急な話
「アルマ、これを見て。」
ボクは王様から受け取った"国宝、魔力増加の腕輪"を取り出した。
「あら、国宝だなんて…大袈裟ね。」
笑いながら言うアルマを見て思う。
いやいや、こんな大層なものを貰ってしまったボクの気持ちを考えてくれよ…
「この宝石は…そうね…魔力を増加させるなんて微々たるものよ。」
「えー、じゃぁ国宝というのは嘘?」
「嘘って訳じゃないでしょうけど…ただ単に綺麗だから国宝って事になっていたのじゃないかしら?」
アルマの言葉にボクは頭を抱えた。
これは…単に厄介な物を受け取ってしまっただけじゃないか?
せめて、魔力が大きく増加するなら良いアイテムだったのに。
「ん?待って…これは単なる宝石じゃないわね。」
「やっぱり価値のある物なの?」
「そうね…価値のある物だわ。でも、王家はこの価値に気がつかなかったのよ。だからキミに渡したのだわ。」
王様に騙されていた訳では無いようなので安堵したが、アルマが何を言っているのかサッパリ分からない。
「ねぇ、マイト。この腕輪、ちょっと預かっても良いかしら?」
「勿論だよ、ここに置いておくのは不安だから預け先を探していたんだ。」
ボクがそう言うとアルマは赤い魔法陣を作り、さっさと何処かに行ってしまった。
あの魔法陣の向こう側は、どこに繋がっているのだろうか?
以前は魔族領に繋がっていると思っていたけど、アルマが実は魔族では無いと告白した以上、違う場所なのは確かだ。
「いつか潜入してやろうか…」
と思い、魔法陣の構造を思い出してみた。
「ただいまー」
「わっ!」
「何を驚いているのよ。」
目をつむって頭の中に魔法陣を描いていたら突然帰ってきたので驚いたのです。と言いたかったがやめておいた。
「随分と早かったね。腕輪は…誰かに預けてきたのかい?」
誤魔化したのと同時に聞きたかった事を尋ねた。
「そうよ、詳しい方に預けて来たわ。解析にはしばらく時間が必要みたい。」
詳しい方とは…何者なのかを聞きたかったが、どうせ聞いても教えてくれないだろう。
ボクは話を変え、王城や学園であった事をアルマに話した。
そして、アルマは妹のサフィアの事、お父さんお母さん、そして村の様子を教えてくれた。
心配をしていた村の様子を知る事が出来て良かった。
「そうだマイト。これからも毎夜、魔力を預かろうか?いざと言う時に渡すから。」
「それは、こちらからもお願いしたい。」
ボクは王都での魔族との戦いを思い出しながら言った。
いつか…また魔族が現れた時、何度も魔力を回復しなければならない。その時の為に…
「ちなみに…だけどね。」
ボクの心を読んだアルマが続けて言う。
「キミが400年前、トルナシアだった時はあんなにあっさりと魔力切れを起こさなかったからね。全方位魔法を連発してたのよ。」
「へー、やっぱりトルナシア様は凄かったんだねー。」
「いや、だからキミがトルナシアの生まれ変わりだから。いい加減、思い出してよね。」
伝説の魔法使いの話に感心をしていたら、アルマにまた怒られてしまった。
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次の日、ボクはある決意を抱いて学園に向かった。
ファスマス先生の部屋のドアを叩く。
「おー、マイトラクス君、アルマ君、朝早くにどうしたのかね?」
「おはようございます、先生。実はお話がありまして。」
「まぁ、掛けたまえ。お茶を入れよう。ちょうど私も飲むところだったのだよ。」
ボクは椅子に腰掛けて、少し待った。
「このお茶を飲むと頭がスッキリとするんだ。」
お茶をいただくと、鼻からスッと抜けるような感覚を得られた。
「これは、朝にピッタリのお茶ですね。」
先生は、そうだろう。と嬉しそうに笑う。
「で、先生。」
「お話と言うのは…実はこの学園を卒業させていただきたいと思いまして。」
先生は飲んでいたカップを机に置いた。
「うん、そうなるだろうな。と、何となく分かっていたよ。」
「君が学園で学ぶ事はもう無い。」
ボクの顔をじっと見て話を続けた。
「またいつ魔族が襲ってくるか分からない。君はそれに備えて早く実力を付けたいんだね?」
流石は先生…何も言わなくても分かってくれている。
「はい、ボクは王都を各街のみんなを守れるようになりたいんです。」
「今回の魔族襲来の件で、君への期待は高まってしまうだろう。だが、あまり無茶はしないでおくれよ。」
「アルマ君、マイトラクス君をよろしく頼んだ。」
「君が学園から居なくなるのは寂しいが卒業を認めよう。」
ファスマス先生は目を細めながらボクとアルマに伝えた。
「魔族の襲撃を一旦抑えた事で臨時の学園魔法師団は解体した。」
「普通なら軍へ入る為の試験が必要だが、君なら大丈夫だろう。私からカッサリル師団長に話をしておくよ。」
「ファスマス先生、今までありがとうございました。」
ボクは立ち上がって深々と頭を下げた。
「軍も今は混乱しているハズだ。配属先が決まるまでは、ここでゆっくりとするが良い。」
ファスマス先生の優しい返事にボクは涙を堪えた。
先生の部屋を出て食堂へと向かう。
さて、イリエ達には何て話そうかなぁ。
誰も居ない食堂で椅子に座り一人考える。
普段は賑やかなこの空間も今はとても静かだ。
楽しかった学園生活も、しばらくしたら終わりかぁ。
あと半年したら妹のサフィアがこの席に座るかもしれないな。
「あー、アルマちゃん、久しぶり!」
物思いにふけっていたら後ろからイリエの声が聞こえた。
イリエとヤエノがボクの前へと並んで座る。
「朝早くから何をしているの?」
こんな早くに対面するとは思っていなかったので言葉を準備出来ていない。
アルマが尻尾でボクの頭を叩く。
『早く言え』と言いたいようだ。
「ファスマス先生に挨拶をしてきたんだ。」
二人がじっとボクを見つめる。
「挨拶??」
「うん、この学園を卒業しようと思ってね。」
あっさりと伝えられた事に自分で驚いた。
「そんな…急に…」
イリエの目には涙が溜まっている。
「どうしたんだ?王様に何か言われたのか?」
以前、王様から一緒に軍に勧誘されたヤエノが言う。
「また、いつ魔族が襲ってくるか分からない。」
「だから…早く実力を付けて、みんなを守りたいんだ。」
ボクは正直な気持ちを二人に伝えた。
「卒業して軍に行くんだね。」
ヤエノの質問にボクは頷いた。
「じゃぁ、私も卒業して軍に行くわ!」
イリエが立ち上がって叫んだ。
腕は小さくガッツポーズを作っている。
「じゃぁ、私もー」
ヤエノは軽いノリで言う。
「いや、そんな急に…」
ボクが言うと、イリエとヤエノが睨んで来た。
「マイトくんも、急に言ったでしょ!」
何故、怒られるのか分からないが、二人はそのまま走って行った。
「ファスマス先生の所に行ってきまーす。」
と、手を振りながら…
「あの二人、本当に良かったのかなぁ。」
「卒業が半年早まっただけだから良いんじゃない?」
アルマも実にあっさりと答える。
「戦力が多い方が良いわ。あの二人にももっと強くなって貰わないとね。」
ボクは自分の決断が二人の人生も変えてしまう事に不安を感じた。
待てよ…サビアスはどうするかな。
しばらくして登校して来たサビアスにもボクが卒業をする事を伝えた。
「そうか…寂しくなるね。え?イリエさんとヤエノさんも?」
「ボクは、ちゃんと卒業試験を合格してから軍に行くよ。そうしないと先に軍に居る兄さんに堂々と渡り合えないからね。」
なるほど、順序をちゃんと守るんだね。
よく考えると、サビアスはイリエとヤエノより学園生活も1年短いのだった。
「サビアス、今までありがとう。」
ボクが言うと笑いながら彼は返した。
「半年後には絶対、ボクも軍に行くから、待ってて!」
やっとお互いの名前を敬称なしで言い合えるようになったが、一旦のお別れとなった。
予想通り、イリエとヤエノの卒業もあっさりと認められた。
一ヶ月後、特別にボクとイリエ、ヤエノの3人だけの卒業式が行われ、ナタリアやナイサンスールも来てくれた。
「ありがとうございました。」
ボクは、この王国軍立学園に別れを告げた。
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