サビアスと新入生
とある朝、いつものように学園に行くと医務室から呼び出しがあった。
何事かと思いながら教師部屋に隣接する医務室に向かうと、ベットに座り腕に包帯を巻いたサビアスの姿があった。
傍には小柄な女の子が座り、涙ぐんでいる。
医務室の先生は居ないようだ。
「いやぁ、ミスっちゃったよ。」
「あ、この子は新入生のラブラリルさん。」
笑いながら傍の女の子を紹介されたが、サビアスの包帯を巻くその姿は実に痛々しく、ボクは笑えずに紹介された女の子とは目を合わすにとどまった。
「私が剣士科の男の人に難癖を付けられていた所をサビアスさんが助けてくれたのです。」
ん?この小柄な女の子は、この前の試験で良いセンスを披露していた子だな。
「もしかして…あの、伯爵子息か?」
ボクの問いにサビアスがゆっくりと頷く。
なんだろう…この胸に込み上がる熱いものは…
「手を出すとファスマス先生に迷惑が掛かると思ってね、攻撃せずに防御土魔法の土壁で耐えていたんだ。」
「けど、一人に後ろに回り込まれちゃってね、まだまだ修行が足りていないみたいだ。」
サビアスは笑いながら言うが、涙を流すのを必死にこらえているのをボクは見逃さなかった。
サビアスに守られた女の子、ラブラリルが口を開いた。
「あんなの…卑怯よ。大人数な上に後ろからだなんて…」
そう言うと彼女は泣き出してしまった。
最初から涙ぐんでいたのだが、サビアスの言葉を聞いて耐えられなくなり本格的に泣いてしまったのだ。
サビアスが自分の力不足だったからと、必死にラブラリルをなだめている。
ラブラリルが思いっきり泣くので、サビアスの涙は引っ込んだようだ。
この光景を見て、ボクはさらに胸が熱くなるのを感じた。
ラブラリルが落ち着くのを待ち、
授業を受ける気分じゃなかったボク達3人は食堂へと向かった。
昼食の時間帯では無いので食堂に生徒はまばらだった。
するとイリエとヤエノの姿を見つける。
向こうもボク達の姿を見つけたようで手を振ってきた。
「何をしているんだい?」
ボクが言うと、
「歴史の授業にマイトくんが居ると思ったんだけど居なくって。それよりサビアスくんの腕の包帯は何?」
二人が声を揃えて答えると共に質問をしてきた。
そりゃ、目立つわな。
二人の質問に対し、またラブラリルが涙ぐみそうになったので、最初に彼女を紹介した。
イリエ、ヤエノに対し、ペコリとお辞儀をして元気よく挨拶をするラブラリル。
そしてサビアスとラブラリルは、先程、ボクに医務室で話をしていた事を繰り返し説明した。
「まったく、こんな小さな子にまで難癖をつけるなんて…アイツ、絶対自分より弱そうな相手にしか文句を言えないのよ。」
ヤエノが拳を握って肩を震わす。
「あ、いえ…私は背は低いですが子供ではありませんので。」
「ぷっ」
ラブラリルがまったく的外れな事を言うので、少し場が和んだ。
が、どうやら彼女は場を和ませようとした訳では無く、真剣に子供じゃないと言いたかったようで、真顔で身長と年齢は関係ないと弁明している。
「とにかく、怪我をさせられたのに黙ってはおけないわ。」
イリエがバンっと机を叩いて立ち上がった。
「待ってくれ、あまり大事にはしたくないんだ。」
サビアスがイリエを止めた。
確かに相手が相手だし、どんなヤツでも同じ学園の生徒だ。乗り込んで行って倒してしまう訳にも行かない。
アルマが言うように、いっそ消し炭に…頭を振ってその考えを吹き飛ばした。
そうこうしているウチに声をかけてくる人物が居た。
「医務室の先生から話を聞いたよ。」
ファスマス先生だ。
「いくら何でも黙っている訳には行かないじゃろう。」
土魔法組のナズーム先生が腕を組んで横に立つ。
「剣士科にも伝令を出しておいた。学園長室へ行くぞ。」
ボク達5人は先生方の後ろへ続いて歩いた。
しばらく、学園長室で待っていると、
あの伯爵子息と取り巻き3人、そして剣士科の先生2人がやってきた。
「我々は貴方達と違って忙しいのだがね。」
仏頂面をしながら剣士科の先生が言う。
「ふんっ、贈賄の算段で忙しかったのか?」
ナズーム先生の言葉に剣士科の先生2人は驚いたような表情をする。
もしかして、図星だったのだろうか。
「包帯なんて巻いて随分と大袈裟だな!ちょっと手が触れただけなのに、骨でも折れたのか?魔法科の生徒は弱っちいなー!」
伯爵子息は、とても入学したての生徒とは思えない口ぶりだ。
当然のようにヤエノが怒り出し、魔法を発動しようとする。
ボクはヤエノを取り押さえるのは他のみんなに任せ、心の中で「アルマ…出てくるなよ。」と呪文のように繰り返す。
「静かに!」
学園長先生の言葉に言い争っていた先生方も伯爵子息も口を閉ざす。
「君達は同じ学園の仲間なんだ。もう少し仲良く出来ないのかね!」
しばらくの沈黙の後、剣士科の先生が口を開いた。
「このままでは収拾がつきませんね。どうでしょう?ここは、決闘で勝敗をつけると言うのは?」
「それは良いアイデアですね。」
ファスマス先生がニマリと笑みを浮かべながら答えた。
「ただ…剣士科は木剣です。魔法科の生徒が全力魔法を使うのであれば剣士科が不利です。ここは平等に木剣同士で戦うのはどうでしょう。」
今度は剣士科の先生が髭を触りながらニマリと笑みを浮かべた。
「それのどこが平等なんじゃ!」
ナズーム先生が剣士科の先生の胸ぐらを掴む。
「待て!」
学園長先生が場を制した。
「決闘で勝敗を付けると言うのは、確かに我が学園の伝統と合致する。が…木剣vs木剣で勝敗を決めるのは魔法科に不利だ。」
「魔法科は刀に魔力を付与した魔法剣を使うというのはどうだ?」
「それは面白い。流石は学園長先生のご提案。どうでしょう?3人vs3人で勝ち越した方が勝ちというのは?」
ファスマス先生とナザーム先生は顔を見合わせている。
「良いでしょう。その条件で受けて立ちます。もし、ボク達が勝ったら2度とボク達に嫌がらせするのは止めてください。」
一歩、前に出るとボクは大きな声で叫んだ。
「は、なんて生意気な。オレ達が勝ったら土下座で謝って貰うからな!あと、その女の子を貰う。」
伯爵子息は、ラブラリルを見て何故か顔を赤らめた。
「魔法科の生徒が、あんたなんかに負けないわよ!」
ラブラリルが良く通る声で啖呵を切った。
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