決戦の日 1
馬車を走らせ、急いで王都へと向かう。
第十騎士団の半数は万一に備えてデマントの街に残り、残り半数と学園の生徒達で編成した部隊にて王都へと急いだ。
「魔族が襲撃日を知らせて来たのは防衛を分散させる為だったのかしら?」
心なしかイリエの声が震えている。
「分からない…でも、戦力を分散させられた事だけは確かだ。」
「最初の襲撃で各街が同時に襲われた事から、ボク達は今回も各街が襲われると思い込んでしまった。」
もしかして前回、王都の壁が破られなかったのは、油断させる為だったのか?
焦っている為なのか、色んな思考が頭をよぎる。
煙が上がる王都へと急ぐ。
と…王都を取り囲むように、うごめく何体もの大型の魔獣の姿が見えてきた。
「横から攻めるぞ。」
馬に乗ったナムーヤ隊長が声をあげる。
ボク達は馬車から降りた。
ファスマス先生が声をあげる。
「一体一体、確実に倒していくんだ!決して孤立してはならん、互いの距離を意識しろ!」
「我々は騎士団と魔法科の支援に回れ!いいかお前ら、目立とうとするな!命取りになるぞ!」
この声は…酔っ払い先生だ!
酔っ払い先生事、ドライノア先生がボクに”行け”と手で合図を送る。
一体一体を確実にか…にしても、なんて数だ。
「みんな、魔力の枯渇に注意して!」
ボクは魔法科の生徒達に助言を送る。
目の前にいる一体のワニ型の魔獣と対峙する。
「火魔法…炎の波!」
ボクの放った火魔法を受けて苦しそうな声を上げるワニ。
「ファスマス先生!火魔法組でこのワニ型をお願いします!」
「わかった、任せてくれ!」
ヤエノが率先して前に出て、魔法剣を振り下ろし攻撃を繰り出す。
次の魔獣の弱点を探る。
「ドレイク先生!この魔獣を水魔法組でお願い!」
風魔法組、土魔法組もそれぞれ魔獣へと立ち向かう。
「酔っ払い先生、土魔法組は人数が少ないので剣士科の応援を増やしてください!」
「だから!オレの名前はドライノアだ!」
怒りながらも剣士科生徒に指示を送る。
ボクは苦戦している風魔法組の戦列へと入った。
「ザンビアス先生、どうですか?」
「空を飛んだかと思ったら、翼から無数の鋭い羽根が飛んで来てね。それが厄介なのよ。」
「なるほど、じゃぁボクがその翼を何とかします!」
「水魔法…氷結!」
空気に漂う水分を魔獣の翼へと集中させる…
…カキンッ!
翼が凍る音と同時に魔獣が叫び声を上げた。
「広範囲に…なんという魔力。マイトラクス君が作ってくれたチャンスを無駄にするな!総攻撃だ!」
ザンビアス先生の声が響くと共に一斉に風魔法が放たれた。
魔獣は空へ飛ぶ為に翼を動かそうとするも凍った翼を動かせない。
「風魔法…中級 風刃!」
中級魔法だが強烈な一撃をカミュアが与える。
その赤い目の光を失い、翼を持った魔獣はその体を地面へと横たえた。
勝利の雄叫びを上げる風魔法組の生徒達。
「まだだ!喜ぶのはまだ早い、次に行くぞ!」
ザンビアス先生が生徒達の気持ちを引き締めた。
その時。
前方で、空中を舞う女の子の姿が見えた。
あれは…ユキアノだ!
デマント防衛の時に巨大亀を共に倒した剣士科の生徒、ユキアノが土魔法組の生徒と共に巨大なヘビ型の魔獣と戦っている。
「ナズム先生、状況は?」
ボクは駆け寄って、尋ねた。
「何人かが、あの魔獣の毒攻撃を受けて戦闘不能の状態だ。」
「分かりました、その生徒達はボクに任せてください。」
先生はボクに何が出来るのかと不思議そうな顔をしたが、治療中の生徒が居る場所を教えてくれた。
示された場所に向かうと10人程の剣士科、魔法科の生徒が苦しそうな顔をして座っている。
薬師科の生徒が2人居たので声をかけた。
「毒消しは?」
「それが…何故か効かないのです!」
話をしている間にも、さらに毒に襲われた生徒が運ばれてきた。
「あのヘビの毒は特別なんです!」
ボクは言うと”普通の水”を取り出して飲ませるように伝える。
薬師科の生徒がボクが渡した水を飲ませた後、苦しむ生徒達にこっそりと呪文を唱えていく。
「光魔法…解毒」
「あれ?体が動く。」
苦しそうな顔をしていた生徒全員が元気になり、戦線に復帰していった。
「マイトラクスさんですよね、ありがとうございました。凄い毒消しですね、今度詳しく教えてください。」
薬師科の生徒にお礼を言われたが、渡したのは単なる水だ。
これ以上、毒攻撃を受けないよう早くあの魔獣を倒さないとと思いボクもすぐに戦線へと戻った。
「サビアスくん、練習した合同魔法で行くよ。」
「マイトくん、分かった!」
「土魔法…中級 土石流!」サビアスが放つ。
「火魔法…中級 炎の波!」ボクが放つ。
二つの中級魔法が合わさると巨大な炎を纏った土石流がヘビ型の魔獣を襲った。
「ぐぉぉぉぉ~。」
苦しそうな声をあげて、ヘビが悶える。
「いまじゃ!」
ナズム先生が号令をかけ、一斉に土魔法が放たれた。
「土魔法…中級 石弾撃!」
ラブラリルも大きな声で参戦。
王都で入手した杖のおかげで以前より威力が増している。
ずーん。
数分後、巨大なヘビ型魔獣は砂煙をあげて倒れた。
火魔法組と水魔法組も、対峙していた魔獣を倒していた。
学園の生徒たちで4体の魔獣を倒したが、敵が多すぎてとても間に合わない。
「王都は無事ですかね?」
ボクはファスマス先生に声を掛けた。
「分からないが、街から上がっている煙は少ない。おそらく侵入されているとしても数体だろう。」
その時、切り込んでいた第十騎士団が引き返してきた。
「ダメだ、敵の数が多すぎて街の壁まで近づくことさえ出来ない。」
「あと、反対側から湾岸都市に配置されていた筈の第六騎士団と第三魔法師団が攻撃をしてくれているようだ。」
ナムーヤ騎士団長が状況を伝えてくれた。
とにかく、一体づつ倒していこうと話をしているとイリエが助けを求めてきた。
「ドレイク先生が負傷しました!水魔法組に支援をお願いします。」
ボクはイリエと共に水魔法組が対峙している魔獣の元へと向かった。
ドレイク先生は、すでに薬師科の生徒の手当を受けているという。
相手は…巨大な熊型の魔獣だ。
大きな腕を振り回して暴れていて、応援の剣士科生徒は近づくことも出来ない状態だ。
水魔法組の生徒が中級魔法で攻撃していてダメージは与えているようだが、とにかく相手がタフな様子が伺える。
2体目の魔獣の相手をしている水魔法組の生徒達からは、すでに疲労感が出ている。
「水魔法…上級 氷の剣舞!」
ボクは両手を空に掲げて心を集中させ、10本の氷の剣を空中に浮かび上がらせた。
熊型の魔獣の頭上へと剣を移動させると、一斉に襲わせる。
「ぶぉぉぉぉぉ」
魔獣が叫び声をあげる中、さらに10本の氷の剣が巨大熊の体を切り刻む。
「私たちも攻撃を!」
イリエが声をあげると、疲れていた筈の水魔法組の生徒達から一斉に魔法攻撃が始まる。
ドスーン。
巨大熊の魔獣は赤い目の光を失い、その巨体を地面へと横たわらせた。
「マイトくん、ありがとう!おかげで助かったわ!」
イリエが嬉しそうに言う。
「いいタイミングでイリエが皆を鼓舞してくれたおかげだよ。」
ボクは笑顔を返す。
どぉーーーん
その時、王都の方から大きな音が聞こえて来た。
「壁が!王都の壁の一部が崩れたぞ!」
誰かが叫ぶと共に、魔獣の一部が王都内へと侵入していく光景が目に入った。
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