デマント防衛戦 その後
ねぇアルマ…
キミも変身前の姿はあの魔族のように赤い目をしているの?
頭に角を生やし…真っ黒な姿をしているの?
今は正反対の真っ白な姿をしているのは何故?
ボクは聞くのが怖くて口に出せずにいる。
言葉には発さないが、アルマはボクの心を読む事が出来るので、思っている疑問には気づいている筈。
文句を言いながらも、いつも人族を助けてくれる優しいアルマ。
ボクはずっとキミと友達でいたいよ。
ねぇアルマ、いつまでもその白い姿でボクと一緒に暮らして欲しいな。
様々な思考を巡らしながら、眠りについた。
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デマントの街が魔獣に襲われたあの日、他の街、そして王国まで魔獣に襲われていたという事実が発覚した。
どうりで呼んでも王国から軍の応援が来なかった訳だ。
魔獣を誘導した魔族の存在も認識され、王国、各街は勿論、辺境の村にまで恐怖の噂は流れていた。
魔族の存在は以前から認識されていたが、魔獣という言葉が今回の事件ではっきりと植え付けられた。
あの日の翌日から、ボクたち学園の生徒は街の片付けを手伝っていた。
体力のある剣士科の生徒が大いに役立っている。
壊された建物の瓦礫の撤去作業を手伝っていた。
薬師科の生徒は主に薬や食品の配給を行っている。
重傷者が運ばれた街の治療院でも薬師科の生徒達は頑張っていた。
ボク達魔法科の生徒は組ごとに分かれた。
水魔法組は生活で必要な水の提供。
風魔法組は出された瓦礫の運搬。
火魔法組は瓦礫の焼却や処分。
土魔法組は壊された壁の修復。
それぞれ、街の住人達と協力して行っている。
ボクは一番人数が少ないが仕事量が多い、土魔法組のところに入った。
「おーい、マイトくん。こっちを手伝ってくれないか。」
サビアスに呼ばれて、言われた場所に大きな岩石を作り出す。
「マイトさんの作る岩は頑丈ですねー。」
ラブラリルが言うように、ボクが作る岩石は大きくて丈夫だと人気だ。
大きな岩石を何個か並べて、その隙間に小さな石や砂を入れて固める。
それを繰り返し、上へ上へと積み上げていく。
「みさなーん、お昼ごはんですよー。」
ナタリアと薬師科の生徒数人が昼食を届けてくれた。
「マイトさん、一緒にいただきましょうよ。」
ボクはナタリアと二人で昼食を取る事にした。
「魔族の襲撃なんて…一体、この先どうなってしまうのでしょうか…」
昼食をいただきながら、話をしている。
あの日ナタリアは、学園で怪我人の治療を行っていたとの事で直接、魔族の姿を見ていなかったようだ。
それでも、かなり恐れを抱いている事が分かる。
「きっと王立軍がどうにかしてくれるよ。」
ボクはナタリアを元気づけようと、そう伝えた。
「ありがとうございます。」
「でも…私はマイトさんが、何とかしてくれると思っていますよ。」
「いや、ボクなんて…自信無いよ。」
実際、魔族の赤い目と黒い姿を見て、ボクは恐怖を感じた。
おそらく、また襲ってくるだろう魔族に対して対抗策など何も無い状態だ。
「私は戦えないので、応援する事しか出来ません。」
ナタリアがボクを見つめてくる。
ザザッ
その時、近くの木が揺れている事に気づいた。
「獣か?水魔法…
「わぁ〜、ちょっと待ってください〜。」
ラブラリルとサビアスが慌てた様子で出てきた。
「あら、覗いていたのですか?」
ナタリアは顔の前で両手を合わせながら二人に言う。
「お二人が、どうなるのか気になっちゃって♪」
ラブラリルがいたずらっぽく笑う。
「私から見ると、そちらの仲の方が気になりますけど…」
「えっ?サビアスとラブラリルが!?」
ナタリアの言葉にボクは驚いた。
サビアスとラブラリルの二人は顔を見合わせ、微笑み合った。
「ボク達は…付き合っているよ。」
「あー、やっぱりですか。」
「えー---、いつの間に。」
ナタリアとボクは全く正反対の反応を見せた。
「マイトさんは、いつも一緒に居るのにどうして気付かないのですか?」
「ナタリアさんは、一緒に居ないのにどうして気付いたのですか?」
ボクとナタリアのやり取りを見て、サビアスとラブラリルは笑っている。
「お二人もお似合いですよ。」
ラブラリルの一言で、ボクとナタリアの顔は真っ赤になった。
あぁ、この平和な日々が続けば良いのだが。
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復興作業を続けていたある日、デマントの街の防衛騎士団であるナムーヤ隊長がボクを訪ねて来た。
しばらく見ないと思ったら王都での会議に参加していたらしい。
「やぁ、マイトラクス君、久しぶりだね。君に会って話をしたかったんだ。立ち話も何だから店に入らないか?」
ボクはナムーヤ様に連れられて、近くのお茶屋さんに入った。
なんでも好きな物を注文して良いという事だが、遠慮して一番安い紅茶を注文する。
「早速だが、召喚術師である君が使役している召喚獣は何体あるんだい?」
「えーっと…4体、いやアルマを加えると5体…ですかねぇ。」
曖昧な返答に、ナムーヤ様が不思議そうな顔をする。
「あの強い召喚獣を使役する君は、これから起こるだろう魔族との闘いに大きく役立つと思うんだ。」
「召喚術師という人材も極めて少ない。是非、早く我々、軍の仲間になって欲しいところだ。」
「やはり魔族は攻めてくるのでしょうか?」
勧誘されている事を誤魔化すように、ボクはナムーヤ様に質問を投げかけた。
「まだはっきりとは分かっていないが、近いうちに攻めてくるとの情報があるようだ。」
その言葉を聞いて、ボクはため息をついた。
「質問して良いですか?魔族は一体、どこから来るのでしょうか?」
ナムーヤ様は一瞬、ためらった後。
「それもはっきりと分かっていないんだ。西の方にある山岳地帯が彼らの住処だと考えられているが、確かな情報では無い。」
「もう一つ聞きたいのですが…魔族の目的は一体何なんのでしょう?確か、あの時『いつまでも人族の好きにはさせない。』と言っていましたが…」
「申し訳ない、それもはっきりと分かっていないんだ。ただ何百年も前から続く抗争だ、そう簡単な理由では無いかもしれない。」
ボクは再び、ため息をついた。
ゆっくりと紅茶が入ったカップを口に運ぶ。
今度はナムーヤ様が口を開く。
「あの角サイと対戦している時に魔法科の生徒の一人が上級魔法を使ったらしいんだ。王立軍の魔法師でさえ上級魔法を使える人材は少ない。是非、その学生を紹介して欲しいんだ。」
あぁ、ヤエノの事か。やはり学生が上級魔法を使うと目立っちゃうのだな。
召喚術師って事にしておいて本当に良かった。
「その生徒の事は知っていますが…紹介したらどうするのですか?」
「そりゃ、軍に勧誘するさ。上級魔法を使える程の実力を持つ者、もう学園に居る必要は無いだろう。」
ボクの質問にナムーヤ様は予想通りの返事をする。
「彼女は…友達です。卒業資格を得ていたのですが、彼女の意思で学園に残りました。軍の事情も分かりますが、ボクは彼女の意思を尊重したいです。」
「そうか…では一度、学園にお邪魔して学園長と話をしてみる事にするよ。」
ナムーヤ様は少しがっかりした印象だったが、すぐに笑顔になると、この話は終わらせて世間話をした。
騎士団の苦労話は、聞き慣れない話が多かった為、とても面白く、感じたよりも早く時間は過ぎていった。
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街の修復完了が見えてきた頃、ボクはファスマス先生の部屋に呼ばれた。
「やぁ、マイトラクス君、よく来てくれたね。街の復興でも活躍してくれてありがとう。」
「こんにちは、ファスマス先生。」
「実は王都から呼び出しがあってね、王城へと招待されたんだ。」
「キミとヤエノ君と一緒に来るようにとの事だ。」
「今のところ、何故呼ばれたのかは良く分からない。」
王城だなんて…ボクは驚いたが、ヤエノと一緒だと思うと少しほっとした。
「分かりました。訪問の日程を教えてください。」
こうしてファスマス先生とヤエノと共に初めての王都へと旅立つ事となった。
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そろそろ第一章の終わりが近づいてきました。
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