赤い魔法陣
「マイトラクス…貴方は召喚獣をどうやって手に入れたんだい?」
「ボクもエタレナ師団長と同じです…アルマとの出会いは森の中でした。」
「そうか…私と同じか…」
感慨深そうな表情でボクを見つめる師団長。
「あの不思議な緑色の体の召喚獣も森で出会ったのかい?」
「いえ、ヒスイは…貰ったアイテムの中に封じられていました。」
「なんと…アイテムの中に?そんな事があるのだな。」
驚く師団長に詳しく説明してしまったら…もう色々とバレているから問題ないか。
「王都を守った功績として、国王様にいただいた"国宝の腕輪"に封じられていました。」
ボクの言葉に師団長はさらに驚き、声も出ないようだ。
「あの…スミマセンがボクの事は内密にして欲しいです。」
「あぁ、分かっている…すでに口止めはしてあるよ。あの時、貴方達に傷を治して貰った魔法師は、みんな感謝の念を抱いているから大丈夫だ。」
「にしても…貴方もだが貴方の召喚獣も凄いな。私にくれないか?」
「えぇぇ〜アルマをですか?エタレナ師団長…それはちょっと。」
「ははは…分かっている、冗談だ。召喚士と召喚獣の固い絆は一番分かっているつもりだからな。」
師団長の目を見た感じ、なんだか本気だったかのように思えて怖い。
昼食は全員で食堂でとる手筈になっていた。
ヤンガノの文化で葬儀の際にいただくという独特の料理があるらしい。
野菜や穀物中心の煮物だったが、少し辛めの不思議な味付けだった。
「サフィア、そういえばアルマはどこに行ったんだ?」
「さぁ、眠る時は横に居たけど…朝、起きたらすでに居なかったわ。」
師団長と召喚獣との出会いの会話を交わした後、ボクは無性にアルマに会いたくなっていた。
「おーい、アルマー。」
空中に向かい、呼ぶも全く反応は無い。
「アルマさーん。」
サフィアも呼んだが来る気配は無い。
「アルマちゃーん。」
イリエとヤエノも呼びかけたが…そもそも二人はアルマを呼び出した事は無い筈だ。
「何をしているんだい?」
不思議そうな顔をしながらキルアスがボク達に声をかけてきた。
「あ、ちょっと…召喚を…」
「ほぉ…召喚術師でも召喚に手こずる事があるんだな。」
うん、アルマは召喚獣ではないからね…と心の中で答えた。
「仕事の話なのだが…午後から避難所と治療院に行って、行方不明者の洗い出しを行なってくれ。」
「サビアスは第五魔法師団に合流して指示を仰いで欲しい。葬儀へ参加した件は、すでにオレから伝えてある。」
「分かりました!」
イリエ、ヤエノと共にキルアスに向かって敬礼をする。サフィアも隣でボク達の真似をした。
「サフィア、帰らなくて良いのか?馬車の手配ならするぞ。」
「うん、この街の事が気になるし、一人で帰るのは不安だからサビアスさんの部隊が戻るタイミングで同行させて貰うわ。」
確かに、砂漠超えは危険が伴う。軍と共に行動した方が得策かもしれない。
話を聞いていたキルアスが、第五魔法師団にサフィアの事を依頼してくれると言ってくれた。
街の避難所へと向かう。
瓦礫の片付けは騎士団と応援部隊が担当してくれていた。
ヤクトルド騎士団長が指揮を執っている。
今回の魔族からの襲撃では、魔法師が主に戦い、騎士団は住人の避難を担当したらしい。
「空を飛ぶ魔族だったからね…騎士団は弓隊しか役に立たなかったのよ。」
ボクが到着するまでの様子を尋ねたイリエは、そう答えた。
「騎士団が住人を避難所に誘導してくれたおかげで、住人の被害は最小限にとどめる事が出来たって話だ。」
ヤエノが言う通り避難所での書き込みでは、思っていたより行方不明者の届出は少なかった。
治療院へ行くと多くの負傷者が運びこまれていた。
やはり亡くなられてしまった方も居て悲しみに包まれている。
「マイト…重症者だけでも何とかならない?」
イリエの問いかけに頷いたボクは重症者が集められているという部屋に入った。
部屋のドアを閉め、イリエ、ヤエノ、サフィアが警戒を行う。
「光魔法…回復!広範囲!」
静かに…そしてゆっくりと…回復魔法の呪文を詠唱した。
「さぁ…行こうか。」
重症者達が傷が癒えた事に気づく前にボク達は部屋から出た。
「サフィアちゃんも光魔法を使えるんだよね?回復は出来ないの?」
「私は、昨日はじめて光魔法を使ったけど…偶然です。呪文も覚えていないの。」
ヤエノの質問にサフィアはそう返した。
あの時…光魔法を使った時はサフィアも必死でボクとアルマの真似をしたのだろう。
治療院で得た情報を照らし合わせ、行方不明者のリストを作りキルアスに提出し、その後は住民への水の提供の仕事を手伝った。
夜になったが…アルマは姿を見せない。
「アルマさん…どうしちゃったのかしら?」
「どこに行っちゃったんだろうねぇ。」
「突然、居なくなった事は今までもあったの?」
「うん…あった…ような気がする。」
「もう!お兄ちゃん、アルマさんの事が心配じゃないの!?」
「え!?」
急に大きな声を出したサフィアにボクは驚いた。
「何を大きな声を出してるの?廊下まで聞こえたわよ。」
そこにイリエがいつものようにやって来た。
「イリエさん、こんばんは。」
大きな声を聞かれた事で、照れ臭そうにサフィアは挨拶をする。
「どうしたのですか?」
「どうしたって…いつも来てるわよ。」
「え?いつも…お兄ちゃんの部屋に来ているのですか?」
イリエの返事にサフィアは驚きながら答えた。
「お兄ちゃん!もう答えは決まっていたのね!」
興奮気味に話すサフィア。
「いや、サフィア…一体、何を考えているんだ?」
「あー、残念だけどサフィアちゃんの考えているような事は無いよ。」
そう言いながらヤエノがイリエに続き入ってきた。
ガッカリした表情を見せるサフィア。
「ところで、何を騒いでいたんだい?」
ヤエノの質問に、アルマがまだ姿を見せない事を伝えた。
「んー、そのうち姿を現すんじゃない?」
イリエとヤエノはボクと同意見だった。
が…
その翌日も翌々日もアルマは姿を現さなかった。
「一体、どうしたのだろう…」
流石にボクも不安になってきた。
「だから…最初から言っているじゃない。」
サフィアが機嫌悪そうに言う。
「サフィア…あの空間にボクは行ってみようと思う。」
「お兄ちゃん、あのぐにゃ~って感じ、また味わうの?」
「いや、あれだけは勘弁だな。」
「何?マイトくんとサフィアちゃんは、あの魔法陣の向こう側に行った事があるの?」
イリエが問いかけてきた。
「うん、実はデマントの街からヤンガノの街に短時間で来れたのは、アルマが住む空間を通ったからなんだ。」
黙っておいた方が良いのは分かっていたが、ボクはすでにアルマが居ると思われるあの空間に行く事を決意していた。
「でも…どうやって行くのさ。」
ヤエノの疑問を受け、ボクはサフィアの方を見た。
「え?私?」
「サフィア、あの魔法陣の模様…覚えていないか?」
「何となく…なら。」
「ボクが描くから、修正してくれ。」
そう伝えるとボクは魔法陣の作成に入った。
何度も見てきた、あの赤い魔法陣。
記憶を辿り…空中に描いた。
が…あの空間に繋がった気配は無い。
「サフィア、どこか違っているかな?」
「お兄ちゃん、凄いわね…。あ、でもこの外側の言葉が違うような。」
二人で言い合いながら修正していく。
何度も修正するが、門は開かない。
1時間ほど経過し、疲れて来た時…魔法陣が赤く光った。
「よし!成功だ。」
「お兄ちゃん、やったわね!」
イリエとヤエノは拍手をしている。
「じゃぁ、行ってくる…不在中は、なんとか誤魔化してくれ。」
ボクは大きく深呼吸した後、魔法陣の中に…
…入ろうとしたが、服を引っ張られた。
振り返るとイリエとヤエノ、そしてサフィアが怒った顔をしている。
「ちょっと…一人で行く気なの!?」
3人は口を揃えて言った。
「いや、どんな危険があるか分からないんだ。」
そう言うも3人はボクの服を離さない。
「危険かもだから…わたし達も行くのよ。1人より4人の方が力を発揮出来る筈よ。」
そういえばイリエは…頑固者だったな。
「お兄ちゃん1人じゃ心配だからね。」
「何があるか分からないなんて、楽しそうじゃないか。」
サフィアとヤエノも引かないようだ。
「分かった、4人で行こう…決して無茶はしないように。」
4人、手を合わせて決意を示し、魔法陣の中へと入った。
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