The cheeky girl is a stalker
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
「.....流石に居ないか」
6階から上がってきて1階に戻った俺は、あの時ガラミユとヴィアと共に身を隠した客室へとやって来た。ガラミユはあの後客室を出たらしく、彼の姿はそこには無かった。それどころか、人の居た痕跡すら消えている。ヴィアが寝ていたベッドも、綺麗にベッドメイクされているし、あの時テーブルに放置した皿も無くなっている。まぁ、それはガラミユが片付けた可能性もあるが。
つまり、タイミングはどうであれ、あの後に誰か第三者が介入したと見ていいだろう。ガラミユが片付けた可能性、は無いだろう。俺の偏見と仮説に過ぎないが、奴隷であり、囚われ続けていた彼が、ベッドメイクのやり方を知っているとは思えない。それに、ここには替えのシーツが見つからないから、そもそも不可能だ。
「まさか前世のホテル清掃バイトの知識が、こんなとこで役に立つなんてね〜.....」
だが、そうなったらガラミユは自分から部屋を出たのだろうか。それとも、連れられていってしまったのだろうか。
「お悩み中みたいですねぇ?可愛い可愛いスーパープリティな欺瞞ちゃん♡」
「誰?」
部屋の扉は閉めた。俺以外は誰も居ない。だけど声が近くから聞こえてくる。意識を部屋全体に巡らせ、集中させる。さっき聞こえた声の在処を探すんだ。手には引き金をいつでも引けるように準備する。
「そこ!」
迷いなく麻酔銃の引き金を引く。
「いった!」
という声が聞こえたため、正解だったようだ。その姿は、徐々に徐々に、輪郭を確かなものとしていく。
黒いドレスに赤毛の髪をコロネみたいなツインテールにしている。その青色の瞳は、俺を真っ直ぐと見てきた。
「もう!物騒なことはやめてくれるぅ?あたくしぃ、とーっても辛いんだから!」
「申し訳ありませんが、初対面の方との茶番に付き合ってあげられる元気が無いんですの。早く目的を言ってはくれませんか?」
俺が急かせば、その女はやーだよっ、と言いながらあっかんべー、と舌を出してきた。
「生意気な.....。少々、分からせる必要があるようですわね.....」
「へ、え?ちょちょちょ、たんまたんま!ギブ!」
それから数十分後。彼女はというと
「はふぅ.....もう、しましぇん。くちゅくちゅ、やだぁ.....♡」
「卑猥な言い方辞めてくれませんか?ただこちょこちょしただけです」
軽く脇腹を擽ってやったら、思った以上に効果があったらしく、ベッドの上でビクン、ビクン、と今も体を震わせている。激しく事後みたいに見えるから辞めてほしい。
「はぁ。それで、目的は話す気になりましたか?」
「なりました!申し訳ございませんでした欺瞞ちゃま!あたくしがわるぅございました〜!だからこちょこちょと銃だけはやめてくださぁい!」
綺麗に土下座までされ、そう懇願される。反省の色が見えたようで安心と許しの意味を込め、頭を軽く撫でる。
「ふぇ?」
「そこまで言われてしまっては、許さない方が悪者です。反省しているようですし、もうしません」
笑ってそう言えば、ふっ、と嫌な嘲笑が彼女から聞こえる。
「あ〜んな土下座かまされちゃったくらいでぇ〜?簡単に許しちゃうとかぁ、欺瞞ちゃまって優しいんでしゅね〜」
先程の反省はどこに行ってしまったのか、殴りたくなる拳を必死に抑える。
「そういえば、貴女のお名前をまだ伺っていませんでした。コードネームはなんというのですか?」
「ふっふっふ〜!あたくしのコードネームは嘲愛!そしてトレビアは自然の能力は透過!覚えておいてもいーんだよぉ?」
「わぁ、聞いてないことまでお喋り頂いてありがとうございます〜。それで、貴女は何故こんなところにいるんですか?」
「それはただ1つ!あたくしが透明人間となり、欺瞞ちゃまを観察していたから!」
「観察?」
なんだか体よく体現しているように聞こえる。俺の観察なんかして何か得られるものなんて.....いや、あるか。俺可愛いし、元がイケメンだし。
「そう!あのパーティーの時に、あんな高額をいきなり叩きつける新人会員!あたくしはぁ、その勇姿に惚れたのぉ。というわけで、師匠って呼ばせてくれないとぉ、つっらーいオシオキしちゃうよ〜?」
「よ、要するに、弟子入りしたい、ということで合ってるでしょうか?」
その割に、弟子入りを頼む態度とは到底思えない。蹴って断りたいところだが、そうしたらいつまでも引っ付かれる予感がする。
「.....はぁ。分かりました。でも師匠とは呼ばないでください。貴女みたいなのが弟子だなんて知られたくありません」
「いいよぉ、別にそれでも。呼ぶつもりもなぁいし。あ、ところで欺瞞ちゃまぁ、鏡変について、知りたくなぁい?」
「いえ別に。どなたかも存じ上げない方のことを、何故気にしなくてはならないのですか」
彼女が何故そんなことを聞いてくるのかなんとなく察しがつくからこそ、彼女の手は借りたくない。だけど、知らない振りをしても、嘲愛は俺に対して、嘲笑を向けるだけだった。
「嘘はよくないよぉ?だってあたくしぃ、ヒガン様と欺瞞ちゃまの会話聞いちゃったんだもーん。お友達に襲われたんでしょ〜?きゅふふ、かわいそ〜」
「だとしても、信用の足らない貴女の手は取りたくありません」
「ひっど〜い。あたくし、鏡変のお友達なのにぃ。欺瞞ちゃまのお望みならぁ、なぁんでも教えてあげるよぉ?」
その言葉に揺らぐ。だけど、この事項は最優先では無い。耳を傾け、変なことに巻き込まれる方がごめんだ。
「言ったでしょう?貴女の手は借りないと」
「ひっどーい。TOP4にはホイホイ付いてったのに〜。でも、そうなったら仕方ないかぁ」
諦めてくれたようで安心すれば、彼女は自信の懐から、1枚の写真を取り出してきた。
「.....それは?」
「欺瞞ちゃまのぉ、お風呂写真♡」
「.....どうやってそれを?」
「あの時ぃ、あたくしも部屋に居たんだよねぇ。そしたら、欺瞞ちゃまがお風呂に入ってったから、これはもう見逃すわけにはいかないでしょお?前に富裕層でぇ、このコンタクト買ったのぉ。見たものを瞬時に描写出来ちゃうのぉ。きゅふ、すっごーいのぉ」
写真に映っていたオレは、当然ウィッグも取り、裸の状態だ。そんな俺の姿を見られれば、誰にだって男って分かる。
「まぁ?この写真を見せたところでぇ、欺瞞ちゃまって信じる人は居ないと思うけどぉ、でも、頭がいい人は勘づくかもねぇ。本当はぁ、FemalePalaceのルールに則ってぇ、侵入してきた男は処分しないとなんだよねぇ」
「へぇ?」
以前に、ミネビアが処罰されるかもしれないから気をつけて、みたいなことは前に言っていた。それはこのことだったのだろうか。
「それで?あなたは私が男だとしたら殺すんですか?」
「え〜?やだよぉ。欺瞞ちゃまみたいなざこざこ殺しても、なぁんの得も無いもぉん」
感情ではなく、損得で決めるのか。少しは話が出来るかと思っていた自分が馬鹿らしく思えてくる。
「.....これだけは聞かせて。真理と、黒髪で細身のペットを見ませんでしたか?」
「え〜?それあたくしに聞いちゃう〜?でも残念でしたぁ。教えてあげないもぉん」
「そうですか、なら.....」
煙幕を投げ、急いで部屋から出ていく。
別にこんなことしなくても良かったかもしれないが、もしかしたらの保険だ。
だが、これからどこに向かったものか。行くあても無いことだし、適当に城を散策するとしよう。3階より下の構造も把握しておきたい。
「まぁ、城のことを分からないと色々動けないからな.....」
階段を降りていき、2階に辿り着く。別に2、3階はいつでも来れるんだから探索しなくてもいい気はしているが、こういうところこそ、何かが隠してある、かもしれない。
2階は見るところ、壁一面にドアドアドア。客室層だから仕方ないが、ドアとプレートばかりだ。だが、少し歩けば、少し開けた場所出てくる。窮屈さを感じさせる壁が取り払われ、左右にそれぞれ休憩スペースが用意されていた。そこでは、貴族達が優雅に紅茶を啜りでもしながら話をしていた。通り過ぎようとしたが、耳に入ってきた話が俺の足を止めた。
「ねぇ、お聞きになって?あの黒髪のペットの話」
「えぇ、聞いたわ。商品の隔離部屋に忍び込んだんでしょう?躾のなっていないペットよねぇ」
黒髪、商品の隔離部屋。まさか。希望を抱き、彼女達の輪に入り込む。
「あの、そのお話、私にもお聞かせ願えないでしょうか」
「え、あ!貴女欺瞞ね!あの価格提示は素晴らしかったわ」
2人のうち片方が立ち上がり、俺の手を握りながら嬉しそうに語りかけてくる。急なことに少し驚いてしまった。手袋なんかあった方が良かっただろうか。
「あぁ、ありがとうございます。それで、そのペットの話をお聞き出来ないでしょうか」
「あら、貴女はまだ聞いていないの?今はその話で皆様盛り上がっているわよ?私達が出られないのも、そのペットが原因じゃないかって言われてるくらいだもの」
「そうだったのですね。あの、それでその話って、誰か、そのペットを見た人が居るのですか?」
「えぇ。隔離部屋から、黒服に抱えられて出てくるのを見たらしいのよ」
「なるほど」
それが噂になっているのか。それが全て正しければ、ガラミユは商品の隔離部屋を探し出せたということになる。ここからは怪しまれないように情報を引き出さなければ。
「.....もしかしたら、そのペット、私の友人のものかもしれません。彼女、彼のことを捜していましたし、どうしましょう」
「あら、そうだったの。だったら、早く見つけてあげた方がいいんじゃないかしら」
「そうですね。友人の為に、私も頑張ります!情報ありがとうございました」
彼女達に背を向け、階段を目指す。恐らくガラミユであろう人物の噂がここまで広まっているとのなると、彼の主の耳にも届いているだろう。彼女が見つけ出すよりも先に、俺が彼を見つけないと。もうあんなことは、されて欲しくない。
「ミユちゃん、無事で居てくれねぇと殴りやすよからね」
独り言を空に吐き出して、歩を進める。どこにいるのかも分からない。けれど、行かなくちゃ
麻酔銃、実は少し効いていたんですけど、でも嘲愛にはあんまり効果は無かったみたいです。悲しい。メスガキのくせに実はまぁまぁ最強です。ポテンシャルが高いサイコストーカーです。あの後も多分ずっと後ろに居ます。
以上、本日もお読み下さりありがとうございました。




