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78話 魔法書を使おう

装備作成の依頼も無事に終わり、自室のリビングにて寛いでいると、ユリスがふとフォーグランド邸での報告が中途半端に終わっていたことを思い出す。


「そういえばハズレ紙の内容って話したっけ?」

「話して…ませんね。

 引越しした後にお菓子については話しましたが、そちらは何も言っていなかったような」

「なになに、ハズレ紙?そういえば新発見だーって言ってたね。結局あれって何だったの?」

「エクストラ技能付きの鑑定で判別できるアイテムだね。全種類集めるとスキルの技能書とか魔法書、レシピアイテムなんかになるって感じの」

「あー…うん。それは確かに新発見ね。

 今日渡してたレシピの出所ってそれだったのね…」

「まあね。

 それで、レシピはほとんど渡してきちゃったけど指南書関係はまだ残ってるんだよね。2人が使えそうなのもあったから、はいあげる」


ユリスは机の上に指南書を広げる。


「左からアロー、ソード、ボムの魔法書ね。

 後レイラにはこれも。射撃技アーツの技能書だから紋章に付いてたら使って」

「え!?使っていいの?」

「うん。だって僕は魔法使わないし。

 下級だからレアでもないしね。多分出回ってるハズレ紙を鑑定して回ったらすぐに集まると思うよ」

「そういう事でしたら使わせていただきますね」

「まあユーくんだもんね、気にしたら負けか。

 私も使わせてもらうわね。ありがと♪」


話し合った結果シエラがアロー、レイラがソードとボムを使う事に。

明日ルイス達は外に出るそうなので秘匿が可能なアリーナで習得する事に決まり、話題は鑑定やダンジョンレシピへと移る。


「私は18歳までパーソナルスキルを増やす気はありませんので」

「レイラちゃん?…あー、そっかそれがあったっけ」

「シエラも知ってたんだね…知ってたなら教えておいて欲しかったな。

 ……手遅れではあったけど」

「いやー、スキル石なんて滅多に使う物じゃないしね。私ももう23だし、レイラちゃんの言葉を聞くまでは完全に忘れてたのよ」

「そっかぁ…まあいいか。

 聞いていたとしても出来ることは何もなかったし」

「んー?その言い方ってことはユーくん…もしかしてずっとそのまま?」

「………」

「そっかぁ…ふふふ♪」


みるからに上機嫌そうな笑顔を浮かべるシエラはそれを隠すように後ろからユリスを抱きしめる。

レイラも対抗して横から腕に抱きついている。


「…鑑定の技能書はシエラが使う?」

「んー…まあ、あるに越したことはないだろうから貰おうかな?

 ユーくんがしちゃうし、鑑定自体そんなに使ってないんだけどねー

 あ、これもレア物じゃないよね?」

「今回だけで…500枚中2枚もあったからレアじゃないと思うよ」

「なら貰うわ」

「後は…残っているのはダンジョンレシピですか?」

「そうだね。

 名称は特殊ダンジョンレシピ“賭鼠(かけねずみ)遊戯場(ゆうぎじょう)”なんだけど、これってアイテムなんだよね。つまり…」

「つまり?」

「アイテムとして使用できるって事。

 師匠の書いた魔本にも記述があったしね。メダルを嵌めていない構築盤の中心にダンジョンレシピを置いて生成すると特殊ダンジョンになるって」

「あの時の魔本ね…サラの研究成果なら信憑性抜群だわ」

「ユリス様のお師匠様はサラというお名前なのですか?」


レイラの一言でサラについてまだ説明していなかったことに気づく2人。


「あー…そういやまだ教えてなかったっけ…?

 師匠の名前はサラ・フローウェンだよ。僕も書類上では家名を継いでる事になってるから正式な名前はユリス・フローウェンね。基本名乗らないけど」

「えええええっ!!!

 サラ・フローウェンといったら世界最高の魔道具職人じゃないですか!?

 あ、でも、なんというか…納得ですね」

「あれだけ色々やらかしてるんだから、むしろそれくらいじゃないと納得出来ないわよね」


一般人からしたら驚愕に値する情報なのだが、ユリスの規格外っぷりをよく知っているレイラは驚きはしたもののすぐに納得の様相を見せる。


「お父様が講義を依頼していましたが、まさかこの事を知ってのことだったのでしょうか…?」

「多分知ってるんじゃない?ディラン殿下から色々聞いたって言ってたし。

 というか魔道具関係のサポートをしてもらう関係上、その辺りは知っておいてもらわないと困るから、知らなかったら今度言っておこう」

「フォーグランド伯爵も大変ね…」

「あ、講義といえばレイラはどうする?

 向こうでやる時に参加してもいいけど、希望するならこっちで個別に教えることもできるよ」

「個別でお願いしますっ!!」

「私もね!」

「ん、なら定期的に時間とって授業しようか」


(ホワイトボード的なやつ作っとこ…多分魔力ペンの応用でいけるし)


「話を戻すけど、ダンジョンレシピの使い方ってメダルを嵌めてない構築盤に紙を乗せるんだよね…これ絶対目立つよね?」

「確実にねー

 ただでさえ特待生がダンジョン広場にくると注目されるっていうのに、変な行動をしていたらなおさらよ」

「ということは誰もいない時を見計らってすれば…言ってて思いましたが無理ですね」

「だよねー…今後検証していくためにも制御機構が手持ちにあるといいんだけど、どうにかして手に入らないかなぁ…

 ―って事で、ちょっと頼みに行こうかな〜と」


ユリスがわざとらしく悩む仕草を見せた後に本題へと踏み出す。


「頼みにいくって、もしかして王城に行くの?」

「うん、そういえば褒賞をまだ選んでなかったなと思ってね。これまでの分全部使ってもいいからおねだりしようかな〜って」

「あ!ちょっと前に催促が来たの言ってなかった!

 丁度よかったわ。レイラちゃんも言われてるから一緒に行って第1種の褒賞選ぼうね?」

「はい、でも私はほとんど決まっているようなものですが」


レイラが父親から聞いた紋章[魔弾の射手]について説明をする。


「昔見たとなると、品評会で流れてないかが心配ね…

 まあ、欲しいものが決まってるならおっけーよ。リストになくても欲しいって言えば探してくれるしね。

 誰かさんみたいに保留にばかりされちゃうと困ちゃうもの。ティア様がリストの確認にすら来てくれないって拗ねてたよ?誰かさん?」

「だれのことだろうねー?

 じゃあ、そういう事でシエラ。いつ行っていいか確認しておいてもらえる?」

「分かったわ。

 そうなると…明日の午後は寮にいないから覚えておいてね」

「「はーい」」



…翌朝、3人は魔法の習得のためにアリーナへと足を運んでいた。


「下級の魔法書だと、持ったまま書いてある魔法名を読み上げるだけで習得できるみたい」

「へー、簡単なのね。

 …文字が光ってるしこれかな?それじゃあ、『ダークアロー』…っとと、ほんとに出た!」


シエラが魔法名を唱えた瞬間に的へ向かって黒い矢が飛んでいき、的へ蜘蛛の巣状の破壊痕を残しつつ後ろへと貫通した。


「見た感じボールとランスの中間みたいな威力ね。

 効果範囲はバレット並みに狭いからちゃんと狙う必要があるけど、ボールよりも燃費はいいし結構使いやすい魔法かな」

「私の方もやってみますね。

 では、『ファイアボム』!…なるほど。

 次です。『ファイアソード』…あら」


ファイアボムの方はターゲットとした的の近くで爆発と共に火が飛び散る。ファイアソードの方はアローやランスと同じく手元で剣の形になった火が的に向かって飛んでいくという魔法であった。


「なんというか…微妙、でしょうか?

 ボムの方はこの間覚えた『イグニッションフレア』の縮小版といった感じですね。ソードは…威力は結構高いのと刺さっても炸裂しないようなので、扱い方次第ですか?」

「射出しないで手元か離れたところで維持したまま動かせる?」

「んーと…あ、出来ますね。

 しかもそういう仕様なのかイメージするだけで簡単に出来ます。ターゲッティングだけだと勝手に射出されるみたいです」


どうやら振り下ろしや薙ぎ払いなど簡単な動きであれば仕様の範囲内であったようで、レイラも簡単そうに操作している。少し消費が重めなことを抜きにすれば利便性の高い魔法と言っていいだろう。


「…ん?あれ?

 ねぇユーくん。魔法書って覚えたら消えて無くなるんだよね?文字は光らなくなったけど、紙は消えないよ?」

「うん?指南書は内容を習得したら消えるはずなんだけど…何でだ?」


ユリスが付与の技能書を使用したときは習得した時点で紙が光となって消えてしまったのだ。

その経験から魔法書も同様に無くなるものだと思っていたが、一向に無くなる気配はない。


「…お姉様、ちょっと見せてもらえますか?」

「いいよー、はいどうぞ」

「!!…やはりそうですか。

 えっと、『ファイアアロー』…出ましたね」

「えーっと…つまり1枚の魔法書で各属性1回ずつ習得可能って事?」

「そうみたいですね。

 読めないところも含めると、似たような単語が6行分並んでいますので、おそらく基本6属性の魔法が書かれているのでしょうね」

「なるほどねー…『ダークソード』…あ、出た。こっちも…『ダークボム』っと」


レイラの推測を聞きながらシエラがソードとボムの魔法書を受け取り、習得する。


「便利ではあるけど、どれが習得済みか分からない―あ、鑑定に出てくるのか。でも、管理が面倒だな」

「確かにそうですね。片方は4属性残ってて、もう片方は2属性残ってるなんて状態がいろんなパターンで積み重なっていくと、訳が分からなくなっていきそうです」

「その内、人気のない属性だけ残ったまま在庫過多になっていくなんて事にもなりかねないわね」


集める側からすれば便利ではあるが、管理する側からすれば不便であるという魔法書の仕様に様々な懸念が浮かぶ。


「まあでも、僕たちは基本的に使うだけで管理しないし?」

「気をつけるとしても使用済みを売る時くらいでしょうか?」

「そうね。まあディラン殿下あたりに取引は鑑定持ちがするように進言しておくだけで大丈夫でしょ」


結局、ユリス達は自分たちは使うだけで管理は丸投げすればいいと思考を放棄するのであった。


その後、王城へ向かうシエラと別れた2人は寮に戻る。

何となくダンジョン探索は気分が乗らないとして、ユリスは依頼されている指南書の白紙化をする魔道具の設計を進める。

レイラも出かけることなく、シエラの代わりに部屋の掃除をしたり昼食やティータイムの準備をしたりなどまるで新妻のように甲斐甲斐しくユリスのお世話をして1日を過ごすのであった。


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