魔法訓練 3
魔法訓練 3
魔法の訓練の為に少し遠目の山まで来たのだけど、何故、妹のサフィアの叫び声が聞こえたんだ?
サフィア…何故、こんな所に。
嫌な感じがして、ドクドクと心臓の鼓動が聞こえる。
急いで山を下って走り森に入る。
「マイト、こっちよ!!」
ズレた方角に向かっていたようで、召喚獣のアルマが軌道修正をしてくれた。
さらに走る事、数分。
「あ!お父さん!!」
森の中で、お父さんが斧を持って何かと対峙している。
血が出ているようだ。
背中の後ろに…あぁ妹のサフィアが倒れている。
「マイト!来るな!逃げろ!」
そう叫ぶお父さんの前方に目を移すと。
獣??
イノシシ型の獣、3頭が鼻息を荒吐ながら体毛を逆撫でていた。
「違うわ!アレは単なる獣じゃないわ!魔獣よ!」
「え?魔獣??」
驚くボクにアルマは続けて言う。
「魔獣は魔族に使役される獣、魔族のしもべよ!油断しないで!」
お父さんの横に並び、ボクは震える身体を落ち着かせるように言った。
「逃げるなんて無理です!ボクは妹、サフィアを助けます!」
「アルマ!1頭を頼めるか!?」ボクは叫ぶ。
「あら?1頭で良いの?」
魔獣と言う、初めて対峙する相手に気を引き締めつつ。
ん?? アルマって魔獣を操る魔族なのでは? と考える。
「来たぞ!」お父さんの叫び声と同時に
アルマが身体を光らせて向かってくる魔獣の一体に体当たりを食らわす!
「水魔法・・・上級 氷の剣舞!!」
ボクの放った10本の氷の剣が魔獣の体を踊るように切り刻む!
「ギャー」魔獣の悲痛な叫び声が森にこだまする。
「お父さん!」
魔獣の突撃を何とか斧で食い止めていた!が、魔獣の腕がお父さんの足を引っ掻いた。
「風魔法…風刃!」
お父さんと魔獣との距離が近かったので、上級魔法でなく、威力を抑えた魔法で魔獣に攻撃を加えた。
アルマが攻撃した一体とボクの上級水魔法を受けた一体は、すでに力尽きている。
残りはお父さんと対峙している一体。
お父さんからは、さらに血が流れている。
「土魔法…石弾撃!」
ボクは中級魔法の石弾撃を使い、最後に残った魔獣を倒した!
「サフィア!!」
急いで倒れている妹のサフィアの元へと駆け寄る。
気を失っているサフィアの頭から血が流れ出ている。
お父さんの仕事に、引っ付いてきたのだろう。
ボクが、魔法の練習に明け暮れて、あまりサフィアの相手をしてやれなかったからに違いない。
以前は、よく遊んであげていたのにっ!
涙が溢れてきて、視界が悪い。
お父さんもフラつきながら近づいてきた。
「獣がサフィアに襲いかかってきたんだ!こんな凶暴な獣がこの森に居るなんて…。」
お父さんには、魔族が使役する獣、魔獣なんて想像もつかないのだろう。
サフィアの身体を抱き起こすボク。
そうだ…。
「アルマ!!あの時のボクにしたようにサフィアを治してくれ!」
貴方なら出来るだろう!!
初めて会った時にボクの身体を癒したアルマの能力を思い出したのだ。
そう叫ぶボクに向かって、魔族であり、召喚獣であり、白いウサギであるアルマは意外な事を言った。
「マイト…キミが治したら良いんだよ」
「え?ボクが治す?」
「私がキミの怪我を治したのは光魔法…元は、とある偉大な魔法使いから受け継いだ魔法。」
アルマは意味不明な事を言い。
「さぁ、サフィアに手を向けて。そして、私がキミを治療した時の事を思い出して…」
ボクは言われるがままにサフィアに手を向けた。
あの時の…暖かい気持ち…
「光魔法は、日の光をイメージして」
アルマの言葉を聞き、集中する。
ぽぉ…と、ボクの手のひらからうっすらとした光が輝いた。
あぁ…暖かい。
この気持ち良さに、身も心もすべて委ねてしまいそうになる…。
そして。。。ボクの口からは自然と言葉が出た。
「光魔法…回復!!」
サフィアの身体が光る。
「ん…んん…。」
サフィアの目が、ゆっくりと開いた。
「サフィア!!」
ボクはサフィアの身体をギュッと抱きしめて、涙を流した。