剣士科との決闘 その後
剣士科との決闘が終わった数日間、魔法科は大いに盛り上がっていた。
ボクはみんなから讃えられ、食堂のおばちゃんからもお昼にサービス品をもらえる程だった。
決闘の後、剣士科代表だった、
ジンハイトとサモアンから謝罪を受けた。
「お前が審判とぶつかった後、急に動きが良くなった事から察しがついた。体力的には、まだ戦えたが気持ちが持たなかった。」
「剣士科の先生には、今回の件でうんざりしたよ。まさか不正をしてでも勝ちたかったとはな。ヤエノさん、申し訳なかった。」
二人も被害者だったのだと謝罪を受けて改めて感じた。
ヤエノは借りていた火属性の魔法剣を買い取った。
軍所属の両親から資金援助を受けたとの事で結構な高値での取引となったようだ。おそらく謝礼の金額も含んでいたのだろう。
ラブラリルが、お父さんが喜んでいた事を話してくれた。
イリエの実家には、伯爵本人がわざわざ出向いての謝罪を受けたと聞いた。
どうやら、あの坊ちゃん本人が無断で起こした事だったらしく末息子の為、甘やかして育ててしまったと反省していたらしい。
カミュアは風属性の魔法剣を返す為に実家に戻るとの事で、ボクはお礼の手紙を預けた。
貴族である実家を継ぐ為の勉強をしたくない。
と言って学園に残っているカミュアだが、その割には頻繁に帰省しているなと思う。
サビアスは決闘以来、付き合いが悪くなった気がする。
新入生のラブラリルと一緒に居るところをよく見かけるようになった。
同じ土魔法組だから色々と話が合うのだろうか。
ボクはと言うと、今日はファスマス先生の所へと来ていた。
いつものようにアルマと共にお茶をいただく。
「今日は果物をベースにしたお茶だよ。」
甘酸っぱい香りが口の中に広がる、果物感は抑えめで飲みやすい。
「先生、今日はどういったご用件で?」
ボクは話を切り出した。
「剣士科のガブリマル先生だがね、退職なされたよ。」
一瞬、どなたでしたっけ?と思ったが、あの髭の先生だと勘ぐる。
剣士科の先生が魔法科の生徒に同じ武器でコテンパンに負けたのだから退職という結果になったのか…
ただ、退職となると申し訳ない気持ちになった。
「自業自得よ、行方不明者にされなかっただけ有難いと思いなさい。」
「ははは、アルマくんは手厳しいなぁ。」
ファスマス先生は笑って言う。
行方不明って…一体どこに?もしかしてアルマたち魔族が住む異空間に飛ばされる?
そう想像を巡らすとボクは先生のように笑う事は出来なかった。
「冗談よ…」
ボクの心を読んだアルマが頬を引き攣らせながら言う。
「ところで先生、あの伯爵の子息はどうなったのですか?」
「コンドルド・ヤザナス君は休学となったよ。我々学園からではなく、ご両親の意向でね。」
「そうですか、優しい男になって戻って来てくれれば良いのですが…」
ボクの意見にアルマが口を挟む。
「無理よ、あんな馬鹿は…薬師科で薬を作って貰わない限り治らないわ!」
「ははは、薬か!人が優しくなる薬、そんなものが出来たら良いですな。」
「そういえば薬師科と言うと、新しく保持魔力を高める薬を開発したらしい。」
ファスマス先生が面白そうな情報を提供してくれた。
「そうだマイトラクス君、良かったらどのようなものか調べに行ってくれないか?」
「良いですよ。ボクも気になりますし明日の午後から行ってみる事にします。今日は今から剣士科の下級組に行く事にしていますので。」
「あぁ、ドライノア先生の所だね。彼はなかなかの苦労人なんだ。よろしく伝えてくれたまえ。」
ボクは先生に挨拶をして部屋を出た後、剣士科、下級組の演習場へと向かった。
「酔っ払い先生!」
ボクは先生の名前を呼びながら駆け寄った。
「いや、俺はそんな名前じゃないぞ…」
ドライなんとかが本名だったかな。まぁ、なんでも良いかと思い、ボクは今回訪れた理由を口にした。
「ご指導ありがとうございました!お陰様で決闘に勝利する事が出来ました!」
深々とお辞儀をしてお礼を伝える。
そう、今回ここを訪れたのは先生にお礼を伝える為だ。
イリエとヤエノも誘おうかと思ったが、忙しそうにしていたのでアルマと二人で来る事にした。
「よくやった!が…俺はあんなに速く動いたり、あんなに強い攻撃の仕方は教えていないぞ。一体どうやったんだ??」
「はい、あれは魔法の一種です。禁止されていたので使うつもりは無かったのですが、相手があまりに酷かったので、こっそり禁止事項を破りました。」
「なるほど、にしても突然ガブリマルと戦う事になったのを見た時は焦ったぞ。にしても魔法であんな事が出来るのか。」
「あっ、すみません、魔法の事は内緒でした。黙っておいて貰えませんか?」
「魔力封じの宝珠だったか?先に剣士科にルール違反をされたようなものだ、少しくらい魔法を使ったくらい良いだろ。」
「いえ…その使った魔法が問題でして…」
「それなら大丈夫だ。その魔法で何が起きたのかサッパリ分かっていないからな。噂話さえ広げる事が出来ないぞ。」
「ありがとうございます。」
酔っ払い先生が物分かりの良い方で助かった。
失われた光魔法を、魔族であるアルマから教えて貰ったなんてバレたら大変な事になる。
「え?私は身体強化の光魔法なんて教えた事ないけど?」
アルマが耳元で囁く。
あれ?どうしてボクは身体強化の魔法を使えるようになったのだったかな…
話をしているうちに下級組の生徒が集まって来た。
「マイトラクスくん、来てくれてありがとう。剣士科との決闘、凄かったよ!ボクは感動してしまったよ。」
中心に居たナイサンスール君が言い、周りに居た生徒達が頷く。
「最後のガブリマル先生との対決!本当に凄かった。ボクにはマイトラクスくんの動きが見えなかったんだ。まるで幻術にでも掛かっているようだったよ。」
いや…幻術じゃなくて身体強化魔法だよ。
そして、実はキミにもその光魔法を掛けた事があるんだよ。
と思った事は、心の中にしまっておく。
「うん、ボクは魔法師だからね、あれは幻術みたいなものだよ。でも、あの試合は魔法は禁止されていたからね、絶対に内緒だよ。」
「なるほど!やっぱり幻術だったのか。マイトラクスくんは凄いよ!絶対に内緒にする!なぁ、みんな!」
ナイサンスール君も素直な性格で助かった。
「そういえば、お前のおかげでガブリマルは学園を辞めたらしいぞ。剣士科は科長であるガブリマルが仕切っていたんだ。奴が辞めた以上、これからどうなるか…面白くなりそうだな。」
酔っ払い先生が笑いながら言う。
「じゃあ、酔っ払い先生が剣士科を仕切っちゃいなよ!」
ボクは言う。
「それは良いね!ドライノア先生、仕切っちゃってよ!」
ナイサンスール達もボクに続く。
「ははは、平民出身の俺が剣士科の科長になれる訳ないだろ!貴族出身の生徒の親達からクレームの嵐が来るわ。」
下級組のみんなは笑い合っていたが、ボクは本気でこの酔っ払い先生が科長になれば良いのにと思った。
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翌日の午後、ボクとアルマは薬師科を訪れた。
まずは薬師科の科長先生を探すが、ここを訪れるのは2回目だし、科長先生の顔も部屋も分からない。
「ねぇ、アルマ…薬師科長の部屋はどこ?」
「だから…私は便利な道具じゃないって言っているでしょ!」
ペシッと長い尻尾で顔を叩かれる。
「頼りにしている証拠だって」
「面倒事を押し付けているだけでしょ!」
ボクとアルマが言い争いをしていると、後方から声が聞こえた。
「マイトさん、こんにちは。薬師科に何かご用ですか?」
声を掛けて来てくれたのはナタリアだった。
彼女は合同野外演習で一緒の班だった子で足がとても速く、機転も効いて頼りになる薬師科の生徒だ。
「やぁ、ナタリアさん。ジン村の事件以来だね、あの時はお疲れ様。今日は、薬師科長の先生に魔法科長のファスマス先生からの手紙を渡しに来たんだ。」
「あの時は大変でしたね。もっと薬師科の発表会を楽しんで貰いたかったのですが…薬師科長なら部屋に居ると思います。私で良かったらご案内しますね。」
ボクはナタリアにお礼を言い、後について歩く。
と、途中でナタリアが話をする。
「聞きましたよ、剣士科と戦って先生を一人、闇に葬ったんですって?」
「いや、闇に葬るって…薬師科の生徒の中では、どういう話になっているのかな?」
額に汗を浮かべながらボクは質問した。
「薬師科の中では、マイトさんが剣士科の先生を袋叩きにして、学園から追放したと聞きました…あと傲慢な貴族生徒も退学処分にしたって…どこか間違えてます?」
「いや…若干、間違っているが…」
ボクは、否定せずに額を覆った。
「ナタリアさん、色々あったからで…決してボクは無差別に暴力を振るったりしないからね。」
「ふふふ、分かってますよ。何か困った事があれば何でも言ってくださいね。私はマイトさんの味方ですから!」
薬師科の生徒の中でボクは極悪非道な人物となっていないかとても不安になった。
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