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Female Palace  作者: 甘語ゆうび
Chapter 2〜Castle investigation〜
17/58

pet boy sideGALAMIYU

痛い思いも、酷い思いも、なんで俺ばかりなんだ。他にもたくさんいるだろ。

なんで、俺なんだよ

「それじゃ、行ってきやすね」

「…行ってらっしゃい」

軽く左手を上げ、今出ていったばかりの彼を見送る。すぐに扉は閉じられ、室内は一気に静寂が襲ってきた。

「…行ったかい?」

ベッドから声が聞こえたことに驚き、反射で振り返る。そこには、いつの間にか目を覚ましたらしい、ヴィア、という女性がいた。

「あ、あんたは…」

「あぁ、そういえば、ボクはまだ名乗ってなかったね。ボクはヴィア・ショウクレンアリー。ただの会員さ」

彼女はベッドから起き上がり、チェアの方に歩いていき座る。

「ずっと起きてたのか?」

「まぁね。眠くなったのは本当だけど、そんな簡単に眠るほど、警戒心は浅くないよ」

「それじゃ、なんで、眠ったふりなんてしてたんだ」

俺の問いに、テーブルに肘をついていた彼女は、手で口を隠した。うっすら見えた耳は、ほんのりと赤く染まっている。

「…だって、なんか、恥ずかしい、だろう?あんな風に言ってもらったあとに、普通に話すの」

「うっわぁ、女々し〜」

「女なんだから、別に女々しくていいたろう」

1つ咳払いをして、俺の方を見てくる。

「それで、君の主人について1つ聞きたいんだが、いいかい?」

「えー?そんな話せることないと思うけど」

というのも、俺はあのクソ女とある契約を結ばされている。それは奴隷契約だ。結ばれた者は、主には従順に従わなければならない。そして、その契約自体に、主の個人的なことを許可なしに話すことは許されていないのだ。だが、ヴィアはそんなの構いっこない、とでも言いたげに口角を上げた。

「口に出さなくても大丈夫さ。ボクの能力は読心で、心で何を考えているかが分かるからね。それなら、君にも出来るだろう?」

「えぇ?そんなとんでもない能力だったのかよ」

「そうだよ。それで?へぇ、なるほど。主人はあの問題児か。顔があまり見えなかったから分からなかったな」

そこから、ヴィアは次々と俺の契約内容を読み上げていった。一言も喋っていないのに、その全てが見透かされている。なんだか、変な気分だった。だけど、それ以上に、ただ凄いと思った。

「ふーん、なるほどね。これくらいの契約だったら、ボクでも解除出来るよ」

「え!?で、でも、あのクソ女は、自分が承諾しないと解除は出来ないって言っていたけど?」

「ふむ。まぁ、それが契約解除の1番ベタな方法だね。けれど、一騎打ちならば話は別だよ」

一騎打ち、あのクソ女が定期的にやっている賭け事だ。トレビアと能力を駆使して、勝負をすることだ。アイツは基本的に、物理での殴り合いばかりだったが、ポーカーとかブラックジャックなんかのテーブルで出来る定番のものでも良いらしい。それに勝った者は、自分の望んだ物を奪えると、そういう話だったはずだ。

「一騎打ち…。でも、アイツと殴りあってもきっと勝てやしないと思うけど。アイツのトレビアは自然で、能力は怪力だし」

「知ってるよ。だから、頭での勝負に持ち込むんだ」

頭での勝負、確かにそれならば勝ち目はあるだろう。俺にだって勝てたんだから。心を読めるヴィアが負ける筈がない。

「ふふ、褒めてくれるのは嬉しいけど、少し照れるな」

「なっ!?か、勝手に覗かないでくれる!?」

「悪いね。けど、勝手に聞こえてきちゃうんだ。まぁ、ガラミユの場合は分かりやすいから、心を読むまでも無いけどね」

「はぁ!?」

完全に舐められている気がする。そんなに俺は分かりやすいだろうか。

「て、てか、ヴィアはいくつなんだよ!俺より年下だったら態度改めろよ」

「急にどうしたんだい?ボクは16だけど…君より下でも態度を改めるつもりは無いよ」

「改めなよ!俺は17で年上なんだから!」

え、嘘、と有り得ないというような顔をしている。前にクソ女のところのメイドに聞いた話だが、年下は、年上を敬わなければいけないらしい。なんだっけ、猫歯列みたいな。

「多分それ年功序列だね」

「だから勝手に読むなって」

「悪いね、でも声が入ってくるものだから、つい」

凄い能力だと思ったが、厄介な能力なのかもしれない。

「それで?結局、君は契約のことはどうするんだい?解除してほしいというのなら、ボクは手を貸せるけど」

「それは、お願い、します…」

少しだけ不安はあったが、俺もこの契約はなんとかしたいとずっと思っていた。まだ1年も経っていないが、もう十分なくらいの被害を受けた。だから、早く解放されたい。

「…君は、被害に遭った自分が、可哀想だと思うかい?」

唐突に何を言い出すんだ、と思った。そりゃ可哀想だろう。脱することも出来ずに、毎日毎日、暴力の嵐なのだから。あんなことを、人間、いや、人間じゃなくてもやるべきではない。そんなものに、耐え続けなければいけなかったんだから。

「君が今まで、どんな苦行を乗り越えてきたのか、ボクには分からない。だけど、可哀想ってだけで自分だけ逃れようとするのは、あまりにも勝手すぎないかい?」

…耳が痛い。でも、俺はあんな場所には居たくない。よく喋っていた他の被害者も居たが、別に、親しい間柄でもない。

「本当に?助けたいとは思わないのかい?」

「…助けられるなら、助けてやりたいけど、そんな都合よくいかないだろ」

「そうやって最初から諦めるのは良くないね。やるだけやってから、諦めるなら諦めなよ」

彼女の言う事に頷いてしまう自分がいる。

「やり方が分からないっていうなら、ボク達が手伝ってあげる」

「それはうれしいけど、なんでそんな色々してくれんのさ」

彼女が俺に手を貸す理由が分からない。別に大してメリットは無いはずだ。

「ライなら、君を有効活用するから、かな」

俺を?どうやって?

「だから、ボクは彼の手助けがしたい。それだけだよ」

ヴィアの顔を見れば、あいつに好意があることなんて、心を読まなくても分かる。

今戻ったっす〜。2人とも居やすか〜?」

「あぁ、ライ。おかえり」

当の本人が急に帰ってきて、咄嗟のことに肩を震わす。ライはヴィアに視線を向けた。

「起きてたんすね」

「あぁ、さっきね」

と嘘をついた。本当はずっと前から起きて、俺と話していたのに。まだあの会話を気にしているのだろうか。

「そうだったんすね。それより、お腹空いていやせんか?会場から適当に取ってきたんすけど」

そう言って、手に持っていた美味しそうな料理が乗った皿を俺に見せびらかしてきた。それらに涎が垂れそうになるのを、必死に堪える。

「あー、ボクはいいや。後で食べるよ。それより、ガラミユはお腹空いてるだろう?今のうちに食べといた方がいいよ」

「え?でも俺、一応ペットってことになってて、そんな豪華な料理…」

「いいんすよ。今は俺達しかいやせんから。好きなだけ食べたらいいっすよ」

2人の気遣いにどうしようかと思っていたところに、食べろとでも言いたげに、俺の前に皿が置かれた。

「い、いただき…っていやいや!ライもお腹空いてただろ!」

危ない、危うく手をつけそうになった。

「いいっすよ。さっき食べてきやしたし」

これも気遣いかもしれない。でも、そんな有難いものを無視する方が、もしかしたら失礼かもしれない。だから、

「ん、ん〜!!んまい!」

料理を口に入れた。乗せられた料理はどれも美味しくて、あれよこれよと頬張っている間に、気付けば全て無くなっていた。初めて食べたご馳走に、腹は満腹だった。

「はぁ〜!美味かった!それで、あんたらはこの後どうすんの?まだ時間はあると思うけど」

「そうっすね〜。適当にぷらぷらしながら時間潰すとしやす。ここの構造を頭に入れときてぇのもありやすし」

「あっそ。ヴィアは?」

「ん?ボク?ボクもライに付いていくとするよ。何に巻き込まれるか分かったもんじゃないからね。ガラミユはどうするんだい?」

そう言われれどうしようかと考え込む暇もなく、ライが口を開く。

「あ、ミユちゃんにはちょっとやって欲しいことがあるっす」

やってほしいこと?内容が不安ではあるが、耳を傾ける。するとライは、1枚の写真を懐から取り出してきた。色が無くて分かりにくいが、顔が整っていることは何となく分かる。

「…誰?この人」

「俺に今回のことを依頼をしてきた、依頼者の弟っす。今ここに居るみたいなんすけど、知りやせんか?」

「俺は知らない。そもそも、俺が此処に来たのって、半年くらい前だし。最近連れてこられた人なんじゃないわけ?」

俺のその言葉を聞いて、ライは写真を再び懐にしまう。そして、不気味に口角を上げ、話し始めた。

「なるほど。それじゃ、その人探してきてくだせぇ」

「は!?」

「だって、ミユちゃん此処にずっと居んのも暇っすよね?それに、俺はミユちゃんを助けたんすから、ミユちゃんも俺を助けてくれなくちゃっすよ」

自分で勝手に助けといて何を言うんだ、という言葉をなんとか飲み込む。なんでそんなことしなくちゃいけないんだ。だけど、彼の言う事にも一理ある。

「…はぁ、分かった。やってあげてもいいよ」

「大分上からっすね。でも今はその返事で十分っす。期待してやすよ」

「…別に。あんたの思うような戦果なんて返ってこないと思うけどな!」

ついカッとなって咄嗟に怒ってしまう。

「あぁ、そうそう、パーティー終わったら俺のとこにきてくだせぇよ。ミユちゃんを居候させてくれそうな当てがあるんで」

「はぁ?…まぁ、行ってやってもいいけど」

色々と怪しい点はあるが、今いる状況を抜けられると思い受けておく。俺の承諾を見れば、ライは適当な笑みを浮かべた。

「どうもありがとうございやす。それじゃ、後は頼みやしたよ。ヴィア、行きやしょうか」

「あぁ、そうだね」

またね、と去り際ヴィアに言われて、そのまま扉を閉められる。色々その場の勢いで受け入れてしまったが、大丈夫だろうか。そもそも、他の被害者が何処に居るかなんて…。いや、もしかしたら、あそこかもしれない。

以前、貴族が壁の向こうに吸い込まれていくのが見えた。他に行く宛も無い。ひとまず、そこに向かおうと腰をあげた。

この先どうなるかなんて、俺は何も知らなかった

今回は前回のミユちゃん視点です。ヴィアとガラミユの年齢の話が書けたので満足です

次回からはまたライに戻ります

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