第一話 出会いとはじまり
二人の少女を中心としたファンタジー小説です。初投稿なのでいたらぬ点が多数あると思うので、読まれた方は感想やアドバイスをしていただけると幸いです。
それでは物語をお楽しみください。
なんでもないはずの昼下がり、薬草を取りに行った森の中で、私は魔物に追われていた。
「はっ、はっ、はっ」
息を切らしながら無我夢中で逃げる。最近魔物の目撃例が増えているとは聞いていたが、まさか普段から利用しいる森に居るとは想像していなかった。自分の注意不足を呪いながらも走り続ける。しかし魔物との体力の差は比べるまでもなかった。
「こっ、こないで…」
へたり込み、震える声を出す。追い詰められ、目をつぶる。
その時あたりが暗く染まり、
「ムーンショット」
凛とした声の少女が、月のような光と共に現れ魔物を倒したのだった。
「あ、ありがとうございます」
「…、別に」
感謝の言葉を伝えたが随分とそっけない態度をとられた。
「あなたのおかげで助かりました。それで、あの、もしかして…魔女さんですか?」
口ごもりながらも質問してしまう。彼女は黒いローブに黒い帽子、黒い手袋とこれでもかと黒を身に着け、そして箒をもって立っていていかにも物語にでてくる魔女がそのままの飛び出したかのようだった。さらに綺麗な黒髪を長く伸ばしていて暗い―というより黒い―印象を受けたが、切れ長な目の瞳だけ金色に薄く輝いていて目を惹かれる。綺麗だ、思わずそう感じる。
「魔女だったら、何」
「い、いえ、珍しいなと思って。それに、お綺麗でつい見とれてしまって」
「…」
つい思ったことを口に出し、随分と怪訝な顔をされてしまう。しかし黙っているのも気まずく、おずおずと喋りかける。
「私は、セレスティアと申します。よかったらお名前をお聞きしてもよいですか?」
「…クレス」
「ではクレスさん、よかったらお礼をさせてください。あなたがいなかったら私は―」
「勝てたでしょ」
「え」
思わず聞き返す。
「私があの魔物を倒さなくても、あなたは倒せたはずだ。でも、そうしなかった」
「そ、そんなことは…」
いきなり問い詰められ、黙ってしまう。頭の中にはぐるぐると単語が浮かぶがどれも不正解に感じてしまう。それでも言葉を絞り出そうとして
「…はぁ、お礼」
「えっと」
またしても虚をつかれる。
「お礼、してくれるんでしょ」
「は、はい!」
「じゃあ、ご飯でもごちそうしてちょうだい」
「わ、わかりました。おいしいお店を探しますね」
セレスティアは控えめに笑いながらそう答え、二人で町まで歩きだすのだった。
魔物が増えたという情報を聞き森に調査に入ったら、妙なことになってしまった。クレスは歩きながらセレスティアをちらりと見る。身長は150㎝ほどだろうか、内巻きボブの金髪、細い眉は少しだけ垂れていて、紫紺の丸い大きな瞳が特徴的だ。全体的に可愛らしい印象を受ける。そんな彼女にさっきは質問をしただけのつもりが怒っている風になってしまった。不愛想な性格だと、言われたことがある。嫌われたくてこの態度をとっている訳ではないが、自然とそうなってしまう。しかし、まさかご飯を一緒に食べることになるとは想像していなかった。助け船など出さずに、帰れば良かったかもしれない。町への途中に好きな食べ物を聞かれたので、甘いものと答える。そして案内された店で食事を始める。
「クレスさんはどうしてあの森にいたのですか」
「魔物が増えたという話を聞いたから調査に入っただけよ」
オムライスを口に入れながら答える。ちなみに彼女はクリームパスタを注文していた。
「そしてあなたが襲われていた」
「私もその噂は耳にしていたのですが、不注意でご迷惑を…」
申し訳なさそうに謝られる。またやってしまった。気まずい沈黙が流れる。私としてはこのまま黙っていても問題なかったのだが、こちらからも質問する。
「あなた隠しているけど相当魔力を持っているでしょ」
「は、はい。でもどうしてそれが…」
なぜ分かるのか。彼女は不安そうな顔で尋ねてくる。確かに彼女の魔力偽装は腕の立つ魔法使いでも一目でわかるようなものではない。
「魔女、だからね。この時代にこんな格好をしている普通じゃない奴には、普通じゃないことがなんとなくわかるの」
「そう、ですか」
嘘だ。私も彼女が魔力を秘めていることは最初はわからなかった。ただ、彼女が魔物にやられそうになる瞬間のほんの一瞬、わずかに知覚できるような時間の刹那に凄まじい魔力の流れを感じた。
「そ、それでクレスさんはこれからどうされるのですか」
「魔物の調査結果をメルクーアの王国軍にでも叩きつけようかしら」
この世界は主に六大国とよばれる国が支配している。メルクーアはそのうちの一つであり水の国と呼ばれている。
「叩きつける、ということは依頼されて調査をされたわけじゃないのですか」
「ええ、気になったから自分で調べただけよ。それを王国軍が調査結果を読んで対策してくれればより私は安全に暮らせるしね」
「無償で魔物について調査して、それを報告するなんてクレスさんは立派な方なのですね」
心底感心したような目でみつめてくる。
「そんなんじゃないわ。勘違いしていると思うけど私はただ純粋に自分の身が心配だからやっているだけで他人なんてどうでもいいの」
「それでも、私を助けてくださりましたし、きっと他の人の役にも立ちます」
私はその言葉に曖昧に笑うのだった。
食事も終えて私たちは店を出る。私はもらえるものはもらう主義なので―そもそも甘いものが好きだと答えたので当然だと思うが―きっちりとデザートも頂いた。
「それではクレスさん、本当にありがとうございました」
「ええ、きっちりお礼をしてもらったから」
そうして別れようとした時だった。突如として空が漆黒に満ち、巨大な竜の魔物が町を襲う。建物が崩れる音と、悲鳴がこだまする。異常事態だ。魔物が増えたといってもこんな化け物の目撃情報なんて聞いたことがない。それに町にいきなり出現したなんて、どこから現れたのかまるで見当がつかない。
「み、店が―」
「来ないで、助けて―」
「逃げろ逃げろ逃げろ、殺される―」
あたり一面はパニックが伝染し狂乱状態だ。四方八方から絶叫が聞こえてくる。
「逃げるわよ」
一人で逃げてもよかったが声をかける。
「クレスさん、でもこのままだと町が」
「私に戦えって?」
セレスティアは苦しそうに口を開く。
「せめて、町のみなさんが逃げる時間を稼ぐだけでも」
「嫌よ」
彼女の言葉を遮って続ける。
「私があのときあなたを助けたのはそれが危険じゃなかったからよ。この魔物も私が全力で戦えば勝てるかもしれない。でも私は王国軍でも自警団でもない。冷たいけれど自分の身を危険にさらしてまで戦わない。言ったでしょ、自分の身が心配で他人なんてどうでもいいって。」
「そうですよ、ね…」
そうこうしている間にも竜は暴れ続けている。
「私は逃げるけど、町が壊されるのが嫌ならあなたが戦えばいい」
それだけ告げて私は走り出す。これが不愛想と言われる原因だろうか。このままだと被害が拡大するのを知って、彼女が力を隠していて、そしてそれを使うことを躊躇っているのを知って。それでもなお自分のためだけの行動をとってしまう。悪いとは思わない。ずっとそうして生きてきたのだから。そうしないと生きられなかったのだから。
ちらりとセレスティアのほうを振り返る。蜘蛛の子を散らすようにみんな逃げた中一人で突っ立っている。竜は格好の餌食を見つけたといわんばかりに彼女に向き合い、その巨大な手を振り下ろす。
「これはきっと、きっと逃げ続けた私への罰」
セレスティアは目を閉じ、胸に隠したペンダントを握りしめる。
一呼吸し目を開け、魔力を迸らせる。
「星々の光よ、貫け」
次の瞬間、まばゆい光があふれだし、一点に収束したかと思うと竜の体を貫いた。
「今のは、六属性の魔法…!?」
クレスは信じられないものを見て立ち尽くす。しかし、セレスティアがふらふらと倒れるのを見て急いで助けに行く。
「セレスティア!」
「クレス、さん。名前、初めて呼んでくれましたね。」
「こんなときになにを言ってるの。厄介なのに見つかる前にあなたを連れて逃げるわよ」
有無を言わさず、彼女を担いで箒に乗る。
「夜の衣よ」
姿を隠す魔法を使い、全速力で飛んでいく。いまだにさっき起きたことが信じられず、気を失ったセレスティアを見る。まさか、こんなところで出会うなんて。
「星屑の巫女」
そう小さく呟き、二人は飛んでいくのだった。
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「団長、逃げるのに必死で、誰も竜を倒したものを見ていないそうです」
「そうか」
突如として竜が出現したとの知らせを受け、王国軍が到着した時にはもう何者かに倒された後だった。今は周囲の警戒をしながら、瓦礫の撤去や怪我人の手当てをしている。
「何者だと思いますか」
「さあね、ただ…」
竜の傷跡を見ながら、フロウは楽しそうに笑う。
「面白いことになるかもしないぞ」
もしこの話を読んでくださった方がいるのならありがとうございます。今後も続けていけたらといいなと思っています。次回更新でお会いしましょう。




