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44話 一筋の希望

寮へ帰り、3人で食事をとった後しばらく今日の成果について話していた。

シエラによると、これまででも生成ダンジョンのボス撃破報酬で鉱石が手に入ったことは何例か有ったが道中で採取が出来た例はなく、割に合わないとして結局本腰を入れて活用するには至らなかったという。

手に入るかどうかも運次第な上に、手に入っても数時間かけて鉱石が数個である。王城の対応は納得の結果と言える。

ちなみにレイラがユリス達と食事をとっているのはシエラに弟子入りしたためだ。夕食をシエラと一緒に作り、そのまま一緒に食べていくという流れが今後も続くことになる。

食事が終わり、レイラが自室に戻っていったところでユリスはシエラに収納についての懸念を相談し始める。


「ん―…教えるだけなら大丈夫じゃない?

 もっとも、スキル石を作ってあげる場合は正式な婚約の申込みが来たとしてユーくんがそれを受ける気があるならだけど」


(ここで婚約がどう関係してくるんだ…?)


「何でそんな事をって顔ね。

 実はシャルティア様達から定期報告をするように言われててね。ユーくんが授業を受けている間に王城に行ってきたの。そこで2人に言われたのよ」

「ああ、あの2人か…

 というかシエラに収納の話をしたって事はスキル石の扱いが決まったの?」

「うん、結局は王族と近衛騎士、騎士団長で使って、残りは功績を立てた人に褒美として渡すみたいね。

 貴族にはもう情報を広めたみたいでユーくんは構築盤の報酬で既に習得しているって事にしてあるみたい」

「なるほどね。

 人前で使っても言い訳が出来るようになったのはありがたいね。ちなみに空のスキル石でのコピーは制限しないのかな?」


(空のスキル石はレアアイテムだが、王城でもあれだけ保管していたし貴族ならある程度は保有しているだろう。誰かが勝手に配布し始めたら報償としての格が落ちるぞ?)


「うーん…本音を言えばずっと取り締まりたいみたいだけど、実際は厳しいだろうという事でさっき言った人達は制限して、報償で貰った人は制限しない事にしたみたい。だからユーくんは制限なしね。

 ただ、前にディラン殿下から言われたと思うけど、特に関係が深くない人に作ってあげちゃうと誰にでも作ってくれる人なんだって認識されて、確実にユーくんに貴族どもが群がるわ。それで初めの話に戻るんだけど、婚約者っていう特別な関係の子にあげるだけなら慣例に従っているって言い訳が出来るから、レイラちゃんにあげるなら婚約を覚悟しなさいって事」

「そういう事ね…

 まあ、今回は教えるだけにしておこう。石の在庫もそんなに無いし、レイラが自分で石を用意してきたら作るくらいのスタンスでいいかな」


ユリスが選んだのは、とりあえず先延ばし。

だが、条件付きで作るくらいにはレイラを受け入れているようだ。


(でも、学園で使うとその辺の事情を知らない生徒達に騒がれるかもしれんしな。しばらくはダンジョン内だけにするとして…いつかは不審に思われる)


「念のため学園長には相談しておこうかな」

「そうだねー…確かに学生には自制出来ない子も多いし、正式な場で説明してもらった方がパニックは防げるかな。

 ちょうどいい場も近いうちに来るしいいんじゃない?」


シエラの言うちょうどいい場が何なのか気にはなったが、近く何かしらのイベントがあるのだろうと勝手に納得したユリスは近く学園長に相談する事に決め、1日を終えるのであった。



翌日…

授業を終えたユリスとレイラは日用品や食材はもちろん、生産道具や装備に至るまで大抵のものは有ると言われている学園内の共用購買にいた。

一般生徒も利用するので敷地がかなり広く、品揃えも豊富だ。さらに、そこで見つけた商品は特待生用の購買(通称特購)で注文すればすぐに店員が持って来てそちらで購入できるため、特待生にとってはウィンドウショッピングに最適なのだ。


「やはり見つかりませんね…

 需要がないのでしょうから仕方ないのですが」

「ここまで色々あれば1種類くらいは置いてそうなものなんだけどねー…仕方ない、今日は潰すつもりで一通り周ってみようか。僕が用意出来るといっても数に限りがあるし。

 ついでに何か気になる物があったらメモしておこう」


2人が今いるのは採取道具のコーナーである。しかし、一向に見つからないので予定を変更して購買全てを周っていく事に。

2人並んで歩き、気になる商品を手に取っては感想を言い合う様子は、もはや買い物デートに来たカップルである。

半分ほど回った時、とあるコーナーで何かが入った袋がワゴンに大量に積まれているのを発見する。袋の口は縛ってあり中身がわからなくなっている。しかも横にはお一人様1つ限りの看板が。


「これは何なのでしょう?」

「うーん…商品名とかも書いてないな。

 あ、すいません。これって何ですか?」

「いらっしゃいませ。

 これはダンジョン構築盤に嵌めるメダルですよ。1袋1000フォートで一度限りの購入となります。

 中身については学園が買取でダブったメダルが10枚入っています。作業は鑑定を持っていない者が行いますので完全ランダムですよ」


どうやら余程運が悪くなければここでメダルが一通り揃うようだ。この販売があるおかげで公開されている有用なメダル配置に早い段階から固定して探索する生徒が頻出。その結果、新たなメダル配置のレシピがなかなか増えていかないのだろう。


(なるほど…いわゆるスタートダッシュガチャかな。

 これは…僕の幸運が作用するか?)


「レイラ、面白そうだし今後の役にも立つからここで買っていかない?」

「賛成です!どれにしましょうか……」


中身が分かるわけないのだが2人して袋を選ぶ眼差しが戦闘中に匹敵するほどに真剣である。そうして選んだ袋を手にし、先程の販売員の元へ。

どうやら複数回買えないように名簿に署名するようで種別までバレてしまうが、そこは流石プロの販売員。全く動じずにつつがなく手続きが進み、無事購入が完了する。

中身は寮に帰ってからのお楽しみという事で、2人は買い物を続けていく。そして、遂に当初の目的の商品を見つけたのだ。それは片手で振り回せるくらいの小さめのピッケルで、何とリサイクル品と書かれたコーナーにひっそりと置かれていた。


「ようやく見つけましたね…!」

「そうだね。でもリサイクル品ってどういう事だろう?」

「それはね、学生達が手に入れたドロップ品を鋳潰してから再成形したものなのさ」


2人がピッケルを手にして疑問を呈していると、横合いから答えが返ってくる。

どうやらこのコーナーの担当販売員のようだ。


「ドロップ品ですか?」

「そうさ、そのピッケルはボス部屋のゴブリンが落としたナイフを鋳潰した物を使用している」

「それでリサイクル品ですか。でも性能には問題ないのでしょう?」

「ああ、流石にナイフの時と同じ耐久性とはいかないけど、極端に落ちているわけでもない。装備だとしたら少し心許ないけど、それ以外なら特に問題ないさ」

「なるほど…分かりました。

 後で多めに注文が来ると思うのでその時はよろしくお願いします。とりあえずはここにある6つを送っておいてください」

「そういう事かい、ならすぐに送っておくよ。

 にしてもこれに需要が出るとは驚きだ…早めに確保しておかないとね」


販売員はユリス達が特待生であると察して、確保しておいてくれるようだ。

しかし、売れたこと自体初めてなのか選んだ商品については驚いていた。密かに在庫を増やしておかないとと焦っているくらいである。

夕方まで買い物を楽しんだ2人は特購でピッケルを受け取り、そのままダンジョンへ採掘しにいく。


「時間的にあまりゆっくりは出来ないから昨日見つけた階層だけ探索しようか。鉱脈が見つからなかったら今日は諦めよう」

「昨日注意されてしまいましたからね。

 それに沢山見つかっても持ち帰れません」


それについては問題ないという事を伝えようとしたが、ここで最近たまに見られるユリスの悪い癖が出る。

それは、気に入った相手を驚かせたがるというものだ。今回もサプライズ気味に収納の存在を明かすつもりようだ。

そして4階層の探索を始めて30分、行き止まりに行ってはハズレを引くを繰り返しながらも何とか銀鉱脈を見つける。その前にボス部屋の扉を見つけてしまった程である。


「ようやくあった…

 全く、鉱脈の出現自体がランダムかと思ったよ」


若干気疲れをしていたの2人だがいざ採掘となると回復どころか普段よりもテンションが上がっていく。


「よし、やるぞ!」

「はい!」


取り出したピッケルを振り下ろし、せっせと鉱石を掘り出していく。そして、欠片が10、20、30…と、どんどん積み上がっていく。

が、鉱脈は無くなる気配がない。


「ねえ……

 ダンジョン鉱脈ってどれくらい取れるものなの?」

「…分かりません。とりあえず中断しましょうか?」

「そうだね。ええと…何個だこれ?

 数えながら袋に入れていくか」


2人はせっせと積まれている拳大の鉱石を50個ずつ袋に詰めていく。

結局掘り出したのは袋4つと半端が15個、計215個であった。かかった時間は探索に1時間、採掘に30分である。

今回は最初の方が不慣れな採掘であったためこれだけかかったが、今後の採掘時間は半分程度にはなるだろう。

金属の含有量などの問題もあるが採掘量としては十分過ぎる程の成果と言える。


「215個か…これって鉱石のメダルが普及すれば、普通に高騰問題解決できるんじゃ…?」

「専任パーティーなら体力を考慮しても日に5、6回は潜れるでしょうから、最低でも日産1000個分…王都分を全て賄えるかは難しいといったところでしょうか?それなりに専任者が必要になりますね。

 でも確実に価格は今よりも落ちますね」


(というか、前に聞いた訓練所と同じような方式にすれば、メダル1個で済むんじゃないか…?)


ユリスが思い出したのは騎士団の実戦訓練場として使われているダンジョンのことである。

そこではメダルを騎士団が管理し、構築盤に嵌められたままで運用するというタイプの制御機構を使用しているので、メダル1つでいくつものパーティーが利用できるのである。


(ああでも、今は中級ダンジョンの攻略とかでレベル上げに忙しいだろうし騎士団の人員は割けないだろうな。それにこのタイプの制御機構をどのくらい保有しているのかも不明だ)


「とりあえず鉱石のメダルがもう一つ手に入ったら学園に報告しよう。報告したら多分持っていかれるし。

 さて、さっさとボス倒して帰ろっか」

「はい…でもこれ結構重たいのですが、全部持っていくのですか?」

「ああ、僕が持って行くよ。

 ちょうど昨日開示の許可も出たしね」

「許可って何の…ええっ!?

 ユリスさん消えちゃいましたよ!大丈夫なんですか!?」


収納で消えて行く袋や鉱石を目の当たりにして、レイラは目を見開いて驚き慌てる。

ユリスは心の中でしてやったりと思っているつもりだが、レイラの反応が良かったせいか普通に顔に出てしまっている。



「……」

「すみませんでした」


ひと通りリアクションをした後に収納スキルについて説明を受け、レイラはわざと驚かせるように仕向けたのだと気付く。ツーンとそっぽを向くようにして怒ってますアピールをするレイラに対し、土下座をして謝るユリスは謝罪としてある要求をのまされるのであった。


一悶着あったものの無事に鉱石採取の検証が終わり、寮の部屋に戻ったところでユリスが購買で買った袋の事を思い出す。

食事が終わり、いつもなら雑談をしているところで各々のメダルガチャの結果発表を行う事に。

結果は…

ユリス:消失、狭、円、魔、部屋、統率、色、獣、草、食料

レイラ:選択、道、火、暗、石、箱、高位、広、結、強化


シエラ曰く、珍しいものや有用なものが結構入っているとのこと。そもそも、このガチャの中身にダブりが全くない時点で相当に運がいいそうだ。

この結果を受けて、明日のダンジョン探索はメダル9個を嵌め込んだダンジョンを探索しようという方針で話が進んでいくのであった。


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