別れ
「あ、マイトの妹のサフィアです。イリエさんですね、兄からお話はお聞きしています。よろしくお願いします。」
さっきまで、抱き合って…とか言っていたサフィアが急に改まって挨拶をした。
「はい、イリエティーナです。こちらこそよろしくね。で、話って…どのような。」
動揺した様子でイリエが挨拶を返したが、『話』という部分をサフィアはスルーした。なんとなく楽しんでいるような雰囲気だ。
「あたしはヤエノ…まぁ、部外者よ。」
部外者?ヤエノは何を言っているのだろうか?
「あら、てっきりお兄ちゃんは学園に行ってからモテモテに生まれ変わったのかと思ったけど、一部の方からだけみたいですね。」
イリエは顔を真っ赤にさせた。
ヤエノは面白そうにイリエとサフィアを見ている。
「キミ達、ご苦労だったね。」
キルアスが声を掛けてきた。
「エタレナ師団長は大丈夫ですか?」
大切な召喚獣を失った師団長をボクは気づかった。
「いや…だいぶダメージがある。しばらくはそっとさせてあげたい。オレが師団長に変わり、指揮を取る事にするよ。」
サフィアを庇う事で亡くなった師団長の召喚獣…ボクもあの時、サフィアが狙われると予測する事が出来なかった。
「キルアスさん…指揮、よろしくお願いします。」
「まずは救助を必要としている人が居ないかの確認だ。疲れが残っているところ悪いがよろしく頼む。」
「はい、分かりました。」
ボクとイリエ、ヤエノは敬礼して指示を受け取った。
サフィアには休憩するように伝えたが、どうしても手伝いたいと言うので逃げ遅れた人が居ないか、捜索活動に参加してもらった。
逃げ遅れて隠れていた人を避難所まで誘導する。
そして、怪我をしている人は治療院へと運んだ。
「ふぅ…体力には自信があるが…流石に疲れたな。」
「お兄ちゃん、お疲れ様。部屋、思ったより片付いているわね。」
夜になり、サフィアと共に軍の寮へと帰ってきた。
実は、イリエに部屋を片付けて貰っているとは言えず、褒められた事に罪悪感を感じる。
何日か空けていただけの部屋だが、妙に懐かしい。
「今日ね…お兄ちゃんの凄さを改めて知ったわ。」
「やめろよ、恥ずかしい。」
サフィアをボクのベットに寝かせ、ボクは床に布団をひいた。
「良かったじゃない…兄の威厳を示せて。」
珍しくアルマは天界という空間に戻らずサフィアと一緒に布団に入っている。
「アルマさんも凄かったですよ。」
「なぁに、サフィア…私を褒めても何も出ないわよ。」
「それよりサフィア、光魔法は人前で使わないようにな。」
「うん…お兄ちゃん、分かっているわ。誰も知らない魔法ですものね。」
「キミ達、明日も捜索活動でしょ…しっかり眠りなさい。」
「はーい。」
アルマに忠告され、ボクは目を閉じて眠りについた。
…なんだろう?
…これは夢なのかな?
とても綺麗な女性が目の前に立っている。
…結婚式、なのかな?
白いドレスを身にまとい花束を持ったその人は、周囲の人々から祝福されているようだ。
あれ?…この雰囲気…どこかで会った事があるような…
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魔族から襲撃があった翌日、ヤンガノの街に王都やデマントの街からの応援部隊が到着した。
「もう遅いって…」
「あの砂漠があるから、仕方ないわよ。」
ヤエノとイリエは会話する中、サビアスの姿を見つけた。
「サビアスくん、久しぶり!」
「やぁ、イリエさん、ヤエノさん…今回は大変だったね。」
「本当、長い一日だったわ。」
ヤエノはそう言うと、げんなりとした表情を作っておどけた。
その顔は面白く、少し笑ってしまった。
「マイトくんが駆けつけてくれていなかったらと思うとゾッとするわね。」
イリエもヤエノの変な顔を見ながら笑って言う。
「そこなんだ…ボクはあの日、マイトにデマントの街であったんだ。どうしてマイトはボク達よりも1日早くヤンガノに来れたんだい?」
サビアスは意外と鋭い。
アルマが住む異空間を通ってきた。なんて正直に言っても良いのだろうか?言葉に詰まる。
「アルマさんの魔法で来たの。」
「え?サフィア…」
嘘をついたサフィアを驚いて見たが、魔法みたいなものだったでしょ。と小声で囁いかれて納得した。
「もしかして…マイトの妹さん?」
「そうなんだ、サビアスと入れ違いで学園に入学したんだよ。」
ボクはサビアスの問いに答えた。
「サフィアと言います。お兄ちゃんがお世話になってます。」
「へぇ、マイトと違って可愛いんだな。」
「サビアス、ボクの妹に手を出すのか…ラブラリルに言いつけるぞ。」
急に慌てだすサビアス。
「それは勘弁してくれ…あいつ、結構怖いんだ。」
「へー、そうなんだ怖いんだ…それも言ってやろう。」
今度はイリエとヤエノが真剣な顔をしながら言うと、さらにサビアスは慌てだした。
「おいおい、勘弁してくれよ~。」
泣きそうな声を出しながら謝るサビアスを見て、みんな笑い出した。
こうやって笑い合っていると学園時代を思い出す。
「おーい君たち、こっちに来てくれ。」
キルアスに呼ばれて駆け寄った。
「お、サビアスも来ていたのか、久しぶりだな。」
キルアスとサビアスは兄弟だ。
「兄さん、久しぶりだね。」
さっきまで慌てていたとは思えない程、冷静に話すサビアス。
「時間が無いから、積もる話はまた後にしよう。」
そう言うとキルアスはボク達を、軍の演習場の方へと連れて行った。
演習場に着くと、そこには何体かの遺体が安置されていた。
通常は治療院で安置するところだが、そこは一杯の為、ここに運ばれたらしい。
「こんなにも仲間が…」
見た事のある騎士団員や話した事のある魔法師も居る。
傍らには泣き崩れる仲間達。
エタレナ魔法師団長とヤクトルド騎士団長が花を1人1人の体の上へと置いていく。
「街の捜索と住人の保護は、王国とデマントから来た応援部隊が引き受けてくれてね、オレ達は急遽、仲間の葬儀をさせてもらう事になったんだ。」
キルアスは、そう言うとボク達にも花を渡してきた。
「サビアス、お前も参列してくれないか?」
「あぁ、分かった。」
サビアスは言葉少なめに答えた。
エタレナ師団長は、最後に持った花を自身の召喚獣グリルデルの上に置いた。
神官様が神への導きを願う言葉を伝え、みんなはその言葉を繰り返している。
あぁ、ボクも親しい仲間や、召喚獣が亡くなってしまったら、どうなるのだろうか。
とても恐ろしくて、具体的な名前を口にする事が出来ない。
イリエ、ヤエノ、サビアス、そしてサフィアも神妙な面持ちだ。
軍に所属するという事は、こういった別れも隣り合わせであり、自分もまた同じ事だ。
神官様の言葉が終わった後、ボク達も列に並んで亡くなった方々の体に花を添える。
「サフィアを守ってくれてありがとう。」
そう言いながら、ボクは師団長の召喚獣グリルデルに花を添えた。
「グリルデルとは、私が子供の頃に森で出会ったんだ。」
「最初は召喚士と召喚獣といった関係じゃなくてね、毎日のように一緒に遊んでいたんだ。」
「ある日、私が獣に襲われてね…それをグリルデルが退けると、不思議な事に姿も変わり召喚獣となったんだよ。」
グリルデルとの思い出話を終えると、師団長は遠い空を見て笑った。
「エタレナさん、スミマセンでした。」
サフィアが涙ぐみながら言う。
「いや、あの魔族を倒せたのは貴方のおかげだ。グリルデルも貴方を守れた事を誇りに思っている筈だよ。」
そう師団長は言いながらサフィアの頭を撫でた。
「花を添えてくれてありがとう。」
「はい、ありがとうございます。」
サフィアは笑顔で師団長の優しさに感謝を述べた。
イリエとヤエノはそっとサフィアの手を握りしめた。
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