表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter 2〜Castle investigation〜
27/58

So hot you could almost kiss it

嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す

これまでもこれからも、俺の人生は変わらない


目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる


俺だって普通に生きられると、証明してやる

「ん、んん……」

「あ、起きやしたか?」


ベッドに体を横にしていたヒガンが目を覚ます。俺の声が随分らしくなく柔らかかった気がする。気のせいと思っておこう。


「うん、ここ、自分の部屋?」

「そうっすよ。セランカとの話し合いの時、ヒガン倒れたんすよ」

「あれ?そうだったんだ。気をつけてたけどかかってたか……」

「かかってたって……洗脳っすか?」


まさか。だって、俺には何も無い。


「……欺瞞は、何も感じなかったの?」

「あぁ、まぁ」


話してる途中も警戒してはいたが、特別何か違和感を感じたことは無かった。無意識のうちに何かかけられていたのだろうか。だったら何を。もし、俺にもヒガンと同じものがかけられていたのなら、俺も倒れてないと説明がつかない。勿論、別の洗脳をされてた可能性もあるが。


「ヒガン、セランカの能力についてなんすけど、洗脳って、2人居たとしたら、それぞれに違う洗脳をかけられたりするんすか?」

「……自分は他の人の能力についてはあまり知らないけど、多分無理だと思う。今までの経験だけど、セラが洗脳を使う手段は空気と声。要するに、空気を伝って、周りに感染させていく方法と、自分の声で洗脳する方法。今まで受けてきた感じ、空気より声の方が力は増してる」

「自分の仲間にも平気で洗脳をかけるとか、恐ろしいっすね」

「仲間じゃない。ビジネスパートナー」

「あー、はいはい。そうっしたね」


ビジネスパートナーでも十分問題だと思うのは俺だけだろうか。

まぁそれはさておき、だとしたら、俺が倒れなかったのは本当に何でだ。ヒガンは俺に対してかかりにくそうと言っていたが、俺はかかり「にくい」どころか全くかかっていない。TOP4の実力はこの程度なのだろうか。いや、待てよ。


「ヒガン、ヒガンの能力って暗殺っすよね?ちょっと俺に使ってみてくれやせんか?」

「はぁ?なんで」

「いいから。死んでも多分どうにかなりやすよ」

「はぁ……。分かった」


ヒガンが溜息を吐きながらもベッドから起き上がりそう言った瞬間、黒い刃が俺の体を貫いた。

貫いただけだ。そこには血なんて流れていないし、痛みも全く無い。


「やっぱり……」

「は?なんで」

「切ってどうっしたか?感覚とかありやした?」

「いや、ない。何も、切ってない。いつもなら、確かにあるのに」


目の前でヒガンは困惑を続けている。当然だ。イレギュラーなことが起これば誰だってそうなる。


「多分、俺には能力が効かねぇんすよ。真理の読心も、セランカの洗脳も、全く効果無かったみたいっすからね」

「なら、トレビアは?」

「それは効きやす。ちょっと訳あって貴族とやりあう機会がありやしてね。その時に風のトレビアで傷を付けられたんで、トレビアは普通に通りやす」

「そう。それじゃ、トレビアを纏わせた能力は?」

「あー、それはまだ試してやせんね。どうなるんすかね。試してみてくだせぇ」


え、と言ってヒガンの顔の血の気が引いていき真っ青になっていく。ついでに俺との物理的距離も段々離れていく。


「大丈夫っす!ちょっと腕かするだけでいいっすから!」

「……分かった。手加減はするけど、苦手だから、その、腕飛ばしたらごめん」

「え」


最後に青白い顔でとんでもないことを言われた。まぁ、闇のトレビアの持ち主でもあるし、そのくらいの力はあるか。自分から望んだことなのに、思わず体が震えてしまう。


「いくよ」


緊張を含んだヒガンの声で1つ深呼吸をして肩をほぐす。でも、思ったよりもほぐれてくれなかった。ヒガンも同じように深呼吸をして、能力を発動させた。


「っ!」


歯をかみ締め、痛みを必死に堪える。レースふりふりの袖を捲り、切られた左手首を確認する。そこには、うっすらと赤い線が入れられており、今も滴り落ちている俺の血液があった。


「はぁ。トレビアを纏わせた能力は効くみたいっすね。能力単体が効かないだけみたいっすね」


傷口を抑えながらも、なんとか結論を声に出す。


「ごめん。切りすぎた。傷口抑えてこれ飲んで。自然のトレビアの貴族が使った薬。このくらいならすぐ消える」

「別にヒガンが気にすることねぇっすよ。俺が頼んだんだし」

「そうだけど、ライが、傷つくのはやだ……」

「へ?」


聞き取りにくい程の小さな声だったが、確かに聞こえた。俺が傷つくのがやだ、だって。

転送してきた救急箱で、先程彼女自身が傷付けた部分の手当てを手際よく行っている。そんな姿を見ながら、先程の言葉を反芻する。彼女は1番の警戒対象だ。実はとんでもない人間なのかもしれない。俺の事だって簡単に殺すかもしれない。だけど、そんな色々な事情を取っ払った上で、単純に気になるし、興味がある。


「はい、出来た。あんま切れてなくて良かったけど、もうこんなお願いしないで。傷付けたくない」

「へぇ?そんなに男である俺の身を案じてくれるなんて、TOP4のNo.4はお優しいんすね〜」

「やっぱ全部忘れて」


逃げようとしたヒガンの手を掴み、腕の中へ収める。


「ちょ、離して……」

「はい、どうぞ」


離してと言われたから、抱きしめていた手を離す。なのに、顔を見せた彼女の顔は頬が赤く染まっていた。


「う……。なんで離すの」

「なんでって、離してって言われたから離したまでっすよ」

「いや、言った、けど」

「恋愛小説の読みすぎなんじゃないっすか?ヒガンって意外とロマンチストなんすね」

「な!?ち、違うし。てか興味ないし」

「へぇ、んじゃ、なんで顔真っ赤なんすか?なんか照れる要素ありやした?」

「あ、て、照れてないし、赤くもない!」

「へぇ?とか言いつつ、心拍数も上がってるし、息も少し荒くねぇっすか?」


声をかけながら、ヒガンの両頬に手を伸ばし、顔を近づける。ヒガンだけじゃない。俺の心拍数も上がっていっている。緊張なんてつまらない一般論じゃない。この至近距離で熱を交わしている事実への興奮だ。


「ぎ、欺瞞、近い」

「さっきみたいに、ライって呼んでくれねぇんすか?」

「だ、だって、今は女の格好だし、欺瞞、でしょ?」

「んじゃさっきはなんで呼んでくれたんすか?」

「それは、えっと、昨日から、ライのことばっか考えてて……つい」

「へぇ?まだ出会って3日とかなのに、そんなに俺のこと考えてたんすか?」


体制を変え、ヒガンの肩に腕を回し、額同士をくっつける。お互いの息が肌に当たって擽ったい。1歩間違えればキスだって出来てしまうくらいの至近距離に、ヒガンの顔がある。


「ライ、ち、近い……」

「嫌なら突っぱねればいい。お前なら出来るだろ?」

「無理、出来ない」


彼女の顔は何かを期待している程に赤く染まっているというのに、ヒガンの瞳に映る俺は、恥じらいなんてものは無い手馴れた顔をしていた。前世の俺には感謝することばかりだが、今回だけは大人しく休んでてほしいと思う。ヒガンとの対比で、俺が冷めた人間みたいに見えてしまう。


「無理なら、何されても文句言えないな」

「ライ、なんか変」

「……別に変じゃない。こっちが本当の素だよ」

「そう。なんで、見せてくれたの」

「別に。なんか、出ちゃっただけ」

「そ、そう」

「……ヒガン、目、閉じて」

「え?うん」


戸惑いながらも、期待を帯びた目を瞼が覆い隠す。もっと、もっと。求めたくても、今の俺にとってのその欲求は、本物と化してくれることは有り得ない。

ヒガンの痛い程の純粋な好意に、応えることなんて出来ない。

唇を固く結び、ヒガンから離れる。


「え?ライ?」

「すいやせんね。全部冗談っすよ。俺がTOP4を眼中に入れるわけねぇじゃねぇですか」

「はぁ?最低」

「そうっすよ。俺は最低なんす。だから、男の趣味は考え直した方がいいっすよ。俺みたいのがタイプなままじゃあ、また悪い男に引っ掛けられやすよ〜」

「な!?べ、別に、欺瞞みたいな最低なのがタイプとか有り得ない」

「そうそう。それでいいんすよ。ずーっと中に居ちゃ感覚鈍りそうっすけど、もう夜っすよね?いつまでもレディの部屋には居られねぇんで、俺はここらで失礼するっすよ」


引き留めようとしてくるヒガンを無視して、入口となっている扉を開け、廊下へと出る。


「それではヒガン様、御機嫌よう」


作った女の声でそれだけ言い残し、扉を閉め、6階を去った。


なんとなく察しは付いていたが、まさかこれ程好かれていたとは。こんなもの、勘違いで終わって欲しかった。だって、ヒガンはきっと、俺の傍に居たら身を滅ぼす。今までだってきっとそうだったはずだ。だから彼女は、男が嫌いと言っていた。だから、いや、だから?

そもそも俺は、アイツらを最初から利用するつもりだったじゃないか。好意なんて最高の利用価値があるものを向けられているんだ。それを真摯に受け取ってどうするんだ。あんな奴なんて、俺の都合が良いように利用して振り回してしまえばいい。ずっと、そうだったじゃないか。ヒガンの幸せを優先して考える必要なんて無い。なのに、なのに……。


「……はぁ。人間、環境が変わったら色々変わっちまうもんなんすかねぇ」


顔が熱くなっているのは、心拍数が上がっているのは、さっきの熱がまだ残っているからだ。俺があんな小娘を好きになるなんて有り得ない。そう、絶対に。あってはいけない。


「恋なんかして、いい事ないっすよ。俺の馬鹿。何も反省してないっすね」


過去の過ちを思い起こしても、それを上塗りしようとしてくる俺がいる。


すっかり赤くなった顔を誰にも見られないように、部屋へと帰った。

この作品でこんなちゃんと濃厚なイチャイチャしたの初なんじゃありませんか?凄く楽しかったです。ライくんって本当に狡い男ですね。知ってた。

多分顔面近付けたあとお互いいい匂いしたな、とか思ってんだろうな〜、とか考えてたら口角が天井つきつけちゃう……。へへ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ