ヤンガノ防衛戦 2
「おまえか?おまえがザナラック三兄弟をヤッたのか?」
魔族から放たれた声は禍々しく頭に響いた。
ザナラック?
そんな名前は知らないが、おそらくボクが王都で倒した三体の魔族の事だろう。
「王都を襲った魔族の事ならボクが倒した。」
そう言うと、魔族は笑い出した。
「はっ、おまえみたいな奴にヤラレるとは、アイツらも大した事が無かったのだな。」
いや…あの三体はとても強く、必死になってボクは倒した。
倒した魔族の名誉なんて、どうでも良かったが無性に腹が立つ。
この魔族が仲間に対して尊敬の念が無い事も、ボクのこの怒りの要因なのかもしれない。
「まぁ良い。俺様がおまえを倒すだけだ。」
ニヤリと笑う魔族。
前回、対峙した魔族と違い背中には羽根が生え、空中に浮遊している。体は少し小さめのようだ。
「よくも仲間を傷つけてくれたな。」
静かに…力強く、ボクは言う。
この魔族により、ヤンガノの街は破壊され多くの人が傷ついた。
「それは、弱いからだ…いやぁ、弱かったなぁ。」
魔族は、そう言うとまた笑いだした。
何が…そんなに面白いって言うんだ。
「ところで…俺様の赤竜が何故、そっちに居るんだ?」
突然、真顔になった魔族は叫ぶ。
「暗黒魔法…獣の導き!」
魔族の手から放たれた黒い煙が赤竜を包み込む。
「ぐぁがぁがぁぁぁ」
苦しそうな声を上げる赤竜。
この煙は…あの盗賊団が赤竜を操るのに使っていた壺の煙と同じだ
!
赤竜の金色の目が徐々に赤く染まっていく…
「キュイイイイィ」
その時、後方から宝石の召喚獣ヒスイの声が響いた。
声が聞こえた方から青い蝶の集団がふたたび現れ、次々と黒い煙の中へと入っていく。
徐々に煙が消えて行き…青い蝶に包まれた赤竜の体が姿を表す。
その目は…元の金色へと戻った。
「な…なんだと!おまえ達、赤竜に何をした!?」
魔族が怒りをあらわにして声を荒げる。
戦闘能力が無い、ヒスイの事は隠しておいた方がいいな。
「お前みたいなのが主人だなんて赤竜が可哀想だろ。」
ボクがそう言うと…魔族は呪文を唱え始めた。
「暗黒魔法…粘魔の黒酸」
魔族の腕から放たれた黒い物体が一直線にボクに向かい伸びる。それは…まるで魔族の腕が伸びているかのようだ。
「サフィア!」
ボクが叫ぶと、目の前に防御魔法”土壁”が構築された。
土壁は徐々に暗黒魔法に浸食され…その姿を消したが、同時に魔族の魔法も消えた。
「どう?お兄ちゃん?」
「サフィア…上出来だ!」
戦闘経験の浅いサフィアは防御の主軸に置いた。勿論、防御魔法の精度が高い事を知っての事だ。
「イリエさん、ヤエノさん、魔族の動きを制限したい。それぞれ右側と左側に中級魔法を。」
「赤竜!ブレスを!」
ボクの指示に従い、イリエとヤエノが魔法を構築する。
一足先に大きく息を吸った赤竜が炎のブレスを吐いた。
ゴゴゴゴゴゴーーーーーーー
大きく渦を巻いた炎が、魔族へと向かう。
少し遅れて、イリエとヤエノの中級魔法が左右から魔族を襲う。
ドドッドドッドーーーン!
透明の円形を描いた魔族は、その中央にて鎮座していた。
「ふっ、俺様のバリアは完璧だ。」
魔族は余裕の表情で、イリエ達の魔法と赤竜のブレスをはじいた。
その時…大地から何本もの尖った岩山が突き出し、魔族が構築している円形のバリアを貫く。
ボクが放った上級魔法「大地の憤怒」だ。
魔族によって作られたバリアは下から貫通され、魔族の体を傷つけた。
「避けられたか…」
ダメージを与える事は出来たものの、かすったに過ぎない。
「くっ、なんて生意気な…」
魔族はそう言うと、ふたたび呪文を唱え始めた。
「暗黒魔法…獣の導き」
辺りには黒い煙が立ち込め…その中から二体の赤い目をした狼型の獣が現れた。
「魔獣…」
イリエとアルマが言うと同時に狼型の魔獣が襲い掛かってきた。
今までの魔獣と比べると、体は大きくは無いが動きが速い。
「火魔法…炎の剣!」
「水魔王…氷の剣!」
ヤエノとイリエが中級魔法にて応戦する。
が…動きの素早い魔獣は寸前のところで、二人の魔法を躱した。
「風魔法…風刃!」
二人の魔法を躱した魔獣をボクの中級魔法が襲う。
ガキンッ
ボクの放った魔法を魔族が相殺させた。
「お前の相手は俺様だ。」
翼の生えた魔族がボクの前に浮遊している。
「土魔法…土壁!」
サフィアの魔法がイリエとヤエノを襲い掛かろうとしていた魔獣を退けた。
「ぐぉぉぉぉぉぉ~」
赤竜が吠えると炎のブレスを吐き出し、魔族を襲った。
炎に飲み込まれる魔族。
が…またもや不思議な球体に包まれ、まったくの無傷で再びその姿を現す。
「ははははは」
「暗黒魔法…黒耀の獄炎」
高笑いをした魔族の腕からは黒い炎が放たれ、赤竜へと向かう。
「水魔法…氷壁!」
ボクは赤竜の前に防御魔法を展開し、黒い炎を遮った。
と…思ったが、魔族の炎は強烈で防御魔法を打ち砕く。
「赤竜!」
「ぐぁがぁっぁぁ」
黒い炎は赤竜に当たり、苦しそうな叫び声をあげた。
直撃は避けられた筈だが、それでも凄い威力だ。
アルマが負傷者の治療から戻って来た。
「周囲に居た負傷者の治療は終えたわ。残念ながら魔法師は魔力切れでまともに戦えないわね。」
「何時間も魔族と戦っていたのだから仕方ないよ、休んでいて貰おう。」
ボクはそう言うとアルマに魔族の強さを伝えた。
「あの魔族に対抗するには、光魔法しか無さそうね。」
アルマはそう言うが…王都での戦いで倒れた事をボクは思い出す。
「いや、光魔法は強力なのは良いけど、また魔力切れを起こしちゃうよ。」
「・・・・」
「・・・・」
無言で向き合う、アルマとボク。
「マイト…何を言っているの…?」
「いや…ボクが王都で倒れた事を忘れたのかい?」
「あれは…究極魔法を使ったから…でしょ?」
「…ん?」
ボクが発動した光魔法は究極だったか…
「もしかして…究極魔法以外の攻撃系光魔法を知らない?」
「うん…何も。」
「まったく…なんで究極魔法が使えるのに通常魔法が使えないのよ。記憶が戻ってないから仕方ないか、わたしが悪かったわ。」
「いや…アルマは何も悪くないよ。お願いだ…ボクに光魔法を教えて欲しい。」
「ふふっ…キミに教えて貰った魔法をキミに教えるなんて、おかしな話ね。」
「はは…ボクにそんな記憶は無いよ。」
ボクとアルマが光魔法の事で話をしていると横から叫び声がした。
「ちょっと…今、忙しいんで手伝ってもらえますかー?」
「あ、イリエさん…ごめん。」
イリエとヤエノは狼型の魔獣二体と、空中では赤竜が魔族と対峙している。
サフィアはボクが伝えたように防御に徹していて、大きな存在感を示していた。
「マイト…どうする?」
「魔獣はイリエとヤエノに抑えてもらい魔族を倒す事に専念する。あの魔族を倒せば魔獣は消える筈だ…アルマ、光魔法を。」
「そうね、私に続いて…」
アルマが分かりやすく…ゆっくりと詠唱を始めた。
「光魔法…上級 金緑の光線!」
アルマと同じ詠唱を唱え、ボクはその想いを込めた。
同じ言葉を繰り返すと、不思議な事にそのイメージはアルマから伝わる。
「光魔法…上級 金緑の光線!」
一瞬の閃光が空中を走る。
「ぐぁっ」
ボクとアルマの光魔法は得意の円形防御を発動させる暇もなく、魔族に一撃を与えた。
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