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【完結】召喚術師の隠し事〜最強の魔法使いはその能力を隠し通す!  作者: あんそに
第一章

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剣士科との決闘 2

火属性の魔法剣は思いもよらない人物から手に入れる事が出来た。


新入生のラブラリルのお父さんが鍛冶屋を生業としているとの事で、同業者内から探し出してきてくれたらしい。

少し古い剣だったが鍛え直してくれたとの事。

ボク達が剣士科に相談に行ったあの日、サビアスはラブラリルのお父さんの事を知って探せないか聞きに行ってくれていたのだ。


こうして、

水属性の魔法剣はザンビアス先生から

風属性の魔法剣はカミュアの実家から

火属性の魔法剣はラブラリルのお父さんから

それぞれ借りる事が出来、3本を揃える事が出来た。


そして魔法科代表のボク達3人は先生方の許可を得て、毎日剣士科の下級組へと特訓に来ている。


「腰のひねりが甘い!」

酔っ払い先生、改めドライノア先生はアルマの言う通り的確なアドバイスを伝えてくれる。

相変わらず酒は手放せないようだが、ボク達を何がなんでも勝たせたいようで、自分の生徒達より熱心に指導してくれている。


ちなみに数ヶ月前にボク達が訪問した後から、人が変わったようにナイサンスール達を指導してくれるようになったらしい。

何があったのか分からないが、おかげで下級組の生徒達は皆、ボク達に感謝してくれている。


今回の決闘でも下級組の生徒は全員、ボク達の味方だと言ってくれて練習相手まで受けてくれている。


「いいか、お前達のその魔法剣は強い。当てるだけで相手にダメージを与える事が出来る。振り回さずに当てる事だけを考えろ。」


「足だ、足で相手を撹乱(かくらん)するんだ。時間が無いから腕は鍛えなくて良い。とにかく脚力を鍛えて足運びの動きを練習するんだ。」


「おい、ナイサンスール、相手をしてやれ。直線的な動きで攻めた後、曲線的な動きで攻めるんだ。」


「お前たちは、ナイサンスールの攻撃を防ぐんだ。直線的な動きで攻められた時は曲線的な動きで躱せ。曲線的な動きで攻められた時は直線的な動きで防ぐんだ。」


「ヤエノはリズムが悪い。この木枠を使ってステップの練習をしろ。」

「イリエは上体が起きがちだ。もう少し重心を落として肩で抑える意識をしろ。」

「マイトは剣を大振りし過ぎる。もっと脇を締めてコンパクトに扱え。」


この先生…凄いな。

イリエ、ヤエノ、そしてボク、それぞれの悪い点を見極めて、それぞれに見合った内容の練習を示してくれる。


剣捌きが上達していくのが、日々実感出来る。


ナイサンスールが上級組に行かずに、ここに残った理由が分かった気がした。


~~~~~~~~~


決闘の日が近づくと、魔法科の先生達が落ち着かないようでソワソワとしだした。

魔法科の生徒達は、みなボク達に優しくしてくれる。



そして、いよいよ決闘の前日。


突然、イリエが試合を辞退すると言い出した。

ポロポロと大粒の涙を流すイリエ。


「ごめんなさい…ごめんなさい…」


理由を聞くと、あの伯爵の坊ちゃんがイリエの両親が営む商会に手を回したらしい。

娘が決闘に参加するなら、今後、デマントの商会との取引はしないと伝えられたらしい。


ボクは思わずイリエを抱き寄せて言った。

「大丈夫、きっと大丈夫。イリエさんは応援に回って。」


あれだけ練習したのに…よほど悔しいのだろう。

イリエは泣き止む事を出来ずにいた。


「ウチの両親の所にも来たみたいだ。」

ヤエノが言った。

「軍所属のウチの親は屈っせずに追い返したみたいだけど、イリエの家とは事情が違うからな。ほんと嫌なヤツだ。」

グッと握り(こぶし)を作る。


今更、代役なんて立てる事は出来ない。なんせ、剣術なんてものに縁が無い魔法科の生徒達だ。

直前まで嫌がらせ工作を行わなかったのは奴の策略だろう。


「怪我は治ったけど…ボクは何の役にも立たない。」

サビアスが悔しがる。

「イリエさん、凄い頑張っていたのに…」

ラブラリルも来てイリエの手を取って握りしめた。


決闘の前夜、日中の事を思い返すとボクはあまり眠る事が出来なかった。

「ねぇ、アルマ…ボクは悔しいよ。」

そう言ったボクの目をアルマはただ見つめるだけだった。



決闘当日。

目を腫らせたイリエと闘志を燃やすヤエノと共に剣士科棟へと足を運んだ。

ここ、上級組の演習場には初めて足を踏み入れる。

なんて立派な演習場なのだろうか…下級組の演習場とは比べ物にならない。


演習場の周りには剣士科、魔法科、生徒全員が集まり、設置された観客席は溢れかえっている。

学園長先生、剣士科の先生、魔法科の先生が並んで後方の門から入り前方に置かれた椅子に座った。


学園長先生が開幕を宣言し、一人の剣士科の先生が審判として名乗りを上げた。

「正々堂々と戦う事。」

「どちらかが参ったと言うか、気絶する事で勝敗は決まる。」

「魔法科の生徒は魔法の使用を禁ずる。」

「3回試合を行い、2回勝った側の勝ちとする。」


イリエが出られなくなったので、

先鋒をヤエノに任せ、後の二人はボクが相手をする事に決めた。


ヤエノが丸い演習場の中央付近へと歩みを進めた。

「魔法科代表、ヤエノカシス!正々堂々と戦う事を誓います!」


続いて剣士科の生徒が中央付近へと歩み出た。

「剣士科代表、サモアン・カタリスト!当然、不正はしない!」


昨年、合同野外演習でボクと同じ班だったサモアン。予定表で彼が出てくる事は知ってはいたが、以前と比べて一回り体が大きくなっているような気がする。

スピードがある剣士だったが、それに加えてパワーも付いたとすれば、かなり厄介な相手だ。


「始めっ」

審判となった先生の号令で試合が始まった。


サモアンから攻撃を仕掛ける。

やはり鋭い剣捌きの為、木剣とは言え、かするだけで怪我をしそうな勢いだ。


ヤエノは木剣を振り払うので精一杯な雰囲気。

それでも円を描くような足運びでサモアンの横側から魔法剣を振るう。

が…おかしい。

普通なら赤く光る火属性の魔法剣がオレンジ色をしたままだ。

魔力効果が施されていない魔法剣では当てるだけではサモアンにダメージを与える事など出来ない。


「ど、どうなってんだ!?」

ヤエノが叫ぶ。


動揺するヤエノに向かい、サモアンは緩急を織り交ぜた攻撃で、一発、また一発とヤエノの体にダメージを与えていく。


「ヤエノ、頑張って!」

イリエが悲痛な叫び声を放つ。


周りからはサモアンコールとヤエノコールが入り乱れる。


「これは…魔力封じの宝珠がどこかに仕掛けられているわね。」

アルマの言葉にボクは耳を疑った。

ここは剣士科の演習場…そんな事までして勝ちたいのか!?


魔法剣には刃が無い。

よって魔法を付与していない状態では木剣と同じだ。


「どうした?もう終わりか?」

サモアンが言葉を放ちながら冷静に剣を浴びせる。


「魔力封じなんて、卑怯だぞ!」

ボクが叫ぶと、サモアンは動きを止めた。


「何を言っているんだ?そんなもの、ある訳ないだろ?」

サモアンの表情を見る限り、本当に知らないようだ。


「訳の分からない事を言ってないで、続けなさい。」

審判員の剣士科の先生が叫んだ。


「あの審判員が腰にかけている鞄から得体の知れない雰囲気を感じるわ。」

アルマの言葉にボクは確信した。

「なんて…卑怯な。」


「魔力封じの宝珠はかなり貴重な物だけど、あの坊ちゃんなら持っていそうね。」

アルマが続け様に言う。


演習場の横では、噂の伯爵の坊ちゃんがニヤニヤと笑っている。


そうしているうちにもサモアンの攻撃は容赦なく降り注ぎ、ついにヤエノは倒れた。


「もう止めて!」

イリエが叫ぶ。


魔法科の生徒達の声援は無くなり静まり返った。

逆に剣士科の生徒達の多くが歓喜の声を上げている。

一画、ナイサンスール達下級組の生徒は悔しそうな表情を浮かべている。


「ま、まだ…」

ヤエノは力を振り絞って立ち上がろうとする。


サモアンは立ち上がろうとするヤエノに対し、追い討ちをかける事はせず、じっと見つめる。


ヤエノは立ち上がったが、フラフラの状態だ。

が、それでも光を失ったままの魔法剣をサモアンに向けた。


「無駄だ、もう止めておきなさい。」


サモアンが声を発したその時、イリエが2人が立つ円形の演習場へと駆け上り、ヤエノを抱きしめた。


「しっ、失格!」

審判員の先生が声を上げた。


「勝者…剣士科のサモアン!!サモアン・カタリスト!」


剣士科の生徒達が歓声を上げ、魔法科の生徒達の中からはすすり泣く声が聞こえてきた。

「ごめん、ごめんね、ヤエノ…」

演習場の上で抱き合ったまま動かない二人。

「………」

ヤエノは何も言葉を発せず、ただイリエに寄りかかった。



「ねぇ、アルマ…ボク、怒ったよ。」


「ふふ…いいわよ、マイト…許す。」

~~~~~~~


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