将来への決意
「光魔法…回復」
妹サフィアの治療を行なった後、お父さんの治療も行っている。
思っていたより、ひどい怪我だ。
まだ回復魔法のコツを掴みきれていないので、少しづつ治していく。
「なんだ…コレは、魔法なのか…魔法で怪我を治すなんて、見た事も聞いた事もないぞ。」
「それに、マイトのあの攻撃魔法…とんでもないな。」
治療を受けながらボソボソと呟くように話す父。
アルマを見ると、目を逸らしつつ答えた。
「光魔法自体が、この時代には存在していないわ。言うなれば、失われた昔の魔法よ。まぁ、昔も使える魔法師は少なかったけどね。」
何故、アルマは そんな失われた魔法を知っているんだ?と思い、見つめていると。
「私はね…キミ達人族と違って寿命が長いのよ。」
一体、アルマは何歳なのだろう?
そもそも魔族に年齢はあるのか?
お父さんに、実はアルマは召喚獣ではなく魔族である事。
さらに、その魔族とボクが契約している事がバレるとマズイので、これ以上、光魔法の事を話すのも年齢について突っ込むのもヤメた。
一通り治療が終わり、
元気になった二人と一緒に家へと帰る事にした。
倒した魔獣の肉を放置するのは勿体無いかと思ったけど、なんとなく放置すべきだと感じた。
お父さんも、同じ感覚のようだ。
「どうして、この森にあんなに凶暴な獣が出たのだろう? 村長に伝えないとならないな。」
父は困惑した表情で話す。
今日、戦った獣は、実は魔族が従える魔獣だった…なんて言ったら混乱するだろうな。
そう思ったボクは無言のままサフィアの手を引いて歩いた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
翌日、お父さんと二人で村長さんの家に行き、昨日の魔獣の話をした。
目が赤く、体毛が逆立っており、動きも通常の獣とは違っていた。
と、お父さんは伝えたが、
村長さんからの返答は、そんなに大事ではないのでは?だった為、父はうなだれていた。
確かに…単なる強い獣が出た。だけでは、それほどの脅威ではない。
そう、その獣が魔族が従える魔獣である。という重要な事実が伝わっていないのだから。
一応、王国軍には伝えて貰えるとの事なので、ひとまず安堵する。
「マイト君、強い獣を倒してくれたんだね。野放しにしていたら村人に被害が出ていたかも知らない。ありがとう。」
村長さんの言葉に少し照れる。
「ところで、マイト君は将来どうするのだね?せっかくのキミの魔力、王国の為に使ったらどうだい?」
「え?王国の為?」
思わぬ方向に話が変わった事に驚いたが
王国の為なんていう異次元の話が突然出た事にさらに驚いた。
「キミはこの村で一生を終えるのには勿体無い逸材だ。良かったら王国軍立学園への紹介状を書くよ。」
村長さんの申し出に、ボクよりも先にお父さんが返事をした。
「それは…大変ありがたい話です。是非、お願いしたいところですが、妻と相談させてください。」
いやいや…まずはボクの意見でしょ。
と思ったが、見た事もない晴れやかな舞台を想像して、心が揺れたのは確かだ。
遠い学園に行くとなれば、家族とは離れ離れになってしまう。
お父さん、お母さん、そして妹のサフィアと離れて過ごす事になるなんて…。
何故、森に出た危険な獣の話をしに行ったのに
ボクの転校の話になったのだろうか…。
帰宅後、お父さんとお母さんは二人で話をしていた。
ボクはサフィアと遊んでいたが、ドキドキして落ち着かない。
あぁ、このまま家族とこの平和な時を過ごせれば…。
夕飯は、豆と肉のスープ、そして芋煮。
美味しいハズなのに、味が分からないでいた。
お母さんの目が腫れているのが分かった。
お父さんが口を開いた。
「マイト、王国軍立学園に行きなさい。お前は王国の為に尽くす義務がある。」
お母さんからも「お母さんは、あなたが立派になる事が一番嬉しいわ。」
ボクはどう、返事をして良いのか分からず口ごもる。
「大丈夫!お父さんとお母さんは私が守るわ!」妹の発言にボクはもっとも驚いた。
サフィアも、色々と考えているのだろうな。
よく見ると小さな手が震えている。
そこに…赤い円形の魔法陣が光る。
アルマ…。
「賛成よ。キミはもっと強くなる必要があるわ。おそらく…今の平和な世界は、近々壊される。不吉な予感がするの。」
いや、貴方という魔族の出現が一番の不吉だと思うのだが。
ボクは…大きく息を吸い。
吐き出すように言葉を吐いた。
「学園に行き王国の為、みんなの為、そして家族の為に勉強します!」