街のパトロール
軍に所属し、砂漠都市ヤンガノに赴任してから3日目。
今日は師団長の計らいでパトロール隊へと加わった。
4人1組で班を作り、街を歩く。
ボク達新人3人は別れ、それぞれの班に入った。
班は魔法師だけで構成され、各班には必ず一人以上の召喚術師が入っているようだ。
接近戦にも対応出来るようにというので、ボクも”宝石の召喚獣ヒスイ”を出して歩いた。
時々すれ違う騎士団は騎士団員だけで構成されている。
ボクから見ると不思議なのだけど、この街ではコレが普通のようだ。
「あなたの召喚獣は、なんか変わってますね。ベースが獣では無いような気がします。」
同じ班の召喚術師の方が言う。
(なかなか鋭い方だな)
王様から貰った"国宝の腕輪"に入っていた召喚獣だとは間違っても言えないので適当に誤魔化した。
まぁ、本当の事を言っても信じて貰えないだろうが。
「そういえば先の王都での魔族との対戦、あなたは行きましたか?」
「この街を守っていた私達、第四魔法師団と、騎士団は行けませんでした。なんせ砂漠超えには時間がかかりますからね。」
召喚術師の先輩に聞かれたが…さて、どう答えようか。
嘘はつきたく無いけど、英雄だとか騒がれたくも無い。
「王都に行きましたよ、ただ何度も魔力切れを起こしてしまい大変でした。」
うん、嘘もついていないし、英雄っぽくも無い。無難な答えだ。
「魔力切れとは大変でしたね、かなりの攻防戦だったと聞きます。回復薬も底をついたのでしょうね。」
とても真面目な方のようで、隠しながら話をする事に罪悪感を感じる。
「王都防衛戦では、魔法師が魔族を撃退させたと聞きました。あなたは、その魔法師をご存知ないですか?」
「どうも国王様から口封じ的な司令が出ているようで、情報が入って来ないのです。」
王様、グッジョブ!
流石、王様と思ったが、コレはどう切り抜けようかとも思う。
嘘はつきたく無いが…本当の事も言いたくない。
「すみません、王様から緘口令が出てまして。」
若干、気が引けたが王様のせいにしておいた。
なかなかナイスな解答だったと自画自賛してパトロールを続ける。
パトロールは順調で、特に何の問題も発生しない。
と…思っていた矢先に大きな声が聞こえた。
「泥棒ー!」
叫んだのは女性のようだ。
急いで駆けつけると、すでに泥棒の姿は無く周囲の人に抱き起こされている女性の姿だけがあった。
「泥棒は3人組だった、いつもの窃盗団に違いない。」
女性を救助していた住人の男性が言う。
幸い女性に怪我はなく被害も少なかった。
にしても、"いつもの"窃盗団とは何なのだろうか?
ボクは先程から話をしていた先輩の魔法師に尋ねてみた。
「西の山に拠点を構える盗賊団が居てね…とても厄介なんだよ。」
「厄介とは…強いのですか?」
「あぁ、どうやったのか分からないがリーダー格が最強クラスの獣である赤竜を使役していてね。うかつに攻める事が出来ないんだ。」
「うーん、でも放置していたらまた被害が出てしまうし…」
「そうなんだけどね、団長が腰を上げないと難しいな。」
赤竜の強さが分からないので思い切った提案は出来ないな。と思いつつ時間までパトロールを続けた。
「ねぇアルマ…赤竜って知ってる?」
パトロール中は姿を消していたアルマに聞いてみる。
「えっと…赤竜は竜種の中でも低い方だったような…」
盗賊団が赤竜を使役している事を話すと、アルマは不思議そうな顔をする。
「人族が竜を使役するなんて、あり得ない事だと思うけど…気になるわね。」
イリエとヤエノにも話をして、情報の収集を頼んだ。
ヤクトルド騎士団長にも話を聞いてみる事にし、部屋を訪ねた。
「あー、赤竜盗賊団の事か…」
どうやら赤竜を使役しているという事で”赤竜盗賊団”と命名されているらしい。
「あの盗賊団は本当に厄介でね、討伐に出た事もあるのだが、赤竜が吐く炎が強烈で討伐を失敗した事があるんだよ。」
炎を吐く竜か…確かに、それは厄介だな。
接近戦を得意とする騎士団にとっては特にやりにくい相手だろう。
次にエタレナ魔法師団長とも話をしてみた。
「え?赤竜盗賊団…以前に騎士団が攻めたという盗賊団の事か。」
その話にボクは驚いた。
「騎士団と魔法師団とで攻めたのではないのですか?」
そう言うと、さぞ当然かのごとく師団長が答えた。
「ん?前に騎士団と魔法師団は仲が悪いと言わなかったか?」
エタレナ魔法師団長はキョトンとした顔をしている。
そこまで仲が悪かったとは…ボクは驚きを通り越して呆れてしまった。
が、盗賊団を倒す事がもっとも大事な事だ。
ボクは思い切って聞いてみた。
「騎士団と協力して、赤竜盗賊団を討伐しませんか?」
すると、エタレナ師団長は言う。
「騎士団が協力してくれと言うなら、協力してあげても良いが。」
あぁ、なんか…とんでも無いところに派遣されてしまったな。と改めて感じた。
夕方、食堂にイリエとヤエノと集まり情報を共有した。
盗賊団に関する情報は、20~30人程のグループである事。
赤竜を使役しているリーダー格が絶対的な権力を持っているという事。
ぐらいだった。
ただこの情報を得た事は大きい。
リーダー格の権力が強いという事は、そのリーダー格さえ捕まえれば、まとまりが無くなる可能性が高いという事だ。
「イリエさん、ヤエノさん、ありがとう。」
「なぁに、どうってことないよ!」
ドンっと胸を叩くとヤエノはニヤニヤと笑っている。
何故だかヤエノのテンションが高くて、ちょっと引くレベルだ。
「あー、ヤエノは今から始まる私たちの歓迎会が楽しみで仕方ないのよ。」
そう、夜に開催されるというボク達3人の歓迎会。騎士団の中にも参加者は居るようで、ヤクトルド騎士団長も来てくれるらしい。
イリエとヤエノと話をして、ボク達はその場で赤竜盗賊団についての話をしようと決めた。
食堂には徐々に軍の関係者が集まってきた。
魔法師団の先輩方は全員集まっているようだが、やはり騎士団の面々は人数が少ない。
半分くらいしか集まっていないだろうか。
沢山の食べ物と一緒にお酒も用意されている。
エタレナ魔法師団長が姿を見せ、ボク達が居るテーブルへと近づいた。
「今からの段取りだが、まず私が挨拶をする。その次にヤクトルド騎士団長からの話だ。」
「それから3人を紹介するから、それぞれ自己紹介をしてくれ。」
「ヤエノ…ちょっと待て、食べるのは挨拶が終わってからだ…」
「あ、すみません。」
そう言うヤエノの口は、すでに肉がくわえられている状態だった。
食堂の少し高くなっている場所にエタレナ魔法師団長が立った。
「皆さん、今日はよく集まってくれた。新人の歓迎会でもあるが、この宴は軍から皆さんへの日頃の感謝の印でもある。今日は大いに楽しんでくれ。」
続いて隣に立ったヤクトルド騎士団長が話を始める。
「魔族の襲来という危機により私達は、より高みを目指す必要が出てきた。今回、新しく入った3人に負けないように皆、励んでくれ。」
魔法師団、騎士団、両方から拍手が巻き起こる。
「続いて新人の3人から挨拶を。」
エタレナ師団長から紹介され、まずはヤエノから切り出した。
「ヤエノカシスです。得意魔法は火魔法。趣味は食べる事です!よろしくお願いします!」
会場中から笑い声と拍手が起こる。
「イリエティーナです。得意魔法は水魔法。趣味は寝る事です!よろしくお願いします!」
またまた笑い声と拍手が起こった。
さて、次はボクの番だ。
「マイトラクスです。召喚術師で、魔法も使えます。趣味は盗賊団の討伐です。なので、赤竜盗賊団を倒しに行きたいと思います!」
笑い声と拍手は…起こらなかった。
「おいおい、どういう事だ?」
エタレナ師団長が問いかけてきた。
そりゃ、そうだろう。いきなり言い出したのだから。
「ですから…赤竜盗賊団をボク達3人で討伐しようかと思いまして。」
ボクがそう言うとイリエとヤエノも続く。
「討伐しようかと思いましてー。」
「3人で倒せる訳無いだろ。」
呆れるエタレナ師団長とヤクトルド騎士団長。
「でしたら手伝ってください!」
ボクは急に真顔になり大きな声を上げた。
「住人は困っています!」
続けて言った。
「分かった、分かった、ついていってやるよ。準備するから一週間程くれ。」
観念したのか、エタレナ師団長は両手を上げて答えた。
「ヤクトルド騎士団長の方はいかがでしょう?」
ボクは尋ねた。
「はぁ、分かったよ。君には借りがある。騎士団も手助けしよう。」
よし、完璧な作戦勝ちだ。
イリエとヤエノとハイタッチを交わす。
「赤竜の炎対策は考えているんだろうな?」
壇上から降りてきたボクにエタレナ師団長が問いかけた。
「ボクとイリエの魔法で何とかなるかと…」
ため息をついて目頭を抑える団長。
「まぁ良い。私も考えるから、今日のところは食べて飲め。」
「はい。」
そう答えるヤエノの口にはすでに肉が入っていた。
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