大昔の話であり少し前の話
元々一つだった世界を3つに分けた…アルマが大天使様と呼んだ方が驚きの話をする。
「まだ…私の話を聞くのかね?」
「はい…詳しく知りたいです。」
大天使様の話は驚きの連続だが、知らなければ前へと進めない…そんな気がした。
イリエ、ヤエノ、サフィアの3人も静かに大天使様を見つめている。
「私が世界を3つに分けた後、数百年は平和だった。が…新たに生まれた魔族の王が私と同じように空間魔法を扱えたのだ。そして、その時に魔族は人界を襲った。」
「その戦いで、キミ達が英雄と崇めるトルナシアが魔王を倒して人界は救われたのだ。」
トルナシアという人名を言った後、大天使様はボクに方をじっと見つめた。
「だが…最近になって、また空間魔法を扱える魔王が誕生した。そして、今回の人界での事件だ。魔王は配下を人界に送って様子を見ている所だ。また、トルナシアのような危険な人物が居ないかを確認しているのだろう。」
「あの…どうして魔王は人族を襲うのでしょうか?」
サフィアが疑問に抱いた事を質問した。
「元々、人族の領地の半分程は魔族の領地だったのだよ。」
大天使様は…ため息をつくように言葉を吐いた。
その真意はこの後の言葉で分かる事になる。
「人族は寿命が極端に短い。その代わりに人族は繁殖能力が高く…増えすぎてね。魔族の領地にまで侵入したのだ。もしかしたら、魔族の領地とは気付かなかったのかも知れない。」
「その頃、魔族は領地にこだわりが無くてね、人族が自分達の領地に入ってきても抵抗しなかったのだよ。逆に人族は領地に対して、ひどくこだわりがあってね…そのうち人族は魔族を襲ってでも領地を奪いに来たのだ。」
大天使様の話を聞く限り、ボク達人族の方が先に魔族を襲った事になる。
「怒った当時の魔族の王が人族を襲い、戦争に発展したんだ。」
「人族は…弱かった。それまで抵抗をしなかった魔族を自分達より弱い存在だと勘違いをしてしまっていたのだよ。戦争は一方的に魔族が有利だった…長命で魔力も高く、身体能力も高い魔族の方が上に決まっているのにね…数で勝負を挑むだけの人族の被害は甚大だった。」
何百年も前の話だが…とても興味深く、ただ黙って大天使様の言葉を聞いた。
「壊滅的な被害を負った人族は…我々天使族に助けを求めて来たんだ。我々天使族は”寿命が短く、弱い人族”に同情をしてしまった。」
「人族を助けた事で魔族の怒りの矛先は我々天使族に向かってね…それはそうだ天使族さえ倒せば、残りの人族など魔族にとっては簡単に倒せるのだからな。」
「我々天使族は、人族に協力を申し出て一緒に魔族と戦おうと伝えたんだ。だが…人族の答えはノーだった。力の差は歴然だったから仕方ない事だったのかもしれない。」
そんな…人族は、なんて自分勝手だったのだろうか。助けを求めたクセに天使族と一緒に戦わないだなんて。もしかして…魔族と天使族で戦えば自分達は無事になるとでも考えたのだろうか。
「魔族の攻撃は思ったより強烈でね…私は空間魔法を駆使して、世界を3つに分ける事で魔族からの攻撃を回避したんだ。先ほども言ったようにね。」
「魔族は今も人族と天使族を恨んでいる…特に人族に奪われた領地を取り返そうとしている。だから魔族の王である魔王は、人族を襲うのだよ。」
サフィアの質問に答え終えた大天使様は、どこか悲し気な表情を見せた。
「これで分かったかね…そなた達、人族は天界に入ってはならないのだよ。」
「天使見習いであるアルマティアスは、人族を天界に招き入れた罪を償なければならない。」
ボクは大きく深呼吸をした後、大天使様に言った。
「それは…昔話です。今を生きるボク達は今を…そして未来を見据える必要がある。」
大天使様は答える。
「人族には大昔の話かもしれない。だが…私は、つい最近のように思い出す事が出来るのだよ。」
「魔族は天使族よりは寿命が短いが…そうだな、おじいちゃんに体験談を聞くようなものなのだ。人族、魔族、天使族、それぞれで時間の価値観が違うと言えば分かってくれるかな?」
大天使様の言う事は分かる…でも、ボクは大事なアルマを置いて帰る訳にはいかない。
「分かります…それは分かります。」
「でも、魔族が危険だと言う事は、大天使様も分かっているのですよね?」
「あぁ、分かっているつもりだ。だが、私にとって人族も…今となっては信頼のおける種族ではない。」
「キミ達、人族は…同種族で争い合い、他人を見下すために必死になり、自己顕示欲を求める為に同種族の領地を狙う。わたしにとって…人族は愚か者であり、助けるに値しない者たちに成り下がった。」
何か固い物で頭を殴られたような衝撃を受けた。確かに…人族の間では争いが絶えない。魔法師と騎士団で歪みあったりと…弁解の余地は無い。
「魔族は我が天使族も恨んでいる。私は天使族の長として天界を守る為に、この地が魔族にバレる事は絶対に避けなければならない。故に人族が…この地を訪れないように努力をしているのだよ。」
大天使様が言う事はもっともだ…愚かな人族の為に天使族を危険に晒すわけにはならない。
でも…
「大天使様…このままで良いのですか?ずっと…魔族に怯えながら天使族は過ごすのですか?」
「何?我々天使族が魔族に怯えているだと?」
「なんと無礼な…そなたがトルナシアの生まれ変わりだとしても許さんぞ!」
イリエとヤエノが、驚いた表情でボクを見つめる。
「怯えているじゃないですか!コソコソと隠れて!」
「ボクは…天使族に協力を申し出ます!…数百年前に、天使族が人族に協力を申し出たのと同じように!」
「私からもお願いします!私たち人族と一緒に戦いましょう!」
サフィアが大きく目を見開いて、ボクの横に立った。
「な…」
「トルナシアの末裔よ…魔族を数体、倒したようだが…そんなに簡単なものじゃないのだよ。特に魔王はな。」
大天使様がトルナシアの末裔と言いながらサフィアを見つめる姿を見て、イリエとヤエノはサフィアの事も見つめた。
「分かっている…つもりです。でも、ボクは人族の為に、大切な仲間の為に戦いたい!」
「昔…人族は魔族に酷い事をしたのかもしれない。でも、今を生きる為にボク達は、未来の子供たちの為にも…負ける訳にはならないんだ!」
大天使様に対して、ボクは叫んだ。
「マイト…もう止めて!」
アルマがボクに対して叫ぶ。
「アルマは…このままでいいのか?魔族と戦わなくていいのか?」
ボクはアルマに対して叫ぶ。
「私は…今は見習い天使…ちゃんと天使となって、キミ達を見守りたいの。」
アルマの目には涙が浮かんでいる。
「このまま天界に閉じ込められて居たら、その想いは叶わないんだぞ。」
ボクの目にも涙が貯まっているのが分かる。
「アルマちゃん…お願い。わたし達に手を貸して。」
「アルマさん…私、もっと魔法を教えて欲しい。」
イリエとサフィアも目に涙を浮かべている。
「あたしも…アルマちゃんが居ないと調子が出ないんだよね。」
ヤエノがニコリと笑った。
「私も…本当は、キミ達の傍に居たい。みんなの為に、人族の為に尽くしたい!!」
やっと…アルマが本当の気持ちをボク達に伝えた。
「はぁ、トルナシア復活という事で…アルマティアスを特別に人界に送ったのだが。それが間違いだったというのか。」
大天使様は頭を抱えた。
「大天使様…お願いします!」
ボク、イリエ、ヤエノ、サフィア、そしてアルマが声を揃えて大天使様に懇願した。
「分かった…が、決まり事を破る訳にはならない。」
「アルマティアス…キミを天使見習いの役から外す。これからは単なる召喚獣だ。召喚獣に天使族の決まり事は適用しない。」
アルマは、じっと大天使様を見つめた。
「再び天使を目指すというなら、またイチから出直しだ。それでも良いのか!?」
大天使様がそう言うと、アルマは静かに答えた。
「私、アルマティアスは召喚獣となります。そして、この戦いが終わったら、再びイチから天使になる為の修行に励みます。」
「アルマティアス…それが、どれだけ大変な事か分っているのだろうな。」
「はい…大天使様。」
「アルマティアス…そなたの気持ちは受け取った。召喚獣として、人族と共に戦うが良い。」
「ありがとうございます。」
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アルマの正体が判明する回でした。
といっても…半分くらいとなります。
あと、イリエとヤエノにマイトがトルナシア様の生まれ変わりだという事がバレてしまいました。
この2章の終盤の構想は出来ているのですが、途中が未だ定まっていません。
更新遅くなったらスミマセン。




