Strategy meeting with third partner
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
翌日、部屋から1歩出てみれば、客室層となっている地下2階ははざわついていた。それもそうだろう。急に泊まれと言われたのだから。貴族達の反応を見る限り、これは例外的なことでは無いのかもしれない。まただのなんだのが聞こえる。まだ考えることがあるというのに、こんな騒ぎに付き合っていられない。
ヒガンのことばかりではない。あの日、部屋に来たガラミユの成りすましのこともだ。会員の誰かしらの能力と見ているが、真実はどうだろうか。犯人が誰であろうと、俺を狙っているのならば、不安分子は1個でも多く取り除かなければ。だが、ヴィアが居ない今、協力してくれる人なんて……。いや、候補が1人居るじゃないか。
「で?自分のとこに来たってわけ?」
「そうなんすよ。この通り!頼みやす!俺1人には、この城を動き回るのは荷が重いんすよ。どこからナイフが飛んでくるか分かったもんじゃねぇっす」
そう、俺は今、ヒガンの部屋に来ている。拒絶されるかとも思ったが、されずに済んで良かった。
「……はぁ。あのね、そもそも3階より下は降りちゃいけない決まり。それにここ、TOP4の部屋がある階なんだけど。他の3人に会ったらどうするつもりだったの」
「全力ではったりかまして逃げてやるっす」
「だっさ」
ストレートにぐさりと刺される。けれど仕方がない。ミナヒのスパルタコーチを受けたとはいえ、俺には彼女達と渡り合えるだけの力は流石にない。だけど、嘘と逃げだけは誰よりも自信がある。
「それで?自分に何してほしいわけ」
「ほぉ?やってってお願いしたらやってくれるんすかぁ?優しいんすね、TOP4って」
目鼻すれすれに裂かれたナイフを、後ろに下がって避ける。張本人である彼女は頬を膨らまし、顔を赤く染めていた。あぁ、彼女の名前を出さなくて良かった。
「優しいとしたら、それはじ…す…だ…」
「なんて?それは、からよく聞こえなかったっす」
うっすら自分、と聞こえたような気がしたが、なんと言ったのか。優しいとしたらそれはに続くヒガンが言いそうな言葉。レディのこういったプライバシーの感情をちくちく探るのはあまり好きではない。好きではないが、やる価値はある。
「『優しいとしたら、それは自分が好きだから』違いやした?」
「なっ、す、好きじゃないし。1回慰められた程度で男なんか好きにならないし。そう決めてる」
ちょっろ。
こうやってクズ男に引っ掻き回されていったのか。ん?クズ男に?この世界の?だとしたら、おかしくないだろうか。ヒガンは、富裕層の貴族じゃないか。
「ヒガン、気になることがあるんすけど、聞いていいっすか?」
「なに?」
もし、このことを聞いたら、俺の事もバレるかもしれない。それでも、情報は1つでも欲しい。
「ヒガンが、ヒガンに、傷を付けた男って、この世界の男、なんすか?」
「……違う。この世界の男には、自分は八つ当たりしてるだけ。あ、欺瞞は、知らないだろうけど、自分、日本ってとこに住んでたんだ」
日本。久々にその言葉を聞いた。
「そこの男に、色々されて、そこからトラウマになった」
ありがちな話だ。俺のいた業界では特に。巻き込まれた女の子の話を聞いた数なんて数えられない。ヒガンもまた、そのうちの1人だったのだろう。
「でも、昨日欺瞞と話して分かった。好きで巻き込まれたのは自分なのに、嫌いなんて言うのはお門違いじゃないかって。自分はただ、寂しかった。その寂しさの埋め方が分からなくて、手を出しちゃダメなものに出した」
ヒガンは俺の手を両手で優しく、握りしめてきた。その手は小刻みに震えていた。
「わがままだって思う。自分から望んだのに、目に見える傷が付いたら、悪者扱いにした。でもそうしたら、誰かが守ってくれた。でも、やっぱり根っこから間違ってた。心から大切にしてくれる誰かに愛してもらえなきゃ、意味なんて無かったね」
言い終わると、ヒガンは俺の手を解放した。
「……ごめん。だるい話聞かせた。それで、自分は何すればいいの。あ、でもその前に、FemalePalaceの破壊についてのプランあるなら聞かせて」
「え、あぁ。最初考えてたもんは、TOP4を全員手中に収めて手駒とする。そして、内部で情報を探りつつトレディの欠点探しと、城の構造を頭に入れる。それから、被害者の解放も同時に進めていって、会員もこちら側に引き入れていく。そして最終的には、トレディを捕らえてFemalePalaceを破壊する」
「ん、悪くは無いと思う。TOP4を組み込められれば、他の会員も言う事聞くと思う。それに、手駒も1つ手に入ってんだし」
「え?」
「え?」
何を言われたか分からなくて顔を上げれば、向こうも意味が分かっていたのかいないのか、同じ言葉を零す。
「いや、手駒って、それ自分のこと言ってんすか?」
「うん。自分もトレディ嫌いだから協力する。TOP4が手駒扱いなら、自分も手駒でしょ?」
「あぁ、うん。そうなんすけど、自分は大事にした方がいいっすよ。俺が言っても説得力に欠けそうっすけど」
「……それで、自分は何をすればいい?」
「そうっすね。まずはTOP4、特にセランカと話せる機会を作って欲しいのと、商品となっている男達が何処にいるのか探して欲しいっす」
「了解。でも何でセラ?」
「能力が洗脳じゃないっすか。敵に回したら後々厄介っす。だから、1人目に引き込むのはセランカにしようって思ってたんすよ。ま、それもぱぁになっちまいやしたが」
ヒガンは元々最後に引き込むつもりだったのだ。それがまさか、1番最初に仲間になってくれるとは。計画なんてそれなりにしか使えない。
「良かったね。でも、セラか……」
「駄目っすか?」
「いや、いいと思う。ペトやレンじゃ、話をするまでが大変。それに、欺瞞は洗脳にかかりにくそう。でも、仲間になったとしても油断は出来ない。あのパーティーで、どれくらいTOP4のことが分かったのか分からないけど、あの連中は基本話が通じない。ペトとセラは、自分とそれなりに仲良くしてくれてるけど、レンは自分のこと大嫌いだし」
「正直、腹開けられた時点でヤバいやつってことは分かってやしたよ。それを止めずに見てる連中も」
いや、でもセランカはあの盤面で2人の仲裁をした。あれはなんだったんだ。
「そういえば、セランカって、何であの時止めたんすかね」
「あの時?あー、レンが殴ろうとした時?」
ヒガンの発言に頷く。
「なんでか分かりやすか?」
「単純にトレディの前だから、違う?」
確かに、それもあるだろう。けれど、それだけなのだろうか。
「案外、2人が大切だから、殴り合わないでほしい、とかかもしれねぇっすね」
「やめて。TOP4はそんな関係じゃない」
「んじゃどういう関係なんすか?」
ヒガンは首を傾げ、少し考え込んだ。自分ですら理解していないのか。そう思うが、案外人間関係なんて無自覚のうちにつるむこともあるか。
「……ただのビジネスパートナー。トップ4とは言われているけど、所詮は自分達も会員」
「へぇ。それじゃあ、裏のことはあまり知らないんすか?商品のこととか、会員のこととか」
「特に知らない。商品の管理は基本黒服がやってる。会員とはあまり話さない」
「友達いないんすね〜」
「居ないんじゃない。作らないだけ」
居ないじゃないか。そう思った言葉を飲み込む。声に出してしまったらストレートパンチが飛びかねない。
「そうなんすね〜、残念っす。会員のことで聞きたいことあったのに〜」
「あっそ。聞くだけ聞いたら?」
不満げなその言葉に少し話すか迷う。だが、俺のスタンス的に聞かずに終わる訳にはいかない。
「変装、それか乗っ取り?とにかく、偽物を作れる能力を持ってる会員って知りやせんか?」
「偽物.....。あー、変装ってか、相手の容姿を奪う、借りる?のは居る。鏡変、だったはず。コードネームは忘れたけど」
鏡と変わるで鏡変。あの時のガラミユがそいつかは分からないが、接触してみなければ。もしかしたら、俺の正体を知っているかもしれない。
「なるほど。こっちで探してみるっす。どうもありがとう」
「自分の手伝いは要らない?」
正直に言えば求めたい。だけど、これは俺の問題であって、トレディに関わることではない。ヴィアも、ガラミユも、鏡変も全部、俺が片付けなければならない。
「要らねぇっす。これは俺の問題なんで。ヒガンはさっき言ったことやってくれりゃ十分っすよ」
「そう。仕事増やしたくないから助かる。んじゃ、話済んだなら出てって。怪しまれる」
「ちょちょ、ひでぇっすね」
背中を押され、入口へと追い出される。女子にしては力が強く、順調に入口に着いてしまった。そして扉を開けたかと思えば、背中を後ろから押される。
「欺瞞もやることあるんでしょ。さっさとやったら」
欺瞞、彼女に呼ばれた俺のコードネーム。そういえば、こんだけ話しておいてまだ名前を教えていなかった。一方的に知ってしまっているのは、なんだか悪い気分になってくる。
「ライ・シークレティアス」
「ん?」
「俺の名前っす。次から2人っきりの時はライって呼んでいいっすよ〜?」
「やだ」
即答される。そんなに嫌だろうか。それとも、照れ隠しだろうか。
「手厳しいこって。それじゃ、俺は行くんで、また」
「んー」
手を軽くあげるだけの彼女を最後に視界に映し、ヒガンの部屋を後にする。
その後、誰にも見つからないうちに地下6階をさっさと離れた。
俺が今すぐやらなくてはいけないことは主に2つ。ヴィア、ガラミユを探し出すこと。そして、TOP4のうち、まずはセランカと接触すること。鏡変は情報を集めながらゆっくり探るとしよう。
「はぁ。ほんと、あの2人どこに行ったんすかね〜」
実は前回の最後の額にキスしたシーン。あれ、ヒガン起きてたんですよね。ヒガンは唇にキスされるかと思っていました。流石のライくんも幼気な乙女にそこまではしません。紳士なんでね、一応。
それから、ライくんと関わるパートナーの居ないおなご皆チョロインになっていってる感が否めません。もっと強かであれ…




