決戦の日 3
「カッサリル師団長!」
倒れた師団長を気遣う第一魔法師団の叫び声が聞こえてくる。
薬師が治療を行っているようだが、遠くてよく分からない。
地上でも様々な悲鳴と叫び声が聞こえる。
魔族の攻撃により、騎士団の多くが倒れている。
味方である筈の魔獣まで巻き込まれている様子だ。
治療を行おうにも薬師も近づけないでいる。
3体の魔族が、さらに攻撃を繰り出す。
「ははは、人族は弱いなぁ〜」
笑い声と衝撃音が入り混じる。
ドォォーン!
爆音と共に黒い炎が近くに落ちた。
「ドレイク先生!しっかり!」
「ザンビアス先生!大丈夫ですか!?」
先生達と何人かの生徒が負傷し、薬師の手当を受ける。
さらに続く魔族からの攻撃を、ボクたちは防御魔法を駆使して食い止めた。
衝撃が強く、防御魔法の形を維持するのが大変だ。
「魔族…こんなにも強いのか。」
サビアスも防御魔法を唱えながら口ずさむ。
「なんとか反撃しないとね。」
カミュアがメガネを直しながら言う。
と、その時、背後から声が聞こえた。
「みなさん、お待たせしました!」
薬師科のおっちょこちょい先生とナタリアだ。
「魔力回復薬の追加です!」
「あと…魔力保有上限向上薬、完成しました!」
「ナタリアさん、出来たんだね!」
「はい!やっと、即効性が実現しました!」
魔族の攻撃を防ぐ為に防御魔法の効果を高める間に、先生とナタリアが薬をみんなに手渡して行く。
緊迫した状況下、ヤエノが提案する。
「同時に上級魔法を放とうよ!」
魔力が尽きかけていたイリエが薬を飲みながら答える。
「そうね!力を合わせれば!」
「私たちは、他の魔法師にも薬を渡して来ますね。」
「みなさん…頑張って!」
「ナタリアも気をつけて。」
二人と別れると、ボクは魔族へと集中する。
「ボクとラブラリルで防御魔法を構築するから、4人で攻撃を頼む!」
「おぅ、分かった!」
「マイトくん、任せて!」
「了解した!」
「腕の見せ所だな!」
ヤエノ、イリエ、カミュア、サビアスが詠唱を始める。
ボクは防御魔法の展開と同時に目眩しの土魔法を放つ。
「火魔法…上級 炎帝の双璧!」
「水魔法…上級 水虎の氷槍!」
「風魔法…上級 艶花の乱舞!」
「土魔法…上級 砂人の剛腕!」
4人の渾身を込めた上級魔法が魔族に向けて放たれた!
2本の炎と巨大な槍が飛来、赤い花が舞い、さらに砂の腕が魔族に向かった。
ズドドドドーン
大きな爆音と共に、魔族とその足元にいた魔獣は崩れ落ちた。
「やった!やったぞ!」
カミュアが珍しく歓喜の声をあげる。
「君達、良くやった!」
ファスマス先生とラナハン師団長も手を取り合って喜んでいる。
が…
「何を喜んでいるのだ?…少し痛かったが。」
渾身の一撃を与えた筈だが、魔族は立ち上がると別の魔獣の背中に飛び乗りボク達と目を合わせた。
「私に傷を与えたのだ…まぁ、褒めてやろう。」
「クッ」
みんなの顔に悲壮感が漂う。
「そんな…あれだけの攻撃を受け止めるなんて…」
いつもは大きく明るい声のラブラリルが暗い小声で言う。
「アルマ…ごめん。」
「アルマ…君が騎士団に捕まっても、ボクが絶対に助けるから。約束を破ってしまて…ごめん。」
ボクは自分の思いを言葉にした。
「何?アルマちゃんがどうしたの?何か悪い事をしたの?」
イリエが心配そうに言う。
「みんな、防御の展開を頼む。」
ボクはイリエの質問には答えなかった。
「分かったわ、何か策があるのね。」
「防御は得意だ、任せてくれ。」
ヤエノとサビアスが頷き、防御魔法の展開に入る。
「防御魔法は苦手なのだがね。」
そう言いながらもカミュアが防御魔法を発動する。
イリエは心配そうにボクを見つめている。
ボクは魔族の姿をしっかりと捉えた。
「火魔法…上級 炎星の業火」
「水魔法…上級 絶対零度の氷河」
「風魔法…上級 神風の頂き」
「土魔法…上級 大地の憤怒」
上下左右に4つの上級魔法を同時に展開。
右側では、回転する球体が炎をまき散らしながら浮遊。
上部では、固く形成された氷の壁が空中にてその純度を増す。
左側では、大きく渦巻いた風が円を形作る。
そして、大地ではきしむ音が鳴り響き地面がひび割れる。
「行け!」
展開させた4属性魔法が一斉に魔族を襲う。
ドドドドドーン!!
魔族が居た場所から黒い煙が立ち上る。
「グホッ」
「なんだお前は!?何者だ!?」
魔族に大きなダメージを与える事は出来たが、深い傷を与える事は出来なかったようだ。
「マイトラクスくん…君は一体、何者なんだ?」
ファスマス先生とラナハン師団長が口を揃えて魔族と同じ質問をする。
ヤエノやイリエ達魔法科の面々も固まり、静寂が漂った。
「ボクは…」
一言、口にした時、前方に赤い魔法陣が現れた。
「アルマ!」
「ごめん、説得に長引いちゃって…遅れてしまったわ。」
しばらく姿を見せていなかったアルマが突然を出現した。
「ん?説得?…それより、アルマごめん。ボクと契約している事、バレちゃったかも。」
「ん?」
首を捻り不思議そうな顔をするアルマ。
「いや、だから…ボクの魔法の力がおかしいって事がバレちゃったかも!」
ボクは強めの言葉で言った。
周りのみんなは、うんうんと頷いている。
「あー、なんだ。その事ならもういいわ。」
アルマがあっけらかんとした口調で言った。
「え?もういい?ボクと魔族であるアルマの関係がバレてもいいって言うのかい?」
思わずアルマが魔族だという事を口にしてしまい、あわてて手で口を塞ぐ。
「もぅ、まだ気づかないの?私が魔族な訳ないじゃない。あんなのと一緒にしないでくれる!?」
対峙している魔族を指差してアルマが答えた。
「えー--!?本当に!?」
「ウソなんかつかないわよ!」
「いや、それが本当なら今までずっとウソをついていたって事じゃないか?」
「あら、そうだったかしら…」
すっとぼけるアルマ…今まで一生懸命、隠していた事は一体なんだったんだ?
「じゃぁ、ボクのこの魔力って何なのさ?」
「何って、マイトの実力じゃない。私はちょっとアドバイスをしただけよ。」
「え?ボクの実力!?」
「分かったら、あの魔族を全力でやっつけなさい!」
アルマに背中を尻尾で叩かれて、ボクは魔族と向き合った。
周りのみんなは、ポカンとした表情を浮かべている。
魔族は無言のまま佇んでいる。
「あの魔族…回復しているぞ!」
サビアス叫んだ!
見ると、傷口が徐々に塞がっていくのが見えた。
ボクは急いで、先程の詠唱を繰り返した。
「火魔法…上級 炎星の業火」
「水魔法…上級 絶対零度の氷河」
「風魔法…上級 神風の頂き」
「土魔法…上級 大地の憤怒」
ドドドドドーン!
煙が薄まると3つの黒い影が写った。
負傷していた1体の魔族を庇うようにして、2体の魔族が防御を行っている。
「なんだ??この人族は??」
応援に来た魔族2体が口を揃える。
2体の魔族が居た中央付近と右舷側を見ると、騎士団、魔法師、ほぼ全員が倒れていた。
「魔族が3体も…」
第2、第5魔法師団のみで3体の魔族を迎え撃つ事になった事実にファスマス先生とラナハン師団長の顔色は悪くなった。
「あの攻撃を防がれるなんて…」
ボクも思わず弱音を口にしてしまった。
と、その時…背後から迫る気配を感じた。
ターンッ
半月を描き、空中に浮かぶその姿は…ユキアノ!!
両手に持つ2本の剣が1体の魔族の首を捕らえる。
シュシュン!
ドーン!
1体の魔族の首に傷を負わせるも、他の魔族に吹き飛ばされた。
「ちっ浅かったか…」
ボクの足元でユキアノが倒れた。
「暗黒魔法…斬首の惨劇」
「暗黒魔法…亡霊の嘆き」
「暗黒魔法…暗黒炎弾」
そして…3体の魔族が一斉に魔法を放ってきた。
ドドドドドッドドッドーーーン
急いで防御魔法を展開。
サビアスとラブラリルが発動した防御魔法も見えた。
が…城壁の一部が崩れ落ちる。
煙が収まり、ゆっくりと目を開けると…
イリエ…腹部から血を流し、苦しそうな顔をしている。
ヤエノ…腕が折れているのか、おかしな方向に曲がっている。
サビアス…頭から血を流し、ピクリとも動いていない。
カミュア…足を負傷したようで、苦しんでいる。
ラブラリル…うずくまり、動けずにいる。
ファスマス先生もラナハン師団長も少し離れた場所で倒れている。
第ニ、第五魔法師団…全滅だ。
「あああーーーーーーーー!!!」
ボクは泣きながら大声で叫んだ。
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第一章、終盤になります。
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