王都にて 2
王様の「軍への所属せよ。」との言葉を受けて固まるボクとヤエノ。
「ん?どうしたのだ?お前達は将来、軍に所属する為に学園で学んでいたのではないのか?」
王様の言葉に返事が出来ずにいる。
「この者達は…まだまだ未熟者でして…」
ボク達がまだ学園に居たいという気持ちを知っているファスマス先生がフォローをしてくれた。
「先の魔族との抗争で魔法師団が大きな損害を受け戦闘不能になった者が多数だ。5つある魔法師団を4つに再編成する案まで出ておる。」
「今年は期待していた学園からの新入団が居なかった。”理想通りに育たなかった”からとの報告を受けていたが、今回の事件で優秀な二人の生徒が出て来た。私はそれを喜んだのだよ。」
王様の言葉には納得出来る点が多い。
チラリとヤエノを見ると、涙目となりグッと拳を握っている。
”イリエ達との楽しい学園生活を終えなければならない。”そう思っているに違いない。
「おい、お前達!国王様の指示に従えないと言うのか!」
「グズグズしていないで、早く返事をしろ!」
王様の右隣で槍を持って立つ、立派な鎧を来た騎士団の男が急に叫んだ。
ファスマス先生の顔がさらに青ざめる。
すると目の前に赤い魔法陣が現れた…
「アルマ、ダメだ!」
ボクは叫ぶも、アルマは姿を現してすぐに呪文を唱える。
アルマの放った水の矢が先程、怒鳴った騎士団の男へと向かう。
「土壁!」
ボクは急いで構築した魔法を騎士団の男の前に展開してアルマの魔法を防いだ。
ボクはアルマを抱きしめて動きを止める。
「ボクは、軍に所属しません!」
大声で叫ぶと、ヤエノも立ち上がり叫ぶ。
「私も、学園に残ります!」
「この者達を捕らえよ!!」
危うくアルマの魔法を食らうところだった立派な鎧を着た騎士団の男が叫んだ。
周りに控えていた騎士団員達が慌ててボクたちの腕を掴みにかかる。
もみくちゃになる中、アルマがまた魔法を放つと騎士団員達が円を描くように吹き飛ぶ。
その時…
「わたしが!」
「わたしが、魔法科の生徒達を連れて第五魔法師団として率います!」
「報酬は、わたしの報酬は師団長の立場を!」
ファスマス先生が叫んだ。
なおも混沌とする中、
「静まれ!」
王様が大きな声で叫ぶと、兵士は皆その場で動きを止めて直立した。
「魔法科長ファスマス!学園の生徒で魔法師団だと?そんなものが役に立つのか?」
続けて王様が質問を口にした。
「学園の生徒には、すでに上級魔法を扱える者がそこのヤエノカシスを含めて5人おります。」
「中級魔法を行使できるものは…ほぼ全員!」
ファスマス先生が叫ぶと、その場に居た魔法師と思われる人々から、どよめきが起こる。
「そんな訳が無いだろ!」
次は王様の左隣に居たきらびやかローブを着た魔法師が叫ぶ。
「血迷ったのかファスマス!今更、軍に戻る気か?しかも魔法師団長だと??軍から逃げ出したお前が何を口走る!?」
どうやら知り合いのようだが、その言葉にはトゲがあった。
「わたしは…あくまでも教師だ!子供たちの成長を見守るのがわたしの仕事!今回は、その教育の一環だ!」
「老いぼれて、頭がおかしくなったようだな!」
「こんな若造どもが上級魔法だの、おかしいだろ!?」
きらびやかなローブを来た魔法師とファスマス先生が口論をする。
アルマは今にも飛びかかりそうになっているが、ボクとヤエノが二人がかりで抑える。
「静まれ!」
王様が、二度目の言葉を使い、場を収めた。
「王国軍立学園、魔法科長ファスマス!己が言った言葉を真実だと証明できるか?」
「はい…勿論です!」
ファスマス先生は片膝をつき、頭を下げながら叫んだ。
「分かった…第一魔法師団長カッサリル、学園に赴き、真実を見届けよ!」
「真実と分かった後は、王国軍立学園の魔法科を第五魔法師団とし、その師団長をファスマスとする!」
「真実で無かった場合は、ファスマスは牢獄行き、そしてマイトラクスとヤエノカシスは魔法師団に編入するものとする!異論は無いか!?」
「はい…」
ファスマス先生が答えた。
「マイトラクスとヤエノカシスの返答は!」
ボクとヤエノは、抵抗する術も無く「はい」と返事をした。
王様との会談を終え、用意された控室に移動した。
「先生、スミマセン…こんな事になって。」
大きなソファーに座り、ボク達は話を始めた。
「いや…呑気に王城まで来た事が間違いだった。」
ファスマス先生が答える。
「先生、ありがとうございました。」
ヤエノが感謝の言葉を伝える。
ボクも同じく、感謝の意を示した。
そしてボクは…同じように疲れた顔をしているアルマに言う。
「おい、アルマ…キミは気が短すぎる。何とかしてくれ。」
「あの騎士が生意気だったから悪いのよ。あぁ一撃くらわしてやりたかったわ。」
うん、まったく反省している気配は無い。
「ところでファスマス先生は、第一魔法師団長とお知り合いなのですか?」
「あぁ、昔、わたしも軍に所属していてね、カッサリルとはライバルだったのだよ。」
「事情があって、わたしは軍を離れてね。しばらく会ってはなかったのだが。」
「第一魔法師団長とライバルだったなんて、ファスマス先生も凄いんだな。」
場の空気を変えようとしたのか、ヤエノが少し明るめに言う。
「ははは、わたしは仲間に恵まれただけだよ。彼との力の差は歴然だ。」
そういえば、ファスマス先生が魔法を行使したところを、あまり見たことが無いな、と思う。
「仲間に恵まれるのは先生の人格の象徴ですよ。」
ボクは正直に自分の気持ちを伝える。
「それにしても、学園の魔法科をまるごと第五魔法師団にするなんて、とんでもない事を言ったわね。」
「いや、アルマが暴れたから咄嗟に先生が叫んでくれたんじゃないか!?」
原因となったアルマが、まるで他人事に言うのでボクは制した。
「いや、アルマくんが出てこなかったにせよ、あの場を収める為にはああ言うしかなかったかもしれない。ウソだったと認定されれば、わたしは牢獄行きだがね。」
笑いながらファスマス先生は言う。
「その辺は大丈夫だと思うわ。軍の魔法師団より魔法科の学生の方が強いから。」
アルマがとんでもない事を言う。
「まぁ…実際、そうかもしれないね。」
ファスマス先生はアルマの言葉に賛同をしたので、ボクはさらに驚いた。
「第一魔法科師団長が学園に視察に来るのだったな、いつ来るのかな?」
ヤエノが疑問を口にしたが、誰も知らない事に気付いた。
その夜は、本来は式典ついでの食事会が開催される予定だったらしいが問題続出となった為、中止となったらしい。
ボク達は、用意された控室で食事を取った。
良く知った仲だけでの食事となり、かえって良かったかもしれない。
いただいた食事は、ボクが食べた中で一番、豪華で美味しい料理だった。
翌日、朝一番に手配した馬車でボク達は学園へと帰る。
「カッサリル…」
ファスマス先生が馬車の横で驚いた顔をしている。
「ファスマス、お前が慌てて不正を働かないように、すぐに出発する事にした。」
「まぁ、不正を働いたところで、無理な話だがな!」
第一魔法師団長、カッサリルが笑い声をあげる。
「なんか…嫌なヤツ。」
ボソリとヤエノが耳元でささやく。
「不正などしなくても問題は無い。」
そう言うとファスマス先生は颯爽と馬車に乗り込んだ。
カッサリル第一魔法師団長は別の馬車に乗り込む。
ボクとヤエノも馬車に乗り込んだ。
「ねぇ、ヤエノ…学園の魔法科が軍の第五魔法師団になるなんて…本当に良かったのかな?」
「わたしは…かえって良かったと思うわ。今の魔法科は組間の連携も出来つつあって、無限の力を出せると思うの。」
「そうだね…」
ボクはもっと強くなって、魔族を撃ち返したい。という気持ちが強くなった。
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