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81話 念願のご褒美

「ただいま戻ったわ〜」

「シャルティア様お帰りなさいませ」

「やあ、ユリスくん。

 聞いたよ、制御機構が欲しいんだって?」

「ご無沙汰していますディラン殿下。

 検証したいことがあるので騒がれないようにという目的もありますが、やはり単純に欲しいと思いまして」


シャルティアが相談から戻って来たためユリスは結果を問おうとする。が、そのすぐ後ろから入って来たディランに話しかけられたためにそちらに意識を向ける。


「検証?」

「例の紙の件ですね」

「ああ、それか…なるほど」

「ディーラーン?ジルバを待たせてるんでしょ?

 話は後にして早く行くわよ」

「ああ、そうでした。

 それじゃあ皆ついて来てくれ。向こうでレイラさんの褒賞も渡す事になったからね」


ディランとシャルティアの案内を受け、ユリス達はジルバが待つという応接室へと向かっていく。

応接室の中では既に国王ジルバと宰相レイトが待っていた。


「2人ともよく来てくれた。

 早速で悪いが、まずは褒賞の授与をしてしまおう」

「ではレイラ・フォーグランドからですね。

 褒賞は『[魔弾の射手]の紋章球』となります」

「うむ。

 レイラよ、其方が見つけ出した生成ダンジョンのレシピは王国が今最も欲している戦力の拡充へと多大な貢献を齎すことだろう。よってその功績を讃え、褒美をとらせる事とする。よくやってくれた」

「勿体なきお言葉、ありがとうございます。

 今後も日々精進に努めて参ります」


これが正式な授与の雰囲気なのだろう。内密の話もあるため場こそ簡易的だがそんな事は気にならないほどの厳かさがある。


「次はユリス・フローウェンとなります。

 褒賞は『ダンジョン制御機構』です」

「ユリスよ、其方が望んだ褒賞は本来全てを国が管理し運用するものだ。だが其方がこの国へと齎した利益は生半可なものではない。新たなダンジョン構築盤の提供、国民の生活を向上させる魔道具の考案、長年謎とされていたスキルやレベル停滞の解明、そして…非公式ではあるが王都壊滅という未曾有の危機から皆を救ってくれた。

 それだけの功績を成してきたのだ、褒賞も然るべき物でなくてはならないだろう。故にこれまでの功績を讃え、望みのままに褒美をとらせる事とする。本当によくやってくれた」

「ありがとうございます。今後も王国の発展のため一層尽力する事と致しましょう」


ユリスはレイラを見習い、正式な動作にて応じる。

背筋を伸ばし、右手で握った拳を胸に当てるという敬礼のような動作で男女で違いがないことが幸いした。ユリスはこのような場での動き方など全く知らないので、そうでなければ適当に誤魔化していた事だろう。


「これで正式な授与は完了だ。

 ディラン、現物を渡してやってくれ」

「分かりました。

 ではこっちがレイラさんの『[魔弾の射手]の紋章球』」

「ありがたく頂きます」

「で、こっちがユリスくんの『ダンジョン制御機構』だね。悪いけど大きいから床に置かせてもらうよ」

「ありがとうございます」


ディランは紋章球は高級そうなお盆に乗せて手渡す。一方の制御機構は流石に渡しづらいため、ユリスの目の前に置いて渡す。


「さて、ようやく褒賞を渡すことができたわけだが…ユリスよ。すまないがいくつか条件を付けさせてもらう」

「条件ですか?」

「うむ。まず、お主が制御機構を持っている事は出来るだけ公言しないように」

「まあ、当然ですね。私も騒がれるのは嫌ですし」

「次に、使用するのはお主のパーティーのみだ」

「…パーティーの条件は?」

「お主の関係者もしくは秘密を明かしてもいいと思った者。まあ、これまでと同様に同学年1組の生徒辺りまでとなるか。もちろん参加する者には守秘義務が発生する事は説明しておくように」

「分かりました」

「そして最後。

 それは学園のものと同じタイプなのだが、何かわかっても設定はいじらないようにしてくれ。というか解析はしないように」

「…何故ですか?」

「悪いが王族でないお主には詳細を説明することが出来ん。

 だが全く説明なしというのも納得できんだろう。そうだな…ひとつ言える事は神託が関わっている」

「そういう事でしたら承知いたしました」


(ヴェルの仕業か…

 まあ師匠がある程度解析済みだし、機能も学園と同じなら十分だ。問題はないな)


完全に信じているわけではないが、制御機構についてはサラの残した魔本にてある程度解明済みなため、興味はそそられない。

それよりも特殊ダンジョンの方が重要だと最後の条件に関しては気にしないことにしたようだ。


「では、これで本当に褒賞の授与は終わりだ」


ジルバの合図でユリス達は部屋から退出し、始めにいた客室まで戻る。

ついて来たディランからはハズレ紙を鑑定する人間には当てがあるので、白紙化する魔道具の開発に専念して欲しいと言われる。了承したユリスはジラードに渡すつもりだった蛇腹剣のレシピを可能であれば渡して欲しいと託す。無理なら宝物庫にでも入れてくれとの言を添えて。

受け取ったディランは、何かあれば直接でもダレン経由でもいいから伝えてくれと言い残し退出していった。

シャルティアは例のお茶会について詳細が決まったら連絡すると言い残し、同様に退出。

予定した用事も全て完了したため、ユリス達も長居は無用とさっさと帰寮することに。



「はー、ようやく終わったー…!」

「やはり緊張が続くと疲れますね」

「そうかなー?私はもう慣れちゃったからかそうでもないや」

「私は当分慣れそうにありません…」

「ははは。

 まあでも、学園長への根回しも終わったから今日はもうのんびりだね。まだやる事はあるけどそれは明日にしようか」


学園へと帰って来たユリス達は寮へと帰る前に学園長室へと寄り、セルフィに報告していたのだ。

学園側は評価対象として日付と到達階層のみだが、学生のダンジョン探索履歴を記録している。これは学園タイプの制御機構に備わっている機能なので、ユリスが持つものにも同様の機能は備わっている。

だが、ユリスが利用するダンジョンには機密も多く含まれているため、履歴の提出を求めない代わりに評価対象にもならないとの扱いになる。もちろんパーティー内に第2種の生徒を入れる場合も同様だ。

また、事情を知らない教師陣の疑念が高まるという理由から、たまには学園の方も利用するようにとの注意もされた。

それらを乗り越えてようやく自室へとダンジョン制御機構を置けるようになったのだ。

昼頃に王城へ向かったはずなのに既に外は真っ暗で、もう何もやる気はしない。そんな状態のユリスが達は残りの時間をのんびりと過ごし、1日を終えるのであった。



翌日…


「それじゃあ、まずはレイラの紋章から変えようか」

「はい、お願いします」


早速褒賞でもらった紋章を付け替える。対象は中級ダンジョン用に臨時で付けていた[光の心得]だ。

ちなみにスキル『魔弾』がある事は貰う前にユリスが確認済みなため問題はない。


「これでおっけー

 後はどうする?昨日も話したけど射撃に使えそうな[観測者]を[火魔法の心得]と付け替えるかどうか」


昨日ののんびりタイムの雑談中にレイラの紋章を鑑定していたのだが、紋章器レベル1になれば火炎の指揮者で火魔法を覚えることが分かったのだ。つまりはベースレベルが30になれば火魔法の心得を付けたままにしておく意味が薄くなる。しかも残り1つを心得系にしたところで紋章効果である初心への誘いは発動しないので、ますます重要度は低い。なので、他に使えそうな紋章があるならそっちの方がいい場合が多いのだ。


「レベル1で鑑定も使えるようになるんですよね?

 考えましたが、やはり鑑定は魅力的ですしお願いできますか?」

「ん、了解。

 レベルはまだ届いてないけど、中級探索してたらどうせすぐだし今やっちゃおうか」

「はい、お願いしますね」


そうしてユリスは収納から取り出した観測者の紋章をレイラに宿す。しかし、ここで少々ハプニングが発生する。


「あら??

 これってまさか…」

「どうしたのレイラちゃん?」

「いえ…どうやら紋章効果が発動したみたいでして」

「え!?まじか、どんなやつ?」

「えーと…名前は『天裁の狙撃手』で効果は…多いですね。こんな内容です」


レイラは徐に紙を取り出してその内容を書き出して2人に見せる。

―――

[天裁の狙撃手]

【MP】ランク+5

【INT】ランク+5


【スキル】

『千里眼』、『並列思考』、『破魔』


【特殊効果】

奥義『天の裁き(ジャッジメント)』の習得

奥義『遅延増幅(ディレイチャージ)』の習得

魔弾の銃座となる陣を任意の場所に展開、移動ができる

魔弾タイプ“光線”の威力と規模の上昇及び限界突破

EX技能『魔弾付与』に効果“自動追尾(ホーミング)”を追加

―――


「おおー…スキル3つ…さらに特殊効果まである。っていうか奥義って紋章効果でも覚えるんだ」

「私のやつよりもアビリティの総上昇量は低いけどスキルとか特殊効果が多いわね」

「僕のは2人のより明らかに上昇量が高いけど、そもそも紋章3つで発動するやつだからランクが違うのかな…?」


その段階でお互いの紋章効果について全く把握していないことに思い当たった2人は同じように書き出して見せ合うことにする。レイラのために各スキルの効果も添えた状態でだ。

―――

[夜魔の天騎士]

【STR】ランク+4

【VIT】ランク+3

【INT】ランク+4

【RES】ランク+3


【スキル】

『闇・光属性変換』、『黒き光』、『闇夜の翼』、『状態異常完全耐性』


【特殊効果】

夜の間全ての経験値取得量が増加する。

夜の間光・闇属性が大きく強化される。

紋章進化『夜魔人』が解放される。

―――

―――

[魔神の愛し子]

【MP】ランク+10

【INT】ランク+10


【スキル】

『魔力還元』、『魔の化身』


【特殊効果】

魔力を使用するスキル効果の向上

魔力を使用するだけで経験値を得ることができる

純魔力系スキルに設けられた全ての制限を撤廃

―――


こうしてみるといかにユリスの紋章効果がぶっ壊れているかがよく分かる。


「ユーくんのやつアビリティ上昇量おかしいよね?…スキルもだけど。上昇量なんてレイラちゃんの倍じゃない」

「シエラのは上昇項目もスキル量も多いし、紋章進化まで出来るから十分優秀な内容でしょ。内容もシエラにとってはピッタリだろうし」

「お二人のを見ると私のやつが霞んで見えますね…」

「そう?僕は正直言ってシエラのよりやばいやつだと思ってるけど…」

「え、そうなの?」

「奥義の名称が…チャージ系は結構やばいんだよね。

 しかも限界突破の特殊効果があるから消費を気にしなければどこまでも上がっていくっていうのがね…

 ほら、僕もそうだけど狐獣人って尻尾に魔力を貯めるスキルがあるからさ」

「つまり、レイラちゃんは魔力次第ではどこまでも光線系魔弾の規模を広げることができると…そういう事?」

「うん。ちなみに巨石を止めた時に似たようなチャージ系奥義を使ってるよ。

 僕も特殊効果で一部のスキルや奥義にある制限の類は無くなってるしね」

「あれを引き起こす奥義と似た効果だと言われると途端に凄いものに見えてきますね」


ユリスは名称から奥義がやばいものだと判断しているが、それを抜きにしても優秀な紋章効果であると言える。

こうなってくるとシエラの紋章効果が一歩劣るように見えてしまうが、耐性スキルや進化など他の2つには無い優秀さを持っているので、やはり使いこなせるかどうかが問題だろう。


「私、今の紋章効果が発現してからほとんど戦闘してないんだよね。だからイマイチ戦闘スタイルの確立も出来てなくて」

「シエラはユニークスキルも夜間限定みたいな感じだし、闇夜の翼の発動を維持しながら魔装を軸に戦えれば相当な戦闘力になりそうだよね」

「この黒き光というのも合わせれば更に威力アップですね」

「確かにそうね…うん、凄いことになりそうだわ。

 レイラちゃんのは千里眼と並列思考で銃座を展開できれば遠くから一方的に相手を攻撃し続けられるわよね」

「考えてみればそうですね…練習は必要でしょうが、かなり使えそうな戦法です…!」

「銃が手に入れば魔弾と実弾の2パターンでいろんな相手に対応できるようになるだろうね。ただ、銃がないと射撃技アーツも使えないし、まずは魔弾がメインかな?

 もしかしたら、銃があれば魔弾でもアーツが使えるようになるかもね」


そうして皆の紋章効果の内容を知った事でお互いの戦闘スタイルの提案ができるようになり、それは楽しそうに議論が白熱している。


「ひとつ提案なんだけどさ。シエラも一緒にダンジョン探索行かない?制御機構を貰ったことで自由に使えるようになったし」

「確かにそうですね!

 お姉様とも一緒に行きたいです!」

「うーん…使用人の仕事もあるから毎回とはいかないけど、時折ついていくことにしようかな?」

「じゃあ決まりね。朝の段階で都合がつきそうな場合は一緒に行くことにして、そうでなかったら自由ってことで。

 制御機構は余ってる部屋を改装して防犯性を高めたら置きっぱなしにしようかなと思ってるから、1人で探索しに行ってもいいからね」

「おっけーよ。

 余ってる部屋っていうのは昨日確認してたレイラちゃん側の部屋のこと?」

「うん。あそこの壁と床を付与で強化して、扉には認証効果付きの魔導錠を取り付ける予定」

「そこまですれば誰も勝手に入れなさそうですね…」

「で、中にメダルを置く棚と共同倉庫として空間収納の魔道具を置いておく感じだね」


どうやらユリスはサラの作った食材保管庫である収納魔道具を再利用して倉庫とするつもりのようだ。2人にはその存在を先日サラの話になった時に既に明かしてある上、中身の食材は自前の収納へと移動済みである。


「この前見せてもらったあれですね。

 見た時はびっくりしましたけど、収納があれば使い道が少ないと思っていたのですよね。

 でもそういった使い方ができるなら便利ですね」

「確かにね。収納は便利だけど管理は個人で完結しちゃうものね」

「共同倉庫に入っているものは各自出し入れ自由って事で。ただ、定期的に皆で整理はするからね?容量も無限じゃないから」


その後も着々と運用法が決まっていき、ダンジョン制御機構を設置する部屋の工事が早速スタートするのであった。


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