決戦の日 2
王都の防壁の一部が崩され、魔獣達が侵入していく。
壁の上から魔法を繰り出していた魔法師団の人達も諦めたのか撤退し始めている。
「街の防壁を突破されたら、王城の城壁で体制を整える事になっておる。」
「我々も急ごう!」
ファスマス先生が説明するのに続き、ナムーヤ騎士団長が号令をかけた。
「街の住人は大丈夫かしら」
イリエが心配そうに言う。
第十騎士団の後に続いてボクたち学園の生徒は王都へと入った。
街中の建物の何個かは壊されていたが、住人が居る気配は無かった。
予定通りなら住人は城内と騎士団の演習場へと避難しているとの事だ。
「こちらに隠し通路がある。」
ナムーヤ騎士団長の先導の元、薄暗い通路へと入った。
狭く薄暗い通路を急いで移動する。
「この通路を抜けた先はすぐに城壁だ。我々魔法科の生徒は城壁の上にて魔族共を迎え撃つ。」
ファスマス先生が叫ぶ。
「我々、騎士団と剣士科の生徒は城壁前で奴らと戦う。臆する者はデマントの街へと戻れ。」
ナムーヤ騎士団長が言うも、誰も引き返そうとする者は居ない。
「ボクたち薬師科は治療に専念しますね。」
10人程だが薬師科の生徒達が居てくれるのは有り難い。
ナタリアと先生の姿は見えない。
隠し通路の出口はトルナシア様の像の足元だった。
すでに激しい戦闘が始まっている事が分かる。
騎士団が地上で魔獣達と対峙し、魔法師団が城壁の上から攻撃しており、叫び声と爆発音が混在している。
「オレ達が道を作る!魔法科と薬師科は城壁の上へと急げ!」
剣士科のサモアンとジンハイトが声を揃えて言うと、魔獣に向けて走り出した。
「先導するから後に続け!」
ナムーヤ騎士団長がボクたちを牽引する。
「マイトラクスくん、決して死ぬんじゃないぞ!」
「はい、ナムーヤ騎士団長!また一緒にお茶に行きましょう!」
ナムーヤ騎士団長と別れ、ボク達は階段を駆け上る。
「第五魔法師団、応援に来ました!」
「おぉファスマスくん、生徒諸君もよく来てくれた。」
「が、ここは戦場だ。怖かったら無理をせずに隠れていなさい。」
ラナハンと名乗った第二魔法師団長が言う。
「はい!」
と、元気よく返事をしたイリエとヤエノが気合いの入った中級魔法を放つと第二魔法師団長の表情が変わった。
「よ…よろしく頼む!」
「君達、よく来てくれた。第三魔法師団と我々で右舷側を守護する。第二、第五魔法師団で左舷側の防衛を頼んだ。」
カッサリル魔法師団長が指示する。
「長期戦が予想される。無駄な魔力を使わないよう、気をつけるんだ。」
ファスマス先生からも指示が飛んだ。
城壁の上は見晴らしが良く、改めて観察する事が出来た。
にしても一面、魔獣の数が多い。50体程が残っているだろうか。
何百人もの騎士団員が戦っているが、戦いは拮抗しているように見える。
何よりも気になるのは…魔族の姿が見えない事だ。
実際、魔族の力は分からないが、警戒すべき事は間違い無い。
さらに、今日もアルマが姿を見せない事にも不安が頭をよぎる。
「うわぁ!」
突然、魔法師団の中から声があがった。
鳥型の魔獣が空から襲って来たのだ。
「風魔法を使える者で、あの鳥型を攻撃せよ!」
ラナハン第二魔法師団が号令をかけた。
が…高く上がってしまった為、放った魔法が届かない。
「風魔法…上級 神風の頂き!」
ボクの両腕から放たれた巨大な竜巻が空高くに登った鳥型の魔獣を襲い、地上へと落下させた。
「君…何者だ!?」
ラナハン師団長が言う。
…ん?やり過ぎたか?
「ファスマス君も言ったように長期戦が予想される。無理をするなよ、少年。」
たまたまです…と答えたボクの肩を師団長が軽く叩いた。
地上では、硬そうな鱗を持った魔獣に手を焼いている騎士団の姿が見えた。
剣士科のジンハイトが大型の剣を振り下ろすも鱗に弾かれている。
槍を持った騎士団の方がなんとか一撃を与えるもダメージを与えたかは微妙だ。
うーん…上級魔法の連発はラナハン師団長が見たらどう思うか。
アレで行こう。
「召喚獣展開…岩王の巨人!」
空中に赤い魔法陣を展開して、ゆっくりと足から岩石で巨人を形作る。
そのまま浮遊させ、硬そうな鱗を持つ魔獣の前へと降ろす。
どちらかと言うと魔獣よりも騎士団の方が驚いている。
「安心しろ!これは仲間だ!」
ジンハイトが騎士団を落ち着かせてくれた。
巨人の両手で拳を作り、魔獣の頭部へと振り下ろす。
ずーん。
魔獣は頭を押さえて苦しそうな声を上げた。
対峙していた騎士団達からは歓声が上がる。
が、魔獣は起き上がるとすぐに反撃に出た。
大きな腕で”岩王の巨人”を殴りつけてきたのだ。
巨人は顔を殴られて体勢を崩す。
なんとか立て直すと、次は”岩王の巨人”が魔獣の顔へと殴りかかる。
殴られた魔獣は、フラフラとよろめく。
が、赤い目を光らせると「ぐぉぉ〜」と一声あげた。
魔獣は少し後ろに下がると勢いをつけて頭から突撃してくる。
ボクは”岩王の巨人”を小さく変化させる。
魔獣の体の下へと潜り込ませた瞬間、巨大化させて魔獣を持ち上げた!
「ぐぉぉ〜」
その巨体を逆さまにひっくり返された魔獣は手足をバタつかせる。
「今だ!」
騎士団が一斉に魔獣へと襲いかかった。
ここはもう大丈夫だろう。と思い、ボクは”岩王の巨人”を回収した。
城壁に近づいてきた虎型の魔獣をイリエとヤエノが攻撃している。
「火魔法…中級 炎の槍!」
「火魔法…中級 氷の槍!」
2本の槍が同時に虎型の魔獣へと突き刺さると、水蒸気を伴った爆発を生み出した。
「がぁぁぁぁ」
虎型の魔獣は倒れはしないものの、大きなダメージを負った事が分かる。
「土魔法…中級 石弾撃! 石弾撃! 石弾撃!」
空を舞っていた鳥型の魔獣に対し、サビアスが連続して魔法を放つ。
「なんじゃ、こいつらは?本当に学生なのか?」
ラナハン第二魔法師団が驚きの声を口にする。
魔法剣と杖の効果もあるが、努力していた皆の力は上がっていた。
騎士団も何体かの魔獣を倒し、あちらこちらから歓声が聞こえる。
王都内にまで侵入されて、どうなる事かと思ったが、なんとか押し返している雰囲気だ。
と、思ったのは束の間。
それは…突然の出来事だった。
「闇魔法。。。暗黒炎弾!」
不快な声が響くと共に、歓喜を上げていた騎士団の周辺から爆発が巻き起こった。
「なんだ、何事だ!?」
ファスマス先生が叫ぶ。
「あの姿は…」
赤い目に真っ黒な容姿。頭には2本の赤い角が生えている。
「魔族だ…」
魔法科の皆がささやくとその言葉が周り一面に広がった。
「闇魔法。。。暗黒炎弾!」
「土壁!」
第五魔法師団の方へと放たれた魔族の呪文をボクは土魔法にて防いだ。
ズドーン!
相殺できたが、衝撃波が城壁の上に居た仲間を襲う。
く…なんて力だ。
すると第一、第三、魔法師団が守る右舷側から爆発音が鳴り響いた。
見ると右舷側にも魔族の姿がある。
大きな魔獣の背中で腕を組むその姿からは、余裕の雰囲気を感じさせた。
ドドーーーン!
中央付近でも爆発音が起きた。
「マイトくん…魔族が3体も居るわ。」
「とても…強い力を感じる。」
イリエとヤエノが恐怖を感じているようで、言葉が震えているのが分かる。
サビアスはラブラリルを庇うようにして立つ。
「うーん、これは…思ったより強い魔法だね。」
常に強気なカミュアが珍しく弱気な発言だ。
「一斉攻撃だ!ターゲットを前方の魔族に集中させる!」
ファスマス先生が叫ぶと、第二、第五魔法師団が目の前に居る魔族へと集中砲火を開始した。
「火魔法…上級 炎星の業火!」
ボクも上級魔法を繰り出して、魔族にぶつける。
ドドドーン!
辺り一面に煙が上がり、緊張感が走る。
視界が戻ると…そこに魔族の姿は無かった。
「上よ!」ラブラリルが大きな声で叫ぶ。
空中から、ボクたちが陣取る城壁の上方から魔族が襲い掛かった!
「土魔法…土壁!」「土壁!」
反応できたのは、サビアスとボクだけだった。
「クッ」
魔族はボク達が作り出した防衛魔法、土壁を蹴ると空中で一回転して魔獣の背中へと飛び乗った。
「なかなか…楽しませてくれるではないか。」
魔族の声が響くわたる。
とても…不快で大きな声だ。
右舷側で魔法師団の騒ぎ声が聞こえてきた。
チラリと見ると…カッサリル魔法師団長が倒れているのが分かった…
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いよいよ第一章のクライマックスが迫ってきました。
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