復活
「トルナシア!!」
オレの名前を呼ぶ叫び声が聞こえる。。。これは誰の声だったか?
自身の意識を保つのが精一杯の状況だ。
魔族の王である”魔王”との最終決戦…もう半日以上、ヤツと対峙している。
相手も必死の様相だ。
「ギルシアル!オレの魔力を回復してくれ!」
後方支援役のギルシアルに回復を依頼するも、反応する声が聞こえない。
「くっ…ギルシアル!」
魔族にやられたのか分からないがサポート不能状態が予測される。
周りの状況を把握したいが、目前でたたずむ魔王から目を離す事は出来ない。
目を離した瞬間に、強烈な一撃が飛んで来そうだ。
すでに魔王は3段階目の変化を終えた。
伝承によるとこの形態が最終形態であるハズだが、なんせ数百年前の伝承の為、アテにならない。
ズドドッドーーーン!!!
空中から雷のような光が轟音と共に舞い降りる。
竜騎士、ザックアリルが彼女の相棒である赤竜と共に魔王に一撃を加えた。
「ぐはっ!」
が…魔王の左腕から放たれた闇魔法が彼女にも一撃を与える。
「ザックアリル!!」
血を吐き、顔を歪める彼女の名を叫ぶと同時に魔王から、さらなるカウンター攻撃が彼女を襲う。
一撃必殺のザックアリル…空中で姿勢を整えようとするがダメージが大きく回避が遅い。
「光魔法…聖護の翼壁!」
天使様から授かった白い翼の壁をザックアリルに向かい発動するも一瞬、魔王の攻撃が速かった。
彼女の相棒である赤竜がその身を挺して、主人であるザックアリルを守る。
「グァァァァア」
赤竜のうめき声が辺りに響き渡った。
「光魔法…究極 天弓星霹靂!」
背後から放たれた雷の矢が魔王の体を貫く。
「よし!アルマティアス!いいぞ!」
先日、結婚式を挙げた我が妻…アルマティアスが最大出力の魔法を魔王にぶつけた。
「やぁぁぁぁぁ!!猛虎架砲!」
大地が引き裂き、その割れ目から剛腕の戦士、ブロウガが飛び出し魔王に強烈な一撃を放つ。
「よし!」
オレは思わず叫んだ。
さらにブロウガの背中から、ニ筋の閃光が放たれる。
「火魔法…究極 業炎滅柱陣!」
「風魔法…究極 咆哮神舞旋!」
シイラルとリズラルの王帝魔導士コンビが同時に究極魔法を発動!究極の炎と究極の風が交わり…荒れ狂う炎となって魔王の体を切り裂く。
「決まったか!?」
オレがそう思った瞬間…目の前を暗闇が襲った。
「暗黒魔法…究極 黄泉ノ凶星!」
魔王の淀ずんだ、暗い声が腹の底に響いた。
「がはっ」
何が起こったのか分からない…辺りのすべてが暗く闇に包まれたかと思ったら、急に内臓が煮えたぎるような感覚に陥った。
思わず膝をついたが、なんとか倒れるのは免れた。
「アルマティアス!ギルアシル!ザックアリル!」
我が妻…銀の魔導士、幻惑の神官、滅の竜騎士…3人の名前を叫ぶも返事が無い。
「ブロウガ!シイラル!リズラル!」
剛腕の剣闘士、炎の魔導士、風の魔導士も…気配を感じない。
「くそっ」
ゆっくりと暗黒の霧が晴れ…魔王が姿を現した。
「しぶといヤツだ…」
「お互いな…」
内臓の一部をヤラレタようだ。とても苦しく…目が霞む。
が…魔王も口から血を流し、右腕はダラリとしている。
ここは…回復よりも攻撃だな。
オレはニヤリと笑い…お別れを口にした。
「ごめん…アルマティアス…」
「光魔法…究極 夢幻帝堕天!」
オレは最後の魔力を振り絞り…最後の究極魔法を放った。
「闇魔法…究極 冥界砲雷羅!」
魔王も同時に究極の闇魔法を放った…
「トルナシアー!」
我が妻、”銀の魔導士アルマティアス”がオレの名を叫ぶ声が聞こえた…良かった、無事なようだ。
ここで魔王を倒さなければ、アルマの身も危険だ。
身体に宿る魔力のすべてを魔王殲滅に捧げる………
~~~~~~~~~~
「トルナシア…トルナシア…」
優しい声が聞こえる。
この声はアルマティアス…現世て子供の頃に森で救われた、あの日を思い出す。
「アルマティアス…オレは、400年前…魔王を倒したのか?」
「そうよ…魔王とキミは共に最大魔法を放ち合い、共に倒れたのよ。」
「そうか…心配かけたな。みんなは無事だったのか?」
「ええ…ギルアシル、ザックアリル、ブロウガ、シイラル、リズラル…そして人族すべてが、あなたによって守られたのよ。」
いつの間に倒れたのだろうか。
朽ち果てた教会で、ボクは召喚獣の姿をしたアルマティアスに抱き寄せられていた。
「あぁ…この教会…オレ達が結婚式を挙げた教会だったね。」
「そうよ…こんな姿になっちゃったけどね。」
「アルマと結婚式を挙げた時は、あの壁画は無かったな…」
「キミの功績をたたえて魔王との決戦を描いた壁画…もう人々からは忘れられているけどね。」
「そうか…オレも忘れていたから仕方ないな。」
「私の事も忘れちゃうなんて、キミは本当にヒドイよ。」
「アルマは…オレが死んだあと、どうしたんだい?」
「私のお腹の中に、キミとの間に出来た赤ちゃんが居る事に気付いてね…産んで一人で育てたわ。」
「迷惑かけてすまなかった。オレとアルマの子か…見てみたかったな。」
「女の子でね…サフィアちゃんにそっくりだったわ。」
「そうか…サフィアは、オレとアルマの子孫なんだね。」
「そう…今のキミ…マイトラクスも私の子孫だから、変な話よね。」
「オレはオレの子孫か…理解しずらい話だな。」
「そうね…ちょっと、難しいわね。」
アルマと笑い合いながら、オレはゆっくりと起き上がった。
不思議な霧が晴れ…辺りが夕焼けに染まり赤く色づいているのが分かった。
少し、ひんやりとした風が流れる。
「ん?あなたは…幻惑の神官…ギルアシルだね、元気だったかい?」
霧が晴れた先にウェーブのかかった紫色の髪に大きな丸い眼鏡を掛けた女性が立っていた。
「今は、そのような名前じゃないわよ…トルナシア。単なる薬師科の先生よ。」
「そうだな…そもそもオレが知っているギルアシルは男性だ。」
オレと現世のギルアシルは笑いあった。
「そう言えば…名乗るのを忘れていたらしいわ。今の名前はシュレインよ。」
シュレインと名乗った幻惑の神官、ギルアシル。
「シュレインか…なんか違和感があるな。ところで、さっきの霧はあなたの仕業かな?」
「そうよ…トルナシアの記憶を呼び覚ます為に一生懸命、研究していたのよ。褒めて♪」
ギルシアルは、"自分から褒めて"なんて言うキャラクターでは無かった気がするが…まぁ、質問してみよう。
「シュレインは、以前からギルシアルの記憶を取り戻していたのかい?」
「いいえ…ナタリアさんがマイトとアルマの二人を連れて来た日。本が頭の上に落ちてきた時に、なんか違和感を覚えて…徐々に思い出してきたのよ。」
「私がギルシアルの事に気が付いて、接触して協力を申し出たの。」
隣で話の行く末を見守っていたアルマティアスがオレに伝えた。
「自分の前世を思い出した時は、驚いたわよ…伝説の魔法師トルナシアの支援役として一緒に戦っていたなんてね。」
笑いながら言うシュレイン。
「記憶を呼び戻す霧…まさに幻惑の神官だな。また一緒に戦ってくれないか?」
オレは、ふたたびシュレインに自分のパーティーへの参加を依頼した。
「それが…トルナシアに教わった光魔法、思い出せるのに発動しなくてね。」
「幻惑の神官は”光魔法 回復”を使えた筈だが、おかしな話だな。」
「あと、薬師科の先生の職を放棄する訳にはいかないわ。ナタリアさんの研究の支援もあるしね。」
しばらくの沈黙が流れる。
「とりあえず…七仙剣のうちの3人は、ここに居るトルナシア、シュレイン、そして私。残りの4人をまずは探すというのはどうかしら?」
アルマが提案する。七仙剣というのは、魔王に挑んだオレ達のパーティーの名前だ。
「懐かしいが…あの4人も生まれ変わって、現世に居るというのか?」
「1人は分かっているわ。他の3人も、なんとなく…だけど気配を感じる事が出来るの。」
そんな能力がアルマティアスに有ったとは聞いていないが、天使見習いとして400年を生きたアルマには新たな能力が備わったのかもしれない。
「分かった…あの4人と再び共に戦えるとしたら、これほど心強い事は無い。神官シュレイン…しばらくは分かれるが、後に合流して欲しい。」
「そうね、七仙剣の復活となれば合流しない訳には行かないわね。それまでに回復魔法を復活させるように頑張るわ。」
ボク達は、廃墟となってしまった思い出の教会を後にして、一旦、元の生活に戻る事にした。
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待っていなかったかもしれませんが…お待たせしました♪
第三章の始まり…この物語の最終章となります。
自分の過去を思い出したマイトラクスと、天使見習いとして生きるアルマティアス。
魔族の王である魔王との対決に備えて動き出しました。




