pet boy
嘘で全てを欺き、秘密を隠し通す
これまでもこれからも、俺の人生は変わらない
目的の為なら、這ってでもしぶとく生きてやる
俺だって普通に生きられると、証明してやる
「助ける為に、来た?あんたの目的って…」
「あぁ、そういや言ってなかったっすね。俺の目的は、このFemalePalaceの破壊っすよ」
彼が驚きの声をあげるその前に、その口を急いで塞ぐ。落ち着いた様子が見れたら、彼を解放した。
「ちょ、本気でそんなこと出来ると思ってるわけ?」
「出来ないだなんて思っていたら、俺は最初からこんな危ないとこに来てないっすよ」
「…だったら、会員じゃなくて、どうにかして掴まったらよかったんじゃないの?」
確かに。逆に何故今までそれが出てこなかったのだろうか。俺は馬鹿か。
「…いやいやいや、会員の方が自由に動けて、潜入も楽っすから。こっちの方で良かったんすよ」
「え、うん。あっそう」
すごく気まずい返事が返ってきた。お陰で室内がしん、と静まり返る。だが、その静寂は自分の腹から出た間抜けな音で破られた。
「…お腹空きやしたし、飯にしやしょうか。食べたいもんあんなら、取ってきやすよ」
「え、だったら、俺も一緒に…」
「良いっすよ。またさっきのと会ってトラブルになっても面倒が増えやすし。だから、ミユちゃんはヴィアのこと見ててくだせぇな」
まだ眠る彼女を指差す。緊迫した現状にあるというのにも関わらず、無防備にベッドで眠り続けている。俺の指示に若干不服そうではあったが、なんとか受け入れてくれる。
「…分かった。それじゃ、あんたが美味しいと思うもの持ってきてよ。俺は食べ物のことよく知らないから」
「…了解しやした。とびきり美味いもん選んできやすね」
世間知らずな彼の頭を雑にくしゃくしゃと撫でる。ガラミユは少し嫌そうにしていたが、それでも構わずに撫でた。
「それじゃ、行ってきやすね」
「…行ってらっしゃい」
ノブを手に掛けながら室内にそう言えば、ガラミユの送り出す声が返ってくる。
その声を背に浴び、客室を後にした。
客室を出たはいいものの、何処に向かえばいいのかよく分からない。カジノまでの道のりは覚えてはいるから、そこからなんとか予測して、最初のパーティー会場の方へと向かっている。向かえているはず。地図は読めるし、方向感覚には自信があるから大丈夫とは思うが、見ず知らずの誰も頼れない城は少し不安になる。
そんなところに、すれ違う貴族が1人居た。丁度いい。道を尋ねよう。
「あの、すみません。メインのパーティー会場に向かいたいんですけど、どこから行けるか存じ上げませんか?」
「ん?それなら、あそこの扉から行けますが…。もしかして、此方に来るのは初めての方ですか?」
「えぇ。招待されたばかりで、今日が初めての参加なんです」
「そうだったのですね。あぁ、その、楽しんでください」
それだけ言って、黒髪を靡かせた彼女は去っていってしまった。最後はどこか引っかかりのある会話だった。今は頭の片隅に入れるくらいにしておこう。
言われた通りのドアを開ければ、確かに最初に足を踏み入れた会場に入ってきた。
いくつか食事が乗ったテーブルがあるため、それらを見て周りながら、何を持っていこうかと選別する。とりあえず、俺が今食べたいものばかりを取っていたら、自然と肉料理ばかりになってしまった。流石に野菜も少しは持っていこうと、サラダも皿によそう。カトラリー類も持っていることを確認し、極力怪しまれないよう、会場をさっさと退出した。
少し時間が経ってしまったような気がして、急いで客室へと戻ってきた。
「今戻ったっす〜。2人とも居やすか〜?」
「あぁ、ライ。おかえり」
帰ってみれば、ヴィアがすっかり起きていたようで、テーブルでガラミユと共にお茶にしていた。
「起きてたんすね」
「あぁ、さっきね」
あぁ、と言った時に声が若干上ずっていた。恐らく、その前から起きていたのだろう。もしかしたら最初からかもしれない。
「そうだったんすね。それより、お腹空いていやせんか?会場から適当に取ってきたんすけど」
そう言って、手に持っていた美味しそうな料理が乗った皿を見せびらかす。
「あー、ボクはいいや。後で食べるよ。それより、ガラミユはお腹空いてるだろう?今のうちに食べといた方がいいよ」
「え?でも俺、一応ペットってことになってて、そんな豪華な料理…」
「いいんすよ。今は俺達しかいやせんから。好きなだけ食べたらいいっすよ」
ガラミユの前に皿を置けば、興味津々といった風に料理を眺めていた。
「い、いただき…っていやいや!ライもお腹空いてただろ!」
「いいっすよ。さっき食べてきやしたし」
周りの目を気にして全然食べれていなかったが、そう適当に誤魔化す。だが、その誤魔化しは効果があったようで、ガラミユはカトラリーに手を伸ばし、食を口に付けてくれた。
「ん、ん〜!!んまい!」
ガツガツと礼儀なんてものを気にせずに貪っていたら、1人前の皿に入れられたよりどりみどりな料理もすぐになくなっていってしまう。
「はぁ〜!美味かった!それで、あんたらはこの後どうすんの?まだ時間はあると思うけど」
「そうっすね〜。適当にぷらぷらしながら時間潰すとしやす。ここの構造を頭に入れときてぇのもありやすし」
「あっそ。ヴィアは?」
「ん?ボク?ボクもライに付いていくとするよ。何に巻き込まれるか分かったもんじゃないからね。ガラミユはどうするんだい?」
「あ、ミユちゃんにはちょっとやって欲しいことがあるっす」
ヴィアの言葉にまったをかければ、当然2人から疑問の視線が向けられる。そこで俺は、1枚の写真を取り出した。依頼者の弟、ダンの写真だ。
「…誰?この人」
「俺に依頼をしてきた、依頼者の弟っす。今ここに居るみたいなんすけど、知りやせんか?」
「俺は知らない。そもそも、俺が此処に来たのって、半年くらい前だし。最近連れてこられた人なんじゃないわけ?」
その言葉を聞いて、写真を再び懐にしまう。ここからが彼の支払う対価だ。
「なるほど。それじゃ、その人探してきてくだせぇ」
「は!?」
「だって、ミユちゃん此処にずっと居んのも暇っすよね?それに、俺はミユちゃんを助けたんすから、ミユちゃんも俺を助けてくれなくちゃっすよ」
自分で勝手に助けといて何を言うんだ、と言いたくなる彼の気持ちも分かる。けれど、恩を感じているのならば、それは行動で返して貰わなくては。
「…はぁ、分かった。やってあげてもいいよ」
「大分上からっすね。でも今はその返事で十分っす。期待してやすよ」
「…別に。あんたの思うような戦果なんて返ってこないと思うけどな!」
謎なキレられ方をしつつも、伝えそびれていたことを伝える。
「あぁ、そうそう、パーティー終わったら俺のとこにきてくだせぇよ。ミユちゃんを居候させてくれそうな当てがあるんで」
「はぁ?…まぁ、行ってやってもいいけど」
すごい不服そうだが承諾はしてくれたということでいいんだろう。
「どうもありがとうございやす。それじゃ、後は頼みやしたよ。ヴィア、行きやしょうか」
「あぁ、そうだね」
ヴィアの言葉を聞いて、ガラミユの残った客室を後にする。
それから、城内を動き回り、頭に地図を生成していった。途中、すれ違った貴族たちに挨拶も交わせば、その時はあっという間にやってきた。
パーティーの幕開けだ
今回はエピソードタイトルも本文も短いです。初めて3000字切った気がします。急ぎ足な内容だったので、もしかしたら後で書き直す、、かもしれない。




