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62話 事件を終えて

今話から第3章となります。

王国全域を震撼させた巨石襲来事件。

突然王都上空に現れた巨石はこれまた突然現れた水龍によって王都から1キロほど離れたところに着陸し、これといった被害を出さずに終結した。

下手人も救世主も不明とされる大災害以来の重大事件は住民に大きな不安を残していた。

しかし、数週間後に王城から出された声明によって事態は急変、その不安も解消へと向かうことになる。それどころか、ある区画ではそこかしこから歓声が上がり、お祭り騒ぎになった事で治安維持のために騎士が動員されたくらいだ。もっとも状況が状況なため、騎士達も明らかな犯罪以外は取り締まるようなことはせず、酔い潰れた人の介抱やお祭り騒ぎによって発生した迷子の対応をメインにおこなっていたようだ。

その声明内容とは下手人がベルクト領領主であるヨシュア・ベルクト侯爵及びその妻ネル・ベルクト侯爵夫人であるというものだった。

彼らの目的は王国の乗っ取りであり、薬による洗脳や毒殺に失敗したことで王都ごと滅ぼしてからその力を背景に王国を支配しようとしていた。また、侯爵家を意のままに操るために前当主を毒殺し、使用人から自身の息子に至るまで薬による洗脳をおこなっていた上に、王国全土の装備水準を低下させるために意図的に鉱石の輸出量を減らしていた事も判明。

巨石を出現させた方法はヨシュアのユニークスキルによるもので、ヨシュア当人が即時処刑となったために再び同様の事件が起きる心配はない。

ベルクトの貴族位及び領地は没収、期間未定で王家直轄領として再建するとのこと。

これを聞き鉱石の価格が下がる事に思い至った工房区の職人たちが歓喜のあまり大騒ぎしていたのだ。

彼らに比べれば控えめではあるものの多くの商会だけでなく探索者達から一般の主婦に至るまで多くの人が喜び、そこかしこで宴会をしていたようだ。

ちなみに、もう1人の下手人とされているネルについては現在行方不明のため指名手配され、王都のそこらじゅうに似顔絵付きの手配書が貼られている。


声明から数日たった頃には王都はすっかり元通りの姿を見せ、ひとまずの落ち着きを見せた事件ではあるがユリス達がいる学園では違う問題に直面していた。


「長期休暇ですか〜?」

「事件からずっと寮内で待機だったかと思えば次は休暇ですの?」

「がるぅ…危険はもう少ないはず。いつ元に戻る?」

「ああそうさ。

 期間は今日から1ヶ月で、そこからは元通りだね。

 学園内の施設については通常通り使用可能だが、ダンジョンについては中級と上級の利用条件が変更になった。1年は1日1回まで中級ダンジョンへ挑戦可能になったから気になるようなら試してみるといい。

 学園外への外出については夏季休暇と同じように総合受付に申請すれば可能だから王都見物に行きたければ行っても構わないよ。なんなら近くの領地に小旅行とかでもいい。

 ちなみに、こういった対応になったのはアンタら貴族の親御さんが原因さ。この間の声明があったにもかかわらず、各地の貴族から自分達の子供は無事なのかと問い合わせが何度も何度も毎日ひっきりなしに来ていてね。大丈夫だと言っているのに聞きやしない。

 あまりにもしつこくて授業の方まで教員を回せる状態じゃないから、だったら帰省させてしまえということで休暇になったのさ」


不満げにしていたサミュ、カミラ、アーリアの3人はミランダが口にした理由を聞き、気まずそうに一斉に目を逸らす。


「ふっ、まあアンタらに文句を言ってもしょうがないかね。不満については帰省して直接親に言うといいさ。

 ああ、アンタら3人は家からすぐに帰省させてほしいと連絡があったから、そのつもりで動いてくれ。

 フォーグランドについては特に連絡はなかったから、残りの3人同様に休暇中は自由にしていい」

「はい、分かりました」

「それじゃあ、注意事項も全部伝えたし解散かね。

 ああ、そうだ。フォーグランドとユリスは学園長から呼び出しがあったから、この後学園長室に向かってくれ。何でも歓迎会前に受け取り損ねた奴を持ってきて欲しいとのことなんだが、分かるかい?」

「ええ、大丈夫です。すぐに向かいますよ」


新発見事項の報告書の事だと理解したユリスがレイラの分も合わせて返事をし、それを聞いたところでミランダから解散が言い渡された。

セルフィに報告書を渡してから寮へ戻ったところ、全員食堂に集まっていたので何となく雑談をする事に。

話題はもちろん今後の予定についてだ。

ちなみに報告書の結果は後日検証してから言い渡されることになった。もっとも、内容的には十分だろうから確認が取れたら第1種に昇格する可能性が高いとの事だが、確定するまでは秘密にするよう言われているのでこの場では話題にはあげられていない。


「先ほど先生にも言われましたが、私たちは帰省しますわ。

 馬車を調べたら全員3日後の朝に出発なので、帰ってくるのはそこから大体2週間ほどですわね」

「そこまで滞在するつもりもありませんしね〜」

「ん、さっさと帰ってくる」


3人とも今回の帰省に乗り気ではないようで滞在も最低限にするつもりのようだ。

ただ、どうせ行くのだからと自領まで婚約者を連れて行くつもりなため、移動がメインではあるが旅行デートの気分を満喫するつもりなのだそうだ。


「俺たちは1ヶ月だと全部使ってギリギリ間に合うかってとこだし、帰省は出来ないな」

「するつもりも無いけどね。

 せっかく外出許可も取れるみたいだし王都の店を巡るくらいはしてみようかしらね。

 もちろん付き合いなさいよ?」

「へいへい、わーってるよ。

 それ以外はアリーナでの訓練とダンジョン探索で過ごすことになるだろうな。中級がどんなレベルなのかも気になるしな」


ルイスとエリーゼは2人で王都観光をする予定のようだ。


「私は先程確認したら実家から手紙が来ていたので一旦帰ることになりますね。

 それで、父から連れてくるように頼まれたのですがユウ様大丈夫ですか?」

「ん?ああ。行くのはいいけど、いつ?」

「日程はまだ決まってないので、決まったらお伝えしますね。期間は長くても数日間でしょうからそこまでお手間は取らせません」

「分かった。決まったら教えてね。

 流石に初めての訪問で連れて行くのもどうかと思うし、シエラはその間は休日かな。

 アリーナは毎日いつもの時間帯で枠を取ってあるから、使いたかったら自由にしていいよ。ああ、みんなも自由に使っていいからね。ただ、例の訓練をするときは1組以外の人を入れないようにしてほしい。シエラは知っているから大丈夫だけど一応機密事項が含まれているからね」


例の訓練とは奥義習得の訓練の事である。今のところは習得条件が騎士団の一部のみに伝えられている機密事項なので、現段階で他に漏れたらまずいとして今一度全員に注意を促す。


「それ以外だと僕は、王都にある店にちょっと顔を出す予定がある程度かな?多分基本は訓練と探索になると思う」

「それなら、全員が集まったあたりで競技会の準備をしたい。

 開催まで自由授業で練習できるけど初心者には多分時間が足りない。授業は実践から入りたいから、できれば休暇中にルールの把握ぐらいはしておいてほしい」


全員の予定が出揃ったところでアーリアから珍しく普通の口調と長文で提案とお願いが出される。


「そうはいっても、僕たち競技会自体を知らないんだけど。レイラかシエラ、説明できる?」

「基本的なルール程度でよければ出来るわよ?

 ただ、学園を卒業して以来一回も出場してないから最近の流行なんかは分からないわね。あと、私がいた頃と何か変化があるならそれも分からないわ」

「私も似たようなものです。

 ここ最近の変更点は大体押さえているつもりですが、うちはそこまで熱心な家ではありませんから、効果的な戦法とか詳しいことは分かりません」

「ん、ルールを把握してくれてればそれで十分。

 残りの詳しい事は帰省から戻ったら私達で教える」

「なら、2人に頼むとしようか。ルイスとエリーゼもそれでいい?

 多分僕たちが戻ってきた辺りで予定を合わせる事になると思う」

「ああ、いいぜ「ええ、いいわ」」


全員の予定をお互いに把握したところで一旦解散となり、予定外の長期休暇が始まるのであった。


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