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59話 後日談2 報告

連続投稿2話目

―――sideユリス


「それで、結局ヨシュアを捕らえることは出来たんですか?」


ヨシュア討伐から3日後、ユリスは話があるとディランから呼び出しを受けて王城に来ていた。


「いや、捕らえることは出来なかった。ただ、ヨシュアはもうこの世には居ないからベルクト家関連の問題は解決に向かっているよ。

 罪も明らかになったからジラードくんの処遇も前に言った通りだ。…ちょっと予想外な方向に変化したけど」

「この世には居ない…ですか?

 処刑はまだしない予定だったはずですが、自殺でもしたんですか?それとも暗殺か…」


言葉を濁した表現に怪訝な顔をするユリス。ディランの表情に深刻さが見え隠れするため、言葉にできない嫌な予感を感じていた。


「実はね…ヨシュアが魔物に変化したんだ。

 種族名は変な表記になってて分からなかったけど、『魔物学』スキルの結果には人を精神状態異常にかけて心身に負荷をかける事で出てきた負の魔力を糧にする魔物ってあった。

 奴を拘束して尋問していたら急に変化していってね。理性もなくなって戦闘になったから、生かしたまま捕らえることは出来なかったんだ。

 予定よりも早くユリスくんを呼ぶことになったのはこの魔物について何か知っていないか聞きたかったからだね」

「人が魔物にですか…?それは…大問題ですね。

 それにしても負の魔力を糧にですか…その生態をする魔物は多いですが、精神異常となるとナイトメアかな…?鼻が少し長いのが特徴なんですが」

「ああ、まさにその通りの姿だったよ。少し長い鼻にだるだるに余って波打っている腹の皮、3メートル程の巨体が短い手足で2足歩行をしていた」

「うーん…だいぶ違うというか鼻以外合ってないな…

 まあ、他は個体差として片付けられるレベル…でいいのかな?本来は4足歩行で大きさも全長で1メートル程なんですがね。

 人間から変化したと考えると何か改造でもされていたのかな…?」


自身の設定した生態からあたりをつけたが、容貌はヴェルサロアが設定したためにサラの持っていた図鑑の知識しか持っていない。その図鑑も王国基準だと相当な代物なのだが。

そのことが頭から抜けているユリスはいまいち確証を持てないでいるようだが、そもそも人間が魔物になることがイレギュラーなのだから、他にも改造されていてもおかしくはないと無理やり納得したようだ。


「そうだね。奴は変化する可能性について理解していた。貴族になる前に契約を結んだと言っていたし、直前には色々暴露していたようだからおそらくは破ると魔物になる何かが発動するという内容の契約だったんだろうね。この何かについては分からないけど、契約相手はヨシュアが魔物に変化した要因を握っていると考えるべきだろう。

 そして恐らく奴の背後に居たのはヨシュアの妻とされていた人物、ネルだ。奴の持っていた薬などは彼女から供給されていたらしい。

 ただ、屋敷へ強制捜査に入った時には既に姿をくらましていたようだね。現在では全くの行方不明だ」

「あれ?エムエドって奴じゃなかったんですね。

 薬の製作者だから何かしらヨシュアと関わりがあると踏んでいたんですが、そっちの関係者なんですかね」

「私もそう思っていたんだけど、薬の鑑定結果以外でその名前は全く見つからなかったんだ。黒幕の可能性は否定できないけど、今のところはその一派として扱っていて、最重要人物はネルにしているよ」

「そうですか。にしても、流石にこれは公表できないですよね。別に僕にも話さなくてもよかったんですが」

「ははは、あそこまで関わったんだからこの際だ、最後まで手伝ってもらうよ。

 公表については当然出来ないね。人が魔物にされたなんて知れ回ったら王国は大混乱だ。原因も対処法も不明だから疑り深い貴族同士の争いにも発展するかもしれない。最悪は領地間での戦争だ」

「それもそうなんですが、僕としてはヨシュアが魔物になってもステータスが残っていた事の方が問題だと思います。元が人だからという可能性が高くはありますが、この技術の研究が進んでその辺にいる魔物がステータスを得るような事態になろうものなら防衛が難しくなることは想像に難くありません。それどころか魔物であってもセラーティ国民として扱えと世界神がそう言っていると解釈する者が出てくる可能性すらあります。

 そうなると、教会が天然魔物は保護するべきだのなんだのと言ってくる可能性が。もしそんなことになれば制御不能の戦力を各勢力が保有する事になりますし、もっといえばそれらの存在を不当に討伐すれば神罰が降る可能性まで出てきます。ヨシュアみたいな犯罪者ばかりなら問題なく排除できますがね」


(ヴェルがそんな事するとは思え…ないけど、組んだシステムの誤認でそうなってしまう事は考えられるからな…)


他の世界では邪神だし、自分への悪戯として仕掛けた可能性はゼロではないと思ったものの、流石に自分の世界でそこまではしないだろうと別の可能性へと思考をシフトさせる。

ユリスの示した懸念に思わずディランは頭を抱えてしまった。


「…そうか、それがあったね…はぁ、そのシナリオはまずいなあ…

 相手の狙いがそれかもしれないし、教会にまで手を伸ばされていたら大変だ。調査しておくか…はぁ…

 とりあえずこの事を知っているのは父上と私、宰相、父上の近衛騎士2人、後はジラードくんに君だね。その場にいた他の騎士は全員精神異常にかかって当時の記憶がなかったから、そこから広まることはないだろう。それがせめてもの救いかな…」

「対外的にはどう説明するんですか?

 僕も帰ったらレイラ達に説明しなきゃいけなくなりそうなんですが」

「ヨシュアが巨石事件も含めて全ての首謀者で即時処刑、家は取り潰しという処置をしたことになるね。横領なんかの証拠も見つかってるし、賄賂だとかで関わりがあった貴族もいるから即時処刑としても文句はそんなに上がらないだろうさ。

 ジラードくんの今までの行動はヨシュアから盛られていた薬と洗脳のせいであり、今後は平民として暮らしていくために志願兵となって辺境へ向かうというシナリオだね。実際、事実を誤認するような薬を盛られていたみたいだし、ヨシュアが巨石事件の首謀者だという部分以外は嘘は言ってないよ」

「ふむ…分かりました。彼女達にはそれを踏まえて説明をしておきますね。

 それで…初めに言ってた内容でちょっと気になっていたんですが、ジラードの処遇で言ってた変化って何ですか?」


ヨシュアについてはこれ以上聞いてもどうせ積極的には関与するつもりはないしと、要点だけ聞いたところで切り上げることにしたようだ。

ディランにもそれが分かったのか、それとも代わりに振った話題に何か問題があったのか、苦笑しながら質問に答える。


「ああ、それね…実は、ジラードくんがカレンの婚約者になったんだ。元々一緒に動いていたノエルって子も一緒に婚約したみたいだから、母様の出した課題は半分くらいクリアしたようなものだね」

「はい…?」


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