事務所でいい?」

「何でっすか。近いからいいっすけど」

「よし決まりだ。そこの女の子もそれでいい?」

「……まぁ、いいけど」


不服そうにヒガンはそう返しながらも、大人しく付いてきてくれた。



「んで?何が起こったわけ?」


事務所に帰れば、出発時と変わらずに暇そうにしているミナヒがソファで寛いでいた。


「俺も知らねぇっすよ。てか、そこ座りたいんでちゃんと座るかどくかしてくれねぇっすか?」

「はいはい。あたし立つからあんた座っていいぞ」

「マジっすか。どうも〜」


ミナヒに譲られたソファに座る。


「あぁ、2人はそっちのソファ座ってくだせぇ」

「え、こんな奴と隣に座るの?嫌なんだけど」

「酷いなぁ。俺は女の子なら皆大好きなんだけど」

「キモ。そっちから殴ってきてよく言う」

「先に殴ってたのは君だろう?」


喧嘩が始まってしまった。そんなどうしようもない諍いにイライラしてきたのだろう。ミナヒが2人をソファに無理矢理座らせた。


「ちょ、何すんの」

「何すんのはこっちのセリフだ。いいから何が起こったか説明しろ。まず先に殴ったのはどっちなんだ?」


ミナヒの言葉に、2人は互いの顔を見合わせ、お互いそれぞれを指さした。


「んじゃ質問を変えやしょうか。何が起こったのかを説明してくだせぇよ。何でヒガンが吹っ飛んできたんすか?」

「それは、この子が貧民街の住民を無差別に殺していたからだ。あんなの、許されていいものじゃない」

「別に無差別に殺してなんかない。自分はただ、あいつらに目をつけられたから、危ない目に遭う前に自衛したってだけ」

「だからって殺すまでしなくていいだろう?それに、さっきは全然話してくれなかったじゃないか」

「会ったばかりの信用ならない奴にあれこれ話したくない。今はライが居るから仕方なく話してるだけ。大体、話さないだけで殴ってくるそっちがおかしい」

「いやいや、富裕層から逃げてきた危険人物かもしれないでしょ?そりゃ警戒するよ」

「だからって初手不意打ちで殴らないでくれる?警戒の域を超えている」


また始まってしまった。若者は何故こうもすぐ喧嘩したがるのだ。


「だー、もういいもういい。あんたら2人居たら喧嘩にしかならん。おいジレミ、あんたはあたしと残れ。ライ、お前はそこの女連れて家で話してこい。そっちのが合理的で時間もかかんないだろ」

「分かりやした。それじゃ、ヒガン。行きやしょうか」

「……分かった」


ヒガンは納得いってなさそうにも見えるが、なんとか要求に応じてくれる。彼女の承諾を見て、俺もソファを立ち、ヒガンの手を取った。


「それじゃ、ミナヒ。また後で」

「んー」



事務所を出てから真っ直ぐに、ミナヒと一緒に自分の家へと向かった。短い道のりの中に特に会話は無かったが、繋いでいる手から感じる彼女の温もりだけで十分だった。



「どうぞ。入ってくだせぇ」

「お、お邪魔します……」


恭しくも会釈程度に頭を下げ、玄関を跨いでいく。


「意外と綺麗にしてる……」

「そんな汚いの想像してたんすか?」

「いや、まぁ、うん。頓着無さそうだなって」

「正直っすねぇ。まぁ、頓着はねぇっすね。だから置くもんも無いんすよ」

「へぇ……」


じろじろと部屋を見られるのはあまり落ち着かない。


「……とりあえず、座ってくだせぇ。さっきの件について話しやしょう」

「……話したら、ハグくらいしてくれる?」

「は?」


何を言われたのかよく分からなかった。まさか、これだけ離れて俺のことが忘れられないということだろうか。


「……いいっすよ、そんくらいなら。だから、最初っから話してくだせぇ。まず、何で貧民街にいるんすか?」


俺の承諾を受け取ってようやく椅子に座ってくれた。それから質問にも答えてくれる。


「公式戦の準備がようやく落ち着いてきたから、ライに会いに来た。でも、迷子になって、袋小路に入っちゃった。そこでよく分からない男、10人に襲われたから、返り討ちにした。そしたら、あのジレミとかいう男が来た」

「それで?何聞かれたんすか?」

「ここで何してるんだ?この人達は君がやったのか?富裕層の人?この3つ」

「なんて答えたんすか?」

「逃げた。そしたら向こうも追いかけてきて、攻撃してきた」

「……なるほど。それで、殴り合いになって、吹っ飛ばされたんすね?」

「そういうこと」


先程事務所で話した時の断片的な情報では、ジレミが悪いと思っていたが、どうやらヒガンにもかなり非があるらしい。


「はぁ……。それは、殴ってきたジレミも悪ぃっすけど、ヒガンにも問題があるっすよ」

「何で?やられる前に逃げただけ」

「その心意気は十分っすけど、被害妄想が激しすぎるんすよ、多分。ジレミはレンジャーで、貧民街の秩序を気にしてるんすよ。だから、何でこんな状況なのか、ヒガンが何者なのか知りたくて質問をしたんすよ。それなのに、話を聞かずに逃げるなんてしちゃ駄目っす。貧民街にはああいう輩が多いっすから、迷子になって絡まれてたってちゃんと話せば、向こうも理解してくれてやしたよ」

「……でも、殴ってきた」

「それはジレミが悪ぃっす。でも、そうなった原因は、 話さなかったヒガンにありやすよ」


俺の言葉に、ヒガンは暫く黙り込み、下を向いて考え込んでしまった。ここまでくると、男嫌いなんて言い訳は通じない。自分の嫌なものはところ構わず殴り飛ばす。彼女はただの子供だ。


「……分かった。でも、どうすればいいのか分かんない」

「まずは謝りやしょう。ジレミも話が通じない相手じゃねぇっすから、ちゃんと話せば分かってくれやすよ」

「うん……。でも、貧民街に来る度、こういうことしちゃうのかな……」

「それはヒガンの頑張り次第っすね」

「自分の?」

「そ。男嫌いを無理に直せとは言いやせんけど、せめて善悪の判断くらいは付けやしょう。ここにはああいう馬鹿な輩も沢山いやすけど、同時に優れた職人や、優しい人もいっぱいいやす。またここに来るつもりなら、少しずつ、変えていきやしょう。大丈夫っすよ。俺も一緒にいるから」


椅子を立ち、彼女の隣に跪く。そして、ヒガンの両手をぎゅっと包み込み、そう言う。


「……ライは、自分のこと、めんどくさいとか思わないの?」

「え?めっちゃ思ってるっすよ」

「え?」

「でもそれ以上に、放っておけなくて、構いたくなっちまうんすよ。めんどくさいなんてその次っす」

「そ、そっか……」


頬を紅潮させる彼女をうっすらと横目にしつつも手を離す。


「さて、約束っしたもんね。話すことは粗方話してくれやしたから」

「え?」


戸惑う彼女をおかまいましに思い切り抱きつく。突然のことに驚いていたようだが、自分から言い出してきたことだ。


「あ、ライ?」

「……会いたかったっすよ。そんなに時間経ってないのに、めちゃくちゃ離れてたみたいっす」

「へ?あぁ、そう、だね……」


顔を真っ赤にしながらも、背中に腕を回してくれる。今更こんな恋愛なんてバカみたいだって思うけど、それでもやっぱり、会ったら会ったで好きになってくる。どうしようもないこんなものが恋なら、今までの汚れも全部がそう見えてしまいそうで嫌になってくる。なんて思いながら、ヒガンを同類に見ている俺が、1番嫌だ。でも、抱きしめていればそんなの全部どうでもよくなってくる。だから、暫くそのままでいた。

昨日の分です。23時にもう1本、投稿、出来たらいいなぁ……。

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