迷子の女の子
いきなり二人の魔法師団長から、部下に魔法を教えて欲しいと頼まれてボクは目を丸くする。
新人魔法師が先輩魔法師に指導など出来る訳が無い…途方に暮れて、どうしたものかと固まってしまった。
「ちょっと…お二人とも、何を言っているのですか?そんな事、出来る訳が無いじゃないですか。」
ボク達第四魔法師団の今回の隊長、キルアスが横から常識的な事を言ってくれた。
(ありがとうキルアスさん。)ボクは心の中で感謝を述べる。
イリエとヤエノ、アルマは、マイペースに何かを食べている。
ボクがピンチに陥っている中、とても楽しそうだ。
ラナハン第二魔法師団長は眉をひそめ、少し悲し気な言い方をしてきた。
「少しくらい良いじゃないか。」
同情でも引こうと考えているのだろうか。
「マイトラクス君は、第四魔法師団所属です。ウチの魔法師団で指導をするのが先です!」
キルアスが声を大きくして言う。
「え?」
何か間違えた方向に向かっていないかと、キルアスを見つめた。
「では、第四魔法師団が終わったらウチに!」
「いやいや、ウチが先だ!」
師団長二人がどちらが先かで言い争いを始めた。
思いがけない方向に話が進んでいる状況を、ボクはどうしたら良いのか分からず…ただ見ていた。
「ちょっと、静かにしてください!」
だんだんと声が大きくなってきていた師団長二人に対し、イリエが叫んだ。
若い女の子に怒られて、しょんぼりと落ち込む師団長二人。
「時間が出来たら、遊びに行きますね。」
ちょっと可哀想に思ったので、ボクは励ます意味でそう伝えた。
「あぁ是非、また遊びに来てくれ!」
第三魔法師団長は、そう言うとコップに入っていたお酒を一気に飲み干した。
「お、やる気か!?」
今度は第二魔法師団長が一気にお酒を飲み干す。
「よし、わたしも飲む!」
イリエも参戦して、何故か酒飲み対決が始まってしまった。
そこにヤエノも参戦。
さらにキルアスも巻き込まれて、大騒ぎとなった。
ボクは酒を注がれるもなんとか回避。
アルマは平然とした顔をしながら、何かを食べている。
ボク達が居る特別室以外の場所からも大きな声が聞こえる。
祝勝会という名の元に行われている宴会…どこもかしこも楽しそうだ。
「おめぇら~わたしの話を聞けぇ~。」
「肉、持ってこ~い。」
ついにイリエとヤエノが暴れ出したので、ボクは二人を宿へと連れ帰る事にした。
「おーい、アルマ…手伝ってくれ。」
イリエの肩を抱きあげて歩く。
「ちょっと…マイト…あんたわねぇ!」
凄い…絡んでくる。
「おい、アルマ…風魔法でヤエノを運ぶなよ。」
「酔っ払いが悪いのよ。」
アルマが風魔法でヤエノを空中に浮かして運んでいる。
ヤエノはすでに寝ているようで、手足がだらりと垂れ下がり…まるで荷物のようだ。
「もう!マイトは私の事をどう思っているのよ!」
「ちょっと…声が大きいって。」
イリエが道端で叫び出した。
「マイト…ちゃんと答えてあげなさい。」
アルマが母のような目をしてボクに言う。
そんな、こんなところで…
「マイトのバカーーー!」
「え?バカ?」
そう叫んだ直後…イリエは寝てしまった。
助かった…
結局ボクも風魔法を使い、イリエを運んだ。
「アルマ…この方法、楽だね。」
「でしょ。」
~~~~~~~~~~
巨大イカの事件の報告書や後始末は、他の魔法師団に任せてボク達、第四魔法師団は砂漠の街ヤンガノへと戻った。
エタレナ魔法師団長への報告は、作戦の隊長だったキルアスに任せる。
出張に狩り出された魔法師は、今日は休みという事でイリエとヤエノと共に街へと繰り出した。
イリエが靴を新しくしたいと言い、ヤエノが武器屋を見てみたいと言い、街のあちこちを行き来する。
「うーん、なかなか砂地でも歩きやすくてオシャレな靴ってないのよねぇ。」
「おい、この武器凄くないか?鉄球を振り回して使うらしいぞ。」
まったく趣味が違うこの二人の仲がとても良いのは謎だ。
しばらく歩いていると、泣いている一人の女の子を見つけた。
「お嬢さん、どうしたの?」
イリエが声をかけるが、泣いてばかりで返事をしない。
周りを見渡すも、この子の親御さんらしき人物はいない。
「迷子かしら?…お名前、言える?」
ヤエノが尋ねるも、女の子は声を出せない。
「おーい、アルマー。」
ボクが呼ぶと魔法陣からアルマが出て来た。
「何か用事?」
「この子が、迷子みたいなんだ。親を探してくれないか?」
そう言うとアルアは尻尾でボクの顔を叩いてきた。
「だから…私は便利な道具じゃないって言っているでしょ!」
ふたたび魔法陣が浮かぶと、どこかに消えてしまった。
「困ったな…どうしよっか。」
アルマに逃げられたボクはイリエとヤエノを見る。
「このまま放っておいて誘拐でもされたらダメだし…」
「わたし達でこの子の親を探しましょ。」
物騒な事を言うヤエノだが、この街の治安は決して良いとは言えない。
イリエの提案通り、この子の親を探す事になった。
「この子の名前も分からないし、どう探すかだな。」
ヤエノがポケットからお菓子を出し、女の子に差し出すと泣き止みはした。
が、相変わらず何も話そうとはしない。
「とにかく歩きましょう。」
イリエが迷子の女の子の手を引き歩き出す。
「どなたかこの子の事を知りませんかー?」
歩きながら、声を出して尋ねて回る。
女の子にお母さんの名前を聞くも、「ママ」と答えるだけだ。
ママ…だと、そこら中に居るからなぁ
歩き疲れたのか、女の子は立ち止ってしまった。
「マイトくん、肩車してあげて。」
イリエに言われてボクはしゃがみ込み女の子を肩に乗せる。
「高ーい♪」
女の子はとても嬉しそうに声を出した。
「お名前…言える?」
「サリハ」
ヤエノが聞くと女の子は名前を答えた。
「おうちはどこかな?」
イリエが聞くも、やはり分からないようだ。
「お腹空いた…」
泣き疲れたのか、お腹が空いたらしい。
ヤエノがお気に入りの屋台が近くにあるとの事で、そこに行き串焼きを買って与えた。
ボクの頭の上で女の子は串焼きを頬張る。
いつの間にかヤエノも同じものを買って食べている。
どのくらい歩いたのだろうか?
辺りは夕焼けが広がってきた為、ボクは少し焦りを感じる。
と、その時…アルマが赤い魔法陣から現れて言った。
「ヒスイが手伝ってくれるみたいよ。」
アルマが出て来た魔法陣とは別の魔法陣から”宝石の召喚獣ヒスイ”が出て来た。
「ヒスイ…探すのを手伝ってくれるんだね。ありがとう。」
そうは言ったが、ヒスイは話をする事が出来ない。気持ちは有難いが、どうやって手伝ってもらおうか。
ヒスイはじっとボクの頭の上に居る女の子を見つめた。
迷子になった女の子も、じっとヒスイの目を見ているようだ。
「キュゥイィィィ」
ヒスイが一鳴きすると…ピンク色のヒスイの目が光り、紫色の蝶が出て来た。
その数は、無数…何百匹も飛び立ち、とても数える事は出来ない。
赤く染まりつつある空に紫の蝶が舞い…
「あ、あれは…」
空中に浮かぶ紫色をした蝶で…”迷子の女の子の顔”が描かれた。蝶で描かれている割には随分と鮮明だ。
周りにいた街の住人も一斉に空を見上げる。
しばらく蝶で描かれた空中に浮かぶ女の子の顔を見つめる…まるで引き込まれるようだ。
「サリハ!」
一人の女性が掛けて来た。どうやらお母さんのようだ。
ボクは肩に乗せていた、サリハを路上に降ろすと二人は泣きながら抱きしめ合った。
「ヒスイ…ありがとう!」
ボクと共にイリエとヤエノも感謝の礼を述べる。
「ねぇ、アルマ…あの紫の蝶って何だったのだろう?蝶の集合体にしては、随分と鮮明に描かれたような…」
「あれは、ただ描かれた訳じゃないわ…幻影よ。」
幻影という言葉に驚きを隠せない。
「ヒスイちゃんって、凄いのね。」
イリエに褒められて、ヒスイはとても嬉しそうだ。
睡眠、召喚、幻影…ヒスイの力は他にもあるのだろうか。
国宝の腕輪に封じられていたヒスイの未知なる力を想像すると、とても楽しみになった。
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