ヤンガノ防衛戦 3
「この魔法は…なんだ!?」
口から血を流しながら魔族が問う。
なんだ?と聞かれてもボクも良く分かっていないので答える事は出来ない。
光魔法の開発者だという、トルナシア様にでも聞いて欲しいところだ。
流石の魔族も上級光魔法の直撃を受けた事でフラフラとしている。
「だいぶ効いたけど、マイト…威力がまだまだね。」
「初めて使った魔法なんだから勘弁してくれよ。」
「イリエさん、ヤエノさん、魔獣の方は頼んだ。」
「うん、分かった!」
「あいよ、頼まれた!」
ここは魔族に集中したい。イリエとヤエノなら、なんとか出来る筈だ。
「よし、アルマ…もう一発、行こうか。」
「マイト…強烈なのを頼むわね。」
アルマは相変わらず無茶な事を言う。
ボクとアルマがふたたび魔法を放とうと身構えると、前方で浮遊する魔族は不思議な球体を展開した。
「先に防御魔法を展開したか。」
「アルマ…どう思う?」
「貫きましょ♪」
アルマと二人、声を揃える。
「光魔法…上級 金緑の光線!」
2本の閃光が魔族へと向けて空中を走る。
「暗黒魔法…獣の導き」
魔族の呪文により黒い煙が出現。
「ぐがぁぁぁ」
叫び声と共に2体の魔獣がボクとアルマの光魔法の直撃を受けた。
「くっ…新たに魔獣を呼んだのか。」
「その魔獣を盾にするとはね…戦い慣れているわ。」
間髪入れずに魔族が詠唱を開始する。
「暗黒魔法…黒耀の獄炎」
魔族の腕から放たれた黒い炎がボク達に向かって伸びる。
「土魔法…土壁!」
後方からサフィアが防御魔法を展開。
ズゥーーン
もろくも崩れ落ちる”土壁”
「な、私の防御魔法が…」
初めて魔法を崩されたサフィアは動揺を隠せない。
「ぐぉぉぉぉぉ~」
サフィアの防御魔法の背後から赤竜が放った炎のブレスと、土壁を崩した黒い炎がぶつかり合う。
ドドドーーーン
炎と炎がぶつかり合った影響で衝撃波が響き渡る。
足場の建物が崩れそうだ。
「お前は本当に人族なのか?」
「たぶん…人族だ。」
魔族の問いかけの意味は分からないが、ボクは人族だと思う。
「お前…魔族の領域に来ないか?魔王様に紹介してやるぞ。」
何故、ボクが魔族の仲間にならなければならないのか…
「仲間の事を笑うような奴とは関わりたくないね。」
「ふっ、なら死んでもらうだけだ。暗黒魔法…黒耀の獄炎」
魔族の手から黒い炎が放たれた。
身構え、防御魔法を展開する。
「しまった!」
魔族から放たれた黒い炎は、一直線に後方に位置するサフィアへと向かった。
「土魔法…土壁!」
サフィアが急いで防御壁を構築するも…黒い炎により消滅。
ドドドーーン
「サフィアーーーー!!」
白い砂煙が立ち込め、視界が遮られる。
急いで、ボクはサフィアの元へと走った。
「サフィア、大丈夫か?」
「うぅ。」
「あの子が…助けてくれて…」
サフィアが指差す方を見ると、倒れている青い体をした召喚獣をエタレナ師団長が抱きかかえている姿があった。
慌てて駆け寄り光魔法を発動するも、まったく効果を感じられない。
「回復!回復!」
「もう無理よ…亡くなっているわ。」
アルマがボクの肩に手を置いた。
「グリルデル!グリルデル!」
エタレナ師団長が泣きながら彼女の召喚獣の名前を叫び続ける。
「ありがとう。ごめんね…」
サフィアも召喚獣のところに近づき声を掛けた。
ボクは魔族の方を睨んだ。
「なんだ、お前達も獣を盾に使うのか、俺様と一緒だな。」
口元を緩めながら魔族が言う。
「グリルデルは自らの意思で身を投げ出したのだ!お前とは違う!」
エタレナ師団長は声を荒らげた。
「はっ、同じ事だろ。まぁ良い、お前達もすぐにあの世に送ってやるから安心しろ。」
そう言った魔族に向かい、赤竜が炎を吐き出した。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁ〜」
まるで獣の事を軽く見るな。と言っているかのようだ。
赤竜の炎を不思議な球体にて防ぐ魔族。
「アルマ…あの球体、なんとかならないかな?」
「マイトの不意打ちで一回貫けたくらい…力押しか、不意打ちかね。」
その時、イリエとヤエノが戻ってきた。
「マイトくん、状況はどう?」
「あれ?イリエさん、ヤエノさん…魔獣は?」
ボクの問いかけにニヤリと笑う二人。
「二人で魔獣を倒したのか!?」
「二体とも倒したぞ!」
ヤエノが嬉しそうに言った。
正直に言うと多量の魔力を消費してしまっている二人は、魔獣を倒す事は出来なず、引き付けておいてくれれば…思っていた。
「また、魔族が魔獣を出さないウチにアイツを倒そう。」
「おぅ!」
「あれ?エタレナ師団長…どうしたんだ?」
ボクはイリエとヤエノに、師団長の召喚獣が妹のサフィアを守り犠牲になった事を伝えた。
「くそっ…魔族め…」
ヤエノは怒りで手に持つ魔法剣が小刻みに震えている。
「なんてこと…」
イリエは手を合わせて召喚獣グリルデルの冥福を祈った。
「イリエさん、ヤエノさん、力を貸してくれ。」
「…勿論。」
「アルマと赤竜…あとヒスイも…頼む。」
「分かったわ。」
「グァ」
「キュイ」
サフィアはとても戦える状態ではないだろう。
「ヒスイ!!」
ボクが叫ぶとヒスイのピンク色の目から赤い蝶たちが現れ、天へと登る。
「暗黒魔法…獣の導き」
魔族は、黒い煙を周辺に撒き、また魔獣を二体出現させた。
天空へと舞った蝶たちは、円を描きながら魔族へと向かう。
「ガァルル…」
無数の蝶たちは球体に包まれた魔族にぶつかったかと思ったが、そのまま通り過ぎて地上へと向かった。
魔族が出現させた狼型の魔獣は過ぎ去った蝶を追いかける。
「水魔法…上級 水虎の氷槍!」
「火魔法…上級 炎帝の双璧!」
イリエとヤエノが渾身の上級魔法を放つ。
もう、上級魔法を放つほどの魔力は残っていないと思っていたが…これには作戦を立てたボクも驚いた。
盾となる魔獣は蝶に釣られて魔族の傍から離れている。
ドドドドーーーン!
大きな爆音と共に魔族の周りは煙に巻かれた。
「ははははは…俺様の防御は完璧だと言っただろうが。」
ピキッ
「何?ヒビが!?」
魔族を守る透明の球体にヒビが入った。
「ごぉぉぉぉぉぉ~」
魔族の頭上から赤竜の炎のブレスが放たれた。
「暗黒魔法…黒耀の獄炎」
魔族が放つ黒い炎と赤竜の炎がぶつかる。
「光魔法…上級 金緑の光線!」
赤竜の背中に乗ったボクとアルマの2本の光魔法が、赤竜の炎を追いかけるように放たれた。
魔族と赤竜の炎がぶつかり合い相殺。
そして…光魔法が魔族の球体を捕らえた。
チュドドーーーン!
完全に破壊された防御球体。
「ぐはっ」
口から血を吐き、苦しそうに悶絶する魔族…だが致命傷を与えられていない。
「くそ!もう少しだったのにっ!」
ボクが叫んだその時…「金緑の光線!」高い声が響き、一筋の閃光が光った。
チュドーーーン!
見ると、地上で腕を伸ばすサフィアの姿があった。
「何?サフィアが光魔法を!?」
「マイト!驚くのは後で…とどめを!私は、もう無理!」
「光魔法…上級 金緑の光線!」
アルマの言葉に後押しされ、気を失いかけている魔族にボクはダメ押しの光魔法を放った。
激しい爆発音が鳴り響いた後、静けさが辺りに広がる。
ヒスイの蝶に惑わされて地上へと降り立っていた魔獣二体は、赤い目の光を失いバタリとその場に倒れた。主人が居なくなった証拠だ。
「やったな…」
「終わったわね。」
赤竜の背中の上でボクはアルマを抱きしめた。
地上に降り立つと、イリエが駆け寄ってボクに飛びついた。
「イリエさん、ありがとう。最後、上級魔法を撃てるとは思えなかったよ。」
「うん…もう無理っ」
笑いながらイリエは言う…ボクは彼女の頭を撫でた。
「おーい、あたしも褒めておくれよ。」
ヤエノはニヤニヤと笑いながら言う。
「あぁ、ヤエノさんも凄かったよ。あそこで魔族の防御にヒビを入れたから勝てたんだ。」
「お兄ちゃん…」
サフィアがゆっくりと近づいてきた。
「サフィア…ごめんな。こんな戦闘に巻き込んでしまって。」
「ううん…私、まだまだだった。」
「いつ、光魔法を覚えたんだ?」
「二人が呪文を唱える姿を繰り返し見ていたら、つい…撃てちゃった」
「…サフィア、凄いな。」
「で、お兄ちゃん…いつまで妹の前で女の人と抱き合っているの?」
「はっ」
ボクは慌ててイリエの傍から離れると…サフィアは楽しそうに笑った。
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