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73話 説明会(エレメンタルシューティング 1・2年種目)

レイラの競技内容をもとにシエラによるエレメンタルシューティングのルール説明が始まる。


「まず、さっきレイラちゃんがやった種目は『フルブレイク』という名称で、空間内に出現したエレメント…さっきの光る球体ね、それを全て破壊するまでの時間を競うという種目よ」

「他の学年では種目が変わるのですが、そちらは後で説明しますね」

「そうね。ルールが分かってないと観戦してもよく分からないだろうし一通り教えておくわ」

「エレメントには属性があります。フルブレイクでは火、水、風、土、光、闇の6つですね。なんとなく色で分かっていたと思いますが」


レイラの言葉に生徒全員が頷く。


「念のため言っておくと、さっきの順番で赤、青、緑、黄、白、黒だからね。数は各属性10体ずつで計60体ね」

「そして、これらはどんなに威力が低くてもダメージ判定があればすぐに倒せるようになっています。倒した時に各色の光が周囲に弾けるように散るのも特徴ですね」

「見栄えを良くしようと設定した結果、こうなったのよね」

「確かに綺麗な光景だったわね」

「他の種目もああなら祭りの始まりは種目が固定ってのも頷けるよな」


「5・6年競技の『スイッチ』も同じ感じだし、対戦形式でもあるから盛り上がるわよ。

 このフルブレイクは単純だけどね」

「気をつけることと言えば範囲攻撃では一度の発動で3体までしか倒せないという事くらいですしね」

「ああ、攻撃で数が減らなかった時があったのはそのせいなんだね」

「なるほどな、少なくとも20回は攻撃する必要があるんだな」

「あんな短時間で魔法20発って結構大変よ?

 しかもそれって消費が激しい範囲魔法かつ毎回3体巻き込む計算じゃない。実際はもっと増えるんでしょうね」

「そうですね、数が減ってくると範囲攻撃は効率が悪いですし、使うのは大体前半ですね。

 一応、ポーションなどのアイテム使用は出来るので消費についてはある程度無理がききますが、持ち込めるのは規定の瓶に入った液体6本だけです。事前に提出する必要がありますし、運営側がポーションバッグごと管理するので順位が確定するまで途中で補充は出来ません」


(ざっくりとした計算だが、発動までの時間を考慮すると単発の2倍程度の時間で3体ずつ巻き込めればそちらの方が時間効率はいい。範囲と単発の切り換えの線引きはその辺りだな)


「その辺の戦術に関してはアーリアさん達が戻ってきてからにしましょう。彼女達の方が詳しいでしょうし」

「そうね、あの子達の家は競技会に採用されている種目の専門チームを運営しているし、独自の大会なんかも開催してるくらいだからね」

「どうりで…」

「それであんなに気合いが入ってたって事かよ…」

「そりゃ下手な結果は出せないわよね…」


3人娘が競技会に対して気合の入った言動をしていた理由が明かされる。


「あとフルブレイクでの注意点は…属性によって動きが大体決まっているって事くらいかしら?」

「そうですね。各属性の動きは―…」


レイラの説明によると

火…出現位置を中心として直径1mをゆらゆらと不規則に漂う

水…出現位置を最大高度として上下に動く

風…リングの中心を軸とした水平円運動

土…動かない

光…直進運動だが何かに当たると反射

闇…一定間隔で消えたり現れたりしながら選手と同じ方向に移動するが結界に当たると方向がランダムに変わる

という事であった。


「注意するのは光ですね。

 他のエレメントに当たっても反射しますし、その場合は反射する方向が分かりづらいですから。光同士で当たってしまうと余計分かりづらいです」

「ふむ…土と闇は選手が動かなければただの的になるんだね…」

「闇は距離を縮められないのが厳しいな…水と風は軌道が一定だからその次に厄介なのは火ってとこか…」

「ピンポイントで狙いを付けづらいし、火と光は範囲魔法で片付けた方が良いのかしら…」


フルブレイクの基本的なルールを理解した3人は早速自分なりの戦術の構築を進めている。

その最中、ふとルイスが何かに気付いたのか質問をする。


「そういえば競技中の結界の形状ってどんなだ?

 普段は結界がある場所よりも結構高い位置にエレメントがいた気がするんだよな…?」

「言われてみれば…」

「あ、言い忘れてたわね。

 競技中の結界はステージに沿った円柱形になってるわ。高さは観客席の最上段くらいまであったはずよ」

「…高えな。こうなるとまともに近接で対処できるのは水くらいじゃねえか?他は初期配置によるってな感じか」

「というかエレメンタル“シューティング”なんだし元々魔法か射撃を想定した競技でしょうが。

 いい加減近接でなんとかしようとするのやめなさいよ」

「ルイスってさ…入試の魔法実技どうやって突破したの?

 あれを特待生レベルで突破できてるなら何かしら遠距離でも対応できるんじゃないの?」

「あー…あれな。範囲系の大技一発で通ったぞ。

 俺その技しか遠距離に対応できるのがないんだよ。連発できる様なもんじゃねえからこの競技には向いてないんだよな…」

「そういうことなら魔力操作の練習をするしかないね」

「そうだな。さっさと身につけねえとこういう時に困る。

 まあ、今は使えないからどうにか他の方法を考えなきゃいけねえんだがな」


とことんルイスにはこの競技が向いていないようだ。

どうにかして剣でエレメントの数を減らせないかとうんうん唸っている。


「他になんか質問はある?」

「大丈夫よ」

「俺もだ」

「ユーくんはどう?」

「んー…ならひとつ。

 範囲攻撃の判定ってどうなってるの?多分アリーナの機能で判定してるんだろうけど基準がよく分からないんだよね」


ユリスはどのレベルから範囲攻撃となるのかが気になっているようだ。もし着弾時間の間隔で判定しているのであれば、単発であっても範囲と認定される恐れがあるためだろう。


「確か…1度の動作や発動で複数に当たれば範囲認定されて4体目以降のダメージが無効化されるのでしたか?」

「そうね。

 認定を受けた攻撃が終わるまでは無効化が全てのエレメントに適用されるはずだったから要注意ね。

 後は選手のターゲッティングも関係する可能性があるらしいわよ?」

「座標指定型の魔法を空振りした直後―まだ魔法が残っている状態で近接攻撃に切り替えたら4体目以降が倒せなかったという例があるのでしたね。おそらく座標指定型というだけで範囲認定されるのでしょうね。

 逆に、射出型の魔法を並列で発動して同じタイミングで4体以上倒せる事もあるそうですよ。もちろん1発につき1体という条件下でですが」

「狙いを定めていない場合は範囲認定されるのよね。だからあくまで狙って発動しないと単発扱いにはならないわ」

「ちなみにプロの上位の方だとこの並列狙撃の精度が鍵なのだそうです」

「まじかよ…プロ選手って凄えんだな」

「あたしには出来そうにないわね」

「へぇ…並列狙撃か。

 ……使えそうだな…」

「「…はぁ!?」」


プロ選手のテクニックを出来そうだと評するユリスに驚愕する2人。

強い事は知っているとはいえ、ユリスの戦闘は順位決定戦でしか見たことないのだからその驚きも当然ではあるだろう。しかもユリスはそこで魔術を併用したとはいえ近接戦闘しか見せていないのだから余計である。


「それじゃあ、そろそろ皆にも実際にやってもらおうかと思うんだけど…誰からやる?」

「ユリス。悪いがお前は最後だ」

「そうよ、やる前から気力を削ぐような光景は見たくないわ」

「えぇ…いやまあ順番は何でもいいんだけど、その言い種は酷くない?」

「「ふふっ…」」


明らかに敵わないと分かっているユリスの後に挑戦などやりたくはない。そう主張する2人に戸惑うユリスの姿を見てシエラとレイラは息を殺して笑っている。

結局は未だに有効な手段が思いついていないルイスが最初、次にエリーゼ、最後にユリスが挑戦する事になった。


ルイスは最初に地上付近のエレメント十数体と落ちてきた水のエレメントを剣で破壊。その後はスキルによるバフをかけた肉体を駆使して何度もジャンプをしながら1つずつ着実に破壊していく。闇エレメントの破壊に手間取りはしたが、開始前に皆が予想していたよりは遥かに早く終えることができた。

タイムは5分49秒。学園の部の平均である4分台後半からは大きく遅れる結果となったが、近接攻撃のみと考えたら上出来だろう。


2番手のエリーゼはまず火や光のエレメントを範囲魔法で攻撃する。その際に立ち位置を変え、闇を範囲内に誘導も試みていた。火エレメントの場合は成功率高めだが、光エレメントに近づけるのは難しいようだ。

だが、火と光を全て倒し切る頃には残りのエレメントもおよそ半数まで数を減らしていた。戦術としては成功の部類だろう。

そして残りのエレメントは多重詠唱を使わずに1体ずつ倒していく。高い位置にいた風エレメントで多少のミスはあったが3分56秒と学園生としてはかなり早いタイムで競技を終えた。


そして最後のユリスの競技内容はというと…


「「はあ!?」」

「うわぁー…」

「流石です!」


驚き、呆れ、感激と三者三様ではあるが全員が思わず声を上げてしまうようなものだった。

ユリスは地面を操作して入試の時に見せたような石杭を小さく作り出し、次々と真上に発射していったのだ。その光景はまるで重力が反転し、石の雨粒が天へと落ちていくかのようだった。

発射間隔は秒間で5発程度ではあるが全てエレメントに命中し倒すことも出来ている。つまりは先ほどの説明にあった並列狙撃を難なくこなしているという事に他ならない。

もちろんユリスとて完璧というわけではない。時折攻撃の手が休まる事もあったし、火エレメントの挙動が苦手なのか1体倒すのに数発ずつ要している。闇エレメントもタイミングが合わず消失時に通過してしまうこともあった。

用いているテクニックの関係上、狙いをつけて1発ずつ発射しなくてはならないため外しても別の方法でリカバリーする事ができない。しかも目標とは別のエレメントに当たったら範囲攻撃認定されてしまうので、誤射をしたら一旦攻撃をやめなくてはならないのだ。

それでも最終的なタイムは32秒。プロの記録と比較しても異常なタイムである。


「うーん…倒す順番間違ったかな?

 まだもう少し詰められそう…」

「全くこの子ったら…ユーくんは一体何と競い合ってるのかしら?

 一般の部優勝者でも2分前後なのよ?」

「そうよ!何よ32秒って!

 4分切ったのを喜んでた私がバカみたいじゃない!?」

「やらかすのは想定してたがまさかここまでとは予想外だったな」

「ユリス様流石です!

 競技会の出場は確実でしょうね。当日は騒ぎになるでしょうけど」

「ああ、観客がいるんだっけ?

 面倒だなぁ、出るのやめようかな…」

「むしろ今のうちに周知させた方が後々楽なんじゃない?」

「もう1人は確実に比較されるよな…」

「というかプロの方からも苦情がくるんじゃないの?」


タイム的には優勝確実だが騒動必至。しかももう片方の代表選手が対比で遅く見える。

メリットとデメリットを秤にかけて、あーでもないこーでもないと議論が展開されるのであった。


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