海の怪物、討伐作戦 3
空を舞う青い蝶に誰もが目を奪われ、辺りは時が止まったかのように静かになっている。
巨大イカの怪物も動きを止めている。
ボク達と同じように、蝶を見つめているのだろうか?
と…その時、ボクは気が付いた。この化け物の目が真っ赤である事に。
「ねぇ、アルマ…巨大イカの目が真っ赤だ。」
「私も気づいたわ…魔獣かもしれないわね。」
魔族によって生み出された魔獣。
この巨大な体、何かしら要因はあるだろうと予測はしていたが、魔獣かもしれないとは。
と…その時、空に異変を感じた。
「何か…来る。」
魔法師団のみんなも気が付いたようで、一斉に空を見上げる。
そして…赤い何かが凄いスピードでこちらに向かって飛んで来るのが見えた。
ボクは慌てて杖を構える。
「あれは…赤竜!!」
周りの魔法師団も竜が現れたと騒ぎ始めた。
が…すでに赤竜は大きく口を開けて、炎のブレスを吐く準備に入っている。
「ブォォォォォォォ」
放たれた炎のブレスが…
ボク達の方ではなく、巨大イカの怪物を襲った!!
「もしかして…あの赤竜は…」
「盗賊団に無理やり使役させられていた子ね。」
アルマの答えはボクの予想した通りで、この好機を逃すまいと声を出した。
「よし、一気に片付けよう!ヤエノさんとアルマで攻撃、イリエさんとボクで巨大イカの拘束を!」
「火魔法…上級 炎帝の双璧!」
ヤエノとアルマが放った炎が渦を巻きながら巨大イカの怪物へと向かう。
「水魔法…上級 絶対零度の氷壁!」
「水魔法…中級 氷結!」
ボクとイリエが海面の氷を強化し、巨大イカが動けないように氷漬けにする。
「みなさん!攻撃を!」
ボクは魔法師達に声を上げた。
赤竜のブレスとボク達の魔法を見て、固まっていた魔法師達が我に返る。
「水魔法使いは、海面の氷の強化!火魔法使いと他の者は最大出力で巨大イカを攻撃せよ!」
第三魔法師団長が大きな声にて指示を出す。
「ぐぉぉぉっぉぉぉっぉ」
怪物、巨大イカが苦しそうな声を出す。
と同時に、バシッバシッと複数本の足で海面を叩き始めた…氷を割って脱出しようとしているのだ。
「水魔法…上級 絶対零度の氷壁!」「絶対零度の氷壁!」「氷壁!」
ボクは3連続で上級魔法を放ち、巨大イカが攻撃する海面の氷を修復する。
他の水魔法使いも氷を保とうと必死に氷魔法を放つ。
今まで出番が無かった、火魔法使いの魔法師達もここぞとばかりに全力で攻撃を放つ。
「火魔法…上級 炎帝の双璧!」
ヤエノとアルマがふたたび、上級魔法を放った。
「ブォォォォォォォ」
上空へと昇り、ふたたび落下してきた赤竜が炎のブレスを放つ。
ズドドドドーン
熱と冷気とが、ぶつかり合い水蒸気が発生…周りは白い霧で包まれた。
「ぐぉぁぉぁぁ~」
霧に包まれて見えなくなった視界の中で、巨大イカのうめき声が響き渡る。
静かになった海上…ゆっくりと霧が晴れていく。
怪物は、その白い巨体を見せたが、すべての足はだらりと垂れ下がり、赤いと認識していた目はその光を失っていた。
「よし!やったぞ!」
第三魔法師団長が片方の腕を上げて勝利を叫んだ。
「やったね…」
ボクとアルマは座り込み、イリエとヤエノも腰を下ろした。
召喚獣、ヒスイがボクの側へとやってきた。
「ありがとうヒスイ…キミがあの青い蝶で赤竜を呼んでくれたんだね。」
「キュゥイィィィ」
なんと言っているのかは分からないが、なんとなく褒められて喜んでいるように見える。
すると、赤竜が翼をゆっくりと動かしながら、ボクの方へと近づいた。
「赤竜もありがとう!」
ボクはお礼の言葉を叫んだ。
赤竜も、なんとなく褒められて喜んでいるように見える。
ヒスイと赤竜がしばらく目を合わせていたかと思ったら、赤竜はゆっくりと翼を動かし、上空の彼方へと去っていった。
「おい、もしかして君たちは…」
第三魔法師団長が声を掛けてきた。
「王都で魔族を倒したマイトラクス君たちか?」
そうだった…第三魔法師団は、あの王都防衛戦の時にボク達と同じく、途中から参加していたのだった。
「あ、はい…この度、第四魔法師団に配属されたマイトラクスです。」
ボクは自己紹介をし、伝えるべき事を伝える。
「王様から御布令が出ているとは思いますが、内密にお願いします。」
師団長は思い出したような顔をした。
「そうだったな…だが、今回の件に関しては上に報告をしなければならない。」
「街に戻ってからでも良いから、時間を作って欲しい。」
報告書か…師団長というのも色々と大変なのだろうな、と感じた。
「分かりました、この3人も一緒で良いですか?」
「3人?…あぁ、その白い召喚獣も含めてか。あぁ、構わない。色々とぶっ壊れているその3人からも話を聞きたいところだ。」
そう言うと師団長は、船の状態や団員の状況を把握すべく足早に去って行った。
倒された巨大イカは第二魔法師団が乗る船により牽引された。
改めて見ると、怪物は本当に大きい。
街に戻ったその夜、祝勝会が開かれた。
とは言っても居酒屋を貸し切っての単なる宴会だ。魔法師団だけで無く船の関係者も集まり、盛大に騒いでいる。
「これは…騒ぎたいだけだな…」
食事は何故かイカ料理が多い…
「まさか…このイカ達って…」
「そういえば、この宴会…臨時収入が入ったから食事代は要らないと言っていたな…」
じっとイカ料理を見つめる。
流石のイリエとヤエノも魔獣かもしれない巨大イカを食べる気にはなれないようだ。
たわいもない話で盛り上がっていると、キルアスがやって来た。
「君達、悪いが特別室に一緒に来てくれないか?」
イリエとヤエノ、アルマと目を合わす。
「特別室??」
なんか嫌な感じしかしないのは、三人も同じだったようで顔が引きつる。
「第二魔法師団長がお呼びなんだ。」
キルアスは困った顔をしながらボクに伝えた。
「あー、ラナハン師団長…でしたっけ?」
魔族との対戦、王都防衛時で居合わせたラナハン師団長とは、あの時の戦いでお会いした以来だ。
「イリエさん、ヤエノさん、アルマ、行こうか。」
三人もラナハン師団長を思い出したようで、仕方ないな。と言いながら立ち上がった。
特別室に着くと、ラナハン第二魔法師団長だけでなく、第三魔法師団長も座っていた。
ここにキルアスも同席していたのか。
「やぁ君達、よく来てくれたね。」
ラナハン師団長が立ち上がり、ボクに握手を求めてきた。
第三魔法師団長も立ち上がり、ボク達を席に誘導する。
この光景にキルアスが驚いている。
「あ、すみません…ボク達は新人ですので…」
キルアスが驚いている事に気がついたボクは慌てて場をつくろった。
「ささ、君達…何でも好きなものを食べなさい。」
ラナハン師団長の態度とセリフは、完全に新人魔法師向きでは無い。
対する新人のイリエとヤエノは、師団長二人と対峙してもまったく臆する様子は無い。
アルマも当然、動揺などしない。むしろ一番偉そうにしている。
「これ、美味しいねー。」
イカ料理は断り、肉料理を嬉しそうに食べるヤエノ。
「このお酒、凄く繊細でいい香り。」
お酒の味を覚えたイリエは、酒豪になりつつある。
「やはり、今回の功労者も君達だったようだね、当然現れた赤竜もマイトラクスくんの召喚獣だったのかい?」
ラナハン師団長が尋ねてきた。
「ボクの召喚獣では無いですねぇ…召喚獣の召喚獣と呼ぶべきか…」
師団長二人が揃って首を傾げる。
ボクも…自分で言っている事がよく分からず首を傾げる。
召喚獣であるヒスイが赤竜を呼び出したのだから、召喚獣の召喚獣って事で合っているよな。
間違っていない事を確信したボクは姿勢を正した。
「召喚獣の召喚獣です。」
自信を持って答えたが、二人はポカンとしたままだ。
自称、召喚術師であるボクだが、召喚術の事はよく知らないので、こういった召喚獣が召喚獣を呼び出す事が普通なのかは分からなかった。
「マイト…それ、普通じゃないから。」
ボクの心を読んだアルマがヒソヒソと耳打ちをしてきた。
「まぁ、いい。君たちには、もう一つ聞きたい事があるんだ。」
「どうして、君たちは上級魔法を連続して放てるのだい?」
二人の魔法師団長が問い掛けて来た。
「簡単に言うと…魔力消費量を抑えて、魔力効率を良くして、魔力の最大出力を上げれば良いのです。」
ボクは二人の問いに答えた。
が…
「まったく簡単では無い。」
声を揃えて言う二人は、少し強めの口調となっていた。
「君たちも、マイトラクス君に魔法を教わったのか?」
ラナハン師団長は次にイリエとヤエノに質問の標的を変えた。
「はい、マイトくんに教わりました♪」
師団長二人は顔を見合わせてニヤリと笑い、そして言った。
「マイトラクス君、オレ達の魔法師団に来て、魔法を教えてくれないか!」
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