a weirdo who likes women
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
「……あのぉ、どうなさっているんすか?」
恐る恐る2人にそう問いかければ、同時に振り返られる。
「あ?あんた誰?」
「ライっすよ!ライ・シークレティアス!てかこれミナヒが選んだドレスじゃねぇっすか!」
「あぁ?そうだっけ?昔のこと過ぎて忘れた」
「何週間前の話っすよ?ババアじゃねぇっすか」
瞬間、何故か体中が曲がりくねり激痛が走った。ミナヒにきつく羽交い締めにされていたのだ。
「ちょ、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛いたい!ギブ!ギブっすから!離して!!」
「金輪際悪口は言いませんのでどうかお許しくださいミナヒお姉様って言ってくれたら許してやる」
「誰がんなこと言うっすか!ぜってぇ嫌っすよ!!」
「ほぉ?」
グギィ、と体が出してはいけない音を出した気がする。ミナヒからの激痛はただでさえ地獄なのに、それが火を吹きまだ力が強まる。
「あーーー!!いっだい!!」
「痛いで済むならまだ余裕そうだなぁ?あぁ?」
「いや、余裕じゃない、余裕じゃない!もう無理!きつい!俺が悪かった、俺が悪かったっすから、もう許してくだせぇっす!」
「よし、及第点」
そう言われなんとか解放される。だが、体中がバキバキと悲鳴を上げている。腰を支えて中腰になっているせいで、ジジイのような姿勢になってしまう。
「あー、まだ体がいてぇ……」
「お陰で色々ほぐれたんじゃない?」
「ほぐれた超えて折れてやすよ」
「大丈夫だ。あたしが鍛えた体だからな。そう簡単に折れん」
「根拠になってねぇっすよ!てかドレスに皺付けねぇでくれやすか?」
少しだけしわくちゃになってしまったドレスの皺の伸ばし軽くなおす。
「はぁ。んで?これどういう状況なんすか?」
俺の言葉に2人を目を合わせ、少し考え込んだかと思えば、首をこてん、と傾げた。
「こっちが警戒してたら、なんかあっちも警戒してきただけさ」
「よく分からん富裕層の女がこんなとこに居たら、そりゃ警戒するさ。てか、この女あんたが連れてきたんだろ?こんな奴がタイプなのか?」
「んなわけねぇっすよ。……フタバ先生を紹介しようと思って連れてきたんすよ」
「フタバァ?なんであのちんちくりんなんだ」
ミナヒは彼が藪医者ということを忘れているのだろうか。呆れながらも、現在のヴィアの状況について説明する。ミナヒは最後まで興味無さそうに聞いてはいたが、少なくとも関心が全く無いというようには見えなかった。
「ふーん。記憶が無いんだ。それでフタバってわけ?」
「そゆことっす。正直あんまりあてにはしていやせんけど、行かないよりかはマシっすから。でもその前に着替えるのが先っすね。流石にこんなひらひらドレスで、貧民街は歩けやせんよ」
「それもそうだな。おい、そこの貴族。あんたはあたしと来い。服貸してやる」
突然自分のことを呼ばれ、ヴィアはびくりと体を震わせた。そりゃこんな威圧感ましましで呼ばれたら怖いか。
「おいライ、今余計なこと考えただろ」
「ひえっ!?い、いやいやいや滅相もございやせんよ〜……。あは、あはは……。そ、それじゃ、俺も着替えてくるんで、1階で落ち合いやしょうか」
「そうだな。よし、行くぞ、貴族」
「さっきからその貴族ってのはなんだい。ボクの名前はヴィアだ」
腰に両手を当て、ミナヒを睨むヴィア。ミナヒはその睨みをものともせずにヴィアの胸に手を当て、ドレスの上から触りだした。あまりの信じられない光景に、えっ、と声を出して引いてしまう。
「なんだ。ボクって言うし胸無いように見えたから男かと思ったら女か。ややこしいな」
「ちょちょ!?な、なな何するんだい!?」
「いや、ライと同じで女装して潜入してんのかと思ったんだけど。なんか詰めてる感じもしないし、生乳だな。合格」
「何がだい!?」
ぎゃーぎゃー騒いだりヴィアが一方的にビンタしてるのを横目に、2階をそっと出ていく。あの様子ならまぁ、なんとか、大丈夫だろう。
事務所を出て、正面にある自分の家へと向かっていく。その短い道を進むのに、何もトラブルは起こらない筈だ。そう思いたかったが、何かに付けられている。このまま帰れば変に待ち伏せされるだろう。厄介事はここで撒いた方がいい。
走り出し、適当な路地裏へと入っていく。後ろからバタバタと音が聞こえる。どうやらちゃんと付いてきているらしい。よく躾のなっている良い子だ。
「行き止まり!?どうしましょう……」
袋小路の奥まで追い詰められた振りをすれば、後ろからはっはっは、と小物感丸出しの笑い声が聞こえてきた。このままでは男共にあーんな姿やこーんな姿にされてしまう。きゃー、どうしよー。
「お嬢ちゃん、富裕層から逃げてきたんだろう?お兄さん達が案内してやろうか?」
「あら、ありがとうございます。けれど結構です」
そう言い、銃を撃ち込んでやろうと構えるが、俺が発砲する前に、その男は倒れた。こちら側に倒れてきたため、背後から殴られたのだろう。急ぎ銃をドレスの下にしまう。
「大丈夫かい?お嬢さん。追われてるのが見えたから、駆け付けたんだけど。何処か怪我は無いかい?」
駆け寄ってきたその赤髪の男には見覚えがあった。レンジャーのジレミだ。貧民街でいうレンジャーとは、現代でいう警察みたいなものだ。このジレミという男は、その中でもTOPクラスに優秀だ。だが俺はあまり彼とは関係は無く、事務所だとミナヒが関わっている方だろう。
「お気遣い要らねぇっすよ。こんくらいなら俺でもやれたんで」
「え?男?てか、え?その声ライ!?なにやってんの!?女装!?」
生憎、ジレミは驚きのあまり飛び跳ね、近くの壁に頭を打ち始めた。お陰で俺が声をかける隙も無い。
「嘘だ、嘘だ……。こんな美人が男なんて、信じない。俺は彼女と惹かれあって、恋に落ちて周りを気にせず2人で幸せに暮らすんだ……」
あまりにも女好きで女々しいほどのロマンチスト。これが、この男の顔の良さと実力を全てを台無しにしている欠点だ。
「女じゃなくて悪ぃっすね。それより、俺さっさと帰りたいんで、家まで送ってくれやせんか?また変な輩に絡まれて時間使いたくないんで」
「はぁ……。美女に頼まれたら即オーケー出したんだけどな……。男だしな……」
コイツ、これでも本当にレンジャーなのか?ぶん殴りたくなるんだが。こんな美女を前に男とは失礼だな。だが落ち着け俺、俺の可愛さは全てをひっくり返す。FemalePalaceを生き抜いた自分の実力を信じればなんら問題は無い。
ジレミの手をそっと握り、少し目を潤ませ、上目遣いで彼を見つめる。それだけでジレミは先程の暗い態度はどこへ行ったのやら、既に頬が赤く染まり始めている。
「ジレミ様、私、もうあんな怖い目に遭いたくありません。ですから、一緒に来て頂けませんか?もう、怖くて1歩も動けそうもないんです。でも、ジレミ様となら、きっと大丈夫。いいえ、ジレミ様でないと駄目なのです!」
「よし、その護衛引き受けよう」
「わぁ!ありがとうございます!」
ちょっろ。
道中、FemalePalaceであったことをざっくりジレミに伝えた。ジレミはずっといいなー、なんて他人事のように羨ましがっていた。
「なるほど、それでずっと富裕層に居たんだ」
「そうっすよ。大変だったんすから」
「えー、でもいいなぁ。どこ見ても女の子なんでしょ?俺も女装したらいけないかなぁ?」
「辞めた方がいいっすよ。頭おかしいのしかいねぇっすから。それじゃ、俺はここで。送ってくれてありがとうございやした」
「うん。それじゃ、またね」
手を振り返してジレミを見送り、家へと入る。久々の我が家はやっぱり落ち着く。このままだらだらと過ごしたいが、そうもしていられない。さっさと着替えなければ。ドレスを脱ぎ、いつもの格好へと着替える。
鏡に写った久しぶりの自分に、一瞬誰かと思ってしまう。鏡に映れば、決まって欺瞞だったのだから仕方ない。これは今度欺瞞を見たら同じことを思いそうだ。だが、落ち着くことには変わりない。ずっとふりふりドレスで女の振りしていれば、肩が凝るったらありゃしない。これで暫くは羽目を外してのびのびと過ごせるはずだ。
「行ってきやーす」
自分しか居ない家に、そう声をかける。当然返事は返ってこない。当たり前を背後に感じながら、クリニックへと歩を進めた。
今回はいい箸休めになったのではなかろうでしょうか??個人的にライくんの「あーー!!いっだい!!」が好きです。多分彼にしてはらしくなくくっそ汚い悲鳴だと思います。ミナヒお姉様にはなんだかんだ逆らえません。でも男を手玉に取るのは100点満点です。流石自意識高男




