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27話 試験までの日々

魔本を読み終わりってからしばらくの期間、ユリスは暇つぶしと称して幾つかの作業をしていた。

1つ目は鋼樹の森の攻略本作成、2つ目は使用者登録に使われる様な魔導パズルの作成、そして3つ目は王都への道中でもしていた紋章合成のデータ取りである。


「ふーん、この組み合わせだとこのパターンになるのか。でもあれから心得系以外ができないな…1つ出来たから全く出来ない訳でないと思うんだけど」


今は鋼樹の森で手に入れた[〜の心得]という名称の紋章同士を合成したデータのまとめをしているところである。

基本的に心得系同士を合成すると成功したとしても2つの要素が組み合わさった心得系紋章になるのだが、一度だけ全く別の紋章になったのだ。

心得系以外の紋章は基本的にレアなので手持ちの紋章は心得系ばかり。しかも重複多数という惨状なため、ここからデータ取りをしているのだ。


「在庫もある程度減ってきたしとりあえず今日はここまでにして、パズルの方を作ろうかな」


(試しにかなり簡単なのを作ってみたらシエラが見事にハマってしまったからな。

 難易度別に種類を作っておかないと)


例のサラが作ったパズル部分をシエラは数日間かけはしたが見事に解いた。そこでユリスが正式な魔導パズルのことを教えると、魔力操作の訓練や魔導陣の勉強になると言って製作をねだってきたのだ。

今では日中はユリスの部屋にいるが、大体は魔導陣の教本を片手にパズルを解いて過ごしている。


「今入っても大丈夫かい?」

「はい、問題ありませんのでどうぞ」


外からノックの音と共にディランの声が聞こえたため、2人は作業を中断して招き入れる。


「やあ、ちょっと久しぶりかな?あまり顔を出せなくて悪かったね。

 例の件の調査とか私自身の業務が立て続けに入ってしまってね。

 それで、何か困ったことかはあるかい?」

「空いたと言っても前回から2週間程度しか空いてませんし、そうそう問題なんて起きませんよ。

 お忙しい様でしたら毎回このぐらいでも全く問題ありませんよ?」


(監視の意味もあるんだろうけど、2日に1回のペースで来られてもなぁ…同じ離宮にいるシャルティア様でも週1くらいだぞ。

 今のところは暇つぶしもうまくいってるから頼むこともないしな)


「そうか、問題ないならよかったよ。

 期間についてはちょっと研究の方が行き詰まってるから、今回ほどとはいかないけど今後は少し間が空くと思うよ。

 調査の方はこれといって有力なものは見つからなかったから、ユリスくんの論述を待ってから再開って感じだろうしね」

「分かりました」

「ところで2人して何か作業をしていたみたいだけど何をしていたんだい?」


ディランが机に置いてある魔導パズルに興味を示す。


「私は数時間ずつに区切って色々としていますが、シエラがやっていたのはこれですね」


そう言って作成し終わったばかりの魔導パズルを渡す。


「それは、使用者や管理者の登録の鍵として使われることもある魔導パズルなのですが、試しに難易度を下げて作成してみたらシエラが気に入ってしまって…

 今では毎日魔導陣の勉強をしながら挑戦してますよ」

「はい、ユーくんが魔道具の話をしている時に何のことか全く分からなかったので元々勉強しようとは思っていたのですが、ちょうどよく楽しい教材を作っていたので、やらせてもらったらハマってしまいました」

「ふーん、娯楽と教材が合わさった感じなのかな?

 どうやって使うんだい?」


ディランに対して魔導パズルの使い方を説明する。

元々魔導陣について知識がある人だったのでパズルのルール説明をするだけでやり方はわかったようだ。


「へえ…!

 確かに面白いし魔導陣の導入としてはいいかもね。

 でもこれが登録の鍵となると物によってはちょっとセキュリティが甘くならないかい?」

「ええ、それは本来の難易度から考えるとかなり簡素化していますしね。

 実際はこのくらいの難易度のパズルで操作する駒の形まで指定する必要があります。その上、平均10分くらいの制限時間付きのものが多いですね。

 高難易度のものになると複数のパズルを連続で解く必要が出てきますし、さらに上がると並列での同時解除を要求される場合もあります。

 そうなると駒の速度も計算して設定しなくてはいけないので、1回での成功は厳しくなってくるでしょうね」


そう言いながらシエラが数日で解いたパズルを組み込んだものを渡す。


「ちょっと待ってくれ…いきなり難易度が上がりすぎじゃないかい?

 しかも制限時間付なうえに複数って…それって解ける人がいるのかい?」

「まあダンジョンから出てくるやつは難しくても制限時間までで、パズルの内容はランダムとはいえ数パターンですし、何回も挑戦できるタイプばかりですから。

 魔導陣の図案は得意な誰かに頼むこともできますし、時間をかけて少しずつ進めていくこともできます。

 結局は当人の魔力操作技術次第ですよ」

「まあ、それもそう…か?」

「さっき言ったレベルの難易度設定をするのはうちの師匠みたいな人くらいでしょうね。

 それに一応、登録機能は魔道具の管理者を制限するための鍵みたいなものですから、そう簡単に誰でも解ける様では困るでしょう?

 不具合で魔道具が使えなくなると問題ですから、新規登録機能をつけないわけにもいきませんし」

「確かに誰にでも解けるのは鍵として意味が無いというのは分かるけど。

 …ん?ちょっと待ってもらえるかな。

 このレベルの登録機能がついている魔道具がダンジョンから出るのかい?」

「?…ええ。

 図書室にあった記録の魔道具とかにもついていましたよ?

 というかほぼ全てのダンジョン産魔道具には中身はバラバラにしても必ずついています。王城のは確認しただけで登録はしてませんけど」


(にしても王城にはこれだけダンジョン産らしき魔道具があるのになんで知られていないんだろうか…?

 …確か魔道具の解析を出来たのはサラだけだとか言ってた…あ)


「そういえば話が途中から管理者の話と混ざってしまっていましたね。すみません」

「管理者?さっきの使用者登録とはどう違うんだい?」

「管理者登録はしなくても物によっては使うだけなら出来ます。管理者登録するとメンテナンスだけでなく性能変更、リミッター解除などの一歩間違えたら使用不可能になるレベルの機能も使えるようになります。

 先程高難易度と言ったのはのは使用者登録よりさらに上の全機能が使えるようになる管理者登録機能の方です。

 魔道具士としては、解析もする関係で普段からこっちに登録しますので説明が混ざってしまいました」


(サラは使用者登録にも同レベルのパズルを要求してくるからな…別物だって事を完全に忘れていた)


「そうか、今の研究者がダンジョン産魔道具解析の取っ掛かりすら掴めていないのはそのせいか…

 それならこの魔道具にもその管理者登録機能はあるのかい?」


ディランは部屋にあった魔導ランプを持ってくる。


「はい、ついていますね。

 このつまみと底の中心に魔力を流すと登録機能が起動するようですね」

「つまみと底の中心ね…

 …!!確かになんかウィンドウと立体迷路が出てきたね。さっきのパズルと同じタイプかな?」

「制限時間がある場合は多分ウィンドウの角に表示されていると思います」

「えーと、これはないみたいだね。パズルもそこまで難しくはなさそうだけど今はやめておこうか。

 それにしても、どこを見れば登録機能の起動方法がわかるんだい?」

「あー…実は鑑定で分かります。

 少なくとも詳細の項目が表示されている必要がありますが」

「ここでも鑑定か…仕方ないね、待つとしよう。

 なら、少し話を戻そうか。

 シエラがやっていたレベルの魔導パズルなんだけど、量産したり、レシピを販売したりする気はあるかい?

 おそらく職人や文官を中心に売れると思うんだけど」


ディランは魔道具解析には詳細な鑑定が必要なことがわかると、すっぱりと諦めて話を魔導パズルの方へ戻していく。


「レシピの販売は全く問題ありません。

 ですが、自分で量産するのは勘弁してほしいですね。

 同じパズルだとあまり練習になりませんし、色々なパターンを用意しなくてはいけないので考えるのも大変です。

 今も自分で解いたことのあるやつや手持ちの魔道具に備えられているやつを少し変えて作っているだけですし」

「そうか。なら今度そのレシピを買い取ってくれるだろう人物を紹介しようか。

 それとも私が仲介して相手に売った方がいいかな?」

「できれば後者でお願いできますか?

 相手が商人だと誘導されて余計なものまで売り買いしてしまいそうで」

「ははは、わかったよ。

 おそらくレシピの使用権を売ることになるだろうから、利益の10〜20%程度が入ってくる感じかな?

 それを2人で折半する形にしようか」

「分かりました。値段についてはお任せします。

 レシピについては次回までに用意しますね」


(よし!

 どれ位かはわからないけど、思いがけず収入が得られることになったぞ。

 金は褒賞で相当もらったが何があるかわからないからな。保険はかけておいた方がいい)


「うん、よろしくね。

 そういえば、ユリスくんは色々やっているって言ってたけど他は何をしていたんだい?

 これみたいに商品になるものも出てくるかもしれないからね、聞いておかないと」


(流石に攻略本は話せないよな…完成してないし。もしあそこの攻略に行き詰まり始めたら急かされそうだ。

 魔本についても自分で確認しておきたいし今はやめておくとして…そうすると紋章合成だけど、まあこれなら大丈夫だろう)


「他ですと、図書室から持ってきた神話とかダンジョン攻略記とかの閲覧と紋章合成のデータ集めですかね」

「紋章合成!?

 合成ってことは複数の紋章から別の紋章が出来るのかい?紋章術は持っていても紋章合成なんて聞いたのは初めてだよ!実はさっき言った私が研究しているのも紋章についてでね、正確にいうとやっているのは紋章と紋章効果の編纂なんだけど。さっきも言ったけど行き詰まっているんだ。もしよかったら手伝ってもらえないかい?もちろん暇な時だけでいいし報酬は出すし合成する紋章はこっちで用意するよ!」


(おおう…なんか地雷踏んだな。

 そういえば合成もレアスキルなんだったか。言ってしまったものは仕方ない。

 まあ紋章は用意してくれるし暇つぶしになる…というかここ最近やっていることと変わらないな)


「ええ、構いませんよ。お手伝いしましょう。

 私も手持ちの紋章の組み合わせは大半やってしまいましたが、今のところ成果は[観測者]くらいでしたし。

 新しい紋章を用意していただけるのでしたらやってみたいです」

「観測者?聞いたことのない紋章だね。

 やっぱりユリスくんに頼んだ方が面白くなりそうだ。

 ちなみに何を組み合わせたんだい?」

「斥候の心得と衛兵の心得ですね」

「へぇー…職業系の心得を組み合わせるのか」

「!!…そういう見方をしたことはありませんでしたね。手持ちに職業系は…これしかなかったので気づきませんでした。

 もし他にある様でしたら優先的にやってみます」

「なんか、いいヒントになったのかな?

 とにかく、紋章は今度持ってくるからよろしく頼むよ」


そうして、入学試験までの間は魔導パズルの作成とディランの研究の手伝いを中心に行い、結局は攻略本の作成は後回しになるのであった。


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