be torn apart by the wind
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
「んで?真面目問題、これどういう状況なんすか?」
散々談笑だの情報交換だのしたあと、俺の出した言葉はそれだった。ようやくヴィアを見つけられたと思ったら寝ているし、ガラミユも一緒に居ると思ったら、隔離部屋から逃げてきたとか言うし。
「うーん。ヴィアちゃんはぁ代償の支払い中でぇ、がらがらはぁ隔離部屋から誰にも見つからないで脱出したらしいですぅ」
「代償の支払い?」
「うん。お城にぃ、外から勝手に人を入れたおしおきですぅ。FemalPalaceのことってぇ、基本口外厳禁なんですよぉ。だからぁ、勝手に人をいれるなぁっていうおしおきですぅ」
あまりにも勝手すぎだ。会員が増えるのを歓迎していると思っていたのだが、それは間違いだったかもしれない。やはり女はよく分からない。
「代償って、記憶が無くなるってやつっすか?」
「そうですぅ。知ってたんですねぇ」
「一応。具体的に何が消えるかは分かりやせんが」
「あー、そうだったんですねぇ……」
ヴェメは気まずそうに口篭り、目を逸らした。
「ん?どうしたんすか?」
「いやぁ、そのぉ、非常に言い難いんですけどぉ」
視線を泳がせ、話すタイミングを窺っているように見える。そんなに話しにくい内容なのだろうか。
「失う記憶ってぇ、自分が招待した人の記憶なんですよぉ。つまりぃ」
ヴェメがそう言いかけた時、ガラミユが大きな声をあげる。何事かとそちらに目を向けてみれば、そこには、ベッドに体を起こしているヴィアが居た。
「ヴィア!」
ベッドの方に駆け寄り、彼女の手を握る。その手は冷たく、冷えきっていた。
「良かった……。このまま起きなかったらどうしたもんかと思ってたとこっすよ……」
ヴィアと再び会話を交わせられること、嬉しく思う。よかった、また会うことが出来た。
「もう、急に1人にされたから心細かったんすよ。体は大丈夫っすか?どこも痛くねぇっすか?」
顔をあげ、嬉しさのあまり瞑っていた目を開き、彼女の顔を見る。それは、俺の望んでいたものではなかった。
その表情はなにがなんだか分からない、それどころか、嫌悪感すら感じさせる表情だった。
あまりの衝撃に、彼女の手を離してしまう。ヴィアの手はそのまま、シーツの上に着地した。そして、有り得ないことを言い放ってきた。
「君は、誰だい?」
「……は?」
誰、だれ?あんなに一緒に居たのに、忘れてしまったのか。いや、彼女が俺を忘れるなんてそんなこと、あるはずがない。
「……今のヴィアちゃんの中にぃ、らいらいは居ないんですよぉ」
少し萎んだ声で、隣からヴェメが話しかけてくる。俺が、ヴィアの中に居ない?
「そ、それじゃあ!ガラミユは!?ヴェメは!?2人のことは分かるか?」
「えぇ?君は急になんだい?そりゃ、2人のことは分かるよ。ボクの姉と友達なんだから。でも、さっきも言ったが、君は一体誰なんだい?」
「あ、あぁ、分からないなら、そうか。……俺の名前はライ・シークレティアス。ここに来るまでに、ヴィアに色々助けられたんすよ」
「そうか。それでは、君はボクが招待したのだろうね。まさかボクが誰かを招待する日が来るなんて」
ヴィアは信じられない、といった風に俺の顔をまじまじと見てきた。
「……なるほど」
ヴィアがそう呟いた瞬間、風が髪を揺らしたかと思えば、何かが俺の頬を掠めた。ここには何も無い。でも右の頬に手をかざせば、何かがたらりと流れているのが分かった。手に付いたものを見れば、それは綺麗な程の純粋な赤だった。
「は……?」
「君は、一体何者なんだい?」
『…単刀直入に聞くよ、ライ・シークレティアス。君は何者だ?』
いつかのカフェで話した時と同じことを聞かれる。確か、ヴィアは心の声が聞こえないと言っていた。それが不安で、俺が怖いと言っていた。あの時はミネビアからの紹介があり、多少面識を交わしてからの会話だったため、それ程大きいダメージを負うことは無かったが、今の彼女は俺の名前しか知らないし、ミネビアが関わっていることも知らないだろう。そんな状態での初めましてだなんて
「そもそも、何でボクは君みたいな奴を招待したんだい?男じゃないか。どうやってここに入ったんだい?ますます怪しい」
すごく危険だ。風の刃をびゅんびゅん俺に向かって飛ばしてくる。
「ちょ、ちょっと待つっす。まずは話し合うことが大事だと思いやすねぇ。……てか、なんでヴェメとミユちゃんは止めてくれねぇんですか」
いつの間にか物陰に隠れている2人に恨めしい視線を送れば、ふい、と顔ごと横に向けられる。
「お姉ちゃんはぁ、ヴィアちゃんの邪魔しちゃぐさぁってされちゃうかもしれないですぅ」
「同じく。なんとかしたいなら自分でなんとかすればー?俺達なんかより、あんたのが戦えるでしょ?」
いや、俺も戦えないのだが。そもそも戦闘は専門外なんだから。
それより、なんでヴィアはこんなに戦えるんだ。なんかバフでも乗っているのか。
「ヴィア!1度話をしやしょう!よく分かんねぇっすけど、なんか誤解してやすから!」
「何が誤解だ。男の侵入者は排除する決まりなんだ!大人しく捕まってくれ!」
すれすれに投げられる風の刃を避けつつも、ヴィアとの距離を計る。こんな狭い病室みたいなところでやり続ければ、いずれ限界がくる。
「……捕まるなら、そっちが捕まりやがれ!!」
近付いてきたヴィアに、思い切り麻酔銃を撃ち込む。彼女の動きは次第に鈍くなっていって、やがて地面に突っ伏す。
「え?ヴ、ヴィアちゃん、死んじゃったんですかぁ?」
「気絶してるだけっすよ。勘違いさせたみたいで申し訳ねぇっす」
今にでも顔面蒼白になりそうなヴェメお姉ちゃんにそう言えば、胸に手を当て撫で下ろし、ほっ、と安堵の息を吐いた。
「にしても困りやしたねぇ。まさかヴィアが俺のことを知らないだなんて。けどまぁ、ヴィアもミユちゃんも無事に見つかっただけ良かったって考えときやすかね」
「ポジティブですねぇ」
「そうじゃなきゃやってらんねぇっすよ」
地面に放置されたままのヴィアを横抱きにして運び、再びベッドへと寝かせる。
そして、ガラミユに向けて声を掛けた。
「さて、今度はミユちゃんのターンっすよ。昨日、俺達と別れたあの後、何してたんすか?」
「……最初は、誰にもバレないようにあちこち周ってた。でも、確か4階で黒服の奴に見つかって、商品と間違われたのか分かんないけど、隔離部屋に運ばれた」
「へぇ。そこには、他にも商品と呼ばれる男が居たんすか?」
「うん。皆どーんよりしてるから、空気重くてすっごーい居ずらかった」
げんなりと顔を顰め、ガラミユはそう言う。
「なるほど。パーティーが始まる前と後で、隔離部屋に何か変化はありやしたか?」
「変化……。あぁ、人の出入りが多くなったタイミングはあったな。その時、何人か黒服に連れられていったの見てるけど」
「へぇ……。それじゃ、ミユちゃんはいつ、どうやって隔離部屋を出たんすか?」
「出たのは黒服が全員出ていって大人しくなった後。方法は、隠し通路を教えてくれた人がいて、そいつの言う通りにしたら出られたわけ」
「その教えてくれた人っていうのは?」
「周りと同じ商品。だけど、誰にも価格提示して貰えない問題児っつってた。体が傷だらけの継ぎ接ぎだから、ツギハギくん、って言われてたけど」
商品が誰にも買われることが無かったら、隔離部屋に戻しになるのか。それより、そのツギハギくん、とやらと会って話をしてみたい。
「へぇ、なるほどなるほど。ここへは何で着いたんすか?」
「あれ」
そう言ってガラミユが指さしたのは通気口だった。
「通気口を通ったんすか?」
「途中からはそう。その前は、無理矢理削ったみたいな暗くて狭いとこを這って通ってきたってわけ。割と色んな所に道が広がってたから、行こうと思えば行けないとこにだって行けんじゃない?」
「はえ〜。大変だったんすねぇ。それより、俺もそのツギハギくんとやらに会いたいんすけど、通気口渡ったらいけやすかね?」
俺の言葉に、ガラミユは有り得ない、といった風に顔を歪ませ、ヴェメの背後に隠れた。
「ちょちょ、なんすか急に。そんな離れて」
「いや、だって、あんなのと話したいとかイカレてんじゃねーの?」
「自分の恩人に対して酷くねぇっすか?」
「別に恩人だなんて思ってねーし!あっちが勝手に助けただけだし!微塵も感謝とかしてねーし!!」
「わー、すっげぇ典型的なツンデレをありがとうごぜぇやすぅ」
淡々と情報提供してくれるせいで、ツンデレなのを忘れていた。聞いてもいないことをペラペラと話してくれ過ぎて少し心配になってくる。
「ぎゃーぎゃー喧嘩するのは勝手ですけどぉ、ヴェメを挟まないでくださぁい。あっちからこっちから声が飛んできて、耳が痛いですぅ」
ずっと口を閉ざしていたヴェメが急にそんなことを言い出す。そういえば、ガラミユがヴェメの後ろに隠れているせいで、ヴェメを挟んでの喧騒になってしまっていた。
「あぁ、悪いことしたっすね。申し訳ねぇっす。ほら、ミユちゃんも謝って」
「はぁ?何で俺も……」
「元はといえば、ミユちゃんがヴェメの後ろに隠れたせいじゃねぇっすか」
「うっ。わ、悪かった」
彼女の後ろから出て、ガラミユは面と向かって謝罪をする。
「許しまぁす。謝ってくれてありがとうございまぁす」
「……ありがと」
微笑ましい仲直りを目にしたところで、先程気絶させてしまったヴィアに視線を移す。
「にしても、ヴィアはどうしやしょうか……」
「このままでもいいんじゃねーの?俺は困んないし」
「俺が困るんすよ」
このまま話の出来ない状態を続けられても困る。何か解決策は無いだろうか。記憶の復元、直す、治す、治療。
「あ、フタバ先生なら、なんか知ってやすかね」
「フタバ先生?誰ですかぁ、それ」
「貧民街の藪医者っすよ。少年詐欺だし人相も良いとは言えねぇっすけど、実力は確かで、患者のことばっか考えてる人っす」
「そうですかぁ。お医者さんに大事なのは、人を救える力と心だと思いますぅ。それがある人ならぁ、ヴェメはその人にぃ、ヴィアちゃんを預けても大丈夫ですぅ」
「そりゃあ良かったっす」
お姉様の承諾も得たところで、此処を出た次の目的地は決まった。それまでに大人しくしていてくれるといいのだが。
「それじゃ、そのことをヴィアに伝えるのは、2人に頼んでもいいっすか?俺には信用がねぇみたいなんで」
「いいですよぉ。らいらいはぁ、他のこと頑張ってくださぁい」
「分かりやした。次会った時は、欺瞞って呼んでくだせぇよ」
「分かりましたぁ」
ヴェメの言葉を最後に耳に流し込み、俺はその部屋を出た。
いつまでここに居られるか分からない。もしかしたら今日中には解放されるかもしれない。そうなったら困る。今のうちに、接触出来る人には接触しなければ。
「ん?あれは……」
周りを見回せば、そこにはパーティーの時より控えめな服を袖に通した見覚えのある俺の駒が居た。
「こんなとこで何やってんすか?」
「ちょっと人を探して……ってん?」
彼女は俺を見た途端、口をぽかんと開け、吹き出しそうな程に呆けた顔をしていた。
「ぷ、なんちゅう顔してんすか」
「欺瞞?だよ、ね。髪色違う」
「こっちが元の色っすよ。あっちはウィッグ。それでぇ?TOP4の1人が、こんなとこで何してんすか?」
「欺瞞を探してた」
「俺?何で」
俺がそう言うと、ヒガンは話し難いのか、中々口を割ろうとしない。ただ一文字に閉じられ、もごもごと右に左に動いている。
やがて、決心がついたのか、口を開き、集めた言葉を聞かせてくれた。
「セラが、今から欺瞞と面会してもいいって言ってた。今すぐ着いてきて」
セランカ。セランカ・ドゥビユエーラ。俺が、最初に、目をつけた人だ。
ヴィアが風びゅんびゅんってやってたのはトレビア単体の力です。ネタバレ防止の為トレビアの細かい事情は色々省きますが、風のトレビアを難なく使えるヴィアはそれだけでめちゃめちゃ強いです。
でもそれでライくん傷つけちゃだめだよ……。あの子すぐ病み期到来するふりしちゃうからそのうち泣いちゃうよ……。でも勝手に立ち直るからいっか。いや立ち直ってないかも……。
それはそうとお姉ちゃんしようとしてるヴェメって可愛いよね(現実逃避)




