街の復興を終えて
第五魔法師団とサフィアがデマントの街へと戻った日、エタレナ師団長が召喚獣グリルデルの子供を訓練場に連れて来た。
魔法師団のみんなが驚きの声を上げる。
亡くなった筈のグリルデルが小さくなって突然現れたので当然だ。
エタレナ師団長が前に立ち、大きな声を出した。
「紹介するわ。私の新しい召喚獣、グリルデルジュニアよ。」
「グリルデル…ジュニア?」
名付けに、かなり悩んでいるように見えたが、随分と分かりやすい名前を付けたな…と思ったが口には出さずにいた。
イリエとヤエノを見ると、同じように思ったのかポカンとした表情だ。
「ジュニアという事は…グリルデルの子供なのですか?」
ピンク色の髪を持つ召喚術師ビスハイムが質問する声が聞こえた。
「あぁ、そうだ。みんな仲良くしてくれ。」
キルアスが拍手を始めると、魔法師団の仲間からも拍手が巻き起こった。
エタレナ師団長は、とても嬉しそうだ。
「今日からは街の復興支援、水の配給に加え、訓練も復活させる。3班に分けるからキルアスの指示に従うように。」
全体への号令を終えた後、エタレナ師団長はボクに近づいてきた。
「そう言えば、マイトラクスは長期休暇の途中だったのじゃないのか?あの日、どうやって駆け付けたのか分からないが…休暇の続きを取って良いぞ。」
「そうでしたね…実家に帰りたかったけど、残りの休暇で帰るのは難しいですね。」
「うむ…少々延長しても良いが。」
エタレナ師団長は、そう言ってくれたがボクは軍の休暇のスケジュールが今回の騒動で狂ってきているのを知っていた。
「では、次の長期休暇の時に、今回足りなかった分を足ささせていただきますね。」
「マイトラクス、助かるよ。」
ボクはエタレナ師団長に敬礼をして後にすると、班分けの指示を受けるべくキルアスの元へと向かった。
指示を受けた結果、今日は久しぶりに訓練の班への割り振りなった。
イリエとヤエノが特大の上級魔法をぶっ放している。
以前より火力が上がっている事がその激しい音から伝わり、魔法師団全員から注目を集めていた。
今までは、その実力を隠していた二人だが今回、魔族と戦った時に全力を出していたので今更、遠慮する必要も無くなった。
あの時、あの場所に居なかった魔法師が特に驚きの表情を見せている。
「改めて見ると、凄いな…あの二人は。」
キルアスが言葉を失う。
「新人がこれだと、示しがつかないが…実力差がありすぎてどうにもならん。」
エタレナ師団長は、どこか投げやりな様子だ。
ボクは召喚獣の集まる場所に行こうとしたが、師団長に呼び止められた。
「マイトラクスよ…私は貴方の本当の力を見てみたい。」
アルマと目を合わせ、どうしようかと考えた。
「本気を出しても…内緒に出来ますか?」
「あぁ、私たちを信じてくれ。」
エタレナ師団長とキルアスが真顔で答えた。
では…
ボクは、イリエとヤエノに近づき場所を交代した。
召喚獣の訓練をしていたグループも手を止めて様子を見ている。
光魔法さえ使わなければ良いか。
「火魔法…上級 炎星の業火」
「水魔法…上級 絶対零度の氷河」
「風魔法…上級 神風の頂き」
「土魔法…上級 大地の憤怒」
上下左右に4つの上級魔法を同時に展開。
「行け…」
ドドドドーン!!!!
ボクの魔法がターゲットにしていた岩山を粉砕すると同時に地響きで訓練場が揺れた。
辺りはシーンと静まり返る。
魔法師の中には、よろめいて尻もちを付く者も居た。
エタレナ師団長とキルアスは開いた口を塞げないようた。
「マイトくん、また火力が上がったんじゃない?」
静まり返る中、最初に声を出したのはイリエだった。
「マイトー、ほんと凄いな。」
ヤエノも魔法剣を振り回しながら言う。
「イリエとヤエノも火力が上がっているのが分かったよ!」
ボク達が騒いでいると、周りから拍手が巻き起こった。
「マイトラクス…貴方は4属性、すべての上級魔法を使えるのか…しかも同時発動とは、本当に人族なのか?」
エタレナ師団長が問いかけてきた。
魔族にも、人族なのか?と聞かれた事を思い出した。
「新人がどうのと言う次元の話では無いな。」
キルアスはそう言った後、ボクに魔法師団、全体を指導してくれないか?と聞いてきた。
エタレナ師団長も同じ意見のようだ。
「ボクは人に教えるのが苦手でして…代わりにこちらのアルマティアスが教えます。」
そう言うとアルマの背中を押し、前へと出した。
「え?私??」
アルマが驚く。
「だから私は人族に深入りする訳には…」
「アルマは、もう単なる召喚獣だよ。」
そうだった…と頭を抱えるアルマ。
「それは良い提案かもしれない…新人が先輩を教えるとなると、騎士団が変に思うしな。」
キルアスが笑顔で言うが、確かにそうだ。
「マイトラクスは訓練以外にも仕事がある。アルマティアス君、よろしく頼むよ。」
エタレナ師団長も頭を下げた。
「はぁ、どうして私が…マイト、手伝える時は手伝ってよ。」
アルマは唸りながら了承した。
楽しそうに拍手を送るイリエとヤエノにも向い「手伝え」と文句を言っている。
その日からアルマの指導は始まったが、とてもスパルタだ。
手を出すと言うより、言葉の暴力が凄まじい。
心が折れてしまわないかと心配になるレベルだ。
それでも文句を言わず、魔法師のみんなは訓練に励んでいる。
エタレナ師団長がボクの側に来て言った。
「今回の魔族の襲撃で自分達の力の無さを痛感したんだ。」
「貴方達の存在が自分達も努力したら魔族と戦えるようになるかも。という希望になっているわ。訓練に力が入っているのは貴方達のおかげよ。」
ボクはエタレナ師団長に言葉を返した。
「いえ、ボク達の力もまだまだです。今回は魔族一体だったので助かりました。王都の時みたいに三体で襲ってきていたらどうなっていたか…」
師団長の切り返しは早かった。
「貴方…その三体の魔族を倒したのよね?」
少し考えてから答える。
「あの時は魔法師、騎士、多くの方の助力がありました。だから倒す事が出来たのです。」
「そうか…どちらにせよ貴方の経験は貴重だ。是非、我々の道標となって欲しい。
エタレナ師団長の期待する言葉に、照れ臭くもあったが、責任を感じボクは「はい」と答えた。
街の復興には、一ヶ月程かかった。
いや、完全に復興していない。が、”終わった事にする”となったのだ。財源の都合らしく、ボクには何も言えなかった。
その後、しばらくして王都へと赴く事になった。
各街から代表者が集まり、今後の魔族への対応を話し合うらしく、ボクはその一団に選出された。
ヤクトルド騎士団長を中心とした騎士団5名
キルアスとボク、ヤエノ、あと2名の魔法師、全10名での出張となる。ヤエノはこの仕事を終えた後、長期休暇に入る事になった。
「あー、久しぶりの王都だわ。」
「ヤンガノから王都は遠いからねぇ…って、痛いんだけど。」
馬車の中で伸びをしながら話すヤエノだが、伸ばした腕がボクの顔に当たっている。
「おい、騒しいぞ。」
そう怒ってきたのは騎士団員、ガルハルト・アーノルド。
ヤンガノの街を初めて訪れた際に、軍の入り口でボク達に文句を言ってきた男だ。
聞いた話によると、学園時代にボクと揉めたジンハイト・アーノルドの兄らしい。
「すみません。」
騒しくしたのは、確かなので素直に謝罪した。狭い馬車の中だから、少しくらいは大目に見て貰いたいところだが。
その時、大きく馬車が揺れた。
「タナホーガだ!」
ヤクトルド騎士団長が、そう叫ぶと馬車から騎士団と魔法師、全10人が飛び出した。
初めてヤンガノの街へと向かう道中で遭遇した獣と同じ種族だ。
その体は細く、ウネウネとしている。
「魔法師は、引っ込んでろ!」
そう叫ぶとガルハルトが大剣を振りかぶって、タナホーガに襲いかかった。
ドンッ
豪快に振り下ろした大剣だが、タナホーガは嘲笑うかのように穴から砂の中へと消えた。
「ちっ…すばしこい奴だ。」
そう言うと、ガルハルトは馬車へと戻っていく。
タナホーガの習性をよく知っているようだ。
「実力はあるのだが…あの男には困ったものだ。」
ヤクトルド騎士団長はため息をこぼしながら言う。
「貴族の名家であるからか、自信家でね。人の言う事を聞かないんだ。タナホーガに大剣を振り回しても当たらないと何度も言っているのだが…。」
「騎士団長は名家出身なのに謙虚ですね。」
ボクがそう言うと、
「オレは自分よりも強い人を知っているからね。」
何故かボクの肩を叩きながら、そう言った。
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