王都にて 1
今、ボクは王都へと向かう馬車に揺られている。
初めて訪れる事になった王城。
楽しみではあるが、不安でもある。
王城への呼び出しなんて…一体、何の用事なのだろうか。
もしかしてボクが魔族と契約している事がバレたのだろうか。
あぁ、楽しみよりも不安な面が増して来たよ…
ファスマス先生とヤエノが一緒という事が救いだ。
ボク一人ではないので、契約がバレたという事ではないか。と自分に言い聞かせて心を落ち着かせる。
王都を取り囲む壁の一部に魔獣に襲われた痕跡が残っていたが、中までは侵入されなかったらしく、街の建物はどこも無傷だ。
それにしても大きくて立派な建物が続く。
学園への入学試験の時に、初めて見たデマントの街の建物の大きさに驚いたものだが、今回もあの時の衝撃を思い出すに十分だった。
「うまい飯屋を知っているんだ!」
ヤエノの実家は王都にあるらしく、この辺は色々と詳しいらしい。
「ワシは友人と会う約束があってな。」
ファスマス先生とは待ち合わせ場所を決めて、一旦、別れる事になった。
ちなみに王様との謁見は夕方だ。
「マイト!早く行こうぜ、私は腹ペコだ。」
確かに…朝、早く出発したのでお腹が空いたな。
ヤエノに手を引っ張られて歩く。
「ここだ!」
連れられて来た飯屋さんは、予想通りの肉料理だった。
結構な量を注文するヤエノ。
「ヤエノさん、野菜も頼もうよ。」
「それは、マイトが頼んでよ…」
うん、確かに美味しい。
肉料理をガッツいているかと思ったら、ヤエノが急に食べるのを止めた。
「イリエ達も今頃、お昼ごはんかな?」
ヤエノとイリエは毎日のように一緒に昼食を取っているからな。
寂しいのだろうか。
「イリエは今頃、大好物のボーボー鳥のシチューを食べている頃さ。」
「あの子、本当、あのシチューが好きよだよね!」
「だね、そのうちボーボー鳥みたいな顔になるんじゃないかな!」
ボクたちは笑いあった。
美味しい昼食をいただいた後、ヤエノが街を案内してくれた。
お店屋さんはデマントの街より高級感がある感じで、違うのは美術館や博物館、図書館といった文化的側面を持つ建物があるところだ。
文化的な建物は他と比べると、随分と美しく立派だ。
入ってみたかったが、ヤエノは全く興味が無いというので、次の機会に訪れる事にした。
ヤエノが行きたいと言い、連れられて来たのは武器屋さんだった。
普通、魔法師が武器なんて興味無いだろう?と思うのだが、見ているとなかなか面白かった。
「この杖、どうだい?」
「へぇー、魔法師の道具も売っているんだね。」
持ってみると手にしっくりと馴染む。
魔力を増大させる力があると店員さんが説明してくれたが、ボクにはその効果を感じる事が出来なかった。
と、その時…何か懐かしい感じを抱いた。
棚の上にある水晶から何かを感じる。
「店員さん、あの水晶を見せてください。」
ボクがお願いすると、大事そうに水晶を手に取って降ろした。
大事そうに扱う割には、その水晶は随分と埃まみれだ。
店員さんは慌てて埃を払う。
「これは、おいくらですか?」
提示された金額はとても高く、ヤエノがおかしいだろ!?と騒ぎ立てていた。
例え、半額になったとしても買う事が出来ないので、値切り交渉を続けるヤエノを止めて店を後にする。
「あの店員、絶対にあの水晶の価値を分かっていないよ。私も分からなかったけど…」
「価値も分からない癖に、こっちが欲しそうにしてたから高い値段を言ったに違いないわ!」
ヤエノはまだ文句を言い続けている。
その後も色々と店を回ったが、イリエと買い物に行く時とは違い、道具類を扱う店ばかりを巡る。
「ヤエノさんは服屋さんに行ったりしないの?」
「マイトと服を見ても楽しくないだろ?」
納得の答えが返って来た。
そろそろ太陽が傾いてきたので、ファスマス先生との待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所は、トルナシア様の像の前。
えーっと…ここかな?
「それは違うわ。」
ヤエノが言う。
確かに、よく見るとまだ建設途中だし雰囲気が違う。
「それはトルナシア様の像に対抗して建築中の剣聖ザックパーラの像よ。」
「剣聖ザックバーラ?」
ボクは聞き返した。
「何でも400年前にトルナシア様と共に魔族と戦った剣の達人なんだって。」
「でも、そんな文献は見当たらないって話で、本当か嘘か分からないわね。」
「剣士の人達は、自分達がこの国の中心に立とうと必死なのよ。」
そう話をしているうちに待ち合わせ場所である、トルナシア様の像に到着した。
「あ、ファスマス先生、お待たせしました。」
今、来たところだという先生と共に、いよいよ王城へと乗り込む。
「マイトは緊張しすぎだ、悪い事などしてないのだから堂々としていればいい。それとも、何かやましい事でもあるのか?」
ヤエノの言葉にドキっとしたが悟られないように平静を装った。
王城は、都の中心にそびえ立ち、街のどこからでも見る事が出来る位置にある。
真っ白なその姿は3本の大きな建物が中心にあり、その周辺に小さな建物が規則正しく建てられている。
正門で招待状を見せると、兵士に連れられて城内へと案内された。
何回か階段を上がった先にあった重厚な扉が、この先にいる人物の偉大さを物語る。
「リラックスするんだ。」
「はい。」
と答えたが、ファスマス先生は自分自身にリラックスするように言い聞かせていたようだ。
扉が開くと、真っ直ぐに美しい青い絨毯が目に入った。
遠くには王様と思われる人物の姿が見える。
中頃まで歩いたところで、3人で片膝をついた。
「王立軍魔法科より参りました、ファスマスと生徒2名です。この度はお招きいただき感謝いたします。」
ボクとヤエノは何も言わずに頭を下げる。
チラリと周りの様子を伺うと何十人もの兵士や文官がボクたちを囲っている。
王様の顔は恐れ多くて見る事が出来ない。
「ファスマス、マイトラクス、ヤエノカシス、よく参られた。」
「この度のデマントの街での活躍に対して、国民を代表して感謝の意を表す。」
王様の言葉にボクは驚いた。
活躍と言っても騎士団はじめ、みんなで協力し合った結果だ。
とても、ここに呼ばれた3人だけの成果では無い。
「恐れながら、デマントの防衛の結果はボク達だけの力ではありません。皆が協力し合った結果です!」
ボクは王様の意に反するという言葉を発してしまった。
隣で膝をつくファスマス先生が青い顔をしているのが見えた。
「ははは…そうかそうか。」
「デマントの街の騎士団長から話は聞いている。マイトラクスの召喚獣は強力。ヤエノカシスは上級火魔法を使うという。そのような生徒を育てあげたファスマスは素晴らしい。」
「私はね、キミ達に褒美を捧げたいんだよ。」
「有り難きお言葉!」
ファスマス先生がボクに何も言わせないように先に言葉を発する。
「デマントの防衛の功績を讃え、出来る限りの恩賞を捧げよう。」
その言葉を聞いて、ボクは初めて顔を上げて王様の姿を見た。
気品高い佇まい、髪は茶色で目は青色に輝く。
自分の父のような包容力を感じた。
「で…では。」
ヤエノが口を開いた。
「何だね、ヤエノカシス。」
「肉料理を…魔法科の学食にも肉料理を増やしてください!剣士科と同じような…」
ヤエノの要望を聞き、王様は大笑いをしている。
逆にファスマス先生は頭を抱える。
「分かった…あまり把握はしていないがヤエノカシスの希望通りにしよう。」
「ありがとうございます!共に戦ったみんなも喜ぶと思います。」
ヤエノは自分の事だけじゃなく…みんなの事を考えての恩賞を希望したのだな。
私利私欲の為じゃなく、みんなの為に肉料理を…と思ったが、ヤエノのニヤリと笑る顔が見えた。
ん?ヤエノ…深く考えないでおこう。
「次は、マイトラクス。希望を述べよ。」
何も考えていなかったボクの思考は止まった。
「マイトラクスの報酬は、街の武器屋で売っていた水晶を望みます。その水晶を用いた杖を作成していただけると、なお嬉しいです。」
隣からヤエノが叫んだ。
「あい分かった。後で店の名を担当の者に伝えよ。」
「ちょっとヤエノ!」
「あんな金額、問題無いわよ!」
ヤエノが言う。
「次は、ファスマス。希望を述べよ。」
「私の望みは、生徒が健やかに成長する事です。」
「うむ…気持ちは分かるが、叶えるのが難しい望みだな。」
王様は顎に生えた髭を触りながら言う。
「まぁ、良い。もう少し具体的な希望を考えておいてくれ。」
「さて、次は私からの希望を伝える。」
え?王様からの希望??二人で顔を見合わせた。
「マイトラクス、ヤエノカシスは王国軍の魔法師団に所属せよ。」
ボクとヤエノは何も返事をせず、沈黙した。
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